2023年06月22日

●「なぜ、ROEが重視されるのか」(第5979号)

 EJでトヨタの「PBR1倍割れ」のことを書いたのは、6月
15日のことです。そうしたら、16日の日本経済新聞に「PB
R1倍割れトヨタが解消」の記事が出て、6月19日付、日本経
済新聞夕刊の「ニュースぷらす」に「PBR1倍割れ、何が問題
?」という解説記事が掲載されています。日本の株価が、なぜ上
がっているのかが大きな関心を呼んでいるのです。
 「PBR1倍割れ」とは、企業の成長期待の低さを映すもので
日本の時価総額の大きい企業でも低PBRに沈んでいるのです。
誰でも知っている次の10社のうち、実に7社が、PBR1倍割
れになっています。
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                   PBR(倍)
     トヨタ自動車 ・・・・・・・・ 1・10
     三菱UFJフィナンシャルG ・ 0・68
     ソフトバンクG ・・・・・・・ 1・07
     ホンダ ・・・・・・・・・・・ 0・65
     三井住友フィナンシャルG ・・ 0・61
     みずほフィナンシャルG ・・・ 0・58
     パナソニックHD ・・・・・・ 1・07
     ゆうちょ銀行 ・・・・・・・・ 0・41
     住友商事 ・・・・・・・・・・ 0・99
     JR東海 ・・・・・・・・・・ 0・92
           ──2023年6月16日現在
        2023年6月19日付、日本経済新聞/夕刊
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 PBRにPERにEPS──似たような言葉が次々と登場する
のが株の世界です。これに加えて「ROE(自己資本利益率)」
について知っておく必要があります。なぜなら、米国の企業では
ROEの20%超えが当たり前であるのに、日本企業のROEは
10%程度であるからです。
 「ROE(自己資本利益率)」とは何でしょうか。
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        ROE/Return on Equity
    自己資本利益率(株主資本利益率)
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 「R」は利益、「E」は株主資本を表しています。株主資本と
は、自己資本とも呼ばれ、主に株主から集めた資金と利益の蓄積
で構成される企業の総資本の一部です。この自己資本がどれだけ
効率的に儲けを生んでいるかの指標がROEです。
 ROEはどのように計算するのでしょうか。計算式は、次のよ
うになります。
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      ROE=「当期純利益」÷「自己資本」
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 例えば、総資産が100億円で、1億円の当期純利益を上げて
いるA社とB社があります。しかし、A社の自己資本が10億円
B社の自己資本50億円であるので、A社のROEは10%、B
社は2%になります。したがって、A社の方が自己資本を有効に
生かしていることになります。
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              A社      B社
     当期純利益   1億円     1億円
      自己資本  10億円    50億円
       ROE   10%      2%
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 なぜ、ROEが重視されるのかというと、それには理由があり
ます。日本の投資家は、PER(株価収益率)やPBR(株価純
資産倍率)、配当利回り(年間配当÷株価)を投資判断にする傾
向がありますが、外国人投資家は、自分が出した資金で企業がど
れだけ利益を上げるか、すなわち、ROEを重視する傾向がある
といわれます。したがって、高成長企業が配当を行うと、「その
分を事業に投資してもっと利益を上げるように」と注文をつける
株主もあるほど、ROEを重視します。
 ところで、ここにきて、なぜPBRが注目されているかという
と、東証が3月末にPBRが1倍を下回る上場企業に改善を要請
したからです。その結果、何が起きたかというと、上場企業の自
社株買いの増加です。5月に東京証券取引所の上場企業の自社株
買いは約3・2兆円を超え、2004年以来で過去最高になって
います。この資本効率改善に向けた取り組みが市場に好感され、
33年ぶりといわれる株価を支えているのです。
 「自社株買い」とは何でしょうか。
 自社株買いとは、上場企業が既に発行している株式を自分の資
金を使って買い戻すことです。その目的の1つは、株主に対する
利益還元をすることにあります。
 企業は取得した自己株式を消却することで、発行済株式数を減
らすことができます。その結果、一株当たり利益(EPS)や、
自己資本利益率(ROE)など財務指標を改善することができる
のです。また、発行済株式数が減少することで、1株当たりの配
当金の増加などが期待できます。
 この自社株買いをめぐる政府の方針に、投資家が動揺したこと
があります。2021年12月の衆議院予算委員会において、自
社株買いについて質問した議員に対して、岸田首相は、「自社株
買いに関するガイドライン(指針)を策定する可能性」に言及し
ています。役人のペーパーを読んだだけかもしれませんが、需給
悪化を懸念した多くの投資家が動揺したものです。
 東証の大改革の評判は良くないですが、改革以来、上場企業に
対して、いろいろな要請を出しています。そのため、日経平均株
価が上昇していることは確かであり、改革はけっして無駄ではな
かったといえるのではないでしょうか。
          ──[世界インフレと日本経済/031]

≪画像および関連情報≫
 ●自社株買いは株主にどんなメリットがあるのか
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   上場会社は、株主に対してどのような形で利益還元してい
  るのでしょうか。それには大きく分けて2つの方法がありま
  す。1つは配当金、もう1つは自社株買いです。
   配当金や自社株買いに必要な資金は、税引後利益を利用し
  たり、あるいは利益剰余金や資本剰余金などを取り崩して、
  その資金を使うことも可能です。
   ちなみに自社株買いとは、上場会社が自社の株式を市場で
  購入することです。株価操作に悪用されるおそれがあったた
  め、日本では長い間、禁止されていましたが、持ち合い解消
  の受け皿として利用できるように、1994年から消却など
  に限って解禁されています。
   97年にはストックオプション(自社株購入権)について
  も認められ、さらに2001年からは目的を限定しない自社
  株買い(金庫株)が認められるようになっています。それ以
  外にも、自社株買いの使い勝手がいいように、いくつかの改
  革が進められています。
  2001年からは、法定準備金のうち資本金の4分の1を上
  回る分を取り崩して、自社株買いの原資となる剰余金に振り
  替えることができるようになり、さらに03年からは、取締
  役会の決議でも自社株買いができる(それ以前は株主総会で
  の決議が必要だった)ようになっています。
         ──2020年3月28日付、日本経済新聞
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日本の主要上場企業のPBRは欧米企業に見劣りする.jpg
日本の主要上場企業のPBRは欧米企業に見劣りする
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界インフレと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする