2008年07月18日

●「1980年の金高騰の裏事情」(EJ第2371号)

 1979年9月――金1オンスが850ドルになる6ヶ月前の
ことです。IMF委員会は次の2つの重要な決定をしたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
       1.金公定レートを廃止する
       2.金の一部を競売にかける
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは何を意味するのでしょうか。とくに2はIMFと米財務
省が保有する金の一部を投げ売りするというのです。
 ゴールドプランで中央銀行から金を借り、低利であることを前
提に、それを売却して営利の事業に注ぎ込んでいた米国の中枢を
担うチェース・マンハッタンやJPモルガン、バンク・オブ・ア
メリカは急速に値上がりする金の価格に経営が窮地に陥っていた
のです。当然のことですが、いかに低利でも金の価格が上がると
それに応じて利息の額が急拡大したからです。
 その状態を見て米財務省とIMFは、保有する金の一部を競売
にかけて、金の価格を何とか下げようとしたのではないかと考え
られるのです。しかし、金の競売の表向きの理由として米財務省
は、次のように発表しています。しかし、これはあくまでも表向
きの理由に過ぎず、本当の目的は金を大量に売ることによって、
金の価格を下げようとしたのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 競売の売り上げは発展途上国のために使われるとともに、一部
 が加盟国に返還される。
 ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない/金
              の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 デル・バンコ一族は、デリバティブを通じたレバレッジの手法
で金の釣り上げを仕掛けたのに対し、合衆国財務省やIMFが大
量の金を放出して何とか金価格を下げようとする――まさに金の
戦争です。そして、総額20兆ドルを超える巨額な資金がCOM
EX市場に投入されたのですが、金の価格は一向に下がらず、米
財務省とIMFはこの戦いに敗れるのです。そして金の価格は遂
に850ドルに達するのです。
 金の価格が「1オンス=850ドル」をつけたあと何が起こっ
たのでしょうか。これについて、既出のピーター・バーンスタイ
ンは自著のなかで次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (1980年)1月21日、金の価格は850ドルという記録
 的な高値をつけた。商品相場のブローカーのジェームズ・シン
 クレアは、状況を次のように要約している。「市場を信じるな
 ら、われわれは第八次世界大戦を戦っているのだ」。その日の
 午後、カーター大統領が、合衆国は「世界最強の国家であり続
 けるために必要ないかなる代価も支払わなければならない」と
 いう声明をだした。そのコメントのおかげで、金と外国為替市
 場は落ち着きを取り戻したようだった――金の価格は、その日
 の取引が終わるまでに50ドル下落した。
        ――ピーター・バーンスタイン著/鈴木主税訳
        『金と人間の文明史』より/日本経済新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 遂にカーター大統領が登場して声明を出したのです。その結果
金の価格は下落し、次の22日に金は145ドルも下落します。
そして、1985年までに金の価格は300ドル前後になり、さ
らに1997年末には300ドルを割り込んだのです。つまり、
8年間に金は60%以上も安くなったのです。
 それでは、この金の戦争は一体何が目的だったのでしょうか。
この戦争を仕掛けた仕手集団が、金の価格を釣り上げ、高値で売
り抜けたのでしょうか。
 いや、そうではないのです。これは、デル・バンコ一族による
金の吸い上げではないかと考えられるのです。まず、中央銀行の
所有する金を「金リース/ゴールドプラン」――そもそもこのプ
ランはデル・バンコ一族のアイデアである――これによって市場
に誘い出し、それをデル・バンコ一族が吸い上げる、これが第1
段階の金集めです。
 そのあと、米財務省の保有する金地金とIMFの金が金価格を
下げるために市場で出てきたところを再び吸い上げる――これが
第2段階、このようにして、ひたすら、デル・バンコ一族は世界
中の金を集めたのです。
 米国の金塊蓄積所は、ニューヨーク連銀の地下金庫室と、ケン
タッキー州フォートノックスにある米中央銀行――FRBの地下
金庫室に保管されているといわれており、誰もそれを疑ってはい
ないはずです。大量の金塊がそこにあると思っています。
 ところで、フォートノックスというと、映画『007ゴールド
フィンガー』で、ショーン・コネリーが大立ち回りを演ずるラス
トシーンに出てくるあの場所です。
 実は日本が所有する金は、日本銀行の金庫に保管されているの
ではなく、ほとんどは米フォートノックスの地下金庫室にあると
いわれているのです。日本だけでなく、世界の弱小国の保有金は
ほとんどフォートノックスの地下金庫室にあるのです。いわば金
は米国の人質となっているのです。
 ちなみに日本は米国から金を持つなといわれているらしく、世
界第2の経済大国であるのに、金についてはドイツの4分の1し
か持っていないのです。持っているのは膨大な米国債だけなので
す。しかも、その少ない日本の金のほとんどはフォートノックス
にあるというのです。これでは完全に日本は米国の属国です。
 しかし、その日本のなけなしの金も含めて米国の金はほとんど
なくなっているという情報があるのです。どうしてかというと、
1980年の壮絶なる金の戦争の結果、米国は完敗し、ニューヨ
ーク連銀の金庫室にもフォートノックスの金庫室も空であり、金
はほとんどなくなっているというのです。しかし、それを裏付け
る明確な証拠はないのです。     ――[金の戦争/30]


≪画像および関連情報≫
 ●日本の金は人質にとられている
  ―――――――――――――――――――――――――――
  日本銀行の保管庫にはほとんどないという。これは「金相場
  が人質に取られていることを意味する」と専門家はいう。日
  本だけでなくほとんどの弱小国が金塊を人質にとられ、これ
  ら人質国のあいだの金取引は、FRBの地下金庫にあるそれ
  ぞれの国のブロックに入っている金塊を、台車で移動するこ
  とによって成立している。国家の保有金では、アメリカのF
  RBが世界一の金準備高8000トンを誇り、ついでドイツ
  が多く、IMF並のほぼ3000トンである。イタリア、ス
  イスもフランスと肩を並べる量の金塊を持っているが、日本
  はドイツの四分の一程しかない。
       http://www.asyura2.com/sora/war9/msg/264.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

フォートノックスと007.jpg
posted by 平野 浩 at 04:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 金の戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。