2008年07月15日

●「1980年1月の金高騰の謎」(EJ第2368号)

 COMEXで取引される金は、実際に金鉱山から出てくる金の
数百倍におよぶことはザラなのです。もっとはっきりいうと、実
際にはありもしない現物の金地金をさも大量にあると偽って、多
くの人をカジノに誘い込む変動為替相場制を利用した為替ヘッジ
――通貨デリバティブ市場なのです。
 1980年1月21日、金の価格は「1オンス=850ドル」
という空前絶後の価格となったのです。『ゴールド/金と人間の
文明史』の著者、ピーター・バーンスタインは、この現象につい
て次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1959年、金への投資総額は、合衆国の全普通株式の市場価
 値の約5分の1だった。1980年、金に投資された16兆ド
 ルは、合衆国の株式の14兆ドルという市場価格を上回ってい
 た。クロイソス・カール大帝、ピサロたちが生きていて、彼ら
 の大切な金がこうして意気揚々と行進するのを見たらどう思っ
 たろう。   ――ピーター・バーンスタイン著/鈴木主税訳
        『金と人間の文明史』より/日本経済新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 「1オンス=850ドル」――これは異常な高値であり、明ら
かに人為的であるといえます。これによって、誰がボロ儲けをし
誰が損失を被ったのでしょうか。
 850ドルになったのが1980年1月21日であることを考
えると、信じられないほどの膨大な資金――おそらく20兆ドル
程度が金の価格を釣り上げるために、1979年にCOMEXに
投入されたものと考えられます。
 既出の鬼塚英昭氏は、この金価格高騰の舞台裏について、次の
ように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 金価格の上昇のために巨大な資金を投入した仕手集団がいた。
 彼らは金が値上がりすることで、巨大な利益を得ることができ
 た。彼らとは間違いなく、金を実質的に支配し、所有するデル
 ・バンコ一族であった。では損をしたのは誰か。COMEXの
 先物市場開設に加わったアメリカの銀行・証券会社である。彼
 らはある時点で、各中央銀行から金を借りた。年率1〜2%で
 あった。(中略)金価格が上昇し、1オンス850ドルとなっ
 た時点で、アメリカ大統領が登場した。巨額の投資資金を投入
 して金価格をつり上げたということは、巨額の投資資金が導入
 され、これを迎え撃つべく金価格の下落を狙った動きがあった
 ことを示している。合衆国財務省もIMFも、金価格を下げる
 べく金の放出を続けた。しかし、金価格は上昇を続けたのであ
 る。  ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解ら
            /金の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 鬼塚英昭氏は、金価格高騰を仕掛けた仕手集団は、「デル・バ
ンコ一族」であるといっています。デル・バンコ一族の正体は、
何でしょうか。
 デル・バンコ一族とは、ロンドンとチューリッヒで金の現物取
引をするマフィア中のマフィアなのです。デル・バンコ一族の本
拠地は、イタリア北部のロンバルディアであり、そこにあるスコ
シア・モカッタ銀行という銀行なのです。しかし、デル・バンコ
一族は、税金のかからないベネチアに資金を移して、現在はそこ
を活動の拠点としているのです。
 ここで、デル・バンコ一族についてもう少し詳しくお伝えする
必要があります。
 「オフショア」という金融用語をご存知でしょうか。
 オフショアとは、外国の投資家や企業の資産管理を受け入れる
金融機関や市場を指します。「タックス・ヘイヴン」の同義語と
して使われます。英国のスコットランド沖に浮かぶ島「マン島」
やイタリアのベネチアが代表的なオフショアであり、こういう場
所は本土の海岸から少し離れた所にあるため、しばしば法律の適
用状態が本土より緩やかな地域になっており、そういう場所の金
融機関に置いた資産や、そこを舞台にした投資活動には税金がか
からなかったり、かかっても少額であったりするので、巨額の資
産を持つ投資家や、財テクをしたい企業などが、こういう場所を
利用しているのです。
 デル・バンコ一族は巨額の資金を有しており、そのためベネチ
アに拠点を置いているのです。そういうわけで、世界のマネーの
70%はこうしたオフショアにあるといわれているのです。
 デル・バンコ一族にとって、米国の大統領などは「使い捨て可
能な、取り替え可能」な使用人程度にしか考えていないのです。
 こんな話があります。1991年に湾岸戦争を起こした父ブッ
シュ元米大統領とその財務長官を務めたジェームズ・ベーカーに
ついての話です。
 ブッシュは銀行ハリマンの経営者の一族であり、その子会社で
あるシティ・バンクの経営者一族がベーカーなのです。ブッシュ
とベーカーの2人は、きわめて緊密な関係にあるのです。
 湾岸戦争の起こった1991年にシティ・バンクは倒産の危機
に立たされたのです。そのとき、シティ・バンクが助けを求めた
相手は、親会社のハリマンでも、FRBでもなかったのです。シ
ティ・バンクは、英国の金融街のロンバート街にある世界最古の
スコットランド銀行だったのです。スコットランド銀行はシティ
・バンクに資金を提供し、経営危機は救われたのです。
 現大統領のジョージ・ブッシュは、かつては酒びたりのアル中
患者だったのです。わが子をなんとかしようとして、父ブッシュ
は、キリスト教原理主義の牧師パット・ロバートソンという人物
に泣きついたのです。
 ロバートソンの教育と彼の指示で24時間同居して身心ともに
ブッシュを立ち直らせたのは、現国務長官のコンドリーサ・ライ
スとローラ夫人なのです。そして、このロバートソンこそスコッ
トランド銀行の米国代表なのです。  ――[金の戦争/27]


≪画像および関連情報≫
 ●オフシォアの意味について
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  本来オフショアとは、「沖合い」を意味しますが、近年日本
  ではオフショアを「海外」の意味で使うようになりました。
  とりわけ金融の世界では歴史的、環境的事情により、非居住
  者(外国人)に対し、租税環境を優遇している「国」や自治
  権を持った「地域」のことを指します。またオフショア金融
  機関のほとんどが、タックスヘイブン(租税回避地)に拠点
  を構えています。タックスヘイブンの国にある口座、投資資
  産、資産および会社の収益のほとんどは非課税になります。
  しかしオフショアを使う理由はそれ以外にもたくさんありま
  す。 http://www.offshorelibrary.com/whatisoffshore.htm
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ピーター・バーンスタインの本.jpg
posted by 平野 浩 at 04:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 金の戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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