あったといえます。前半の2日間は米国のFRBのFOMC、後
半は日銀の日銀政策決定会合です。
FOMCが今回利下げを行わないことは予測していた通りだっ
たのですが、FOMC参加者による2024年末の政策金利の見
通しが、次のように引き上げられています。
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中央値で5・1%(前回から0・5%引き上げ)
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米政策金利の高止まりです。これによって米市場参加者の「利
下げシナリオ」に狂いが生じてきています。投資家は、現在、高
金利長期化への備えを急いでいます。
日銀は、当初この金融政策決定会合で、マイナス金利を撤廃す
るのではないかといわれていましたが、政策の現状維持を決めて
います。目標の消費者物価指数は、少なくとも9月までは目標の
インフレ目標2%を超えていますが、日銀は、賃金上昇を伴う形
での2%の物価安定目標の達成にはなお至っていないとして、物
価目標の実現に向けていまの金融緩和策を粘り強く続ける必要が
あると判断したようです。
植田日銀総は、これについて22日の記者会見で、次のように
発言しています。
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現状、目標の持続的安定な達成を見通せる状況には至っておら
ず、粘り強く金融緩和を続ける必要がある。実現が見通せる状況
になれば、政策の修正を検討することになるが、現時点では経済
物価をめぐる不確実性はきわめて高く政策修正の時期や具体的な
対応について到底決め打ちはできない。
──植田日銀総裁/NHK
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以下、記者団による主な質問と、植田日銀総裁の一問一答につ
いて、次のようにまとめます。
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記者:今後の「物価の見通し」について
植田:7月の展望レポートでは、2023年度と2024年度の
物価見通しについて、上振れリスクの方が大きいと判断した。
先行きの物価を巡っては、為替相場や資源価格の動向だけでな
く、内外の経済動向や、企業の賃金・価格設定行動に関する不
確実性も極めて高いと認識している。
記者:長期金利が若干上昇しているので、固定金利の住宅ローン
金利が上昇するが・・・。
植田:ただ、その上昇幅も限定的で、固定金利で借りてる人の比
率もそれほど高くないのが現状であり、マクロ的な影響は限定
的と考える。今後、住宅ローン金利が上昇を続けていくのかど
うかは、経済物価情勢およびそれを受けた日銀の政策の動きに
大きく影響される。そうしたなかで目標に達するという見通し
が立っておらず、現状維持ということで大きく動くということ
は今の時点で申し上げられる状況ではない。
記者:実質賃金がプラスにならないことについては?
植田:実質賃金の上昇率がマイナスのままでプラスに転じないこ
とは非常に心配している。実質所得が低下する中で家計にイン
フレが負担になっている。
記者:世界経済の現状について、どう考えるか。
植田:アメリカ経済は、少しソフトランディングの期待が高まっ
た。FOMCやパウエル議長の記者会見でもあったように、ど
んどん金利を上げていくということではないが高くなった金利
を高いまま維持していくという姿勢が見られている。アメリカ
経済は若干強めだが、一方でその他の国を見ると、中国やヨー
ロッパのように少し弱めの所もある。全体として将来に向けて
のリスク要因ではあるものの、今回の政策決定に強い影響を及
ぼしたわけではない。
記者:YCC=長短金利操作やマイナス金利政策を終了する条件
をどう考えるか。
植田:YCCに関して現在のフォワードガイダンスで約束されて
いるのは、YCCという枠組みを目標達成の見通しが立つまで
維持するということだ。長期金利については7月に実施したよ
うな修正、あるいは枠組みの柔軟化ということをYCCの全体
の枠組みを維持した中で実施した。短期金利については、全体
の見通しが達成されるまでは、マイナス金利でいくという認識
でいる。
記者:為替の動向をどのようにとらえているか。
植田:為替の動向は、将来の経済動向や物価動向にいろいろな形
で影響を及ぼす。したがって、われわれの物価見通しにも影響
を及ぼすものであるという観点から、常に注視している。為替
市場の動向だけでなく、経済物価への影響について政府とも緊
密な連絡を取りながら注視してまいりたいと常に考えている。
記者:金利上昇についてはどうか。
植田:今後、仮に本格的に金利を上げていく、あるいは金利が上
がっていくという局面になった場合、それが展望されるような
局面ではしっかりと点検したうえで金利を上げていかないとい
けないというふうに思っている。現状は7月との比較でいえば
わずかな金利上昇で、まだはっきりと確認できる段階ではない
が、インフレ期待の上昇の中での動きなのでそれほど心配する
動きではない。 https://onl.bz/MhAmCJS
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しかし、これによって、「1ドル=150円」台が確実に迫り
150円前後での攻防が続くことになります。29日の東京債券
市場では、長期金利(10年物国債利回り)が上昇し、年0・7
70%と約10年ぶりの高水準になっています。米国の利上げが
長引くとの見方に反応したものであると思われます。
──[物価と中央銀行の役割/030]
≪画像および関連情報≫
●金融市場の早期利上げ観測に水を差した日銀総裁記者会見
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9月22日の金融政策決定会合で、日本銀行は大方の予想
通りに政策維持を決めた。ただし、金融市場の関心は、会合
での決定よりも会合後の総裁記者会見での発言に向けられて
いた。2週間前の読売新聞のインタビューで、植田総裁が、
年内にも政策修正の判断ができるようになる可能性はゼロで
はない」と発言したことを受けて、日本銀行の政策姿勢が変
化し、マイナス金利解除の実施時期が早くなる、との見方が
金融市場で強まったためだ。
インタビュー記事での発言の真意に関する総裁への質問は
さっそく記者会見の冒頭で幹事社によって出された。それに
対する植田総裁の説明は、「政策姿勢に変化はない」ことを
示すものであった。金融市場の受け止めについては「コメン
トを控える」としたが、「物価目標の達成がなお見通せない
現状では、金融緩和を粘り強く続けていく」、「先行きの経
済、物価の不確実性は高く政策は決め打ちできない」、「政
策は毎回の会合で判断していく」といった総裁の説明は、マ
イナス金利解除が近づいているとの金融市場の一部の見方と
かなり距離があるものだ。金融市場では、インタビュー記事
を受けて、マイナス金利解除の時期についての見通しをかな
り前倒しする動きが広がったが、これは過剰反応だった可能
性が高い。 https://onl.bz/nARdQyA
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9月22日/植田日銀総裁記者会見