0年に設立された中央銀行をメンバーとする組織であり、スイス
のバーゼルに本部があります。「BIS」は次の言葉の略字です
が、行名の由来は、第1次世界大戦後のドイツの賠償金支払いを
円滑化する目的で生まれたものです。
─────────────────────────────
◎BIS/国際決済銀行
Bank for International Settlements
─────────────────────────────
BISには、日本を含め63カ国・地域の中央銀行が加盟して
おり、日本銀行は1994年9月以降、理事会のメンバーを務め
てきています。
そのBISが「今回の世界インフレはしぶとい可能性がある」
と指摘し、警鐘を鳴らしています。これについて、6月28日付
の日本経済新聞は次のように報道しています。
─────────────────────────────
BISは、インフレ抑制を優先課題として、中銀に対して「最
大のリスクは早すぎる勝利宣言だ」と金融引き締めの継続を訴え
る。これまで世界の主要中銀は利上げを繰り返してきたが、足元
では米連邦準備理事会(FRB)が11会合ぶりに利上げを見送
るなど政策判断には差も出始めた。
もっとも、急激な利上げの長期化は金融システムを不安定にさ
せかねない。BISの分析によると、過去の金融引き締め局面で
は高水準の債務や急激なインフレ、住宅価格の急騰を伴う場合に
「銀行に深刻なストレスを引き起こしてきた」。
具体的に利上げ開始から3年以内に銀行危機が発生する確率は
急激なインフレの場合で25%、住宅価格の高騰では35%との
推定を示した。各国政府が巨額の財政措置に動いた新型コロナウ
イルス禍以降は、これらの条件をすべて満たしている。
──2023年6月28日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
日銀をのぞく世界の中央銀行が利上げを続けていますが、経済
規模で加重平均して計算した「世界の政策金利」は6%台に近づ
いています。加重平均とは、平均値を出す項目それぞれの重みを
加味して割り出す平均値のことですが、この「6%」という数字
に注目すべきです。なぜなら、データを遡れる2008年1月以
降で最高であるからです。
SMBC日興証券によると、6月26日時点で「5・9%」で
あり、リーマン危機のあった2008年9月の「5・7%」を超
えています。問題はそれでもインフレは収まらないことです。
今回のインフレでもうひとつわからないことがあります。これ
について、FRBのパウエル議長は次のように表現しています。
─────────────────────────────
1年以上にわたって政策金利を引き上げてきたにもかかわらず
直近の四半期のインフレ率や経済成長率が予想を上回っている。
政策は(経済を)十分に制約していないのかもしれない。
──パウエル米FRB議長
──2023年6月29日付、朝日新聞デジタル
─────────────────────────────
要するに、米FRBの利上げは、銀行に対しては大きなプレッ
シャーを与えているものの、雇用や経済成長に対しては、大きな
ダメージを与えていないのです。銀行に関しては、FRBが6月
28日に公表した大手行のストレステスト(健全性審査)では、
不況下でも必要な資本を確保できるとの試算を示していますが、
地銀破綻などを踏まえ、銀行の財務をより強固にする方針です。
この問題に関しては、1年前の2022年7月27日に高橋洋
一氏が、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」 に出演。米
FRBの利上げについて次のやり取りをしているので、その部分
を要約してご紹介します。
─────────────────────────────
高橋:日本も同じはずなのですが、アメリカの中央銀行では、雇
用とインフレの両方を見るのです。雇用の方は失業率で見るの
ですが、現在は4%を切っているくらいだから、これは大丈夫
である。ただし、「インフレだけが高い」という状況です。
新行:失業率は低いけれど、インフレ率だけが高い。(中略)
高橋:2期連続で四半期のGDPが下がると「リセッション」と
いう言い方をします。景気後退ですね。そうなる確率は高いで
すが、リセッションになっても消費や設備投資はプラスなので
そういう意味ではあまり大したリセッションではありません。
新行:消費や設備投資がプラスだから。
高橋:雇用を悪くするまでの利上げはしない。FRBとして、そ
れだけは確実です。この話で「日本も利上げが」と言うけれど
利上げすると日本は雇用が悪くなってしまう状況です。これに
よってアメリカ経済が「ガタン」と落ちるということはありま
せん。雇用は確保されているので。
新行:消費や設備投資がプラスだから。
高橋:どうしてアメリカがそんなにいいかというと、先に経済対
策を打っているからです。GDPギャップが埋まっている。埋
まっているなかでインフレ率が高くなりやすいのだけれど、そ
の上でサプライチェーンの話など、いろいろな要因があるから
多少インフレになっているというレベルです。
新行:日本の場合は?
高橋:常に失業率とインフレ率の両方を見るのです。失業率を悪
化させないレベルで「金利を引き締めない」ということは正し
いのですが、日本で直ちにやると、失業率が上がります。日本
でやってはいけません。
──2022年7月27日/ニッポン放送
「新行市佳のOK! Cozy up!」
─────────────────────────────
──[世界インフレと日本経済/038]
≪画像および関連情報≫
●5%も利上げしたのに米国景気はなぜ腰折れしないのか
みずほ証券チーフMエコノミスト/上野奏也氏
───────────────────────────
米国のリセッション(景気後退)入り観測には根強いもの
がある。景気先行指数は、14カ月連続で前月比マイナスに
なっている。この有名な合成指数の発表元である米調査会社
コンファレンス・ボードのエコノミストは最近のインタビュ
ーで、「金利上昇と高インフレを受け、今後数カ月以内にリ
セッション入りするだろう」と明言。今年4〜6月期から、
10〜12月期までは小幅なマイナス成長と予測した。
その一方で、「米国はリセッション入りを回避できる」と
いう強気の見方も、一定の支持を得ている。米国のエコノミ
ストを対象とするサーベイでは、リセッション入りの確率は
6割台になることが多い。逆に言えば、それを「ソフトラン
ディング(軟着陸)」と呼ぶかどうかは別にして、リセッシ
ョン入りが回避されるケースが3割台の確率で見込まれてい
るということである。また、筆者のように、リセッション入
りを一応予想しているものの、それは、「リーマン・ショッ
ク」や「コロナショック」に見舞われた後のような「深い」
景気悪化ではなく、「浅い」ものにとどまるだろうと見てい
るエコノミストも、少なからずいる。では、景気が後退した
かどうかは、誰が決めるのか。米国ではNBER(全米経済
研究所)という民間の研究組織が、何人もの重鎮を含む経済
学者たちによるデータに基づいた議論を経た上で判定してい
る。 https://onl.sc/CKxhS2Y
───────────────────────────
世界の政策金利は米金融危機後で最高に