2023年11月27日

●「岸田政権はなぜ支持率が低いのか」(第6049号)

 自民党が苦しい状況に追い込まれています。それは、11月に
実施された岸田政権に対する世論調査からはじまっています。
 毎日新聞が11月18日〜19日の両日に岸田内閣の世論調査
をやったところ、支持率が21%という史上最低を記録したこと
が判明しました。
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  ◎11月18日〜19日調査
   岸田内閣の支持率 ・・ 21%(4ポイント▲)
   岸田内閣不支持率 ・・ 70%(6ポイント△)
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 歴代政権で支持率21%は、旧民主党・菅直人政権末期の20
11年8月(15%)以来の低い水準です。また、内閣の不支持
率が70%台になるのは、麻生内閣時代の2009年2月の73
%以来のことであり、これは与党としては容易ならざることであ
るといえます。
 かつて岸田文雄氏は、記者団から「なぜ、総理を目指すのか」
と問われ、「日本で一番権力のある政治家であるから」と答えて
います。さらに「総理になれたら、何をするのか」とも聞かれ、
「人事をやりたい」と述べています。
 「権力と人事」──総理を目指す人が、内心そう思っていても
まして記者団に話す言葉ではないと私は思います。しかし、ある
意味において、大変わかりやすい言葉であるともいえます。本音
が出てしまっているからです。少なくとも政治のプロが発言する
言葉ではないと考えます。
 しかし、岸田首相は首尾よく総理にはなれたものの、その「権
力と人事」に失敗しています。まず、側近人事、閣僚人事、副大
陣人事、政務官クラス人事にことごとく失敗しています。
 側近として、岸田首相が最も信頼している木原誠二官房副長官
(当時)を家族の不祥事があるのに辞任させず、かばい続け、そ
して結局解任したことです。その後も岸田首相は、何度も木原氏
と会っています。今回の減税プランの骨子は、木原誠二氏から出
たともいわれています。
 続いて閣僚人事ですが、あまりに多いので忘れてしまいました
が、山際大志郎経済再生相の辞任に続き、寺田稔総務相、秋葉賢
也復興相、それに葉梨法務相が不祥事で次々と辞任に追い込まれ
ています。いずれも首相の決断が遅く、岸田内閣に大きなダメー
ジを与えていることは確かです。
 副大臣、政務官クラスになっても辞任ドミノは続いています。
政府は、9月15日に副大臣26人、政務官28人を起用しまし
たが、10月に山田太郎文部科学政務官、柿沢未途法務副大臣、
そして11月13日には神田憲次財務副大臣が辞任しています。
なぜ辞任したのでしょうか。
 文科省にとっては山田政務官は不倫、法務省にとっては柿沢未
途副大臣は選挙違反、財務省にとっては山田憲次財務副大臣は税
金の滞納・差し押さえを受けたことの発覚です。いずれも、所管
する副大臣や政務官の業務にとっては、あるまじき、絶対許せな
い不祥事で辞任しているのです。
 この3人のうち、神田憲次財務副大臣については、岸田首相は
問答無用と辞任させるべきであったのですが、なぜかいつものよ
うにずるずると決断を遅らせています。なぜ、スパッとクビを切
れなかったのでしょうか。
 それは、税金の滞納に関しては「罪」ではなく、救えるのでは
ないかと考えたからといわれます。それに宏池会が財務省に近い
政治団体であることも影響しています。確かに税金滞納や差し押
さえは罪にはなりませんが、税金を徴収する役目の財務省の副大
臣がきちんと納税せず、差し押さえを受ける──こんなことは絶
対あってはならないことです。もし岸田首相が「何とか救えない
か」と考えたとしたら、岸田首相に総理の資格はありません。
 既に述べているように、宏池会の首相5人のうち池田、宮沢、
「一般消費税」の導入を最初に唱えて断念した大平正芳の3氏が
元大蔵官僚です。岸田首相は銀行員出身でしたが、政権を支える
木原誠二官房副長官(当時)と村井英樹首相補佐官は共に財務省
出身者。また、計8人いる首相秘書官のうち、財務省だけが2人
を送り込んでいます。首相のいとこで宮沢元首相のおいの宮沢洋
一党税制調査会長も大蔵OBです。このため、「岸田首相は財務
省寄り」(閣僚経験者)との見方は根強いものがあるのです。
 もっとも岸田首相は、総理大臣は日本で一番の権力を持つ政治
家であることを生かして、米国の要請に従い、防衛費の増額を国
会などでの審議をしないで決めています。いわゆる「防衛増税」
です。加えて大方の反対があるにもかかわらず、安倍晋三元首相
の国葬についても強引に開催を決めています。さらに、その勢い
に乗って、広島出身の政治家の念願として、「広島サミット」を
開催し、そこにウクライナのゼレンスキー大統領を招くなど、そ
れなりの成果を上げ、支持率を60%程度まで上げています。
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 ◎広島サミットにおける指導力/TBS調査
          評価する ・・ 56%
         評価しない ・・ 26%
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 しかし、そのときでさえ、岸田内閣の支持率は48%と50%
を割っているのです。それは、防衛増税がもたらすものであり、
岸田内閣は増税に対する国民の反発を読み誤っています。もとも
と人気のない内閣といえます。今回の補正予算の成立についても
岸田首相は、国民民主党の玉木代表の要請により、トリガー条項
凍結解除について「討議する」と約束しましたが、おそらく実施
はしないものと思われます。
 なお、私事ですが、本日の東大の医師の判断によって、水抜き
のため、1週間ほど入院します。もし、そうなった場合は、今週
のEJの配信はできないので、ご了承をお願いします。
           ──[物価と中央銀行の役割/059]

≪画像および関連情報≫
 ●「なぜ岸田内閣の支持率が上向かないのか不思議」
  /経団連・十倉雅和会長は政策を評価
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   「なぜ、これで支持率が上向かないのか不思議だ」。
   経団連の十倉雅和会長は20日の会見で、岸田内閣の支持
  率が20%台と低迷する理由を問われたのに対し、「一つ一
  つの施策はいいことをやっている。防衛、GX(脱炭素化)
  原子力、デフレからの完全脱却など、きちっとした政策だと
  私たちは思っている」と述べ、極めて低い支持率に疑問を呈
  した。
   経団連は10月に発表した各政党の政策評価で岸田政権の
  与党、自民党に対し「大変評価している」と最大限の評価を
  与え、政治献金の対象にお墨付きを与えた経緯がある。
   十倉会長は、自民党幹部が「これ以上、何をやればいいの
  か」と悩んでいることも挙げて「大きなストーリーを国民に
  分かってもらう発信の仕方、そういう工夫があれば<とは思
  う」と述べた。最後は「外交でも成果があるのに、それが数
  字に表れないのはどういうことなのか。むしろ皆さんにお聞
  きしたいぐらいだ」と報道陣に逆質問していた。(久原穏)
       https://www.tokyo-np.co.jp/article/291223
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人の意見をよく聞く政治家/岸田首相.jpg
人の意見をよく聞く政治家/岸田首相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物価と中央銀行の役割 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする