要記事が掲載されています。
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◎半導体「ブロック化」鮮明
日本が先端半導体の製造装置の輸出規制に踏み出す。中国への
対抗姿勢を強める米国の要請で足並みをそろえる。オランダも同
調する。経済のブロック化が鮮明になり、企業は戦略の見直しを
迫られる。分断のコストが成長の重荷になる懸念も強まる。
──2023年4月1日付、日本経済新聞
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このニュースは日本にとって衝撃的です。遂に恐れていたこと
が始まった感があります。ところで、半導体製造装置とは、その
名の示す通り半導体を製造するための装置です。
半導体の製造工程はきわめて複雑で、たくさんの工程がありま
す。半導体の材料を洗浄する工程、フォトリソグラフィという回
路のパターンを転写する工程、検査をする工程、組み立てる工程
などたくさんの工程があります。
これを止められると、半導体メーカーは半導体を生産できなく
なります。米国の要請によるもので、事実上中国を対象に、日本
では、外国為替法を改正し、半導体の製造に必要な「洗浄」「成
膜」「露光」「検査」などの各工程において、先端品向け23項
目を今年の7月から規制対象に加えることになります。
なぜ、これがなぜ日本にとって衝撃的かというと、中国は、半
導体製造装置の重要なお得意様であるからです。規制するという
ことは、それだけ、売れなくなるということであり、売上高の減
少を招くということになるからです。
当然中国は反発するでしょうし、報復措置も十分あると考えら
れます。早速中国外務省の毛寧副報道局長は、次のような反発の
コメントを出しています。
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世界のサプライチェーン(供給網)の安定を破壊する行為で
ある。 ──中国外務省毛寧副報道局長
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米国が半導体製造装置の輸出規制にまで、関係国と組んで規制
を行うのは、事態を深刻に認識している証拠です。ところで、世
界の半導体製造装置の市場はどうなっており、日本はどのような
位置を占めているのでしょうか。
2021年度の半導体装置の世界シェアを以下に示すと、次の
ようになります。
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1位:アプライドマテリアルス ・・・・・ 22・5%
2位:ASМL ・・・・・・・・・・・・ 20・5%
3位:東京エレクトロン ・・・・・・・・ 17・0%
4位:ラムリサーチ ・・・・・・・・・・ 14・2%
5位:KLA ・・・・・・・・・・・・・ 6・7%
6位:ASМパシフィックテクノロジー ・ 3・3%
7位:SCREENホールディングス ・・ 2・7%
8位:日立製作所(旧日立ハイテク) ・・ 2・1%
9位:キャノン1 ・・・・・・・・・・・ 2・7%
10位:KOKUSAI ・・・・・・・・・ 1・5%
https://bit.ly/4307Pur
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売上高ベースで評価した場合、トップに位置しているのは、米
国のアプライドマテリアルス、2位のオランダのフィリップスが
出自のASМL、3位は日本の東京エレクトロン、4位は米国の
ラムリサーチです。これら4社は、「半導体製造装置の四天王」
といわれ、この業界に君臨しています。今回はこれら4社が組ん
で輸出規制を行うので、中国への輸出は事実上困難になり、中国
は大きなダメージを受けます。
ところで、東京エレクトロンはどういう企業でしょうか。
東京エレクトロンは、売上高海外比率80%超、世界の拠点数
76のわが国を代表する超一流のグローバル企業です。TBSの
出資によって設立され、フラットパネルディスプレイ製造装置に
も強みを持ちます。
KLAというのは、1975年に設立された米国に本拠を置く
大手半導体製造装置メーカーです。ウエハ検査・計測装置に強み
を持つ企業です。ASМパシフィックテクノロジーは、オランダ
に本拠を置く半導体製造装置メーカーです。成膜工程に強い企業
です。
7位から10位までは日本企業です。SCREENホールディ
ングスは、ウェハ洗浄に強みをもつ洗浄装置大手です。日立製作
所はプロセス製造装置に強みを持っています。キヤノンは、19
37年に創業された日本を代表する光学・OA機器メーカーで、
カメラ、複写機、プリンターなどの分野で業界首位級です。半導
体露光装置では、オランダのASМL社に差をつけられつつある
ものの、ニコンと並び露光装置大手のメーカーです。
KOKUSAIは、日立国際電気の半導体事業が2018年6
月に分社して誕生した製造装置メーカーです。半導体回路周辺の
絶縁膜等の成膜装置に強みを持ちます。このように、多くの日本
企業が半導体製造装置にかかわっています。
この半導体製造装置の輸出規制について、西村康稔経済産業相
は、「最先端品向けに品目を絞っており、影響は限定的である」
と説明しているが、日本企業にとって、かなりの影響を受けるこ
とが必至の情勢です。どうしてこんな楽観的なことがいえるので
しょうか。2022年に10月の中国に対する輸出規制の影響で
10〜12月期の中国向け輸出額は、日本が前年同期比16%減
ですが、米国にいたっては50%減で、アプライドマテリアルス
とASМLの順位が入れ替わっています。それでも止めないとい
けないところに日米輸出規制の難しさがあります。
──[メタバースと日本経済/054]
≪画像および関連情報≫
●日本政府、半導体製造装置を輸出管理対象に
米が対中規制要請
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[東京/31日ロイター]経済産業省は31日、軍事転用の
防止を目的に、半導体製造装置を輸出管理対象に追加すると
発表した。中国の台頭を懸念する米国は、製造装置に強い日
本とオランダに輸出規制の強化を求めていた。日本は,管理
対象の仕向け地を中国に限らず全地域とし、高性能装置の輸
出を事前許可制とする。日本メーカー10数社が影響を受け
る。外為法の省令を改正し、輸出には経産大臣の事前許可が
必要になる。パブリックコメントの募集を経て5月に公布、
7月の施行を予定している。対象の仕向け地は全地域だが、
輸出管理体制の状況などを踏まえ米国など42カ国向けは包
括許可に、中国を含めその他向けは輸出契約1件ごとの個別
許可とする。
東京エレクトロンが手掛けるエッチング装置やニコンが手
掛ける露光装置など6分類23品目が対象で、回路線幅14
ナノ前後よりも微細な先端半導体を製造できる高性能装置が
規制される。経産省によると、10数社が影響を受ける。
米国は昨年10月、中国が軍事転用する恐れがあるとして
半導体の輸出規制を強化。先端半導体を作るのに必要な技術
や製造装置の輸出に広く網をかけた。製造装置メーカー最大
手の米アプライドマテリアルなどが影響を受ける中、米国は
有力な製造装置メーカーを抱える日本とオランダにも足並み
をそろえるよう求めていた。 https://bit.ly/3Gxzzgr
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半導体製造装置メーカーの売上高ランキング(四半期ベース)