2008年07月09日

●「フェルディナンド・リップスとは何者か」(EJ第2364号)

 今回のEJのテーマは「金の戦争」です。既に何回もこの言葉
を使ってきています。しかし、「金の戦争」とは何なのか、まだ
はっきり見えていないと思うのです。
 ここまでの22回の連載を通じて、第1次世界大戦の前から、
金をめぐる動きという視点に立って、米国の通貨政策を中心に歴
史的分析を行ってきています。
 歴史というものはどういう視点に立ってそれを見るかによって
同じ出来事でもまるで違って見えてきて、数多くの新しい発見が
あるものです。今までにもいろいろな視点に立った分析が行われ
てきていますが、金を中心に分析したものは少ないのです。
 それは、多くの場合、金は秘密裏に扱われるので、表に出ない
情報が多く、資料がきわめて乏しいからです。しかし、金の歴史
を探るさいに貴重な本があるのです。既に2〜3回引用していま
すが、改めてご紹介します。
―――――――――――――――――――――――――――――
        フェルディナント・リップス著/大橋貞信訳
  『いまなぜ金復活なのか/やがてドルも円も紙屑になる』
                       徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 実はこの本の原題は「ゴールド・ウォーズ/金の戦争」なので
す。この本の著者のフェルディナント・リップスについては、今
回のテーマの連載2回目のEJ第2343号において、少しご紹
介しています。
 1931年生まれの銀行家ですが、1968年にチューリッヒ
・ロスチャイルド銀行の設立に参画し、マネージング・ディレク
ターに就任しているのです。そして、1987年には、バンク・
リップスを設立し、1998年には引退。その後はアフリカの金
鉱山会社の役員を務める一方、金鉱ファンドを運営している人物
です。経歴から見て、長い間にわたって一貫して金にかかわって
いることがわかります。
 リップスはこれまで何回か来日もしているし、マスコミとのイ
ンタピューにも応じています。例えば、次のやり取りは2003
年3月8日に、ジム・パプラバという司会者の質問に答えるとい
うスタイルで次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ジム:あなたの著書『ゴールド・ウォーズ』によると、誰がこ
  の戦争(金の戦争のこと)を仕掛けたのでしょうか。その目
  的は何で、誰が犠牲者になるのでしょうか。
 リップス:誰が仕掛けたかといえば、フランクリン・D・ルー
  ズベルトであろう。彼は1933年、米国国民から金を押収
  し、その後で、価格を20.67 ドルから、35ドルに引き
  上げた。その時点で<ゴールド・ウォーズ>が現実に始まっ
  た。70年前のことだが、それ以来、金に対する紙の攻撃が
  続いている。この戦争は、ブレトンウッズ体制が1971年
  に崩壊してから激しくなった。それ以来、金にリンクした通
  貨が存在しなくなり、スイスだけ例外となった。
 ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない/金
              の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ロスチャイルド家の一員であるリップスは、金の戦争はルーズ
ベルトの金に対する仕掛けに始まって、リップスが本を出した2
002年に終了しているといっています。リップスのいわんとす
ることを既出の鬼塚英昭氏が次のようにまとめています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私リップスは、正直なところ語りたい。私の話を聞いている諸
 君、この<金の戦争>は私が本を出版した2002年をもって
 終了した。敗者はアメリカの連邦準備制度(FRB)と世界各
 国の中央銀行である。彼らは<金の戦争>で敗れ去ったのだ。
 その理由の第1は、アメリカはじめ各国が、中央銀行制度とい
 うものを創り、ことに金の保持、管理、そして運営を一任した
 からである。今や中央銀行は、社会にとって有害なものとなっ
 た。私は勝者の一人として、パートナーのロスチャイルドから
 一般の人々にこの事実を伝えよとの指令を受けた。それで私は
 『ゴールド・ウォーズ』という本を出版し、各テレビ局やラジ
 オ局のインタビューに応じ、また世界各地で講演しているので
 ある。―鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない
            /金の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは一体どういうことなのでしょうか。リップスは、既に金
の戦争は2002年に決着し、われわれ、すなわち、ロスチャイ
ルドとしてはこの戦争に勝利したといっているのです。それは、
世界中の金をロスチャイルドが、掌中に収めたという意味なので
しょうか。
 ここでひとつはっきりしてきたことがあります。それは「金の
戦争」についてリップスが「金に対する紙の攻撃が続いている」
といっている点です。それは金本位制を捨てて、紙幣のドル本位
制にすること――金から貨幣としての機能を完全に奪い去り、紙
幣だけが本物のお金であるという信仰を広めようとしていること
を指しているらしいというです。
 リップスは、『ゴールド・ウォーズ』の日本版出版の序文で、
日本に対しても次のように警告しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本は2003年に1870億ドルのアメリカ国債を購入して
 います。また、2004年最初の3ヶ月だけで、1470億ド
 ルものアメリカ国債を取得したということです。私は、これは
 財政的、金融的な自殺にしか思えません。
   フェルディナント・リップス著/大橋貞信訳/徳間書店刊
   『いまなぜ金復活なのか/やがてドルも円も紙屑になる』
―――――――――――――――――――――――――――――
                 ―――[金の戦争/23]


≪画像および関連情報≫
 ●スイスのプライベートバンクについて
  ―――――――――――――――――――――――――――
  プライベートバンクとは、主に富裕層向けに個人資産管理サ
  ービスを提供する金融機関です。ヨーロッパで発展し、中で
  も、スイスのプライベートバンクは有名で、プライベートバ
  ンクの代名詞と言ってよいでしょう。スイスは、国家レベル
  での高い守秘性と安全性が評価されており、多くの富裕層の
  資金を集めてきました。一説には、スイスは、世界の個人資
  産の3分の1が集まっているとも言われています。
          http://www.pbguide.jp/column/article/4
  ―――――――――――――――――――――――――――

リップスの本.jpg

posted by 平野 浩 at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 金の戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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