2023年06月16日

●「FRBによる利上げ見送りの波紋」(第5975号)

 昨日のEJで「PBR(株価純資産倍率)」の話題を取り上げ
トヨタの「PBR1倍割れ」について言及しましたが、6月14
日付の日本経済新聞に関連記事が掲載されたので、以下に示して
おくことにします。
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◎PBR1倍割れトヨタが解消
 米国株高は13日の日本株式市場にも波及した。日経平均株価
は3日続伸し、約33年ぶりに3万3000円台で終えた。この
日の相場を象徴したのは時価総額で日本最大のトヨタ自動車だっ
た。上昇率は5%を超え、節目となるPBR(株価純資産倍率)
1倍台を回復した。本業の成長力で選別される局面が近づく。
 トヨタの時価総額は13日、時点で35兆円。1日だけで1兆
7000億円ほど増えた。2027年にも電池寿命の長い「全固
体電池」を搭載した電気自動車(EV)を投入することが材料視
された。東海東京調査センターの長田清英チーフストラテジスト
は「自動車業界ではEVなどへの取り組みがそのまま株価のプレ
ミアム(上乗せ分)になる」と指摘する。
         ──2023年6月15日付、日本経済新聞
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 本日は、今回のEJのテーマに関連のある重要なニュースがあ
ります。それは、13〜14日に開催された米FOMCの定例会
合で、利上げを見送り、政策金利の誘導目標を5〜5・25%に
据え置く決定を行ったことです。これについては、毎日新聞の速
報記事をご紹介しておきます。
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◎FRBが利上げ見送り、経済への影響見極め/年内に2回実施
 を示唆
 米連邦準備制度理事会(FRB)は14日、利上げを見送り、
政策金利の誘導目標を5〜5・25%に据え置くと決めた。利上
げの見送りは2022年1月以来11会合ぶり。今年に入り銀行
破綻など利上げの副作用が出ており、経済への影響を見極める。
ただ、賃金上昇など物価上昇(インフレ)圧力は収まっておらず
FRBは年内に2回の追加利上げをすると示唆した。(中略)
 パウエル議長は会合後の会見で、これまでの急激な金融引き締
めの効果や3月以降の銀行破綻が米経済をどの程度減速させるか
見極める必要があると指摘。「追加情報と金融政策への影響を評
価するため、政策金利を維持するのが賢明と判断した」と利上げ
見送りの理由を説明した。
           ──2023年6月15日付、毎日新聞
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 このFRBの利上げ見送りは日本株に大きな影響を与えると考
えられます。ちなみにこの原稿は15日の午後に書いています。
FRBの金利据え置きは、2022年3月のゼロ金利解除以降は
じめてのことで、11回会合ぶりということになります。
 問題は、パウエルFRB議長の経済見通しに関する次の発言で
す。パウエル氏は「23年度内にあと2回分の利上げをする」と
いっています。早速この発言を受けて、今後日米の金利差はさら
に広がるとみて、141円の円安になっています。しかし、日経
平均株価は、円安を好感して3万3485円49銭(終値)で終
わっています。
 米国が目指しているインフレ率は2%ですが、13日に公表さ
れた5月の消費者物価指数(CPI)は、エネルギーと食品をの
ぞくコア指数の伸びが前年同月比で5・3%と高止まりしていま
すし、個人消費支出(PCE)物価指数も前年同月比で4・4%
と、目標よりも2倍以上高いのです。
 日本でも日銀は、植田和男新総裁のもとで2回目となる金融政
策決定会合が、この原稿を書いている6月15日〜16日に開か
れています。しかし、日銀に政策変更の動きはなく、異次元の金
融緩和は、継続される見通しです。
 海外投資家の多くは、FRBの利上げ見送りと日銀の政策変更
なしと読んで、日本株への運用配分を「アンダーウエイト」から
「ニュートラル」ないし「オーバーウエイト」へ引き上げて日本
株を買っています。こういう海外投資家について、豊島&アソシ
エイツ代表の豊島逸夫氏は、自身のコラム「豊島逸夫の金のつぶ
やき」で、次のように述べています。
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 すでに日本株を購入した投資家は、日本株保有の「初体験組」
が多いので、その決断が正しかったのかどうか、不安な心理状態
にいる。そのため、日本株についての好意的な記事をあさるよう
に探している。マーケティング理論でいうところの「認知的不協
和」を最小限に抑えるように行動しているのだ。こうして日本株
の存在感は米国市場で日々、確実に強まっている。
 そうはいっても、危うさも見え隠れする。日本経済や日本株に
関する知識が断片的で、一夜漬けの傾向も目立つからだ。例えば
昨日(6月13日)も経済専門チャンネルの著名な株式専門キャ
スターが「日本株が買われている理由は円安だ。日本は輸出企業
が多いので、円安が朗報なのだ」と説明していた。
            ──「豊島逸夫の金のつぶやき」より
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 日本株について、JPモルガン証券チーフ株式ストラテジスト
の西原里江氏は次のように述べています。
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 日本の構造変化も見逃せない。大きいのがデフレ経済からイン
フレへの移行だ。賃金上昇と物価高の好循環が回りつつある。東
証による資本コスト改革や米中の分断も中長期的に日本株に追い
風だ。日本が変わりつつあるタイミングでウォーレン・バフェッ
ト氏が来日し、日本株への追加投資の可能性を示したのは偶然で
はないだろう。  ──2023年6月15日付、日本経済新聞
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          ──[世界インフレと日本経済/027]

≪画像および関連情報≫
 ●物価上昇率の低下持続でFRBは利上げ見送りへ
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   6月13日に発表された米国消費者物価(CPI)は、総
  合で前年同月比+4・0%(前月比+0・1%)と2年2か
  月ぶりの低水準、食料・エネルギーを除くコアでは前年同月
  比+5・3%(前月比+0・4%)と1年3か月ぶりの低水
  準となった。依然として物価目標である+2%を大きく上回
  っており、米連邦準備制度理事会(FRB)によっては許容
  できない水準にある。しかしこの物価統計は、昨年3月以来
  の連続した利上げが経済、物価に与える影響を見極める猶予
  をFRBに与えるものとなったと言えるだろう。6月14日
  の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、昨年3月以来の
  利上げ局面で初めて利上げが見送られる可能性が高い。7月
  のFOMCで利上げが再開される可能性は、現時点では50
  %程度と見ておきたい。いずれにせよ、利上げは最終局面に
  ある。
   消費者物価指数全体の34・6%もの高いウエイトを持つ
  住居費は、2か月連続で低下したとはいえ、5月に前年同月
  比+8%高い上昇率を維持している。住居費を除くとコアC
  PIは前年同月比+3・4%である。
   ただし、住宅費は物価全体に遅行する傾向が強い。他方、
  消費者物価の住宅費に先行する傾向がある、米不動産情報サ
  イトのジローの数字によると、5月の家賃の前年同月比上昇
  率は+4・8%と、昨年2月の+17%から既に大きく低下
  している。住宅費の上昇率がこの先低下傾向を強めていけば
  コアCPIの上昇率は、低下のペースが高まることになるだ
  ろう。       ──NRI/木内登英氏のコラムより
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利上げ見送りを決めるFRBパウエル議長
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 世界インフレと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする