経済でも技術でも現状を正確に把握するには、それぞれの歴史
を振り返ってみる必要があります。同様に、現代世界の通貨問題
を読み解くには、ブレトン・ウッズ体制にいたるまでの歴史的プ
ロセスとブレトン・ウッズ体制崩壊後の金市場の動向を理解する
必要があります。
ひとくちに「金本位制」といっても、次の3つに分けて考える
必要があります。
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1.古典的金本位制
2.ケインズ理論による金本位制
3.金・ドル本位制
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3つの違いについて述べることにします。
「古典的金本位制」とは、1816年に英国が採用した金本位
制のことです。その当時他の国では金ではなく、銀本位制もしく
は金銀本位制を採用しているところが多かったのです。しかし、
銀の価格は安定せず、金銀比価の変動が激しいため、結局、金本
位制が定着したのです。金本位制を定義しておきます。
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金本位制とは、中央銀行が発行した紙幣と同額の金を常時保管
し、金と紙幣との兌換を保証する制度である
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英国は、1816年に次のレートで金本位制をひき、この価格
が、金本位制を停止した1914年までの約100年間にわたっ
て続いたのです。第1次世界大戦前のことです。ちなみに、日本
も1897年に金本位制を採用しています。
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金/1オンス(31.1035グラム)=
3ポンド17シリング10ペンス半
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第1次世界大戦は1918年に終了し、各国は国際通貨制度と
して古典的金本位制にいったんは復帰するのですが、再度停止に
追い込まれます。世界恐慌が起こったからです。
世界恐慌とは、1929年10月24日にニューヨーク株式市
場(ウォール街)で株価が大暴落したことに端を発した世界規模
の恐慌のことです。
そのとき米国の舵取りをまかされたのは、1933年3月4日
に大統領に就任したフランクリン・ルーズベルト米大統領です。
昨日のEJでも述べたように、当時は恐慌のため、金が米国から
流失しはじめていたのです。
ルーズベルトは、まずこれにストップをかけるために「金本位
制は安泰である」とのメッセージを出して米国国民の動揺を抑え
たのです。そのウラで経済を支配する一切の強権を大統領に集中
させる法律を通しています。
実はこのときルーズベルト大統領に対して助言を与え、その経
済政策に対して理論的にバックアップした人物がいるのです。あ
のジョン・メイナード・ケインズその人です。彼は英国から大統
領のもとへ送り込まれたのです。
ルーズベルト大統領としては、デフレを抑制し、企業の再雇用
を促進し、落ち込んだ生産水準を上昇させるためにドルの大量印
刷をする必要があったのですが、その政策についてアドバイスし
たのがケインズなのです。
ルーズベルトは、金の価格を「1オンス=35ドル」に固定す
るとともに、米国の全国民から強制的にすべての金をドル紙幣に
交換させたうえで、金本位制をとったのです。これが「ケインズ
理論による金本位制」です。
ケインズは自らの経済学について次のように述べています。
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政府が投資を直接間接に増加させ、完全雇用を実現する経済で
ある。そのためには、自由放任主義も、均衡財政主義も、金本
位制も否定されなければならない。そうなれば、新しい体制が
古い体制に比して平和にとって好ましいものになる。
――ジョン・メイナード・ケインズ
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要するに、ルーズベルトの経済政策――ニューディール政策は
実際上ドルと金の兌換を行わず、保証にとどめたのです。ドルに
金の価値を持たせたといえます。これはいかにもそれから米国が
隆盛を迎えるに当って都合の良い経済学であったといえます。な
お、「ニューディール」というのは、トランプの札の配り直しと
いう意味であり、契約の結び直しを意味するのです。
「金・ドル本位制」というのは、いうまでもなく、ブレトン・
ウッズ体制のことをいうのです。この「金・ドル本位制」とルー
ズベルトが実施した金本位制とはどこが違うのでしょうか。その
どちらにもケインズがからんでいるからです。
もともとケインズは国の命を受けて、ルーズベルトの指南役と
して、ドルの突出を抑えるべく乗り込んだのです。既に基軸通貨
としてのポンドの命脈は尽きてはいましたが、ブレトン・ウッズ
会議では、ひとつの提案をもって臨んだのです。
その提案とは、新たに「国際決算同盟」を作り、その通貨単位
として、「バンコールを創設する」というものです。しかし、こ
れに対して米国の代表であるハリー・デクスター・ホワイトは、
基軸通貨はドルであることを前提に、IMF(国際通貨基金)を
いわばその分身として設立することを主張し、圧倒的な国力を背
景に押し切ったのです。
しかし、基軸通貨としてのドルは中央銀行の間では、金とのリ
ンクを維持する――英国としてはこれを主張して押し通すのが精
一杯であったといえます。これが「金・ドル本位制」です。
ケインズとしては、これによって将来のドルの暴走に歯止めを
かけたわけです。 ・・・・・ ― [金の戦争/05]
≪画像および関連情報≫
●「バンコール」とは何か
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「バンコール」とは、ジョン・メイナード・ケインズによっ
て提案されたものの実現はしなかった国際通貨。第二次世界
大戦までに各国が次々と廃止した金本位制に代わり、金など
30種類の基礎財をベースにして国際的に通用する通貨を発
行するというもの。しかしながらアメリカ合衆国の合意をと
りつけることができず、実際には金の兌換性を維持した米ド
ルを機軸として、ブレトン・ウッズ体制が1971年のニク
ソンショックまで続くことになる。 ――ウィキペディア
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2008年06月13日
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