2023年11月02日

●「4万円の所得税減税で押し切る」(第6039号)

 岸田首相の所得税の定額減税策の評判が、すこぶる良くないで
す。これに対する世論調査が10月28日〜29日に実施され、
次の結果が出ています。
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     <ANN世論調査/岸田内閣支持李>
      「支持 する」 ・・・ 26・9%
      「支持しない」 ・・・ 51・8%
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 なんと、内閣支持率は26・9%。年内に総選挙が打てる支持
率ではないといえます。その内容については不満があるとはいえ
「減税する」という政策に対する反応としては岸田内閣にとって
最悪の数字といえます。
 所得税の定額減税については、「評価しない」と答えた人が半
数を超え56%、「評価する」は31%。「評価しない」主な理
由については、「政権の人気取りだと思うから」と答えた人が最
も多く41%でした。これらは、岸田内閣にとって、深刻な結果
であると思っています。
 そもそも岸田内閣は、経済政策というものが、分かっていない
と思います。解決しなければならないのは、物価高に対して苦し
んでいる国民の生活を救うことですが、それができていないとい
う不満があります。物価高(インフレ)になる原因には、次の2
つがあります。
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         @総需要拡大による物価高
         Aコストプッシュ型物価高
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 原因の第1は「総需要拡大による物価高」です。
 これは、国民がたくさんのモノやサービスを消費することで、
生ずる物価高です。今回の物価高は、国民の消費は低迷しており
原因はこれではありません。こういうときに減税すると、さらに
それは需要を喚起して、インフレが加速してしまいます。
 しかし、もっと具体的にいうと、日本の個人消費のレベルは、
コロナ禍前の2019年の消費増税で痛めつけられた頃と大差の
ないレベルにあり、個人消費は低迷しています。
 原因の第2は「コストプッシュ型物価高」です。
 これは、ロシアのウクライナ侵攻などによる石油や天然ガスな
どのエネルギーや小麦などの穀物が不足することで起きる物価高
です。これに対応するには、欧米各国がやったように、一時的で
も消費税を下げて対応するのが政策としてはスジです。鈴木財務
相は「買い控えが起きる」と否定しますが、買い控えができない
軽減税率(8%)を対象にしたらどうでしょうか。この8%を0
%にする──これだけでも物価高による国民の苦しみは軽減する
と思います。丸ごとアタマから否定するから「ザイム真理教」と
いわれるのです。財務省は緊縮姿勢に凝り固まっており、真に正
しい経済政策が、打てなくなっています。
 このように、日本政府がやるとしたら、コストプッシュ型物価
高対策ということになりますが、そのさいには、規模が重要にな
ります。なぜなら、日本経済全体の消費不足を解決しなければな
らないからです。この総需要不足は、最低でも10兆円〜15兆
円はあると考えられます。
 実はこの話が出てきたとき、鈴木財務相は「規模ありきではな
い」と牽制しています。そして、4万円/7万円の定額減税の話
が出てくると、今度は宮沢洋一税調会長が「常識的には1年」と
くぎをさしています。とにかく岸田首相が仕切る宏池会は「ザイ
ム真理教」の信者ばかりです。
 所得減税4万円、非課税世帯7万円給付案ということは、減税
・給付金規模は5兆円規模ということになります。この程度の減
税規模であるならば、非課税世帯への給付にとどめるなどの工夫
が必要です。所得税の定額減税なら、そのインパクトは弱いし、
どうしても「恒久減税」の話になることは、過去の橋本内閣の失
敗を学習すればわかることです。
 ここで、政権の支持率が30%台に落ちるということが何を意
味するかを考える必要があります。これについて、日本経済新聞
は、次のように書いています。日本経済新聞の岸田内閣の支持率
は「支持する/33%/支持しない59%」です。
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 過去の政権と比較して33%の内閣支持率はどのような意味を
持つのか。内閣支持率は調査主体により手法が異なる。日本経済
新聞は回答が不明確だった場合に「お気持ちに近いのはどちらで
すか」と重ねて聞く。一度しか聞かない場合に比べて、支持率も
不支持率も高くなる前提がある。過去の政権の場合は30%台半
ばに差し掛かると、運営に安定さを欠くことが多かった。
        ──2023年10月31日付、日本経済新聞
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 30%に落ち込むと、第1次安倍内閣、福田内閣、麻生内閣は
いずれも力を失い、国政選挙で敗北するなどして、退陣に追い込
まれています。前内閣の菅内閣については、コロナ禍中に東京オ
リンピックを開催した2021年7月に34%を記録し、地元で
ある横浜市長選挙で敗れています。これによって9月の自民党総
裁選挙への出馬を断念しています。
 これらの内閣に比べると、岸田内閣は2022年12月にいっ
たん35%に落ちているものの、その後、次元の異なる少子化対
策、G7広島サミットなど外交案件などで成果を上げ、4月には
支持率を50%台に戻しています。これは、きわめて珍しい例で
あるといえます。
 岸田首相は頑固なところがあります。もはや1年1回限りの4
万円定額減税を何が何でもやるはずです。年内選挙はないと思わ
れますが、仮に年内に選挙があっても、自公政権が勝つと考えら
れます。現在の野党では自公政権には勝てないと思います。
           ──[物価と中央銀行の役割/049]

≪画像および関連情報≫
 ●「減税ウソメガネ」岸田政権の支持率が急落/ついに
  「崖っぷち」に追い込まれた
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   これで年内の解散総選挙はなくなったのではないか。29
  日に公表された日経新聞とテレビ東京の共同調査を見てそう
  思った。内閣支持率が33%と、前回比で9ポイントも低下
  して政権発足以来最低になったばかりでなく、自民党の政党
  支持率も32%と同6ポイントも低下したからだ。
   しかも26日に開かれた政府与党政策懇談会で、ひとり当
  たり4万円の所得税・住民税の減税と、非課税所得世帯の7
  万円給付の方針が示されたばかり。これらは岸田文雄首相が
  所信表明演説で謳った「国民への還元」を実現するものだが
  同調査によれば58%がこの経済方針に「期待しない」と回
  答。付け焼刃的なその内容に、国民は不満なのだ。
   国民が鬱屈した原因はそればかりではない。IMFは20
  23年の日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界4位にな
  るとの予想を発表した。円安ドル高が一因であるが、その円
  安を誘導したのがアベノミクスを受けて日銀が行ったゼロ金
  利政策だった。
   ゼロ金利によって投資を誘導して経済を拡大し、その果実
  が富裕層から低所得層に徐々に届くトリクルダウン理論を安
  倍政権は主張したが、その果実はとうとう国民全員にはいき
  わたらなかった。そして個人資産の伸びは鈍化した。日米の
  個人金融資産を2000年から2020年まで比較すると、
  アメリカでは3倍になったのに対して日本の伸びはせいぜい
  1・4%倍で、大きく差が付いたが、その差は政策の失敗に
  よって「はぎ取られた果実」と言えるのではないか。
          https://gendai.media/articles/-/118471
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ANN世論調査/岸田内閣支持率.jpg
ANN世論調査/岸田内閣支持率
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 物価と中央銀行の役割 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする