2008年07月02日

●ケネディ大統領とブレトンウッズ体制(EJ第2359号)

 1960年の後半になると、スイスの銀行は自らも金を買うと
ともに、顧客に対して金を買うよう勧め出すのです。何を根拠に
金を買うのかというと、1960年の大統領選でケネディがニク
ソンを破って勝ちそうだと読んだからです。
 ケネディ政権ができると、米国はインフレ路線を突き進むこと
は確実であり、そうなると、米国の国際収支はさらに悪化し、ド
ルの価値が下がって、金が上がるという予測です。
 それに国際政治情勢も不透明化を増していたのです。米国の秘
密偵察機U2がソ連によって撃墜され、予定されていたアイゼン
ハワー米大統領とソ連のフルシチョフ書記長のトップ会談が中止
になって、第3次世界大戦勃発の危険も増していたからです。
 いうまでもなく、戦争になれば金の価値が上がることは明らか
であり、そういう意味でも金が買われたのです。その結果、ロン
ドンの金市場で金の価格が「1オンス=40ドル」に跳ね上がっ
たのです。
 これをきっかけにして世界中の投機筋がドルの切り下げ、金の
値上がりを読んで、動き出したのです。金の価格は、ロンドンの
ロスチャイルド商会で毎日値付けが行われ、それが全世界におけ
る金相場を決めるのです。
 しかし、1961年2月にケネディ大統領は次の公式声明を出
したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  アメリカは金「1オンス=35ドル」という公定の公式
  価格を 維持する      /ジョン・F・ケネディ
―――――――――――――――――――――――――――――
 この公式声明によって、ドルに対する海外の評価は回復し、ロ
ンドンの金相場も「1オンス=35ドル」まで下落したのです。
ケネディ大統領の優れているところは、国際通貨体制というもの
は、通貨としての金の信用ではなく、米国政府の信用であること
をよく知っていたことです。
 ブレトンウッズ体制の維持に対して、ケネディ大統領は次のよ
うにいっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 海外でのドル保有が増大しています。これは、アメリカ合衆国
 が特別な責任を負っていることを意味するのです。その責任と
 は、自由世界における主たる準備通貨であるドルの価値を維持
 することにあります。ドルは金と同様に優れたものであると多
 くの国々に認識させ続けなければなりません。
       ――フェルディナント・リップス著/大橋貞信訳
   『いまなぜ金復活なのか/やがてドルも円も紙屑になる』
―――――――――――――――――――――――――――――
 本来であれば、前回ご紹介した1950年代末のドル危機のと
き、米国政府と通貨当局が現実を直視したうえで、ドルを切り下
げるという対応措置を取っていれば、ブレトンウッズ体制はもっ
と長持ちしたと思うのです。
 大方の予想通りケネディ政権は、大減税を実施し、FRBに圧
力をかけて、通貨を大量に刷らせたのです。そのうえで、金価格
を抑制するため、1961年に米国とヨーロッパ主要7ヶ国が集
まって、「金プール」を創設したのです。
 「金プール」は市場で金が上昇したときに、各国政府が協調し
て金を売却して金価格を抑制するという制度です。この場合、市
場に対する介入コストは「金プール」加盟国のすべてが共同で負
担することになっています。
 「金プール」への拠出金額は総額2憶7000万ドルであり、
各国の中央銀行の割り当ては次のようになっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
    西ドイツ ・・・・・   3000万ドル
    イギリス ・・・・・   2500万ドル
    イタリア ・・・・・   2500万ドル
    フランス ・・・・・   2500万ドル
    ス イ ス ・・・・・   1000万ドル
    オランダ ・・・・・   1000万ドル
    ベルギー ・・・・・   1000万ドル
    アメリカ ・・・・・ 1憶3500万ドル
―――――――――――――――――――――――――――――
 「金プール」の創設案は全部で6条から成るのですが、第5条
にはきわめて興味深い記述があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ドルの金への交換をドル受け取りの一週間後にするか、一か月
 後にするか、あるいはまったく行わないかは、全面的に各中央
 銀行の判断に委ねられる。
       ――フェルディナント・リップス著/大橋貞信訳
   『いまなぜ金復活なのか/やがてドルも円も紙屑になる』
―――――――――――――――――――――――――――――
 ドルの価値が変動して金の価値が上がったとき、「金プール」
は介入を行いますが、そのドルを金に交換するのは、介入からな
るべく遅いほうが良いわけであり、米国としては金売り介入をし
た中央銀行が、そのままドルを保有していてもらうことが望まし
いのです。そのためにこのような条項が入っているのです。
 結果として、この「金プール」はいくつもの危機を乗り越えて
最初のうちは大成功を収めることになります。それらの危機は、
ソ連の度重なる金の売却によって救われたといってもよいのです
が、「金プール」に参加しているBIS加盟国中央銀行の金準備
は、21ヵ月間に合計13億ドル増大し、そのうち、約6憶50
00万ドルは米財務省のものになったのです。
 このとき、加盟各国、とくに米国の金融当局者が、財政と金融
を節度をもって運営していれば、ブレトンウッズ体制はもっと存
続したのですが、結果としてはそうはならなかったのです。各国
の金融当局者は、そんな重要なことをほとんど理解していなかっ
たからです。             ―[金の戦争/18]


≪画像および関連情報≫
 ●BISとは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  BIS(国際決済銀行)では、中央銀行間の協力を促進する
  ために各国中央銀行総裁が定期的に集まり、検討内容に応じ
  てメンバーを入れ替えた3つの会合<1.GIO総裁会議、
  2.グローバル・エコノミー総裁会議、3.拡大総裁会議>
  を開催しています。通常これら3つの会合は、総称して「中
  央銀行総裁会議(総裁会議)」と呼ばれています。以前は同
  総裁会議が毎月開催されていたため、「月例総裁会議」と呼
  ばれていましたが、平成12年以降は、原則として隔月の奇
  数月に開催されることとなっており、単に「中央銀行総裁会
  議」あるいは「総裁会議」と呼ばれています。
                 ――日本銀行のサイトより
  ―――――――――――――――――――――――――――

1ジョン・F・ケネディ.jpg

posted by 平野 浩 at 04:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 金の戦争 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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