2023年03月01日

●「一向に動かないTACコンピュータ」(第5916号)

 世界最初のコンピュータである米国のENIACは、内部構造
に10進数を使うなど、コンピュータとしては問題のあるマシン
ではありましたが、その開発の様子を伝える米国「ニューズウィ
ーク」/1946年2月号の記事を見て、世界中でコンピュータ
開発競争が巻き起こったのです。
 日本においてもそれは同様で、数学者で、大阪帝大工学部精密
工学科教授だった城憲三(以下、敬称略)は、「ニューズウィー
ク」の記事を読んで、コンピュータの具体的な研究開発に着手し
ます。そして、1950年にENIACの追試実験装置を試作し
2進数による本格的な真空管コンピュータの開発に着手したもの
の、その後トランジスタコンピュータの商用機導入が決定された
ので、開発を中止しています。
 真空管式コンピュータの第2弾は、「TAC」といわれるプロ
ジェクトです。「TAC」は次の言葉の頭文字です。
─────────────────────────────
        ◎TAC
         Tokyo Automatic Computer
─────────────────────────────
 TACは、その名称から、東京大学のコンピュータということ
になっていますが、これには東芝が参加しています。そもそもE
NIACに強い興味を持ったのは、東芝の真空管業務に携わって
いた三田繁で、東大の山下英男などと共に真空管による論理回路
や、ウィリアムス管(ブラウン管式メモリ)などの研究を行って
いたのです。彼らは、ノイマンのENIACの改革レポートなど
を入手して、1951年にコンピュータの組み立てをはじめてい
ます。この世代は東芝が主導権を持っていたので「東芝TAC」
と呼ばれています。
 その同じ1951年に、文部省(文部科学省)科学研究費によ
る電子計算機研究班が立ち上げられ、東大の山下英夫が班長に就
任し、文部省に申請し、当時のお金で1011万円という国内と
しては、巨額の予算がついたのです。ちなみに東大の山下英夫に
ついて、ウィキペディアでは、次の紹介があります。
─────────────────────────────
◎山下英夫
 東大教授。当時理系一の頭脳と呼ばれていた。早くから電子計
算機の重要性を見抜いており、パンチカードに代わるシステム開
発を1940年に着手、1947年にデジタル動作の「山下式画
線統計機」を完成させていた。    https://bit.ly/41tIVT5
                    ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 この1011万円という巨額予算は、当時大蔵省の相澤英之主
計官の力が大きかったといわれます。相澤英之氏は、2019年
に亡くなっていますが、彼は2人の息子に先立たれた経済企画庁
官房長だった1969年、女優の司葉子と再婚しており、多くの
人に知られています。
 このように国の資金が投入されたことによって、このTACプ
ロジェクトは国策プロジェクトに変身しています。その目的は、
日本初のコンピュータの開発です。東大と東芝の役割分担は、東
芝がハードウェア、東大がソフトウェアを担当することになって
います。東大の総括は、雨宮綾夫東京大学教授です。雨宮教授は
音響分析、分子積分表など分子構造に関する研究や電子計算機の
開発に尽力し、東大のTAC開発に関わっています。また、原子
力専門委員会委員なども務め、放射線高分子研究所の設立にも貢
献しています。
 しかし、このプロジェクトは難航を極めるのです。半年も経つ
と、東芝だけではハードウェアが作れないことがはっきりし、東
芝は、東大に協力を求めてきます。そのとき、東京大学が、東芝
に派遣したのは、村田健郎という人物です。村田健郎について、
ウィキペディアは次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 鳥取県生まれ。工学部航空原動機工学科卒業・理学部数学科再
入学などの学歴を経て、前述の時期には、数学科大学院に再入学
(同大最終履歴は助教授)。大学院二年の時「コンピュータ開発
のため、雨宮先生が若い数学者を探しているが、村田は工学部出
身だな。アメリカではフォン・ノイマンがコンピュータをやって
いて、コンピュータ開発にも工学者が必要だ」と言われ、雨宮の
元に移動した。当記事の主要な出典の一つ「日本人がコンピュー
ターを作った!」は、村田がTAC関連のインタビューで答えて
いるもの。             https://bit.ly/41tIVT5
                    ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 当初は、2年かけて研究し、技術レベルを上げるのが目標だっ
たのですが、文部省と大蔵省にさらに予算を出させるため、「2
年で実用化する」というノルマを課せられたといいます。
 しかし、開発陣が危惧した通り、開発はきわめて難航し、試作
機は一向に動かなかったのです。その難航要因は次の通りです。
─────────────────────────────
@ウィリアムス管が設計通りの性能を出せず不安定だった。これ
 は最後まで尾を引いたという。主記憶装置について、水銀遅延
 線でなくウィリアムス管を選んだ理由は、村田いわく、「今と
 なっては誰の考えか、わからない」。東芝が当時作ったウィリ
 アムス管は、アメリカが国家計画で作り、アメリカ国立標準局
 (今のアメリカ国立標準研究所)が評価した、RCA社製のブ
 ラウン管より優れていたという。
A動作周波数の目標を200KHzと高く設定した。
B論理回路がうまく動かなかった。  https://bit.ly/41tIVT5
─────────────────────────────
 しかし、事実上の国家プロジェクトであるTACは、年数を重
ねても、なかなか動かなかったのです。
           ──[メタバースと日本経済/032]

≪画像および関連情報≫
 ●日本初の計数形電子計算機/TAC
  ───────────────────────────
   米国製コンピューターが8時間かけてできない計算を2時
  間で完了できる「TAC」を開発。現在のコンピューター産
  業の礎を築く。
   世界初のコンピューター「ENIAC」は、1945(昭
  和20)年に米軍の弾道計算用に開発され、18000本の
  真空管が使用された。このニュースは1946(昭和21)
  年2月号の『Newsweek』に掲載された。
   マツダ研究所(現:研究開発センター)の三田繁は、この
  記事からコンピューターについて考え始めていた。演算回路
  や制御回路の開発を行い基礎データの収集を始め、1951
  (昭和26)年には文部省初の研究費による「電子計算機製
  造の研究」へと発展し、東京大学(以下:東大)と共同で、
  「TAC」開発がスタートした。
   当初は実験機の開発を目指し、ハードを当社がソフトを東
  大が担当し、実用に可能な大型コンピューターを2年間で製
  造する計画だった。
   ハード製作では、計算機用の高信頼性部品がなく、ラジオ
  用真空管を桁違いの高信頼性製品に開発した。この他、コン
  ピューターの心臓部であるブラウン管メモリーの開発、ブラ
  ウン管蛍光面の物性的均一性、電子ビームの太さ、ビーム駆
  動特性の安定性の確保など開発は困難を極めた。
                  https://bit.ly/3IYWJ0A
  ───────────────────────────
TAC.jpg
TAC


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2023年03月02日

●「日本初のコンピュータ/FUJIC」(第5917号)

 巨額な予算を獲得し、華々しくスタートを切った国家プロジェ
クト「TAC」はなかなか動き出さなかったのです。これとは別
に、たった一人で自らの仕事を能率的に進めるために、コンピュ
ータの開発に取り組んだ人物がいます。岡崎文次氏(1914〜
1998)です。
 岡崎氏は、1949年当時、富士写真フィルム小田原工場に勤
務し、レンズ設計課長を務めていたのです。1948年のことで
す。岡崎氏は『科学朝日』に掲載されていたIBMのコンピュー
タ「SSEC」の記事を読み、機械による即時の大量計算が現実
になったことを悟っています。なお、SSECとは、IBMが開
発した電気機械式計算機のことです。SSECは、次の英語の頭
文字をとったものです。
─────────────────────────────
    ◎SSEC
     Selective Sequence Electronic Calculator
─────────────────────────────
 岡崎文次氏の仕事はカメラレンズの設計です。レンズの設計に
は複雑な計算が必要で、とくに高級レンズになると、計算だけで
数カ月もかかってしまいます。とくに必要な三角関数の計算では
数十人の人間が数表などで計算に取り組むことになるので、とて
も効率が悪かったのです。
 海外のコンピュータを使えば問題は解決できる──岡崎氏はそ
う考えたものの、当時コンピュータは世界に数台しかなく、購入
は不可能。岡崎氏は、自分で作るしかないと考えたのです。
 幸い岡崎氏は、数学が難しいことで有名な第八高等学校(旧制
・後の名古屋大学教養部)の出身で、数学には強く、コンピュー
タの理屈はわかっていたので、会社に対して、コンピュータ開発
の必要性を説く次の提案書を提出したのです。
─────────────────────────────
      「レンズ設計の自動的方法について」
                 ──岡崎文次
─────────────────────────────
 この提案書は認められ、研究予算として、会社から20万円が
支給されたのです。ENIACの開発成功の約3年後、1949
年3月のことです。
 このとき、富士写真フィルムとしては、岡崎氏がまさか一人で
コンピュータを開発しようとしているとは考えていなかったと思
います。しかし、提案書の内容はきわめて秀逸であったので、研
究予算をつけたものと思われます。
 研究予算がついても岡崎氏は、あくまで自分1人で海外から資
料を集め、自分の本業以外の時間を使って、一人でコツコツとコ
ンピュータを組み立てていったといいます。その開発状況につい
てウィキペディアは次のように紹介しています。
─────────────────────────────
 岡崎は研究・開発作業を業務時間には行わず、本来の仕事の合
間や休暇日を使った。開発の際、モデルにした機種は特になかっ
た。まず、海外の雑誌記事や論文を収集したが、当時は文献がま
だ数少なかったため、かえって調査に余計な時間が出なかった。
 大阪大学の城憲三研究室から文献の一覧表を送ってもらったり
進駐軍が作ったCIE図書館で文献を撮影して読んだりしたとい
う。部品は神田須田町の露店で購入。経費もまとめて高額で請求
すると会社が驚くため、できるだけ安く小刻みに申請していた。
 半年に数十万円ほどだったという。手伝ってもらったのは女性
計算手一人だけで、一人開発のため、意見調整で時間を取られる
こともなかった。社内ではよくも悪くも、さっぱり注目されず、
かえって余計なプレッシャーがかからなかった。
       https://bit.ly/3KJuXXe  ──ウィキペディア
─────────────────────────────
 この開発のいきさつは、ノーベル物理賞受賞者の中村修二氏が
自身が務めていた日亜化学工業において、青色発光ダイオードを
開発したいきさつとよく似ていると思います。当時の社長(現社
長はその子息)に、中村修二氏は、青色発光ダイオード開発の意
義を説き、米国留学とわずかな研究開発費を受け取り、ほとんど
一人で青色発光ダイオードの開発に成功しています。
 岡崎文次氏が手掛けたコンピュータがどのようなコンピュータ
かについては、明日のEJで述べることにしますが、このマシン
は1956年に3月に完成し、「FUJIC」と名付けられたの
です。この時点で国家プロジェクトの「TAC」はまだ動いてい
なかったので、「FUJIC」が日本最初のコンピュータの栄誉
を担うことになります。しかし、このことを、どのくらいの人が
知っているでしょうか。
 このことについて、角川アスキー総合研究所の遠藤諭氏は、次
のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 さて、このFUJICだが、日本のコンピュータの歴史におい
てどんな位置づけにあるのかを調べてみることにした。と、すぐ
に不思議な位置づけにあることがわかった。日本初の栄誉ととも
にコンピュータ史上に燦然と輝いていておかしくはないし、少な
くともコンピュータに関わる人たちの間では周知の機械となって
いて当然なのに、なぜかFUJICは国産コンピュータの初期の
状況を伝える文献を見ても前面に出てくることが少ない。歴史の
片隅に埋没してしまいそうでさえある。
 この不当な歴史的評価は、どんな理由からなのか。それはおそ
らく、ほぼ同じ時期の開発プロジェクトが国家予算を使った公の
ものであったのに対して、FUJICが一企業の一部署で細々と
作り上げられたものであったからなのだろう。けれども、ほかの
コンピュータがなかなか動かない中で、FUJICが確実に稼働
していたのは事実なのである。    https://bit.ly/3IE4Qyf
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/033]

≪画像および関連情報≫
 ●コンピュータ開発史概要と資料保存状況について
  ───────────────────────────
   コンピュータの研究開発は欧米においては第二次世界大戦
  中に急速に進展した米国のペンシルバニア大学で弾道計算を
  主目的として、真空管18000本を使用したコンピュータ
  ENIACが1943年から開発され、1945年に完成し
  稼動を開始したが、軍事目的であったため、終戦の翌年19
  46年に始めて公表された。これが世界最初のコンピュータ
  とされているが、プログラムは外部制御方式で内蔵方式では
  なかった。
   1949年にはプログラム内蔵方式としては始めてのコン
  ピュータEDSACが、英国ケンブリッジ大学で開発され、
  以降はこの方式のコンピュータが、<表2・1>に示すよう
  に次々と開発された(3)。1948年のトランジスタの発
  明以降は、トランジスタ式コンピュータの研究開発が進み、
  1950年代後半にはその実用化が行われた。
   日本では戦前および戦時中に計算機械の研究は行われてき
  たが、コンピュータ(電子計算機)の研究開発は終戦後開始
  された。1950年前後に大阪大学、富士写真フィルムおよ
  び東京大学で、真空管式コンピュータの開発がほとんど時を
  同じくして開始された。大阪大学の城憲三は「ニューズウィ
  ーク」1946年2月号のEDSACの紹介記事を見て、コ
  ンピュータの具体的な研究開発を開始した(4)。
                  https://bit.ly/3mfv0Qs
  ───────────────────────────
FUJIC.jpg
FUJIC
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2023年03月03日

●「FUJICはどういうマシンか」( 第5918号)

 国家プロジェクトの「TAC」と富士写真フィルムの「FUJ
IC」──次の完成時期を見る限り、日本初のコンピュータの栄
誉に輝くのは「FUJIC」です。ここで完成時期とは、マシン
が正常に作動した時期のことです。
─────────────────────────────
       ◎FUJIC
        着手時期 ・・ 1949年
        完成時期 ・・ 1956年
       ◎TAC
        着手時期 ・・ 1951年
        完成時期 ・・ 1959年
─────────────────────────────
 しかし、日本初のコンピュータが富士写真フイルムの「FUJ
IC」であることをほとんどの日本人が知らないし、システムの
業界でもそれは同様で、知っている人はわずかです。
 それは、ネットでも同じことで、どのように検索しても「FU
JIC」が日本初のコンピュータであることを伝える記事はごく
少数でしかないのです。東芝のサイトにいたっては、「TAC」
のことを次のように紹介しています。
─────────────────────────────
       日本初の計数形電子計算機/TAC
─────────────────────────────
 これは、巨額の予算を取得した国家プロジェクトの「TAC」
が、1企業の1部署で、たった1人で取り組み、非常に少ない予
算で、国家プロジェクトよりも、早くコンピュータを稼働させた
「FUJIC」を国が素直に認めていない証拠です。
 なお、FUJIC開発のすべてについては、開発者の岡崎文次
氏のことを伝える次の著書を読んでいただきたいと思います。
─────────────────────────────
                   遠藤 諭著
     新装版『計算機屋かく戦えり』/アスキー
─────────────────────────────
 それでは、FUJICとはどういうコンピュータであったので
しょうか。少し専門的な説明になることをお許しください。
 第1に、現在のCPUに当たる「論理回路」をどのように作っ
ているかです。
 現在のようにICがない時代なので、「フリップフロップ」と
いわれる論理回路のために、真空管は2極管約500本、3極管
など約1200本、合計1700本の真空管が使われています。
ENIACは1万8000本、EDSACが3000本であった
ことを考えると、非常に少ない真空管でできています。
 フリップフロップは、1ビットのデータを記憶する電子回路の
ことです。「オン」と「オフ」、「0」と「1」の2つの状態を
とりうる回路です。外部から1ビットの信号を与えることで、2
つの状態を切り換えることができます。このフリップフロップを
組み合わせて、2進数の数値を回路上に記憶したり、読み出した
りできるうえ、2進数の加減算を行うことができます。
 第2に、「メインメモリ」をどのように作っているかです。
 真空管の信用度が極めて低い(すぐ切れるなど)ので、「水銀
遅延管」を使っています。これについては、岡崎文次氏自身の解
説を引用します。
─────────────────────────────
 真空管は信頼性が低いわけです。当時、高速なブラウン管メモ
リを使うという手もありましたけど、これはもっと不安定。そこ
で水銀を使った超音波ディレーラインを使いました。音は水銀の
中を1000分の1秒で約1・5メートル進みます。そこで、た
とえば、100万分の1秒の間に何回か音を出したり止めたりす
ると、水銀中に音のあるなしで模様が描けるんです。その、音の
“ある”“なし”が、2進数の0と1に対応する。音波が水銀タ
ンクの端まで行くと、すぐさま同じ音波を送り出す。すると、同
じ模様が再び描かれる。この繰り返しによって模様は描き続けら
れる、つまりデータが保持されるというわけです。記憶できる容
量は1語33ビット扱いで255語でした。  ──岡崎文次氏
                  https://bit.ly/3kBNYQS
─────────────────────────────
 第3に、プログラム方式についてです。
 プログラム内蔵方式で、プログラムは3アドレス式の機械語で
す。用意されている命令は、加減乗除、移動、ジャンプ、入力、
出力、停止など17種類です。
 第4は、入力機器です。カードリーダーに16進数でコーディ
ングし、カード入力のコマンドは「そのまま格納」「2進数にし
て格納」「指定した番地から実行」の3種類です。
 第4は、「出力機器」です。既製品の電動タイプライターを流
用しています。レミントンランドの、手打ち用の一般タイプライ
ターを使い、キーの一つ一つを機械的に針金で引っ張る方式を採
用しています。
 ハードウェアの構造については以上です。ほとんど1人で作っ
たコンピュータとしては、非常によくできています。FUJIC
の完成で、レンズの設計の効率化は達成されたかについて岡崎氏
に聞くと、次の答えが返ってきました。
─────────────────────────────
 設計速度は人手の1000〜2000倍ぐらいあがりました。
労働組合などは、FUJICの完成で、計算担当者が仕事にあぶ
れるのではと懸念していたようですが、それは杞憂に終わりまし
た。                    ──岡崎文次氏
─────────────────────────────
 真空管の時代であっても、FUJICやTACのような立派な
コンピュータを開発する力を日本は持っています。「ものづくり
日本」は現代においても生きている私は信じます。
           ──[メタバースと日本経済/034]

≪画像および関連情報≫
 ●FUJIC/日本最初のコンピュータを一人で創り上げた男
  ──岡崎文次
  ───────────────────────────
   日本最初のコンピュータは、すでにブラウン管に文字を表
  示していたし、輸入品のタイプライターのキーを針金で下か
  ら引っ張る、信じられないようなギミックで文字を印刷して
  いた。岡崎氏が生まれてはじめて引いた図面から作り上げた
  というカードリーダは光学式の読み取りで、穴の位置から、
  フォトセルまでは曲げたガラス棒で光を導いていた。いうま
  でもなく、これは光ファイバーと同じカラクリである。直径
  100ミリ、長さ1450ミリの超音波ディレーラインのタ
  ンクも、数字だけ、言葉だけではそれほどでもない装置だが
  これを一から作り上げることが容易でないことはひと目でわ
  かるような代物である。
   岡崎氏はこれら各部機構を手作りするとともに、当時最大
  のネックだった真空管の安定性を、「数を抑えること」「作
  動させる電圧をギリギリまで下げること」「接点をハンダ付
  けしてしまうこと」という3つの方策で克服したのだった。
  これらの方法はどれも誰もが思いつきそうで思いつかない、
  いかにも岡崎氏らしいあっけらかんとした方法ではないか。
  特に真空管の数を減らすことに関しては、これも一言で片付
  けてしまいがちだが、きわめて緻密なハードウェア的、ソフ
  トウェア的な取り組みが必要となる。そこに平然とアプロー
  チしてやってのけたのが、岡崎氏のFUJIC開発であると
  いえるだろう。
   コンピュータは、高度な回路設計とそれを機械として実現
  するための技術が、バランスよく提供されることではじめて
  動くものだった。コンピュータは、頭でっかちでも、腕力だ
  けでも、決して動くことはないということでもある。
                  https://bit.ly/3Zq2vhP
  ───────────────────────────
インタビューを受ける岡崎文次氏.jpg
インタビューを受ける岡崎文次氏
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2023年03月06日

●「第3極の位置づけを変えた米国」(第5919号)

 なぜ、突然コンピュータの話になったのかというと、日本初の
コンピュータが、国家プロジェクトである「TAC」ではなく、
富士写真フィルムという一企業の一部門に所属するたった1人の
エンジニアが、わずかな予算で組み立てた「FUJIC」であっ
たという事実を知っていただきたかったからです。なぜなら、そ
の事実を知っている日本人が非常に少ないからです。
 FUJICの完成時期は1956年です。世界初のコンピュー
タの「ENIAC」の完成からわずか10年後のことです。この
年の7月に発行された『経済白書』は日本の経済の状況について
次のように書いています。
─────────────────────────────
          もはや戦後ではない
                ──1956年「経済白書」
─────────────────────────────
 敗戦で疲弊した日本経済は1950年の朝鮮戦争の特需景気を
きっかけとして回復し、戦前の水準を上回るほどになっていたの
です。白書では、日本経済は復興の段階を過ぎ、成長の原動力を
技術革新を求める段階に入っていると書いています。当時の日本
は先進国から大きく遅れていた電子技術の壁を超える勢いという
ものがあったのです。
 しかし、現在の日本はどうでしょうか。国に勢いというものが
ありません。2023年3月3日付の朝日新聞には、次のような
ショッキングな記事が掲載されています。
─────────────────────────────
◎先端技術 中国が米国圧倒
 オーストラリアのシンクタンク、豪戦略政策研究所/ASPI
は2日、経済や社会、安全保障などの基盤となる先端技術の国別
ランキングを公表した。8割以上の項目で中国が1位で、ASP
Iは中国が、「これまでの認識以上に多くの分野で先を行ってい
る」と指摘した。  ──2023年3月3日付の朝日新聞より
                  https://bit.ly/3y9007g
─────────────────────────────
 この記事において、中国と米国以外の国で5位以内に入った項
目数は次の通りです。
─────────────────────────────
        英国・インド ・・ 29
            韓国 ・・ 20
           ドイツ ・・ 17
       オーストラリア ・・  9
          イタリア ・・  7
           イラン ・・  6
        カナダ・日本 ・・  4
─────────────────────────────
 日本について、東大先端科学技術研究センターの井形彬・特任
講師(経済安全保障)は、「2軍でも3軍でもなく4軍との結果
は衝撃。守るべき技術がなくなっているということだ。資産や技
術の『集中と選択』を改めて考えるべきだ」と述べています。
 このところ米国の中国に対する姿勢が一段と厳しくなっている
ように感じます。それは、米連邦議会下院を共和党が制したこと
にも関係があります。
 米連邦議会下院の外交委員会は、3月1日、中国発の動画共有
アプリ「ティックトック」の米国内での一般利用を禁ずる法案を
可決しています。その採決は「賛成24/反対16}だったので
す。これまでは、政府機関などの利用の禁止であったものが、一
般利用の禁止であり、影響はきわめて大きなものがあります。
 しかし、この法案が成立するには、下院本会議での可決と上院
の審議・可決が必要であり、成立するかどうかは、現時点ではわ
からないものの、ティックトックの一般利用が制限されると、米
国国内に止まらず、日本をはじめとする西側同盟国にも大きな影
響を及ぼすことになります。
 どうしてこうなったかというと、ロシアによるウクライナ侵攻
によって、米国の中国に対する位置づけが変化したからです。ウ
クライナ侵攻前は、世界は、米国を中心とする自由体制(西側)
と、ロシアなどをはじめとする強権体制(東側)、そして、その
中間に位置し、西側との貿易、投資を通じて経済大国になりつつ
ある中国とインドなどの第3極が存在していたのです。
 西側諸国としては、その第3極をどのように位置づけるか、自
国の発展のカギを握っているといえます。その対応については、
次の3つが考えられます。
─────────────────────────────
         @敵国として位置づける
         A 警戒が必要な第3極
         B警戒が必要ない第3極
─────────────────────────────
 米国と米国企業は、ロシアのウクライナ侵攻前までは、中国を
Bの「警戒が必要ない第3極」として位置づけていたのです。少
なくとも米民主党、バイデン政権はそうです。だからこそ、アッ
プルは、最先端の主力生産拠点を中国の「アイフォーンシティ」
に長年かけて築いてきたのです。
 しかし、ウクライナ危機が起きると、米国は中国の位置づけを
BからA「警戒が必要な第3極」に切り替えて、バイデン政権は
「半導体支援法」を成立させるとともに、「人工知能(AI)と
スーパーコンピュータ」向けの半導体技術の中国への輸出禁止を
打ち出しています。
 これによって、日本を含めた中国とのビジネス関係の深い国々
は、早急な見直しと、対応を迫られています。前トランプ政権は
中国を@の「敵国」とみなし、中国の経済弱体化に向けて、無秩
序に中国製品に追加関税をかけましたが、この関税はバイデン政
権でも撤廃されていないのです。
           ──[メタバースと日本経済/035]

≪画像および関連情報≫
 ●米中新冷戦下の世界とは?
  ───────────────────────────
   第二次世界大戦後の世界は、米国を盟主とする自由民主主
  義陣営とソビエト連邦(ソ連)を盟主とする社会主義陣営に
  分断された世界だった。それが1990年前後に米国を盟主
  とする自由民主主義陣営の勝利で終結すると、世界一の経済
  力・軍事力・情報力・科学技術力を有する米国が唯一の超大
  国として、国際秩序の在り方を決めるパクス・アメリカーナ
  の時代に入った。そして世界経済はひとつに統合されてグロ
  ーバリゼーションが加速することとなった。
   それから30年余りを経たいま、パクス・アメリカーナの
  世界を脅かす国が出現した。グローバリゼーションで経済力
  を飛躍的に向上させた中国である。中国の国内総生産(GD
  P)はおよそ17・5兆ドルと米国経済の4分の3の規模に
  達し、世界第2位の経済大国となった。購買力でみた国際ド
  ルではおよそ27兆ドルと米国の1・2倍に達している。軍
  事面においても米国を脅かす存在となりつつある。世界各国
  の軍事力に関する評価を公表している、グローバル・ファイ
  ヤーパワーによれば、第1位は米国、第2位はロシア、そし
  て中国は第3位となっている。安全保障を考える上でカギを
  握る情報戦においても、中国は北斗衛星導航系統という独自
  の衛星測位システムを整え、米国がGPSを使う情報戦にお
  いても対抗できる体制を築こうとしている。
                  https://bit.ly/3YeQavq
  ───────────────────────────
ティックトックの一般利用の禁止?.jpg
ティックトックの一般利用の禁止?
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2023年03月07日

●「ビヨンド2ナノ/達成は可能か」(第5920号)

 2021年のことです。この頃からコロナ禍が拡大・深刻化し
自動車メーカーの生産ラインが、半導体不足のため、一時的にス
トップしたりする事態が起きるようになり、それが日本経済にも
深刻なダメージを与えつつあったのです。
 2021年5月、自民党は「半導体戦略推進議員連盟」を立ち
上げています。鉄鋼、電力、輸送などインフラ関連でも半導体の
需要はうなぎ上りに増えており、世界の先端技術に追いつくため
には「オールジャパン」で取り組まざるを得ないという認識が醸
成されてきたからです。
 この議連で事務局長を務める衆院議員の関芳弘氏は、その設立
狙いについて次のように述べています。
─────────────────────────────
 世界中で半導体が不足しており、自動車などの最終製品を作る
業界が困っている。まずはそれを解消する必要がある。加えて、
日本の劣勢を挽回するチャンスを今迎えている。半導体の世界で
は、微細化に代わる将来技術の研究が進んでおり、ゲームチェン
ジが起きようとしている。日本が各国と同じスタートラインに立
つことができ、半導体生産で復活を狙えるタイミングだ。
 もう一つは経済安全保障の観点。世界のトップの国々において
は、今後、AI(人工知能)や量子コンピューター、5Gなどの
通信システムが競争力の根源になる。それらに深く関わってくる
半導体については、西側諸国、特にアメリカとしっかりと組んで
作り上げておかないといけない。
 こうした流れを考えると、民間に任せるだけでなく政府の後押
しがいる。アメリカ、ヨーロッパともに半導体産業の支援に動い
ている。日本も同じ西側諸国の共同体として予算を確保すべき。
そこで議連は、官民合わせて10年で10兆円規模の投資が半導
体産業には必要だと提言した。    https://bit.ly/3JawZi2
─────────────────────────────
 とくに重要なのは「経済安全保障の観点」です。ロシアによる
ウクライナ侵攻により、米国は第3極の中心的存在である中国を
「警戒が必要ない第3極」から「警戒が必要な第3極」に位置づ
けを変えています。
 2022年8月9日、米バイデン大統領は、半導体の生産や研
究開発に527億ドル(約7兆5000億円)を超える補助金を
投ずる「CHIPS法」に署名し、法案を成立させています。中
国に対抗する狙いがあり、バイデン大統領は「この分野で再び世
界をリードする」と宣言しています。
 このCHIPS法の支援を受ける半導体企業の目標は、ロジッ
ク半導体の製作であり、「ビヨンド2ナノ」を目指します。この
法律成立と同時に、今後10年間、28ナノ以降の半導体製造に
かかわる中国向け投資の禁止を発表しています。
 日本もこれを受けて、CHIPS法の成立の翌日の2022年
8月10日に、「ラピダス/Rapidus」 株式会社を設立していま
す。トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC
ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社が総額73億
円を出資しています。代表取締役社長は、ウエスタンデジタル日
本法人の社長を務めた小池淳義氏、取締役会長に東京エレクトロ
ン前社長の東哲郎氏が就任しています。まさに、オールジャパン
による半導体生産の復活の狼煙の立ち上げです。
 経済産業省は、5月に合意した日米の半導体協力基本原則に基
づいた両国間での共同研究を見据え、次世代半導体研究を行う組
織として「最先端半導体技術センター(LSTC)」を設立する
ことを決定しています。これにより研究開発拠点としてのLST
C、将来的な量産製造拠点としてのラピダスの両輪で、日本の次
世代半導体量産基盤の構築を目指すことになります。
 2022年10月3日、第210回国会において、岸田首相は
所信表明演説において、次のように述べています。
─────────────────────────────
 産業のコメと言われ、大きな経済効果、雇用創出が見込まれ、
経済安全保障の要でもある半導体は、今後特に力を入れていく分
野です。熊本に誘致したTSMCの半導体工場は、地域に10年
間で4兆円を超える経済効果と、7000人を超える雇用を生む
と試算されています。我が国だけでも、10年間で10兆円増が
必要とも言われるこの分野に、官民の投資を集めていきます。
 今回の総合経済対策では、中核となる日米共同での次世代半導
体の技術開発・量産化や、ビヨンド5Gの研究開発など、最先端
の技術開発強化を進めます。 ──岸田首相の所信表明演説から
─────────────────────────────
 EUも負けていません。EUは、2022年11月末に半導体
の開発支援のために、公的資金110億ユーロを投資します。そ
の他、公共と民間合わせて430億ユーロ(約6兆円)を投資す
ることが決まり、12月の閣僚理事会で承認されています。
 実現するのは2023年になりますが、インテル、STマイク
ロエレクトロニクス、インフィニオン、グローバルファンドリー
ズなどの半導体メーカーは、この補助金を当てにして、EUで新
工場の建設を計画しています。
 ところで、「先端半導体」とは、ロジック半導体といい、スマ
ホなどにも使われていて、電子機器の頭脳としての役割を果たし
ています。スマホやデータセンター向けでは、回路の幅が5ナノ
メートルから16ナノメートル程度の製品が主流であり、この分
野では、台湾のTSMCや韓国のサムソン、米国のインテルが先
行しており、日本は大きく遅れています。
 「ナノ」というのは、1ミリメートルの100万分の1が「ナ
ノメートル」であり、数字が低ければ低いほど、微細な回路とい
うことになります。「ビヨンド2ナノ」とは、2ナノ以下の微細
化を目指すという意味であり、このレベルの半導体は、TSMC
とサムソンが競って製作しています。半導体については、もっと
詳しく知る必要があります。
           ──[メタバースと日本経済/036]

≪画像および関連情報≫
 ●経産省主導の半導体会社「ラピダス」成功の鍵を孫正義社長
  が握るワケ
  ───────────────────────────
   次世代半導体の新会社「ラピダス」が話題だ。メディアで
  は「失敗するに決まっている」「経産省主導でうまくいくわ
  けがない」と早くも非難轟々だ。確かに今からTSMCやサ
  ムスン電子と戦うにはあまりに遅すぎる感は否めない。
   日本政府がラピダスを立ち上げる背景には安全保障の問題
  も大きい。中国情勢によって、台湾に半導体を依存するのは
  あまりに不安だ。そこで日本でも半導体を製造できるような
  環境を整備するというのは理解できる。ただ、現状、半導体
  ビジネスは中国市場なくしては回らない。
   先週、ハワイ・マウイ島で「SnapdragonSummit」が開
  催されたが、基調講演は午後1時からと中国市場でオンライ
  ン視聴しやすい時間帯が設定されていた。今週、東京・五反
  田でメディアテックの記者説明会が開催されたが、フラグシ
  ップスマートフォン向けチップで、メディアテックのシェア
  が大幅に伸びている点がアピールされた。メディアテックと
  いえばエントリーやミドルクラス向けというイメージが強い
  が、着々とフラグシップ向けにもシェアを拡大しているのだ。
   中国メーカーには、OPPOやシャオミ、Vitoといっ
  た世界的に販売台数を稼ぐメーカーが多い。自社でチップを
  手がけるアップルやサムスン電子以外に、チップを買っても
  らうには、中国メーカーへの販売は避けて通れないのだ。
                  https://bit.ly/3SNSs3q
  ───────────────────────────
ビヨンド2ナノ.jpg
ビヨンド2ナノ
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2023年03月08日

●「半導体について少し詳しくなろう」(第5921号)

 半導体のことを少し詳しく知る必要があります。半導体とは、
そもそも物質としては鉱石なのです。地球上には天然で存在する
ものだけでも90種類ほどの元素があります。しかしそのうち半
導体として使える素材はごくわずかです。
 半導体とは、本来は、金属などの電気を通す「導体」とガラス
などの電気を通さない「絶縁体」の中間の性質をもった物質の名
前ですが、半導体を使ったトランジスタやダイオードなどの単体
素子や、それらを集積した集積回路などの「半導体デバイス」も
慣習的に半導体と呼んでいます。
 半導体は、物質といっても次の2つに分けることができます。
─────────────────────────────
       @単元素を材料としている半導体
       A複数の元素を材料とする半導体
─────────────────────────────
 @の単元素を材料としている半導体の代表は、シリコンやゲル
マニュウムです。1950年代頃までは主としてゲルマニュウム
とシリコンが使われていたのです。
 Aの複数の元素を材料とする半導体では、純粋な結晶(真性半
導体)では、絶縁体に近いので、リンやヒ素などの不純物を添加
し、電気抵抗を低下させて導体に変化させる必要があります。複
数の元素を材料にした半導体では、高周波デバイスや光半導体と
して多く使われています。
 トランジスタが発明されたのは1947年末のことですが、こ
のときは、ゲルマニュウムが使われました。1955年、当時、
東京通信工業と呼ばれていたソニーは、世界に先駆けて、トラン
ジスタラジオを商品化しています。この頃から日本は半導体の世
界で頭角を現していたのです。
 このときは、ゲルマニュウムが使われましたが、その後の研究
の結果、実用化という点でのシリコンの優位性が確立し、現在で
は半導体(特に集積回路)といえばシリコンが使われています。
 なぜ、半導体の材料としてシリコンが多く使われるのかについ
て述べておきます。
 いくつか理由があります。1つはシリコンが地球上に多く存在
しており、材料として使う物量的な余裕があるということです。
実は、半導体材料に限らず、地球表面で存在するすべての物質で
考えても、2番目に多いのがシリコンです。
 それでは、1番目に多いものは何かというと、それは50%近
くを占める酸素です。シリコンが使われるもうひとつの理由があ
ります。それは、加工のしやすさが上げられます。単に存在する
物質の多さだけで選ばれているのであれば、炭素も比較的豊富に
あるので、多く利用されても良さそうです。しかし、半導体材料
として使う場合の炭素は、加工がしにくいのです。
 半導体のことを短い時間で知る良い方法があります。それは、
次の4つの動画を見ることです。30分足らずで全部見ることが
でき、半導体というものがよくわかります。
─────────────────────────────
       @半導体の話/その1/6:08
           https://bit.ly/3KY2PQu
       A半導体の話/その2/5:55
           https://bit.ly/3ZmdIjg
       B半導体の話/その3/4:54
           https://bit.ly/3ETc8wT
       C半導体の話/その4/8:16
           https://bit.ly/3EX1lSH
─────────────────────────────
 1950年末のことです。1つのチップ上に複数の素子を搭載
する「集積回路(IC)」が発明されたのです。集積回路という
のは、半導体の表面に、微細かつ複雑な電子回路を封入した電子
部品のことです。この集積回路の行く末を示すものとなったのが
「ムーアの法則」と呼ばれるものです。
 「ムーアの法則」は、インテルの創業者の1人であるゴードン
・ムーア氏が、前職のフェアチャイルドセミコンダクター在籍時
に、エレクトロニクスマガジン誌の35周年記念号に寄稿した論
文のことで、なんとか法則といわれるような科学の法則のような
厳密なものではなく、一種の経験則に近いものです。その論文に
おいてゴードン・ムーア氏は次のように書いています。
─────────────────────────────
 部品あたりのコストが最小になるような複雑さは、毎年およそ
2倍の割合で増大してきた。短期的には、この増加率が上昇しな
いまでも現状を維持することは確実である。より長期的には、増
加率はやや不確実であるとはいえ、少なくとも今後10年間は、
ほぼ一定の率を保てないと信ずべき理由はない。すなわち、19
75年までには、最小コストで得られる集積回路の部品数は、6
万5000に達するであろう。    ──ゴードン・ムーア氏
                  https://bit.ly/3JeDznB
─────────────────────────────
 添付ファイルをご覧ください。これは、ムーアの法則がどの程
度実現されているかを示しています。DRAM、NANDフラッ
シュメモリはムーアの法則の線とほぼ一致しています。プロセッ
サ(CPU)については、予測を若干下回っています。しかし、
2年で2倍のトレンドは維持しています。
 このグラフは、日清紡マイクロデバイス株式会社のサイトに掲
載されている吉田典生氏のレポートに出ていたものです。驚くべ
きは、「Wafer Scale Engine」というディープラーニング(深層
学習)に特化したプロセッサです。これは、ムーアの法則の予測
とほぼ同じトランジスタ数をメモリ以外の製品で実現しているか
らです。通常のプロセッサの約100倍のトランジスタ数を、ど
のような手段で実現しているのでしょうか?「それはチップ面積
の最大化である」と吉田典生氏はいっています。
           ──[メタバースと日本経済/037]

≪画像および関連情報≫
 ●Cerebras、85万コアのウェハサイズプロセッサ
  「WSE−2」
  ───────────────────────────
   Cerebras は、2021年4月20日(現地時間)、 ウェ
  ハ面積のほとんどを1つのディープラーニング用プロセッサ
  として動作させる第2世代ウェハスケールプロセッサ「WS
  E−2」(Wafer Scale Engine 2)を発表した。
   同社は、2019年8月に初代のWSEを発表し、16ナ
  ノメートルプロセスで、1・2兆トランジスタを集積した超
  巨大なプロセッサで業界の度肝を抜いたが、WSE−2では
  最新のTSMC7ナノメートルプロセスを採用することで、
  2倍以上となる2・6兆トランジスタを、4万6225平方
  メートルに集積した。
   このプロセッサは幅1ナノメートルのなかに3個のAI処
  理に特化したプロセッサを搭載し、全体として85万コアを
  内蔵。2Dのオンチップメッシュネットワークで結ばれ、イ
  ンターコネクトの総バス幅は220Pbpsにおよぶ
                  https://bit.ly/41Od4wo
 ●グラフ出典/https://bit.ly/3SRnXcX
  ───────────────────────────
ムーアの法則.jpg
ムーアの法則
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2023年03月09日

●「ARMという企業の価値は何か」(第5922号)

 経済産業省主導の半導体製造企業「ラピダス」について、早く
もメディアでは「失敗するに決まっている」という手厳しい声が
上がっています。三菱重工による国産ジェット旅客機進出失敗・
撤退の直後のことでもあり、そういう声が上がってもおかしくな
いといえます。日本は、初期のコンピュータ開発のケースでも見
られるように、こういう国策プロジェクトを成功させるのがあま
り上手ではないからです。
 しかも「ビヨンド2ナノ」という目標は、いくらなんでも高過
ぎるという声もあります。確かに今からTSMCやサムソン電子
と戦うにはあまりにも遅過ぎる感は否めないからです。
 しかし、ロシアによるウクライナ侵攻によって、西側陣営とし
て経済安全保障を強化するという観点もあり、日本として「ラピ
ダス」を何としても成功させる必要があります。それに微細化に
代わる将来技術の開発も進んでおり、後発の日本もTSMCやサ
ムスン電子と同じスタートラインに立てるという考え方もあり、
事業進出に踏み切ったものと思われます。
 実はもうひとつ日本の「ラピダス」には、大きな強みがあるの
です。それは、今回の事業にソフトバンクが出資陣の一角を占め
ていることです。なぜ、ソフトバンクが投資陣に加わっていると
日本が有利なのかというと、ソフトバンクは、傘下に英半導体設
計大手企業「アーム/ARM」を有しているからです。
 ところで、現在、コロナ禍もあって、世界の半導体大手の業績
が一段と悪化しています。2023年1〜3月期は、10社中9
社が前年同期比で減収となっていることを3月4日の日本経済新
聞が伝えています。顧客の在庫調整でスマホ向けが苦戦し、それ
がデータセンター向けにも波及していると考えられます。半導体
大手には、どういう企業があるのかを知る必要もあると思うので
以下にご紹介することにします。
─────────────────────────────
 ◎半導体大手10社売上高増減率(前年同期比)
            22/10〜12  23/1〜3
    マイクロン(米)    ▲47%    ▲51%
  SKハイニックス(韓)   ▲38%    ▲50%
     インテル(米)    ▲32%    ▲40%
   エヌビディア(米)    ▲21%    ▲22%
    クアルコム(米)    ▲12%    ▲18%
   サムスン電子(韓)     ▲8%    ▲15%
       TI(米)     ▲3%    ▲11%
      AMD(米)     16%    ▲10%
     TSMC(台)     27%    ▲ 3%
   ブロードコム(米)     16%      8%
              https://s.nikkei.com/3ZKeRB8
─────────────────────────────
 ソフトバンク傘下のARMは、上記10社の半導体大手企業の
なかには名前はありません。それでは、一体ARMとは何をして
いる企業なのでしょうか。
 ARMに関しては、私自身こんな思い出があります。年月日は
忘れたのですが、ある夜、私はいつもの通り、午後11時からの
WBSを見るため、テレビの前にいたのです。番組冒頭、大江麻
理子キャスターが、「今日は特別のお客様にお越しいただきまし
た」といい、そこに姿を現したのが孫正義ソフトバンク会長だっ
たのです。その日、孫会長は先ほど英国から帰国し、その足でテ
レビ東京のスタジオに駆け付けたといいます。
 孫会長の英国行きの目的は、英国の半導体設計企業であるAR
Mの買収手続きをするためであり、その手続きを完了して帰国し
たタイミングで、WBSへの出演だったようです。
 2016年9月6日、その日は、ソフトバンクグループが、約
240億ポンド(約3・3兆円)でARMを買収した日です。こ
の3・3兆円という金額は日本企業の企業買収の金額として、過
去最高となったのです。
 孫会長の話によると、ARMには何年も前から買収目的で交渉
を重ねてきたのですが、時価総額が高く、なかなか手に入れるこ
とができなかったそうです。しかし、国民投票によって、英国の
EUからのブレグジットが決まると、買収金額がかなり下がった
ようです。孫会長は、そのタイミングを逃さず、買収を決断した
ということを番組で語っていました。
 しかし、携帯電話会社を営むソフトバンクが、なぜ半導体の設
計会社を買収する必要があるのか、そのときは私はよくわからな
かったことは確かです。
 「私はつねに7手先を読んでいる」──ソフトバンクの孫会長
はこういいます。孫会長は、早くから多くの人がつねに使う電子
デバイスが、PCからスマホに移ることを見抜いていたのです。
そのため、孫会長はいち早くアップルのアイフォーンを受け入れ
独占で販売します。アイフォーンを使いたいためにソフトバンク
のユーザーになった人も多くいます。そのため、NTTドコモと
AUは、大きく遅れることになったといえます。
 スマホのユーザーが増えると、スマホに特化した半導体が必要
になり、その設計のできる企業は価値がある──孫会長はそう考
えたのでしょう。このようにARMの買収は、長期的視野に立っ
て決断したものであると孫会長は強調しています。
 ARM日本法人事業開発ディレクターの春田篤志氏は、ARM
の現状を次のように述べています。
─────────────────────────────
 自動運転、拡張現実(AR、VR、MR)、5G、クラウド、
IоTなど新たな技術領域が拡大するいま、どの領域でもCPU
が必要になることを見据えて活動しています。新たな事業領域と
してサーバー、ネットワーク、ハイパフォーマンスコンピューテ
ィングでも存在感を出していくために取り組んでいます。
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/038]

≪画像および関連情報≫
 ●【3.3兆円】ソフトバンクはなぜARMを買収するのか?
  ───────────────────────────
   ソフトバンクグループが2016年7月18日、英半導体
  設計大手のARMを買収すると発表した。9月末までに買収
  を完了させるという。
   買収金額は約3兆3000億円(243億ポンド)。これ
  までにもソフトバンクは、ボーダフォン日本法人で1兆78
  20億円、米スプリントで約1兆8000億円という、日本
  企業としては大規模な買収を行ってきたが、今回の3兆30
  00億円は、それを大きく上回る。日本の企業の買収案件と
  して過去最大となった。
   中国アリババの一部株式売却のほか、フィンランドのスー
  パーセル、日本のガンホー・オイライン・エンターテイメン
  トの株式売却により、約2兆円の資金を調達。こうしてでき
  た手元資金の2兆3000億円に加えて、みずほ銀行から1
  兆円の融資を受けるが、これは、ブリッジローン(つなぎ融
  資)であり、「買収資金は全額確保している」とする孫正義
  社長の発言は、すべて自らの資金で賄うという意味が込めら
  れている。会見では、ARMの経営陣や英国ケンブリッジ本
  社の体制を維持するとともに、英国での雇用を5年間で倍増
  させ、これまで同様に中立性と独立性を維持することも明ら
  かにした。ARMベースのチップは全世界で年間148億個
  も出荷され、スマートフォンに搭載されているプロセッサー
  や、マルチメディアIP、ソフトウエアに至るまでARMの
  技術が活用されている。     https://bit.ly/3JiHb8h
  ───────────────────────────
孫正義ソフトバンク会長.jpg
孫正義ソフトバンク会長
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2023年03月10日

●「7割のデバイスにARMは入っている」(第5923号)

 結局、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発
に取り組んだ新型ロケット「H3」の打ち上げは失敗に終わって
います。2023年3月7日のことです。
 その発射から機体爆破指令を出すまでの様子について、「日経
ビジネス」誌は、次のように書いています。
─────────────────────────────
 7日午前10時37分。種子島宇宙センター(鹿児島県)から
の発射後、飛行は順調そのものだった。発射直後、すぐに訪れる
難所であり、開発陣が最も神経をとがらせていた第1段主エンジ
ン「LE−9」は予定通り燃焼。LE−9の両脇に位置し、固体
燃料を燃やす補助ロケットブースターも発射から116秒後とい
うドンピシャのタイミングで分離された。その後、LE−9もス
ケジュール通りに燃焼を終えお役御免に。1段目と2段目は正常
に分離された。
 ところが直後に管制室は凍り付く。2段目のエンジンが火を噴
かない。着火のデータが送信されてこない事態に「何が起きたか
よく思い出せないが、呆然(ぼうぜん)となった」(岡田氏)。
刻一刻と時が過ぎる中、「液体水素を載せた危険な機体をこのま
ま飛行させることはできない」(JAXA)と判断、機体を破壊
する指令信号を出した。     ──日経ビジネス電子版より
─────────────────────────────
 今回の打ち上げ失敗で深刻なのは、第2段エンジンが着火しな
かったことです。なぜなら、第2段エンジンは、これまでに打ち
上げられているH2Aとほとんど同じ制御システムが使われてい
るからです。H2Aは、2001年の試験機1号機以来、46回
中45回成功しています。
 今回、ロケットの開発陣にとって心配だったのは、1段目のエ
ンジンのLE−9だったのですが、これは今回成功しています。
しかし、絶対に失敗がないと思われていた第2段エンジンが着火
せず、失敗に終わったことは、爆破で機体が失われているだけに
その点検には相当の時間を要すると思われます。
 世界で宇宙開発競争が激化するなか、これ以上の遅れは、日本
の宇宙産業にとって命取りになります。それに三菱重工は、国産
ジェット機進出でも失敗しており、二重の失敗に相当のダメージ
を受けていると思われます。
 ここで話を「ARM」に戻します。ARMは、現在ソフトバン
ク傘下の英国の半導体設計大手企業です。ARMについては、最
新情報があります。2023年3月4日付、日本経済新聞は次の
ように伝えています。
─────────────────────────────
◎アーム、米で単独上場へ/英市場、地盤沈下浮き彫り
【ロンドン=佐竹実】ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英
半導体設計大手アームは3月3日、米国市場への単独上場を目指
すと発表した。英政府はロンドン証券取引所への誘致を続けてき
たが、新規株式公開(IPO)先としてつなぎ留めることができ
なかった。ハイテク分野の雄の米国上場は、欧州連合(EU離脱
後に低迷する英市場の地盤沈下をさらに印象づける。
 アームのレネ・ハース最高経営責任者(CEO)が3日の声明
で、「2023年に米国単独上場を目指すことが最善の道と判断
した」と表明した。米アップルなど世界のハイテク企業が集まる
米ナスダック市場に絞るとみられる。
        ──2023年3月4日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 なぜ、英国の企業であるARMが英国に上場せず、米国に上場
するのでしょうか。昨年の12月にはスナク首相がハースCEO
と会い、ロンドン市場への上場誘致を行っています。この会談に
は、オンラインで孫正義会長も参加しています。
 しかし、英国市場の上場企業の時価総額の合計は、米国市場の
10分の1以下であり、ARMが英国市場への上場のメリットは
ほとんどないといえます。現在のロンドン市場は英国のEU離脱
によって投資家の多くが離れており、株式取引額でオランダのア
ムステルダム市場に抜かれています。やはり、英国のEU離脱は
間違いだったのです。
 ところで、ARMというのはどのような企業なのでしょうか。
 これについては、アーム株式会社の代表取締役社長である内海
弦氏が、2019年12月11日〜13日に、東京ビックサイト
で行われた「SEMICONジャパン/2019」で講演をされ
たときのスピーチの一部を引用します。SEMICONは、世界
を代表するエレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会
のことです。
─────────────────────────────
 世界人口の70パーセントの方たちが使っているデバイスの中
に、私どものマイクロプロセッサが入っています。デバイスとは
何かと言うと、実際には“PC以外の、電子的なものが入ってい
るものすべて”と考えていいと思います。
 実際、年間出荷数としては、200億のデバイスに「ARMプ
ロセッサ」というものが入っておりまして、人口比で言うと1人
3個くらいのプロセッサが、行き渡っているのが実際でございま
す。これは主にスマホで使われています。(中略)
 私どもの場合、総累計の出荷数で言うと1500億個なんです
ね。年間で言うと200億以上の出荷が行われていると。PCな
どは多い多いと言われてますけれども、年間10億未満だと思い
ます。デバイス単体に1つ以上のARMが入っているのを1と数
えていますから、1デバイスに2個以上入っていても1と数えた
うえで、あくまでも半導体のデバイス、パッケージの数で、年間
200億個以上が私どもARMのプロセッサを使って出荷されて
いるのが現状でございます。  ──内海弦ARM株式会社社長
                  https://bit.ly/3YzunPb
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/039]

≪画像および関連情報≫
 ●NVIDIAによるArm買収の破談、その間にRISC-Vの足音が
  ───────────────────────────
   2020年9月にNVIDIAによるARMの買収が発表
  されてから、各国の規制当局が審査を行っていたが、どこも
  厳しい結果になりそうと報道されていた。この暗雲たなびい
  ていたNVIDIAによるソフトバンクグループ傘下のAR
  Mの買収が、ついに取りやめとなった。
   2022年2月8日にNVIDIAとソフトバンクグルー
  プによる契約解消のプレスリリースが出ている。今後はAR
  Mの株式上場を目指すそうである。
   プレスリリース文を読めば、両者の間に対立が生じたわけ
  でなく、依然両者の関係は良好と読める。今後はARMの株
  式上場を目指すそうである。NVIDIAがソフトバンクグ
  ループに支払った先払い金は返金されることなく、ソフトバ
  ンクグループおよびファンドの利益として計上されるとのこ
  とだ。その代わりNVIDIAは20年の間、ARMを使え
  る権利を得たらしい。
   解消に至った理由は、「規制上の大きな課題」と書かれて
  いる。詳しいことは書かれていない。ことここに至って原因
  をあれこれ探っても後の祭りである。しかし、あえて妄想た
  くましく、やじ馬根性で考えるに、主要国の規制当局、そし
  て買収の影響をモロにかぶることになる半導体各社を見渡し
  て、賛成しそうな組織が見当たらなかったのが原因だろう。
                  https://bit.ly/41Vgf5z
  ───────────────────────────
内海弦/アーム株式会社社長.jpg
内海弦/アーム株式会社社長
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2023年03月13日

●「スマホのCPUはどうなっているか」(第5924号)

 ARMの話の続きです。半導体の話なので、少し技術的な話に
なりますが、やさしく説明します。
 「あなたの使っているPCのCPUは何ですか」と普通の人に
聞くと、少し以前では、ほとんどの人が「インテル」と答えたも
のです。「インテル・イン・サイド/インテル入ってる」という
CMが大流行していたこともあり、インテルという企業名を知っ
ている人が多かったからです。
 ところが最近同じ質問をすると、「ライゼン」と答える人が増
えてきています。「ライゼン」は、AMD(アドバンスド・マイ
クロ・デバイセズ)製のCPUです。AMDは、かつてはウイン
ドウズ対応のCPUでは、インテルに次ぐ万年2位を占めている
企業のイメージがあります。「ライゼン」は、将棋の藤井翔太五
冠が購入したというニュースが流れ、一挙にその知名度が高まっ
たといわれます。
 それでは、「スマホのCPUは?」と聞くと、ほとんどの人が
答えられないと思います。スマホもコンピュータですから、CP
Uが入っています。アンドロイドのCPUは次のりです。
─────────────────────────────
        @「コーテックス/Cotex- A7」
        A「コーテックス/Cotex-A35」
        B「コーテックス/Cotex-A72」
─────────────────────────────
 「コーテックス」──聞き慣れない名前だと思いますが、これ
らは、すべてARM系のCPUです。しかし、アイフォーンにつ
いては、アップル社のCPUが搭載されています。アイフォーン
のCPUは世代によって次のようになっています。
─────────────────────────────
       A4/iPad/iPhone 4
       A5/iPhone 4S
       A6/iPhone 5/iPhone 5c
       A8/iPhone 6/iPhone Plus
       A9/iPhone 6S、iPhone 6S Plus
─────────────────────────────
 実は、アイフォーンのCPUも設計はARMなのです。アップ
ル社がARMに設計を委託し、その設計にアップル社が独自の機
能を追加したものです。ARMは設計しかやらない半導体の設計
専門の企業です。こういう設計専門の半導体製造企業を「ファブ
レス」といい、半導体の設計から製造まで手掛けるインテルのよ
うな企業を「ファウンドリ」といいます。台湾のTSMCは製造
に特化した世界最大のシェアを持つファウンドリです。
 スマホのCPUはスペースが小さいので、CPUは、PCとは
異なる設計になっています。クアルコムという米国の携帯電話を
はじめとする移動体通信の通信技術および半導体の設計開発を行
う企業があります。この企業も工場を持たないファブレスですが
世界で最も売上高が高いトップ企業です。
 この米クアルコムが製造する「スナップドラゴン」と呼ばれる
CPUがあります。このCPUには、いくつかのコーテックスと
メモリ、GPUなどが組み合わせられており、さまざまなメーカ
ーのスマホで使われています。このように、システムの動作に必
要なものすべてを一つの半導体に組み合わせたものを「SoC」
(ソック)といいます。ARMは、このSoCの設計に関しても
優れた技術を有しています。
 工場を持たない設計専門のファブレス企業でも、その多くが、
ARMに基本設計を委託しています。この場合、仮にアップルが
ARMに半導体の基本設計を委託し、それに自社独自の仕様の設
計を加えたチップに関しては「アップルのプロセッサ」と呼んで
かまわないそうです。
 それなら、なぜ、ファブレス各社は、ARMに設計を委託する
のでしょうか。それは、ARMが他社にはない優れた技術のノウ
ハウを有しているからです。そのARMの有しているアーキテク
チャとは次の3つです。
─────────────────────────────
     ◎ARMアーキテクチャの特徴
      @低消費電力を目標に設計されている
      ARISCなのにCISC寄りの設計
      B手作業により最適化が可能なCPU
─────────────────────────────
 つまり、ARMの最大の売りは@の「低消費電力の設計」なの
です。現在、ARMの低電力設計は、PCの世界にも広がってき
ています。これについてアーム株式会社の内海弦社長は、講演で
次のように語っています。
─────────────────────────────
 今後どうなるかをもう少しお話していきたいと思います。最近
のニュースでちょっと目立ったもの・・・実はパソコンも、(ス
ライドを指して)これはレノボさんとかが出してきたもので、ウ
インドウズがARMに載りました。
 当然パソコンの中でも電量消費が一番問題で、パソコンで使わ
れて一番嫌だなと思うのはAC−DCのケーブル、結構大きいア
ダプターを持ち歩かざるを得ないんですね。それはなぜかと言う
と、パソコン自体に電気を食うプロセッサが多かったんです。
 じゃあARMを使ったらどうかなということで、メジャーなパ
ソコンメーカーさんがARMプロセッサを徐々に採用するように
なってきました。近々ですと「サーフェス・プロX」というマイ
クロソフトのPCにもARMが使われています。試しに使ってい
ただくと、電池の保ちが明らかに違う。例えば普通のPCは1日
で充電切れになりますけれども、ARMが使われているPCは、
実働数日くらいはそのまま使えるようになります。
                  https://bit.ly/3J8W23C
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/040]

≪画像および関連情報≫
 ●デジタル世界で最も成功を収めているアーキテクチャ
  ───────────────────────────
   ARMアーキテクチャは世界最大規模のコンピューティン
  グ・エコシステムで、極めて重要な役割を果たしています。
  ARMのパートナーは、このアーキテクチャによって、コス
  トを抑えながら、効率のよいセキュアな方法で製品を製作で
  きています。このように、絶えず進歩する多様なエコシステ
  ムの成功に、世界水準のアーキテクチャ設計を提供してきた
  ARMの実績が表れています。
   パートナーはARMのアーキテクチャの仕様のライセンス
  を受け、その仕様に基づいたシリコンチップを製造します。
  ARMベースのチップを搭載した2500億のデバイスを通
  じて、ARMのアーキテクチャは、さまざまな市場とパート
  ナーのイノベーションを推進しています。
   大部分のスマートフォンで採用され、モバイル市場で主流
  となっているARMのアーキテクチャは、その他の多くの分
  野でも活用されています。何百万もの非常にシンプルなIо
  Tデバイスから、高度な機械学習のアプリケーションまで、
  その用途は多岐にわたります。ARMアーキテクチャにより
  さまざまさらに、完全なツールスイートと、世界規模の確か
  なエコシステムのサポートを利用可能です。なレベルでデバ
  イスを開発できます。ARMアーキテクチャは、特定の命令
  が実行された際のハードウェアの動作を指示する一連の規則
  を規定します。つまり、ハードウェアとソフトウェアのやり
  取りを定義する契約書のような役割を果たし
                  https://bit.ly/3mCQS8y
  ───────────────────────────
CPUとSoC.jpg
CPUとSoC
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2023年03月14日

●「ARMは軽薄短小型のビジネス」(第5925号)

 話を整理します。EJは、今回のテーマで、日本経済の復活の
カギを探っています。既に述べているように、2023年は日本
にとって経済復活の年になる可能性があります。好循環が働くと
日本は経済成長率でG7のトップになるといわれています。
 現在、欧米はかなり激しいインフレに襲われ、なかなか脱出で
きないでいます。米FRBのパウエル議長は、縮小させるとみら
れていた利上げ幅を再加速させることを示唆しています。インフ
レが克服できないからです。
 もちろん日本もインフレですが、そのレベルは欧米ほど深刻で
はなく、政府の政策次第で何とか抑えられるレベルにあります。
これは日銀の金融政策と無関係ではありません。それに加えて、
2023年は日本にとって経済を活性化させる要素が多い年とい
えます。そのひとつに製造業の国内回帰の傾向があります。とく
に、半導体の生産を国内でやろうという動きが加速しています。
 TSMCの熊本工場の建設、「ビヨンド2ナノ」を目指す日の
丸半導体メーカー「ラピダス」の新設など、半導体を中心に動き
が急ピッチになっています。なお、「ラピダス」は、北海道・千
歳市に工場を建設することに決まっています。
 ところで、なぜ、TSMCは、熊本に工場を新設することに同
意したのでしょうか。
 それは、TSMCの最大のサプライヤーがソニーであるからで
す。そしてTSMCの最大の顧客がアップルであり、TSMC、
ソニー、アップルの3社の関係によって、TSMCが熊本に工場
を作ることになったのです。アップルのクックCEOは、早速熊
本工場を視察に訪れています。
 さて、次世代半導体製造企業「ラピダス」は、果たして成功で
きるでしょうか。
 その道が険しいことは確かですが、「ラピダス」にとって有利
なことは、ソフトバンクが投資陣に加わっていることです。なぜ
有利かというと、ソフトバンクは傘下に半導体設計大手のARM
を有しているからです。そのARMが現在、半導体の世界におい
て、革命を起こしつつあるのです。そのことについて、今書いて
いるわけです。
 少し歴史をたどってみます。以下の記述は、既に部分的にご紹
介しているアーム株式会社社長の内海弦氏の2019年12月の
講演をベースにしています。
 ARMの創立は1990年ですから、今年で創立33年になり
ます。本社は英国のケンブリッジにあります。ここはケンブリッ
ジ大学が有名ですが、かなり中心都市から離れていて、日本でい
うと、茨城県つくば市のような位置関係にあります。
 従業員は約6000人程度であり、設計部隊と多少の営業マー
ケティング部隊がいるだけです。もちろん世界展開をしており、
米のシリコンバレー、米テキサツのオースティン、フランスのソ
フィア、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、台湾、中国
などに展開しています。
 売上高は、約2000億円程度と小さく、設計専門のファブレ
スで、IP(Intellectual Property Rights)という知的所有権
だけを有しており、在庫、製造装置などを一切持っていない企業
です。当然知る人ぞ知る企業であって、ARMの名前が一躍有名
になったのは、2016年7月18日の次のニュースです。
─────────────────────────────
◎ソフトバンク、英・ARMホールディングス買収
 ソフトバンクは18日、ARMホールディングス(イギリス)を
買収することで合意したと発表した。買収金額は、約240億ポ
ンド(約3兆3000億円)で、ソフトバンクはARM株1株に対
し、15日の終値(11・89ポンド)に、43%上乗せした、
17ポンドを支払う。        https://bit.ly/4269zl6
─────────────────────────────
 昔から、半導体の製造というと、電気を使い放題使うという重
厚長大型のビジネスだったといえます。それに対してARMの半
導体設計は、なるべく電気を使わない省電力設計を目指しており
そういう意味で、軽薄短小型のビジネスです。
 実は、この経営方針は、ARMの創業時からのもので、アップ
ル社がARMの中心株主だったことと関係があります。なぜ、米
国企業のアップルが、英国のARMのなぜ株主になったのかとい
うと、当時アップルは、「アップル・ニュートン」というPDA
(パーソナル・ディジタル・アシスタント/携帯情報端末)を開
発していたからです。
 PCではなく、PDAのプロセッサということになると、電気
を大量に食うのは困るわけです。したがって、ARMの省電力設
計に期待して、株主になったものと思われます。ARMは、近い
将来、携帯電話がブームとなり、それによるデータ通信を行うよ
うになることを見据えて、省電力のプロセッサの設計に注力して
いたのです。
 私は、アップルのニュートンという端末をよく知っています。
今にして思えば、アップルは、ニュートンというPDAを手掛け
ていたからこそ、後にアップルは、アイフォーンを誕生させるこ
とができたのだと思います。そういえば、ニュートンは、初期の
アイフォーンとそっくりです。
 日本でいうと、3GのFOMAと、iモードの時代から携帯電
話でデータ通信ができるようになりましたが、そのときには既に
ARMのプロセッサが携帯電話に入っていたのです。そのときの
ARMの最大の得意先は、フィンランドのノキア──世界一の携
帯電話会社です。やがて、ウェブブラウジングが始まり、携帯電
話でウェブサイトが見られるようになると、携帯電話のPC化が
一挙に進むことになります。
 この時代を一貫して支えてきたのが、ARMのプロセッサであ
り、小さなデバイスながら、やがて、複数個のARMのプロセッ
サが入るようになっていったのです。
           ──[メタバースと日本経済/041]

≪画像および関連情報≫
 ●アップルの革新的製品なぜ失敗 「ニュートン」の不幸
  ───────────────────────────
   ニュートンは、スティーブ・ジョブズをアップルから追い
  出した当時の最高経営責任者(CEO)、ジョン・スカリー
  が構想した商品です。
   1990年代初頭、パソコン専業メーカーだったアップル
  でしたが、野心的なスカリーは、パソコン市場だけに限定せ
  ず、家電業界に参入できないか、という構想を持っていまし
  た。アップルのヒットPC「マッキントッシュ」を手軽に持
  ち運べるマルチメディア家電にできれば、一気に市場を支配
  できる・・スカリーはそのような青写真を描いて、新製品の
  開発を進めていたのです。
   紆余(うよ)曲折を経て、92年5月、スカリーは「来年
  初めには新世代の情報家電機器、ニュートンを発売する」と
  宣言します。スカリーはその宣言の中で、PDA(パーソナ
  ル・デジタル・アシスタント=個人用携帯情報端末)という
  新たな造語を公開するとともに、この情報家電という領域で
  やがて3兆ドルという巨大市場ができることを予言します。
   この宣言は業界に大きな影響を与えました。「現在のパソ
  コン市場の10倍の新市場を作る可能性がある」(「サンフ
  ランシスコ・クロニクル」紙)と書かれたように、スカリー
  の情報家電構想は、多くの人に新しい市場の到来を予感させ
  るものだったのです。      https://bit.ly/3ZWAgXN
  ───────────────────────────
アップルのPDA/ニュートン.jpg
アップルのPDA/ニュートン
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2023年03月15日

●「CISCとRISCの違いを知る」(第5926号)

 デジタル携帯電話(第2世代携帯電話/2G)が登場したのは
1993年3月のことです。携帯電話といっても、「携帯・自動
車電話」の時代ですが、NTTドコモが、PDCデジタル方式の
携帯・自動車電話サービスを開始し、世界初のデジタル携帯電話
を利用したデータ通信サービスを開始しています。そのときの通
信速度は次の通りです。「bps」 というのは、ビット・パー・セ
コンドのことで「1秒間に2400ビットの情報を送れる速度」
という意味です。
─────────────────────────────
          通信速度=2400 bps
          bps=bit per second
─────────────────────────────
 今になって考えると、その頃の日本は、携帯電話の世界におい
て、世界を一歩リードしており、ノートPCにおいても、198
9年に東芝が、「ダイナブック/J-3100SS」を開発し、世界の先
陣を切っています。1990年代になると、IBMとアップルが
ノートPCに参入、東芝、アップル、IBMが次々に新機能を加
え、1995年頃には、現在のノートパソコンの標準的な機能の
原型が完成しているのです。
 1993年以後、世の中は、携帯電話の時代に入っていくわけ
ですが、ARMはその3年前の1990年に創業しています。そ
の本格的な携帯電話時代が到来する前の1993年にアップルは
手の平にのるPDAの「ニュートン」を開発しており、既にそこ
にはARMのプロセッサが搭載されていたのです。
 ここでARMの設立のいきさつについて、少し詳しく知る必要
があります。そもそも小型デバイス向けのプロセッサの設計は、
1983年に、英国のエイコーン・コンピュータが開始したもの
です。当時エイコーン社は、「MOS6502」を搭載したコン
ピュータを製造・販売していました。MOS6502とは、米国
のモステクノロジーが、1975年に開発した8ビットCPUの
ことです。小さなハードウェア規模で、シンプルな命令セットを
持つより高速なプロセッサを開発することによって、6502を
置き換えることが目的であったといえます。
 エイコーン社は、「ARM2」「ARM3」とCPUを強化し
ていきますが、ARMアーキテクチャのCPUが人気が出てきた
ので、エイコーン社からCPUコアの設計技術者12人がスピン
アウトするかたちで、1990年にできたのがARM社です。
 はじめのうちは、エイコーン社と、当時の主要な製造事業者の
ひとつであったVSLIテクノロジー社、アップルコンピュータ
のジョイントベンチャーの形をとっていたのです。つまり、アッ
プルは、「ニュートン」のこともあって、最初からARMと近い
関係にあったのです。
 もう一つ知っていただきたいことがあります。CPUには「C
ISC」と「RISC」の2つがあります。
─────────────────────────────
     @CISC/複雑命令セットコンピュータ
      Complex Instruction Set Computer
     ARISC/縮小命令セットコンピュータ
      Reduce Instruction Set Computer
─────────────────────────────
 @の「CISC/複雑命令セットコンピュータ」とは、どのよ
うなCPUでしょうか。
 特徴としては、CPUに高機能な命令を持たせることによって
1つの命令で複雑な処理を実現できるプロセッサです。マイクロ
プログラムを内部に記憶させることで、高機能な命令が実現でき
ますが、その代わり、命令の実行速度は遅くなります。
 インテルのCPUは「CISC」です。大雑把な分類ですが、
PCであるとかサーバーは、CISCと考えてよいと思います。
 Aの「RISC/縮小命令セットコンピュータ」とは、どのよ
うなCPUでしょうか。
 特徴としてはCPU内部に単純な命令しか持たないかわりに、
それらをハードウェアのみで実装して、一つ一つの命令を高速に
処理できます。ワイヤードロジック(物理的に結線された論理回
路)によって全ての命令をハードウェア的に実装してます。した
がって、CISCに比べて命令の実行速度は早くなります。、
 RISCは、スマホや家電製品や機器など、組み込み系といっ
て「独立した機械の中に組み込まれたコンピュータを制御するた
めのシステム」には、RISCが使われます。
 ここまで説明すると、わかると思いますが、ARMという名称
は、次の意味を持っているのです。
─────────────────────────────
    ARM/Advanced RISC Machines Limited
─────────────────────────────
 ARMの創業後しばらくの間は、PCやサーバーはCISCプ
ロセッサ、スマホや家電製品などの組み込みシステムは、RIS
Cプロセッサというように、住み分けができていたのですが、最
近ではPCやサーバーにもARMのプロセッサが使われるように
なっています。これについて、アーム株式会社の内海社長は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 EVのバッテリーマネジメントをするマイコンがほとんどAR
Mなんですが、電力を食ってしまうと意味がないわけですね。そ
ういったところにARMは引き続きより多く使われるようになっ
てきて、今や、バッテリーのセルごとに使われるようになってい
る。あと、カメラの一番大事なところのイメージセンサーの部分
にもARMが入る。デジカメもスマホもそうです。これも電力効
率がいいからその処理の電力効率をよくできる、というところで
メリットがあります。       https://bit.ly/3mQ5BwM
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/042]

≪画像および関連情報≫
 ●現在の視点から見るRISC対CISC論争・再び
  ───────────────────────────
   今回なぜRISCとCISCの話をするのか、その理由を
  お話しましょう。
   1980年〜1990年代のRISC対CISC論争を覚
  えている人はもう結構な年齢になっていると思います。現在
  ではRISCかCISCかという区別をする人はあまりいま
  せん。RISCもCISCもCPUを実装する方針の一つだ
  というのが、大方の認識になっているからです。かつて、R
  ISCは高性能CPUのための技術として登場しました。し
  かし、その対決の対象であるCISCも、RISCとの高速
  化技術やコンパイラ技術の切磋琢磨を経て、それなりの性能
  を出すことが できるようになっています。
   果たして,現在のCPUは、RISCとCISCの研究で
  培われた技術に基づいたいいとこどりの産物なのです。今ご
  ろ、RISCとかCISCとかいっていると時代遅れといわ
  れるかもしれません.その上,CISCと聞くと古臭い感じ
  がするかもしれません。しかし、世の中で最も普及している
  X86はCISCという分類に属します。
   ところが,昨今あえてCISCのよさを強調するCPUが
  登場しました。そうです、ルネサスエレクトロニクスのRX
  マイコンです。RXマイコンは、CISC、ということを強
  調して、命令コード効率の良さをアピールしているのでしょ
  う。さらに,大学の研究室で生まれたRISCという理論の
  理屈臭さを感じさせず、むしろ、親密度を増加させるための
  マーケティングなのかもしれません。
                  https://bit.ly/3JA6hQa
  ───────────────────────────
RISC−V.jpg
RISC−V
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2023年03月16日

●「ジョブズ/アップルから追放される」(第5927号)

 アップルとARMの関係が、ARMの創業時(1990年)以
前からのものであったことは、ここまでの記述でわかっていただ
けると思います。アップルとしては、開発中のPDA「ニュート
ン」のことがあるので、低電力でパワフルなプロセッサがどうし
ても欲しかったのです。
 ところで、アップルにおいて、「ニュートン」の開発を推進し
ようとしたのは、アップル創業者のスティーブ・ジョブス氏では
なく、ジョン・スカリー氏という人物です。
 1981年のことです。当時アップルの業績は悪化しており、
アップルの創業者のスティーブ・ジョブス氏とも対立を深めてい
たアップルの初代社長兼CEOであるマイケル・スコット氏が解
雇されたのです。このようにいうと、創業者がなぜ社長でないの
かという疑問を持つ人がいると思いますが、ジョブズ氏の当時の
肩書きは、「事業統括担当副社長」であり、CEOでも社長でも
なかったのです。
 マイケル・スコット氏が解雇されたので、ジョブス副社長とし
ては、マーケティングに強い代役を探してきて、社長に据える必
要があります。マーケティングは社長の担当であったからです。
 そのとき、ジョブス氏が目を付けたのが、ペプシコーラのジョ
ン・スカリー氏だったのです。
 当時スカリー氏は、ペプシコ―ラの事業担当社長を務めでおり
ペプシのCMにマイケル・ジャクソンを採用したり、ペプシチャ
レンジといって、ブランド名を隠して、複数のコーラを飲ませて
ペプシのコーラが美味しいと伝えるコマーシャルなどの手法を使
うなどして、コカ・コーラを追い上げていったのです。
 ジョブス氏は、ジョン・スカリー氏と会い、アップル社に移る
よう説得します。そのとき、ジョブス氏がスカリー氏を口説き落
としたときの言葉が残っています。大変有名な言葉であり、英文
と日本語訳を以下にご紹介します。
─────────────────────────────
  Do you want to sell sugared water for the rest of your life,
  or do you want to come with me and change the world?
 このまま一生砂糖水を売り続けたいのか、それとも私と一緒に
世界を変えたいのか?       ──スティーブ・ジョブス
                  https://bit.ly/3ZJ4zRR
─────────────────────────────
 ジョブス氏にこのように説得されたスカリー氏は、1983年
にアップルの社長兼CEOに就任します。1984年1月には、
マッキントッシュ(新PC)のデビューに2人で立ち会うなど、
スカリーとジョブスは「ダイナミック・デュオ」と呼ばれ、順調
にアップルの経営が進行すると思われていたのです。
 しかし、ジョブス氏は、1984年のクリスマス商戦で需要予
測を誤り、マッキントッシュの大量の在庫を抱えてしまいます。
その結果、この年の第4四半期で初の赤字を計上し、従業員の5
分の1に当たる人数の解雇を余儀なくされたのです。
 スカリー社長はこの事態にジョブズ氏の責任は重大であると考
えて、1985年4月にマッキントッシュ部門からの退任を要求
し、取締役会もこれを承認します。しかし、ジョブズ氏はこれを
不服として、逆にスカリー社長を追放しようと画策したものの、
失敗し、ジョブズ氏は全役職を解かれ、アップルを追われること
になるのです。1985年9月のことです。
 このようにして、自分が設立したアップル社を追い出されたス
ティーブ・ジョブス氏は、それから5年間、アップルを離れて仕
事を行い、新しいコンピュータ「NEXT」とOS開発し、それ
をきっかけとして、2000年に正式にアップルの社長兼CEO
に就任するのですが、この話は改めて述べるとして、アップルと
インテルの関係について述べることにします。
 今でもそうですが、PCの世界は、ウインドウズPCとアップ
ルPCに二分され、ユーザーはどちらを使うか選ぶ必要がありま
す。しかし、一般のビジネスパーソンがシェアが20〜30%し
かないアップルPCを使うには相当の決断が必要だったのです。
それほど、インテル/ウィンドウズ連合のシェアは圧倒的であり
アップルは経営危機を常に背負っていたのです。
 それが2006年になると、大きな変化を迎えることになりま
す。そのいきさつについて、あるネットの記事を引用します。と
てもわかりやすく書かれています。
─────────────────────────────
 1994年登場のパワー・マッキントッシュから、パワーPC
(CPUの名前)の採用が始まりました。この画期的なアーキテ
クチャーの採用でアップルの躍進が期待されたのですが、残念な
がら、この頃からインテル・ウインドウズ連合に市場シェアが独
占される状況となり、アップルは経営危機を迎えることになりま
す。その後、パワーPCに別れを告げるのは、ジョブズがアップ
ルに復帰してからの話になります。CPUの変更に関しては3回
目となるこの時、ついにインテル製が採用されました。
 このことによりOSは異なるものの、ウインドウズ機と同じC
PUで動作するマックが登場することになります。マックOSと
ウインドウズOSが、同一のPC上でネイティブに動作する環境
が実現しました。
 基本はマックを使いながら、業務の都合などでウィンドウズ機
も併用しているユーザーにとっては、非常に便利な環境となりま
した。これが2006年の出来事です。
                  https://bit.ly/3YNBX8J
─────────────────────────────
 それからしばらくの間、アップルとインテルの良好な提携が続
くことになりますが、10年を経過したころから、アップルがイ
ンテルから離別するという情報が頻繁に出ることになります。そ
して、コロナ禍のリスクが高まりつつあった2020年6月、ア
ップルはインテルとの関係解消を正式に宣言します。
           ──[メタバースと日本経済/043]

≪画像および関連情報≫
 ●アップルが描く「インテルなき未来」と、見えてきた
  いくつもの課題
  ───────────────────────────
   インテルは2006年から、Macの製品ラインに、プロ
  セッサーを供給してきた。両社は10年以上にわたる実りの
  ある関係を築いており、「Macブック」や「iMac」は
  「アイフォーン」ほどではないにしても、アップルに大きな
  利益をもたらしている。インテル製チップを搭載するモデル
  の売上高は、今年の1〜3月だけで、70億ドル近くに達し
  た。昨年のインテルの収入の4パーセントはアップル絡みだ
  との報道もある。
   この共生関係は理に適っているように見える。一方でアッ
  プルが独自路線を歩もうとしているのにも納得のいく理由が
  ある。アイフォーンは、すでに自社製の「A」シリーズのチ
  ップを採用しているほか、「アップルウォッチ」には「S」
  シリーズ、「エアポッズ」には「W1」がある。
   また少し前から、「iMacプロ」など一部の製品には、
  インテルのCPUに加えてアップル製のチップ「T2」が組
  み込まれるようになった。同社は1年前には、独自のGPU
  の開発にも着手している。
   つまり、Macにおけるインテルのチップは、アップルの
  製品ラインアップ全体を見回したときに、どちらかと言えば
  例外的な存在になりつつある。アップルが独自プロセッサへ
  の切り替えを進める理由は、大手スマートフォンメーカーが
  クアルコムを切り捨てた理由と同じだ。自分でできるなら、
  人には頼らないほうがいい。  https://bit.ly/3mOOiwo
  ───────────────────────────
スティーブ・ジョブズとジョン・スカリー
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2023年03月17日

●「アップルがインテルから別れる理由」(第5928号)

 2020年6月22日のことです。当日に開催された開発者向
けのオンラインイベントWWDC(ワールド・ワイド・デベロッ
プメント・カンファレンス)の基調講演で、アップルのティム・
クックCEOは次の宣言をしています。
─────────────────────────────
 Macの心臓部を、2年かけて、インテル製プロセッサから、
自社設計のSoC「アップル・シリコン」に切り替える。
            ──2020年6月22日/WWDC
─────────────────────────────
 「アップル・シリコン」とは何でしょうか。
 「アップル・シリコン」は「SoC(ソック)」なので、まず
SoCについて知る必要があります。SoCは、シリコンの半導
体チップの上に多くの半導体素子(トランジスタ)を集積して、
CPU、グラフィックス処理ユニットのGPU、メモリーなどを
載せ、システムとして製品化した半導体部品のことです。SoC
は次の言葉の頭文字をとった言葉です。
─────────────────────────────
         ◎SoC/System on Chip
─────────────────────────────
 添付ファイルを見てください。これが「アップル・シリコン」
(M1)です。CPUがファブリックという切り替え装置を介し
て、GPU、DRAM、キャッシュなどと繋がった回路になって
います。
 CPUはARM設計のプロセッサ・コアであり、グラフィクス
・プロセッサ、機械学習に基づくAIの実行エンジンで高度な画
像処理などに使われる「ニューラル・エンジン」などを統合した
アップル自社設計の高度なSoCになっています。コンパクトな
マザーボードのようなものです。
 2005年のことです。その年のWWDCにおいて、アップル
への復帰を果たしたスティープ・ジョブズCEOは、次のように
宣言し、2006年1月に、最初のインテル製Macを出荷して
います。まさに歴史的な出荷といえます。
─────────────────────────────
 Macのプロセッサを「パワーPC」から、インテルに切り替
える。           ──スティーブ・ジョブスCEO
─────────────────────────────
 「パワーPC」とは、アップル・コンピュータ、IBM、モト
ローラによって開発されたRISCアーキテクチャのマイクロプ
ロセッサのシリーズの名称です。
 これは、当時としては極めて画期的な出来事だっといえます。
なぜなら、アップルとインテル・ウインドウズ連合は対極の関係
であり、アップルがインテルのプロセッサを採用するなど、考え
られなかったからです。なぜ、当時のアップルがインテルのプロ
セッサを採用したのかについて、ITジャーナリストの星暁雄氏
は、そのときの事情について、次のように解説しています。
─────────────────────────────
 当時のインテルは、世界最高の半導体製造技術を持ち、プロセ
ッサ設計技術でも優れていた。パワーPCやその他のプロセッサ
ではなく、インテルのプロセッサを選んだ方が、Macの競争力
を、少なくとも数年にわたり維持できる。それがインテルに切り
替えた理由だ。
 20年現在のインテルは、半導体市場で世界トップの優良企業
である。だが、05年のインテルとはとは大きな違いがある。現
在のインテルは、半導体製造技術で世界一とは言えなくなってい
るのだ。一方で、TSMCの製造能力は向上し、アイフォーンや
アイパッドのヒットにより、アップル・シリコンの生産規模は大
きくなり、半導体の設計ノウハウも蓄積されている。脱インテル
を実行できる実力を今のアップルは持っているのだ。
 半導体を進化させるということは、微細加工技術を追求してよ
り多くの半導体素子(トランジスタ)をシリコンチップ上に集積
するということだ。つまり「密度」が大事なのだ。かつてのイン
テルはシリコンチップ上に集積する半導体の数を「18カ月で2
倍にする」という苛酷な目標をクリアしていた。この目標は「ム
ーアの法則」と呼ばれている。だが、今やこのペースは達成不可
能となってきた。微細加工を追求した結果、物理的な限界が近づ
き、進化のペースが鈍ってきたのだ。これは、「ムーアの法則の
終焉(しゅうえん)」と呼ばれている。https://bit.ly/3LmJKaK
─────────────────────────────
 星暁雄氏によると、現在のインテルは、ライバル企業に12〜
18カ月遅れている」そうです。インテルのライバル企業とは、
台湾のTSMCと韓国のサムスン電子です。TSMCは、カスタ
ムチップの受託製造に優れ、サムスン電子は、メモリー製造を得
意としています。
 なぜ、インテルがライバル企業に1年以上のつけられてしまっ
たかについては、10ナノメートルプロセスの量産化に遅れたこ
とにあるといわれています。インテルの10ナノメートルプロセ
スである「キャノン・レイク」は、その集積できる半導体素子の
密度は1平方ミリ当たり約1億個程度であるといいます。
 インテルは、「キャノン・レイク」の量産化の時期を公式には
2018年としていますが、実際に市場に出回ったのは2019
年になってからです。ここに1年の差があります。
 しかし、ライバルのTSMCは、インテルのさらに先を行って
います。TSMCは「5ナノメートルプロセス」を量産を、20
20年4月に開始したとされているからです。ちなみに、これは
1平方ミリ当たり約1・7億個のトランジスタの密度をクリアす
ることです。アップル・シリコンは、この5ナノメートルプロセ
スで製造するといわれています。これが、次世代Macやアイフ
ォーンに搭載される予定であるといいます。予定通りに行われれ
ば、2023年には使えるようになるはです。
           ──[メタバースと日本経済/044]

≪画像および関連情報≫
 ●CPUのプロセスルールが小さくなるとどういう原理で何が
  良くなるんでしょう?
  ───────────────────────────
   プロセッサ(CPUやGPUなど)のトランジスタは、C
  MOSといって、2個(以上)のトランジスタが組み合わさ
  ったものになっていて,ON状態にせよOFF状態にせよ、
  どちらかのトランジスタには電気が溜まっている状態になっ
  ています(トランジスタはコンデンサとしての成分を持つた
  め)。そして、ONとOFFが切り替わる瞬間に、片方に溜
  まった電気が流れ、空だったトランジスタに電気が溜まる仕
  組みになっています。この「溜まった電気が流れきって」、
  「もう片方のトランジスタへの蓄電が終了する」までの時間
  が、限界としての最小クロック時間ということになります。
   さて,プロセスルールが小さくなると,トランジスタのサ
  イズが小さくなります。トランジスタが小さくなると、トラ
  ンジスタに生じるコンデンサも小さくなります。コンデンサ
  が小さくなると、「溜まった電気が流れきって」「空だった
  トランジスタへの蓄電が終了する」までの時間も短くなるの
  で、最小のクロック時間を小さくできる(=毎秒あたりのク
  ロック周波数は大きくなる)し、流れる電気の量が減るとい
  うことは発熱も減るので、クロック周波数の増加による発熱
  増大を打ち消すことができます。 https://bit.ly/3YQtL7U
  ───────────────────────────
アップル・シリコン.jpg
アップル・シリコン
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2023年03月20日

●「冨岳もARMアーキテクチャである」(第5929号)

 「インテルか、ARMか」の話をしていますが、人によっては
そんなテクニカルなことはどうでもいいじゃないかと思う人もい
るかもしれません。そもそも日本の半導体会社「ラピダス」の投
資陣のなかに、ARMを傘下に収めているソフトバンググループ
がいることが日本にとって有利に働くのではないかということか
ら、ARMを取り上げてここまで書いてきています。
 そのARMがスマホだけでなく、PCやサーバーに入ってきて
いるという話をしているのですが、それどころではないのです。
現在、総合で世界一である日本のスーパーコンピュータ『冨岳』
(理化学研究所と富士通の共同開発)もARMアーキテクチャを
採用しているのです。驚くなかれ、スーパーコンピュータまで、
ARMなのです。
 なお、「総合で世界一」と書きましたが、スーパーコンピュー
タの世界ランクは主として次の3つの部門の順位で決まります。
しかし、2022年5月、計算速度を競うTOP500では、米
オークリッジ国立研究所にある最新鋭機『フロンティア』に敗れ
2位になっています。『冨岳』はそれまでこの分野で4期連続世
界一だったのに残念です。
 スーパーコンピューターの世界ランクは、次の3つで決まりま
すが、日本は、現在、「HPCG」と「Graph500」では
依然として世界一であり、しかも5期連続です。
─────────────────────────────
    ◎スーパーコンピュータの3分野
     1.  TOP500 ・・ 世界第2位
     2.    HPCG ・・ 世界第1位
     3.Graph500 ・・ 世界第1位
─────────────────────────────
 「HPCG」は、産業応用で使う計算の処理速度を図るもので
あり、「Graph500」は、ビックデータの解析能力の指標
となるものです。しかし、コンピュータは早さが勝負であり、
TOP500」で2位になったことは残念なことです。それにし
ても大きな差がついたものです。
─────────────────────────────
 ◎TOP500上位5位            計算速度
  1位:フロンティア(米国) ・・ 110・2京回/秒
  2位:    冨岳(日本) ・・  44・2京回/秒
  3位:ルミ(フィンランド) ・・  15・1京回/秒
  4位:  サミット(米国) ・・  14・8京回/秒
  5位:   シェラ(米国) ・・   9・9京回/秒
       ──2022年5月31日/読売新聞オンライン
─────────────────────────────
 フロンティアの計算速度は、毎秒110京(けい)2000兆
回(京は1兆の1万倍)であり、富岳の同44京2010兆回の
約2・5倍だったのです。スパコンの開発競争では、同100京
回を上回る計算速度「エクサスケール」が次の目標とされ、突破
したフロンティアが初めてランクインしたのです。
 「アップル・シリコン」に話を戻します。アップル・シリコン
には、A、S、T、W、H、U、Mの7シリーズがあり、とくに
有名というか、よく知られているのは、AシリーズとMシリーズ
の2つです。
 Aシリーズは、アイフォーン、アイパッド、アイポッド・タッ
チ、アップルTVデジタルメディアプレーヤーに採用されている
SoCのファミリーです。1つ以上のARMベースのプロセッシ
ング・コア、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GP
U)、キャッシュ・メモリなど、モバイル・コンピューティング
機能を提供するために必要な電子機器を1つの物理的なパッケー
ジに統合しています。
 これらはアップルによって設計され、2016年以降に発売さ
れたアイフォーン7の時点で、TSMCによって独占的に製造さ
れています。
 Mシリーズというのは、Macやアイパッド向けに開発される
SoCのファミリーのことです。2020年10月にMacブッ
ク・プロという新製品が発売され、それにM1プロとM1マック
スが搭載されていることが明らかになります。
 2022年3月になると、それまでのM1のさらに上を行く、
M1ウルトラが発表されます。M1ウルトラは、20基のCPU
コアと、64基のGPUコア、32基のニューラルエンジンコア
を実装しており、最大RAM容量は128GBです。
 そして、2022年6月6日に、新型Macブック「エア」と
Macブック「プロ」が発表されます。これには、M2チップが
搭載されています。これらのM2チップが、脱インテル後のアッ
プル製品に搭載されることになります。
 このM2チップについて、アップルのサイトでは、次のように
解説しています。
─────────────────────────────
 M2のシステムオンチップ(SoC)設計は、強化された第2
世代の5ナノメートルテクノロジーを使用して構築され、M1よ
り25パーセント多い200億個のトランジスタで構成されてい
ます。トランジスタの増加により、M1より50パーセント高い
1000GB/sのユニファイドメモリ帯域幅を実現するメモリ
コントローラなど、チップ全体で機能が向上しています。
 最新のウインドウズノートPCの10コアチップと比較して、
M2に搭載されたCPUは同じ電力レベルで約2倍のパフォーマ
ンスを実現します。そしてわずか4分の1の電力で、そのウイン
ドウズPC用チップのピークパフォーマンスを達成します。
                 https://apple.co/3YZ6tgf
─────────────────────────────
 このアップルによる「脱インテル」は、インテルだけでなく、
アップルにも相当の負荷がかかります。
           ──[メタバースと日本経済/045]

≪画像および関連情報≫
 ●アップルが描く「インテルなき未来」と、見えてきた
  いくつもの課題
  ───────────────────────────
   アップルが間もなく、「Mac」シリーズにインテルのチ
  ップを使うのをやめるのだという。このニュースを耳にする
  のは何度目だろう。これまでにも多年草のように定期的に現
  れては消えていった話題ではあるが、今回はいくつか注目す
  べき点があるようだ。
   だが、まずはアップルが実際に「脱インテル」を実行する
  のが、いかに難しいかという話から始めよう。
   アップルがこの問題に真剣に取り組んでいるのは本当だろ
  う。2018年4月2日に明るみになったニュースの出元は
  『ブルームバーグ・ビジネスウィーク』のマーク・ガーマン
  だ。ガーマンは、“聖域”であるカリフォルニア州クパチー
  ノの外にいる人間のなかでは、アップルの動向にもっとも詳
  しいと言われている。
   アップルは数年前から、独自のプロセッサの開発だけでな
  く、「MacOS」とモバイルデヴァイス用の「iOS」の
  アプリ統合に向けた準備を進めている。インテル製チップの
  切り替えのための準備は整いつつうるのだ。それでも、イン
  テルとの別離においては、面倒な問題がいくつもある。それ
  にどう対処していくかが、アップルの未来を決めるだろう。
                  https://bit.ly/3Jun5qg
  ───────────────────────────    
日本のスーパーコンピュータ『冨岳』.jpg
日本のスーパーコンピュータ『冨岳』
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2023年03月22日

●「ジョブズがアップルでやったこと」(第5930号)

 スティーブ・ジョブズ氏が、アップル社のCEOになったのは
2000年のことです。スティーブ・ジョブズ氏は、ヘッドハン
ティングし、自ら創業したアップル社のCEOに就任させたジョ
ン・スカリー氏らによって、アップル社を追い出されています。
まるでドラマそのものです。
 アップル社を去ったジョブズ氏は、新しいコンピュータ「NE
XT」とOSを開発し、1996年に業績不振に陥っていたアッ
プル社にNEXTを売却する形で、1997年にアップル社の暫
定CEOに就任します。
 そしてやったことは、不倶戴天のライバルといわれていたマイ
クロソフト社のビル・ゲイツCEOと提携し、同社からの支援を
得ることに成功するかたわら、アップル社の社内のリストラを進
めるなど、会社の業績を向上させたことです。
 そして、2000年、スティーブ・ジョブズ氏は正式にアップ
ル社の社長兼CEOに就任します。しかし、基本給与として1ド
ルしか受け取っていなかったことで、「世界で最も給与の安い最
高経営責任者」といわれます。なぜ、1ドルを受け取ったかとい
うと、居住地のカリフォルニア州法により、社会保障番号を受け
るための給与証明が必要だったからです。
 それからのスティープ・ジョブズCEOの活躍は誰でも知る通
りです。MacOSをNEXTの技術を基盤とするMacOSX
へと切り替えるという基本的なことをしたうえで、ARMと組ん
で、音楽再生機アイポッド、携帯電話アイフォーン、そしてアイ
パッドと、アップルの業務範囲を従来のPCから、デジタル家電
とメディア配信事業へと拡大させています。これには、スカリー
氏が手掛けて失敗に終わっているPDA「ニュートン」の技術も
生きていると思います。
 なかでもジョブズCEOの重要な決断は、それまでアップル社
が採用していたパワーPCのプロセッサをインテル社へと切り替
えたことです。2006年のことです。これは当時としては驚天
動地の決断といえます。パワーPCは、アップル社、IBM、モ
トローラ社の提携で構築されたRISCタイプのとても良いマイ
クロプロセッサだったからです。アップル社のマッキントッシュ
やIBMのRS/6000で採用されており、スーパーコンピュ
ータでも広く採用されています。
 それにしても、ジョブズCEOは、なぜ、インテルのプロセッ
サを採用したのでしょうか。
 マイクロプロセッサ(CPU)を変更することは、変更する側
のアップル社の負担が尋常ではありません。まして、RISCか
らCISCへの変更であり、それまでアップルの開発したソフト
ウェアを動かすには、多くの困難があるからです。
 それでも、ジョブスCEOが決断したのは、当時のインテル/
ウインドウズ陣営の勢いというか、繁栄ぶりであり、売れるPC
を作るには、マーケティング的には、インテルプロセッサの採用
しかなかったからと思われます。
 参考までに、実際にインテルのプロセッサが搭載されたアップ
ル商品を以下に掲載しておきます。
─────────────────────────────
           @iMac
           AMac mini
           BMacBook
           CMacBook Air
           DMacBook Pro
           EMac Pro
           FXserve
─────────────────────────────
 スティーブ・ジョブズ氏について、もうひとつ述べておきたい
ことがあります。ジョブズ氏は、2003年に膵臓がんと診断さ
れていることです。アップル社の社長兼CEOに就任して、3年
後のことです。膵臓がんと宣告されれば、手術できないケースが
多く、手術に成功したとしても、5年生存率は20〜40%とい
われています。
 ジョブズ氏は自らの死期を悟っていたものと思われます。そし
て、2011年10月5日、CEOに就任して11年後、がんと
診断されて7年後に、スティーブ・ジョブズ氏は亡くなっている
のです。おそらく自分がやらなければいけないことをすべてやっ
て、本当に世界を変えて、亡くなっています。現在のアイフォー
ンやアイパッドの普及を考えると、本当に惜しい人材を亡くした
ものです。
 なお、インテルMacの評価について、日経クロステック誌の
テクニカルライター出雲井亨氏は、次のように評価し、その変更
が正しかっと述べています。
─────────────────────────────
 大きな理由は、その性能だ。インテルマックが採用するインテ
ル・コア・デュオは、パワーPCよりも明確に速い。アップルは
数種類のベンチマークの結果として、インテルCPU搭載のiM
acが従来機種と比べて2〜3倍、ノート型のMacBookに
至っては4〜5倍速い、とアピールする。実際に試した結果は後
述するが、確かにインテルマックは従来機種と比べてはっきり体
感できるほどキビキビと動作する。
 パワーPCの性能向上が限界に達しつつあったことも移行の理
由といえる。2003年6月の開発者向け会議で、ジョブズ氏は
「1年以内に3GHzのモデルが登場する」と約束したが、2年
たっても実現しなかった。また最新CPUのパワーPC・G5は
発熱の問題でノートに搭載できず、マックのノートはハイエンド
モデルでも一世代前のパワーPC・G4を搭載していた。このよ
うな状況の中で、アップルがインテルCPUへの移行を選択した
のは自然なこととも思える。     https://bit.ly/3n7u7cX
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/046]

≪画像および関連情報≫
 ●スティーブ・ジョブズとは何者だったのだろうか?
  ───────────────────────────
   後年のスティーブ・ジョブズは病気を別にすれば幸運にも
  恵まれ、かつ市場やメディアに対する対応の仕方を学習した
  からだろう・・・少なくとも対外的には大人の対応が目立つ
  人物になった。しかしスティーブ・ジョブズはスティーブ・
  ジョブズであり、ことアップルに関して自分のビジョンに反
  する意見や相手には相変わらず辛辣で容赦がなかった。果た
  して、スティーブ・ジョブズとは何者だったのだろうか?
   スティーブ・ジョブズはなぜシリコン・バレーに乱立した
  幾多のベンチャー企業の創業者たちと比較してもこれほどま
  でにカリスマ性を失わずにいられたのだろうか?以下は、そ
  んな私自身が常々疑問に思ってきたことに対するひとつの回
  答でもあり、いたづらに神とか天才といった言葉で祭り上げ
  るのではなく、スティーブ・ジョブズという男の本当の凄さ
  をあらためて認識したいとする試みのひとつだ。
   ところで「トラブルメーカー」・・・。この言葉ほど、ス
  ティーブ・ジョブズという人物を一言で表すのにふさわしい
  言葉はないかも知れない。ともかく他人の意見には耳をかさ
  ない・・・という以前に自分の言動に対して他人からどう思
  われるかなどまったく気にしない人物だった。交渉に出向い
  た会社で会議冒頭に「もっとマシな話はないのか」とテーブ
  ルをひっくり返さんばかりの癇癪を起こしたりもした。
                  https://bit.ly/3JPrXrn
  ───────────────────────────
スティーブ・ジョブズ元アップル社長兼CEO.jpg
スティーブ・ジョブズ元アップル社長兼CEO
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2023年03月23日

●「ARMのビジネスモデルとは何か」(第5931号)

 半導体業界において、プロセッサやSoC分野は、次の2つに
分けられます。なお、ここでいうプロセッサとは、CPUのこと
であると考えていただいた結構です。
─────────────────────────────
  ファブレス ・・ 工場(ファブ)を持たない設計専門の
           半導体メーカー
 ファウンドリ ・・ 半導体デバイスを製造する工場を持つ
           半導体メーカー
─────────────────────────────
 ファウンドリには2つがあります。設計から製造までを一貫し
て手掛けるメーカーと、製造に特化するメーカーです。前者が米
国のインテル、韓国のサムスン電子、後者に該当するのは、台湾
のTSMCです。
 ところで、世界で有名な半導体メーカーといえば、クアルコム
アップル、エヌビディア、AMD、そしてARMが上げられます
が、これらはすべてファブレス、半導体を製造する工場を持って
いないのです。
 もっともAMDは、インテルと同様に設計から製造を手掛けて
きたのですが、2012年に自社の製造部門を「グローバルファ
ウンディーズ/GlobalFoundries」 という別会社に分離し、AM
Dはファブレスになっています。ファブレスになってからのAM
Dは好調で、2019年にはCPU「ライゼン」を開発発売し、
販売台数シェアで、今やインテルを突き放しています。
 忘れてはならないのが、日本の半導体メーカーとして誕生した
新会社「ラピダス」はファブレスかファウンドリかのどちらに属
するかです。ラピダスは、「2ナノプロセス以下の製造技術」を
掲げているので、当然、半導体の設計から製造までを手掛ける、
ファウンドリを目指しています。
 このように考えると、世界の半導体メーカーのほとんどは、設
計専門のファブレスということになります。その設計専門のファ
ブレスのなかにあって、ARMが異彩を放っているのは、なぜで
しょうか。
 この疑問に答えるのは、かなりテクニカルな説明が必要なので
この時点では、ARMの場合、同じ設計専門といっても、そのレ
ベルが違うということだけを申し上げておきます。つまり、AR
Mは、単なるファブレスではないということです。
 ARMは、自社設計による半導体のテクノロジーを「知的財産
権」として開発し、半導体メーカーにライセンスを付与していま
す。知的所有権は、IPと呼ばれますが、IPは次の意味を持っ
ています。
─────────────────────────────
◎知的財産権/intellectual property rights
 知的財産権(IP)は特許、著作権、商標などによって法律で
保護されている。こうしたことによって、イノベーターはその発
明もしくは創造によって社会的に認識され、かつ金銭的な利益を
得ることができる。
─────────────────────────────
 それでは、ARMのビジネスモデルとは何でしょうか。
 ARMのテクノロジーを利用するには半導体メーカーは、AR
Mに対して、ライセンス料を支払う必要があります。そのうえで
その後のチップの販売数に応じたロイアリティ(印税)を支払わ
なければなりません。
 これを「2度取り」として、批判する向きもあります。しかし
この批判に対して、アーム株式会社代表取締役社長の内海弦氏は
次のように反論としています。
─────────────────────────────
 これ(ロイアリティ)をやってこなかった半導体知財の会社は
ほとんど潰れているんですね。なぜ潰れるかというのは2つ理由
があります。まずはこれまでのお客様とちゃんと信頼関係を築い
ているのにもかかわらず、新興のお客様に「ロイヤリティはいり
ませんよ」と言ってビジネスモデルを崩しますと、大変信頼関係
が崩れるんですね。
 一貫性を持ったビジネスモデルを30年近く続けていますと、
このモデルできちんと成功を共有できる。これは今となっては非
常にわかりやすいモデルで、リカーシブビジネスモデルとか言わ
れてますけれども。30年前は異端中の異端だったことは間違い
ないと思います。
 最近では半導体メーカーさんだけじゃなくて、セットメーカー
さんにも直接ライセンスする形態もございます。日本ですと最近
は理研さん、富士通さんに使われました。スパコン「富岳」と言
います。ポスト京のスパコンですね。これなどにはセットメーカ
ーさんというかたちで、富士通さんと理研さんに対してライセン
スを行っております。
 こういった先端のことをやられる企業さんの場合は、直接ライ
センスを持って設計に手を加えたいというケースがございます。
そういった場合は、ビジネスモデルとしては同じなんですけれど
も、セットメーカーさんからもまずライセンスフィーをいただい
て、そのあとロイヤリティもいただくことを一貫して行っており
ます。               https://bit.ly/3TqgCBn
─────────────────────────────
 半導体の市場規模は40兆円ぐらいですが、それに乗っかるソ
フトウェアの市場規模は60兆円くらいになります。ハードウェ
アとセットの場合は、175兆円ぐらいに膨らみます。そのなか
にあって、ARMは、せいぜい約2000億円の企業であると、
内海社長はいいます。このままではいけないと内海社長は考えて
いるようです。ビジネスモデルを変革する必要がある、と。
 それてにしても、ソフトバンクグループの孫正義会長は、何に
目を付けて、ARMを買収したのでしょうか。その意図について
も考察してみる価値があると思います。
           ──[メタバースと日本経済/047]

≪画像および関連情報≫
 ●半導体の特需は一巡、在庫調整は2023年後半まで続く
  見込み(世界)/日本貿易振興機構ジェトロレポート
  ───────────────────────────
   インフレの高進や、中国の新型コロナウイルス対策のゼロ
  コロナ政策に伴う経済活動制限、ロシアによるウクライナ侵
  攻の長期化などに伴う世界的な需要の低迷は、2021〜2
  022年に過去最高額を更新する勢いで成長を遂げた半導体
  市場にも、マイナスの影響を及ぼしている。とりわけ、デー
  タの記憶保持の役割を担う半導体回路装置、すなわち、メモ
  リー半導体に対する世界的な需要の減速は、同分野の主要メ
  ーカーに対し、業績見通しの下方修正や投資計画の見直しを
  迫る。半面、電気自動車(EV)をはじめとする車載向けや
  データセンター向けに利用されるパワー半導体などの分野で
  は旺盛な需要が継続しており、市場の二極化が進んでいる。
   他方、最大の需要国の中国の経済失速や、2022年10
  月以降の米国による半導体の対中輸出管理規制の強化に伴い
  中国との取引に関わる半導体のサプライチェーンの再編を模
  索する動きも徐々に進展することが見込まれる。グローバル
  市場向けの半導体供給のハブである韓国、台湾の業界団体や
  有識者の見方を中心に、半導体市況の変化と今後の市場の展
  望を概観する。
   WSTS(世界半導体市場統計)が2022年11月末に
  発表した2022年秋季半導体市場予測によると、同年の世
  界の半導体市場は前年比4・4%増と、前年の伸び(26・
  2%増)から大幅に減速した。2023年については4・1
  %減と、4年ぶりのマイナス成長を見込んでいる。
                  https://bit.ly/3Jxtj8K
  ───────────────────────────
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ARMのビジネスモデル
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2023年03月24日

●「ARM買収などをめぐる3つの謎」(第5932号)

 ARMに対して、ソフトバンクグループの孫会長の対応には、
3つの謎があります。
─────────────────────────────
   @ソフトバンクの孫会長はなぜARMを買収したのか
   AARMはなぜソフトバンクの買収を受け入れたのか
   BARMをなぜエヌビディアに売却しようとしたのか
─────────────────────────────
 まず、@について考察します。
 ソフトバンクグループ(SBG)がARMの買収を発表したの
は2016年9月のことです。そのとき、多くの人が考えたこと
は次の疑問です。
─────────────────────────────
 携帯通信事業のソフトバンクが、なぜ半導体の設計会社を買収
するのか。一体SBGは何を考えているのか。
─────────────────────────────
 しかも、買収金額が高額過ぎるのです。SBGのこれまでの買
収金額と比べても倍近いからです。
─────────────────────────────
  @ボーダフォン日本法人買収 ・・ 1兆7820億円
  A米スプリントの買収 ・・・・・ 1兆8000億円
  BARMの買収 ・・・・・・・・ 3兆3000億円
─────────────────────────────
 これについて、SBGの孫会長は、買収の目的を囲碁に例えて
次のように述べています。
─────────────────────────────
 囲碁は碁石のすぐ隣に打つのは素人のやり方。遠く離れたとこ
ろに打ち、それが50手目、100手目になると力を発揮する。
3年、5年、10年が経過すれば、ソフトバンクグループにAR
Mがいる意味が分かる。ソフトバンクグループの中核中の中核に
なる企業がARMである。      https://bit.ly/2lYeRje
─────────────────────────────
 考えられることがひとつあります。携帯通信事業には、いわゆ
る「土管化」のリスクがあります。携帯通信会社は、その事業に
専念すると、スマホにもアプリにも影響を与えることができず、
ただ通信データを流すだけの土管屋になってしまうリスクがある
ことです。何の付加価値も得られず、通話料や通信料の値下げで
しか、競争に勝つ手段がなく、利益率を押し下げてしまいます。
 孫会長が目をつけたのは、あそらくIоT市場であると思われ
ます。IоTは「モノインターネット」といわれますが、それら
のモノにARMの半導体が入り、インターネットに繋がります。
今後そのモノが激増することから、IоT市場は今後17%の高
い成長が見込まれています。
 もうひとつSBGがARMを買収する大きなメリットがありま
す。半導体の設計をする企業を買収すると、メーカーが今後どの
ようなテクノロジーを必要としているかについて、情報が得られ
ることです。そうすると、そこで得られた機密性の高い情報に基
づいて、SBGは先手を打った事業開発や投資を行うことができ
ることになります。つまり、ARMを買収することによって、携
帯通信のバリューチェーンにおいて川下にいたSBGは、川上に
立つことができるわけです。
 続いて、Aについて考えます。
 既に述べているように、ARMという企業は、資本効率が非常
に高い企業です。粗利益は約95%、営業利益は42%、きわめ
て高い指標を示しています。しかも、ARMの収入源は、ライセ
ンス料とロイアリティが中心です。しかも、このようにして得ら
れるIP(知的財産権)は25年以上有効というのですから、安
定そのものです。
 SBGがARMを買収する前年の2015年でいうと、ARM
が設計した集積回路は148億個、さらにARMチップを搭載し
たスマホが14億個も売れて売れています。モバイル端末での市
場シェアは実に82%、これによってARMには莫大なロイヤリ
ティが入ってきます。
 しかし、業績が好調であればあるほど、株主は「小さくしか儲
けていないんじゃないか」という批判が出てくるものです。それ
が内海弦社長がいう「ARMは2000億円企業です」によくあ
らわれています。
 しかし、ARMとしては、サーバー製品のようにインテルに独
占を許している分野がたくさんあり、その競合に勝利するには、
多くの資金が必要であることがよくわかっています。その点、S
BGの孫正義会長は、早くからARMを高く評価しており、英国
の首相や財務大臣にも会っており、英国政府からも信頼されてい
ます。ARMの経営陣としては、ARMの将来の発展を考えるの
であれば、ソフトバンクの買収に応ずるのは、マイナスではない
と考えても不思議はないとて、SBGの買収に応諾したのではな
いかと考えられます。
 この点について、現在、スペイン在住のITコンサルタント・
佐藤隆之氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 このように競争が激化する半導体設計の中で、ARMの技術力
は突出しており、競合のインテルやAMDですらARMの力を借
りる、つまりライセンス契約を締結するほどです。ほとんどの半
導体市場で高いシェアを有するARMですが、唯一、サーバー製
品だけはインテルの独占を許しています。現在の株価に42・9
%のプレミアムの付いたソフトバンクによる買収により、ARM
は巨額の資金を調達できるので、強みを持つモバイルや組み込み
機器へはもちろん、サーバー製品への投資も拡大させると見られ
ています。  ──スペイン在住・コンサルタント/佐藤隆之氏
─────────────────────────────
 Bについては、来週のEJで述べることにします。
           ──[メタバースと日本経済/048]

≪画像および関連情報≫
 ●ソフトバンク孫社長はARM買収で「シンギュラリティ」
  を先取りしようとしている
  ───────────────────────────
   ソフトバンクグループによるARM買収という発表を受け
  た業界の反応は、総じてネガティブなものだった。「なぜソ
  フトバンクが半導体会社を買うのか」「既存の事業とのシナ
  ジーが期待できない」といったところだ。
   さらに世間を驚愕させたのが、約3兆3000億円という
  あまりにも巨額な買収金額である。過去に、ソフトバンクが
  行ってきたボーダフォン日本法人買収の1兆7820億円、
  米スプリント買収の約1兆8000億円と比べても2倍に近
  い金額なのだから、にわかには、理解できないのも無理はな
  い。実際、翌7月19日の株式市場はソフトバンク株が急落
  した。
   なぜ、孫正義社長は、このような大胆な買収に踏み切った
  のだろうか。もちろん単なる勢いでこんなことをやれるはず
  がない。すべての始まりは、いまから約40年前の孫社長が
  まだ19歳だったときのこと。カリフォルニア大学バークレ
  ー校の学生だった孫社長の目にとまったのは、読みかけのサ
  イエンス雑誌に掲載されていた1枚の摩訶不思議な写真。そ
  れがマイクロプロセッサーの拡大写真であることを、そのと
  き初めて知ったのである。「大きなコンピュータが、指先に
  乗っかるサイズになった。ついに人類は、自らの知性を超え
  るものを自らの手で作り出してしまったという思いに手足が
  ジーンとしびれ、涙が止まらなかった。そのときの感動と興
  奮を、これまでの40年間にわたって潜在意識に中にずっと
  封印していた」まさにその封印を解いたのが、ARMとの出
  会いだったわけだ。       https://bit.ly/3LAJt47
  ───────────────────────────
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ARM買収について語る孫正義会長
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2023年03月27日

●「SBGのARM売却が不成立の理由」(第5933号)

 ARMに対するソフトバンクグループの孫会長の対応を再現し
ます。@とAについては、既に述べていますので、今日は、Bに
ついて述べることにします。
─────────────────────────────
   @ソフトバンクの孫会長はなぜARMを買収したのか
   AARMはなぜソフトバンクの買収を受け入れたのか
 → BARMをなぜエヌビディアに売却しようとしたのか
─────────────────────────────
 2020年9月13日のことです。同日の日本経済新聞に次の
記事が掲載されたのです。
─────────────────────────────
 ソフトバンクグループ(SBG)が傘下の英半導体設計アーム
を米半導体大手エヌビディアに売却する方向で最終調整に入った
ことが13日、明らかになった。2社はSBGがエヌビディア株
を取得するなど、売却に株式交換を組み合わせる方向で調整して
いる。売却額は4兆円規模となる見通しだ。
         ──2020年9月13日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 EJは、技術の専門マガジンではないので、エヌビディアにつ
いて説明する必要があります。エヌビディア(NVIDIA)と
は、コンピュータの画像処理を行うための半導体、GPU(グラ
フィックス・プロセッシング・ユニット)の世界有数の米国のメ
ーカーです。ゲーム分野やAIの機械学習などに用いられること
が多く、1993年に創業し、1999年に米NASDAQ市場
に上場しています。AIのためには、なくてはならない企業の一
つです。
 なんと孫会長は、彼の類稀なる先見の明によって獲得したAR
Mを売却するというのです。売却額は最大400億ドル、日本円
にして4・2兆円になります。ARMは3・3兆円で買収してい
るので、損はしませんが、孫会長が投資目的のために、ARMを
買ったとは思えないのです。
 最大の理由は、SBGの手元資金確保のためと考えられます。
おそらく背に腹は代えられないという思いではないでしょうか。
SBGは投資会社としての側面を強めてきており、「ソフトバン
ク・ビジョン・ファンド」を設立して、多くのAI関連企業に投
資をして事業拡大を進めてきたところだったのです。なかでもA
RMは、近い将来価値が出るとして、SBGが大事に育ててきた
企業です。
 しかし、コロナ禍で、投資先企業の株価下落などによって業績
が急速に悪化し、資金不足に陥ったのです。その防衛策として、
Tモバイルの米国法人や、アリババ、ソフトバンクなど、同社が
持つ株式の一部を売却するなどして、現金の確保を積極化してき
たのです。そこに、エヌビディアが有力な買い手として、登場し
たというわけです。
 米国へのARMの上場か、それとも売却か──どちらも大きな
カベがありますが、上場より多く利益が出せる可能性の高い買い
取り手が現れたことによって、SBGの孫会長の心が大きく動い
たものと思われます。
 しかし、ARMのエヌビディアへの売却は実現しなかったので
す。本契約をめぐり、米連邦取引委員会(FTC)は2021年
12月に半導体市場の競争を阻害するとして、買収差し止めを求
めてエヌビディアを提訴したからです。英国やEU各国の政府な
ども反対姿勢を見せたといいます。
 米連邦取引委員会は、SBGの孫会長を警戒しているのです。
孫会長は、独占禁止法によって、この買収を差し止めるのは無理
があるとして次のように批判しています。
─────────────────────────────
 通常、同じ業界の2社が合併する場合は独占禁止法の問題で止
められるが、エヌビディアとARMは、エンジンとタイヤぐらい
違う物を作っている。そんな2社の合併を独占禁止法で阻止する
のは、同法が始まって以来初めてのケースである。なぜそれほど
までに止めなければならなかったのか。非常に驚いた。
 IT企業や各国政府が、そこまで止めなければならないという
くらいに、ARMは欠かすことのできない最重要企業の一つであ
るということである。         ──SBG孫正義会長
                  https://bit.ly/3JIhZqA
─────────────────────────────
 FTCや英国やEU各国の政府は、孫会長の本音を見抜いて、
売却を差し止めたのではないかと思われます。その本音とは「A
RMをエヌビディアに合併させ、そのうえで、エヌビディアの筆
頭株主になる」というものです。つまり、ARMのエヌビディア
の子会社化で、半導体業界最強の会社を作り、SBGがそこの筆
頭株主になるというものです。
 それでは、孫会長はどうしようとしているのでしょうか。
 それは「プランA」に戻ることです。プランAとは、ARMを
米NASDAQへ上場させることです。ARMの技術はこれまで
IоT機器やスマートフォンのSoCなど、省電力性が求められ
る機器に採用されてきていますが、処理能力の向上で、クラウド
サーバやEV、メタバースなど、さまざまな分野での活用が見込
めるようになっているからです。そういうわけで、孫会長は、半
導体業界史上最大の上場を目指すとしています。
 この売却不成立によって、買収時にエヌビディアが先払いした
12・5億ドル(約1448億円)は、大型買収の手付金のよう
な性質があるため、エヌビディアに返却されず、SBGの利益に
なるといいます。SBGにとって大儲けのように思えますが、エ
ヌビディアは、ARMから20年間のライセンス利用権を取得し
ているので、損はしていないのです。エヌビディアほどの規模で
あれば、20年のライセンス料としての12・5億ドルは、「か
なり格安」といえるからです。
           ──[メタバースと日本経済/049]

≪画像および関連情報≫
 ●ARM再上場を準備するソフトバンクG、孫氏復活は
  「もうしばらく時間を」--赤字は継続
  ───────────────────────────
   ソフトバンクグループは2月7日、2023年3月期第3
  四半期決算を発表。売上高は前年同期比6・4%増の4兆8
  758億円、税引前損益は2900億円、純損益は9125
  億円と、今期も赤字決算となった。
   中国アリババの株式を一部手放すなど、アリババ関連の取
  引で3兆6996億円の利益を得た一方、AI関連を中心と
  した投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」で
  の投資損失が5兆68億円と大きく響いたことが赤字の主な
  要因となっている。
   その背景には世界情勢不安などによる株式市場の不安定さ
  があり、同社もこの四半期、ソフトバンク・ビジョン・ファ
  ンドで新たに投資した企業は2社のみとのこと。攻めから守
  りへと戦略を大きく転換したことから、今回の決算からは代
  表取締役会長兼社長執行役員の孫正義氏が登壇せず、代わり
  に取締役・専務執行役員・CFO兼CISOの後藤芳光氏が
  単独で説明する形が取られている。
   その後藤氏も、株式市場の不安定な時期がまだまだ継続し
  ており「とても楽観視できる状況にない」と話す。それに加
  えて為替の大幅な変動や金利の上昇などもあって市場全体の
  不安定要素が増していることから、後藤氏はソフトバンクグ
  ループの財務健全性に重点を置いた説明を実施している。
                  https://bit.ly/42CSYFZ
  ───────────────────────────
ARMをNVIDIAに売却へ.jpg
ARMをNVIDIAに売却へ
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2023年03月28日

「PCプロセッサのARM化が進行中」( 第5934号)

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本が3大
会ぶりに優勝!!これは快挙です。専門家の試算によると、その
経済効果は、およそ600億円に上るといわれます。これまで低
迷を続けてきている日本経済の浮上に一役買うことは確かである
といえます。
 ここまで、国産半導体メーカーの新会社「ラピダス」の誕生に
とってその投資陣にARMを傘下に擁するSBGが加わっている
ことの意義について、ARMについて詳しく述べてきています。
たびたび取り上げているARMホールディングの日本法人、アー
ム株式会社の代表取締役社長の内海弦氏は、ARM買収による日
本経済への貢献について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 海外企業の日本法人ではあるものの、アームとして日本の経済
に貢献したいという気持ちは強い。買収前は、英国本社や株主の
意向が重視されており、そういった気持ちを実業につなげるのは
難しいことも多かった。しかし現在は、株主であるソフトバンク
が日本にいるわけで、以前よりも格段に風通しが良くなった。
 日本は技術のタネができる国であり、自動車、ハイテク、FA
医療機器などの分野では技術のトレンドセッターだ。その技術の
タネを使って日本の経済に貢献する活動を強い意志を持ってやれ
る環境が整ったと感じている。  ──アーム株式会社内海社長
                  https://bit.ly/40yEgOy
─────────────────────────────
 ARMについては、まだ述べることがたくさんあります。AR
Mは、コンピュータ・プロセッサとしては、インテルやAMDな
どのCISCアーキテクチャのファミリーと違い、RISCアー
キテクチャのファミリーに属しています。
 プロセッサー・アーキテクチャとしてのRISCは、現在、世
界で最も普及しており、各種センサーからウェアラブル端末、ス
マートフォン、スーパーコンピュータに至るまで、毎年数十億個
ものARMベース・デバイスが出荷されており、過去30年間に
パートナーが出荷したARMベースのチップは2500億個を超
えています。
 2022年10月13日未明のことです。マイクロソフトは、
次のオンライン・イベントを行い、自社ブランドPC「サーフェ
ス」シリーズ3種類の新製品群を発表しています。
─────────────────────────────
     ◎「Microsoft Fall 2022 Event」
      @「サーフェス・ラップトップ5」
      A「サーフェス・スタジオ2+」
      B「サーフェス・プロ9」
─────────────────────────────
 注目なのは「サーフェス・プロ9」です。これには2機種あっ
て、次のようにそれぞれプロセッサーが異なるのです。
─────────────────────────────
 @インテルの「第12世代コアiシリーズ」プロセッサーを
  搭載した仕様/インテル版/価格16万2580円
 Aクァルコムと協業で開発したARM系プロセッサー「SQ
  3」を搭載した仕様/SQR版/価格21万6480円
─────────────────────────────
 注目はAです。この機種は正確には「サーフェス・プロ9ウィ
ズ5G」といい、5Gでの通信機能を標準搭載するモデルであっ
て、「SQ3」というARM系プロセッサーを搭載しています。
遂にPCのプロセッサーにもARMが登場してきています。
 2つの機種とも、ボディサイズ・重量にほとんど違いはなく、
ディスプレイなど基本的なスペックは同じですが、「バッテリー
駆動時間」が違います。インテル版が「一般的な処理で15・5
時間」とされているのに対して、SQ3版は「19時間」となっ
ており、ARM系プロセッサーの特徴を表しています。なお、S
Q3版で動作するのは、ARM版ウインドウズ11ということに
なります。「サーフェス・プロ9」について、ITジャーナリス
トの西田宗千佳氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 マイクロソフトは、SQ3を使った「サーフェス・プロ9ウィ
ズ5G」を、主に企業向けと位置付けている(公式サイトからの
注文では個人でも購入は可能)。個人ユーザー向けに出荷するの
は、あくまでインテル製プロセッサーを使った「サーフェス・プ
ロ9」となる。これは、エミュレーションによる分かりにくさに
関するリスクなどを避けた結果かとも思う。
 マイクロソフトのこの対応は、2020年にアップルが一気に
「M1」でARM系チップに舵を切ったのとは、対照的とも言え
る。アップルも、当初はエミュレーションを売りにしてアプリの
互換性を担保していたからだ。また、5G接続は企業ニーズが中
心、ということも影響しているだろう。だから、インテルのシェ
アが一気に下がる・・・ということは考えづらい。
                  https://bit.ly/3nnqMqz
─────────────────────────────
 ここで「コンピュータ・プロセッサ」といわれ、単に「プロセ
ッサ」と呼ばれることのあるこの技術用語が非常にわかりずらく
なっています。おおまかには「プロセッサ=CPU」と考えて大
きな間違いはありませんが、ARMの拡大によって「SoC」も
プロセッサと呼ばれることもあるからです。PCの世界にもAR
Mプロセッサが進出しつつある現在、CPUとSoCの違いにつ
いて、再度頭の整理をしておく必要があります。
 スマホではSoCは当たり前ですが、ノートPC向けSoCも
あるのです。ノートPCにSoCが搭載されると、何が変わるの
でしょうか。ノートPCを購入するときの前提知識になる可能性
があります。いずれにしても、プロセッサは、インテルとAMD
の時代ではなくなってきているといえます。
           ──[メタバースと日本経済/050]

≪画像および関連情報≫
 ●巻き返しの準備を進める「Intel」/約束を果たせなかった
  「Apple」――プロセッサで振り返る2022年
  ───────────────────────────
   2022年の大みそか――アップルはこの日までに“全て
  の”Macをアップルシリコン化、すなわち自社設計SoC
  への移行を完了するはずだった。しかし現実を見てみると、
  「Macミニ」の一部モデルと「Macプロ」の全モデルに
  は、“いまだに”インテル製CPUのままである。その理由
  は定かではないが、アップルが珍しく自信を持ってアナウン
  スしていた計画を達成できなかった例となってしまった。
   一方でインテルはパフォーマンスコア(Pコア)と高効率
  コア(Eコア)のハイブリッド構造を本格採用した「第12
  世代コアプロセッサ(開発コード名:Alder Lake)」が好評
  を持って迎えられ、一時期の“停滞”を脱してかつてのいき
  おいを取り戻しつつある。
   2022年を締めるに当たり、主にアップルとインテルと
  の2社を、SoC(CPU)視点で振り返ってみよう。
   ここ数年、アップルは自社設計のSoCをうまく活用し、
  さまざまな驚きを演出してきた。
   あまりに多くの人が手にしているため軽視されがちだが、
  アイフォーン13/13プロシリーズが搭載した「A15バ
  イオニックチップ」は、電力効率とピークパフォーマンスの
  バランスに優れた“名作”ともいえるSoCだった。
                  https://bit.ly/42Sg7o6
  ───────────────────────────
「サーフェス・プロ9」.jpg
「サーフェス・プロ9」
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2023年03月29日

●「ARM・PC/使い勝手が変化する」(第5935号)

 SoC(System on Chip)といえば、スマホ用CPUのことで
したが、今や「PC用のSoC」というものが続々と登場してい
ます。そこで、米クァルコム(Qualcomm)のSoC「スナップド
ラゴン/Snapdragon」を使ったノートPCをもう1台ご紹介する
ことにします。クァルコムは、カリフォルニア州に本社を置く米
国のモバイル通信技術関連の大手企業です。
 現在のノートPCに求められる機能としては、次の4つが上げ
られます。
─────────────────────────────
      @パワフルな性能
      A長時間のバッテリー駆動
      B5G回線による常時ネットへの接続
      Cテレワークでの使いやすさ
─────────────────────────────
 このノートPCの条件にすべて合格するノートPCが、ヒュー
レッド・パッカード(HP)製の次のノートPCです。
─────────────────────────────
      ARM系CPUでもウインドウズが動く
   ヒューレッドパッカード/エリート・フォリオ
                 HP Elite Folio
─────────────────────────────
 「エリート・フォリオ」はどのようなPCであるのか、その主
要機能を以下に示すことにします。
─────────────────────────────
   CPU:クァルコム/スナップドラゴン/8cx Gen2(3GHz)
 コア数など:8コア/8スレッド
   メモリ:LPDDR4X/8GB(16GB)
 ストレージ:NVMeSSD(256GB/512GB)
    OS:ARM版ウインドウズ10プロ
    無線:WiFi6、ブルーツゥース
    重量:1・3Kg
    価格:18万4580〜19万7780円
─────────────────────────────
 CPUの欄に「スナップドラゴン」とあります。CPUとあり
ますが、正確にはPCの各種機能が集約化されたSoCです。こ
れはスマホでは定番のARM系のCPUですが、“8cx Gen 2”
はPC用に設計された高性能モデルです。8コア8スレッド(C
PUが8個付いたモデル)で、動作クロックは最大3GHzであ
りながら、きわめて低い消費電力でそれを実現しています。
 添付ファイルに、このエリート・フォリオで、マイクロソフト
オフィスがどのように動くか、インテルのコアi5−7200搭
載ノートPCと比較したベンチマークテストの結果のグラフを付
けています。青がヒューレッド・パッカード、赤がインテルを表
しています。アウトルック以外は、ヒューレッド・パッカードが
上回っているように見えます。
 しかし、インテルのコアi5は、インテルのCPUとしては低
いレベルであると思うので、むしろARM系のCPUでも、イン
テルのコアi5レべルまで来たというぐらいに捉えるべきである
と思います。
 この日本HPエリート・フォリオを試用した芹澤正芳氏は、そ
の使用体験について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 スマホ感覚の実現でもう1つ欠かせないのが長大なバッテリ駆
動時間だ。公称で約21・1時間を実現しており、これならば、
カフェや移動中の社内などでPCを使っても日中の充電は不要と
言える。駆動時間を気にすることなく仕事ができるし、充電器を
持ち運ぶ必要もない。寝るときに充電すれば十分というのはまさ
にスマホと同じだ。(中略)
 また、テレワークでの利用を想定してパワーポイントでスライ
ド作成15分、ワードで文章作成15分、Zoomでウェブ会議
15分、ウェブブラウザ(Edge)でサイト巡回を15分の合計1時
間の利用でバッテリの消費は7%だった。単純計算ではあるが、
この使い方なら約14時間30分はバッテリが持つことになる。
実に心強い。
 ARM版ウインドウズ10ということで動作アプリの問題が一
番気になるところだろうが、32ビット(x86)版アプリが動
き、ARMネイティブアプリも増えつつあるので現状仕事で困る
ことはあまりない。
 何よりファンレスで十分なパフォーマンスがあり、バッテリの
残量を気にせず1日使えるのは何より心強い。カフェで仕事する
際にコンセントが使えるか調べる必要もないし、会議や打ち合わ
せでもバッテリが保つか心配することもなくなるので、ACアダ
プタを持ち歩く必要もない。
 まだまだ数は少ないが、圧倒的な低消費電力を持つARM系C
PU搭載ノートPCは、新たなビジネススタイルを生み出す可能
性を十分持っていると、今回HPエリート・フォリオを試用する
ことで実感できた。        https://bit.ly/3nn0UuW
─────────────────────────────
 HPのエリート・フォリオについて、大事なことを一つ忘れる
ところでした。このノートPCには、CPUを冷やすファンが付
いていないことです。そのため、バッテリーの持ちがよくなって
います。それがARMのCPUの最大の特色です。
 ARMのプロセッサがスマホから発展して、ノートPCまで進
出し、ノートPCの使い勝手が変わろうとしています。13・5
型のディスプレイは、タッチ仕様に加えて、専用ペンの利用も可
能になっています。ペンでちょっとしたことをメモしたり、スマ
ホ感覚でタッチパットも使えます。
 実は、ARMプロセッサの進撃は、インテルとAMDが支配す
るサーバー分野にも進出を行おうとしています。明日のEJで取
り上げます。     ──[メタバースと日本経済/051]

≪画像および関連情報≫
 ●中国半導体業界 脱海外発の動き──RISC−V
  ───────────────────────────
   2020年9月、「ソフトバンクがアームをエヌビディア
  に売却」と大きく報道された。アームもエヌビディアも、一
  般の人々が直接触れることの少ない半導体に関係するIT企
  業だが、ソフトバンクは243億ポンド(約3・3兆円)で
  買収し、400億ドル(約4・2兆円)で売却する、という
  額が桁外れで話題となった。
   日本で時価総額4兆円の企業はセブン&アイ、みずほグル
  ープ、三井物産あたりになる。そのアーム社はコンピュータ
  の基本設計といわれるアーキテクチャー(設計構造)を開発す
  る会社。アーキテクチャーはいわば構造で、組立て方、接続
  方法、指令方法などの規格体系。ICの設計は、決まった受
  け皿の上に設計者が必要な機能を載せていくイメージ。
   同社は、主に半導体企業にライセンス供与して収入を得る
  英国起源の会社である。といってもやはり、なんだそれは、
  と普通思うだろう。例えば、スマートフォンの中核で司令塔
  に当たるプロセッサーは、アイフォーンもアンドロイドもほ
  とんどがアームのアーキテクチャーを採用している。主な理
  由は、アームの特徴である低電力消費にある。スマートフォ
  ン最大の弱点で、いつまでたっても抜本的に解決されない課
  題は電池。現在主流のリチウムイオン電池を搭載した例えば
  アイフォーンも、ほぼ毎日充電しないといけない。そのため
  とにかく消費電力が低いことが求められる。
                  https://bit.ly/3FUrGBe
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エリート・フォリオのベンチマーク.jpg
エリート・フォリオのベンチマーク
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2023年03月30日

●「ARMプロセッサHPC分野進出」(第5936号)

 ARMプロセッサが、スマホやIоTデバイス、ラズベリー・
パイや組み込み機器などの比較的小型電子機器などに幅広く使わ
れているだけでなく、いわゆる「ウインテル」がこれまで支配し
ていたPCの分野や、スーパーコンピュータなどへも進出してい
ることは、ここまでの記述でわかると思います。
 なぜ、そこまで普及したのかというと、ARMのプロセッサは
その性能に対して消費電力少ないことと、発熱が少ないことがメ
リットとして上げられるからです。この消費電力が少ないことと
発熱の少ないことが、コンピュータをはじめとするあらゆる電子
機器において、現在、最も重要になっているのです。
 そしていまARMがターゲットにしているのが、サーバー分野
への進出であり、それは既に始まっています。ARMのサーバー
分野への進出について、ARM日本法人の内海弦社長は、201
9年12月の講演で、次のように述べています。
─────────────────────────────
 一番最近ですと、サーバーやクラウドでも利用が始まっていま
す。サーバーやクラウドは、ほかのプロセッサで言う“パフォー
マンス重視”の場合の一番の牙城だったわけです。そこでも、だ
んだん電力消費が問題になってきたんですね。
 なぜかと言うと、サーバーのデータセンターを運営する場合に
エアコンの電気代もほぼ同じくらい電気を食っていることが、み
なさんもうおわかりになってきたんです。そうすると、どうやっ
て下げるかと言うと、一番電気を食っているプロセッサとストレ
ージの部分の電力を下げないといけない。電力の先鋒となるプロ
セッサに、電力効率がいいものが求められてきているというのが
現状でございます。         https://bit.ly/3TOvycC
─────────────────────────────
 まだ十分見えていないところが多いですが、ARMのサーバー
向けプロセッサについて、情報を集めてみることにします。AR
Mがサーバー専用プロセッサブランドとなる「ネオバース」を発
表したのは、米国における技術者向けのイベント「ARMテクコ
ン/2018」においてです。「ネオバース/Neoverse」は、サ
ーバー向けに設計されるプロセッサとなり、ARMとしてはこの
「ネオバース」によって、本格的にサーバー向けのプロセッサに
参入したことになります。
 現在、「ネオバース」は、「HPC4分野」といわれる分野に
おいて、着実に採用が拡大しています。「HPC4分野」とは次
の4つの分野です。
─────────────────────────────
      ◎HPC4分野/High Performance Computer
       @クラウドやデータセンター
       A5Gなどの無線通信インフラ
       Bネットワーク/エッジ機器
       Cスーパーコンピュータ
─────────────────────────────
 とくにAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)や、マイクロソ
フトの「アジュール」といったパブリッククラウドへの浸透で、
ARMとしては手応えを得ているといいます。
 ARM英国本社において、インフラストラクチャ事業部門・シ
ニア・バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーを務めるク
リス・バーギー氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 現在、ARMのなかで、最も勢いのある事業は「車載」、そし
て「インフラ」である。       ──クリス・バーギー氏
─────────────────────────────
 @のクラウドレベルの採用において、アマゾンのAWSや、マ
イクロソフトのアジュールのほか、オラクルの「オラクル・クラ
ウド・インフラストラクチャ」、アリババの「アリババ・クラウ
ド」、テンセントの「テンセント・クラウド」などに採用が拡大
しています。
 Aの5Gなどの無線通信インフラ向けでは、レノボ、デル・テ
クノロジーズ、そして、HPE(ヒューレッド・パッカード・エ
ンタプライズ)が、「ネオバース」ベースのシステムをリリース
しています。
 今後、ARMのサーバー用プロセッサ「ネオバース」がどこま
で拡充するかについて、デル・テクノロジーは、次のような見解
を述べています。
─────────────────────────────
 デルとしては、x86サーバー(インテル系)がすべてARM
サーバーに切り替わるとは思っていません。x86サーバーとA
RMサーバーが共存する「ハイブリッドデータセンター」といっ
たイメージを描いています。
 PCやモバイル、スマートフォンなどの膨大なアクセスをさば
くには、高密度で、低消費電力のウェブサーバーが、多数必要に
なります。ウェブサーバーの上のレイヤでは、大規模なメモリ容
量を必要とするmemcached(メムキャッシュディ)、 データベー
ス、アプリケーションサーバーなどが必要になります。こういっ
たソフトウェアは、現状ではx86をベースとした既存のサーバ
ーが利用されると思います。
 将来的に、64ビットARM上で多くのアプリケーションやシ
ステムが開発され、成熟してくれば、いくつかの機能が、ARM
サーバー上に置かれるようになるでしょう。ただ、現状ではOS
やアプリケーションなどのソフトウェアが開発途上にあるため、
どこまでARMサーバーに置き替わるかわかりません。フロント
のウェブサーバーとして利用するには、現状でもARMサーバー
はメリットがあると思います。    https://bit.ly/42NtndC
─────────────────────────────
 HPC分野の話になると、技術的に難しい言葉がたくさん出て
くるので、内容を正確に把握するのは大変だと思います。
           ──[メタバースと日本経済/052]

≪画像および関連情報≫
 ●ARMは2025年までにデータセンター向けCPUの
  22%を占める
  ───────────────────────────
   台湾の調査会社トレンドフォース(TrendForce)は、クラ
  ウドサービスプロバイダーによるARM対応プロセッサの採
  用が進み、2025年までにデータセンターサーバにおける
  ARMアーキテクチャの普及率が22%に拡大すると予想し
  ている。
   3月下旬に発表されたレポートでは、ARMベースのクラ
  ウドインスタンスの設置台数を増やしているAWSが、AR
  MのCPU設計図が、サーバーに普及する大きなきっかけに
  なっていると指摘し、競合するクラウド事業者が、自社製の
  チップ設計でキャッチアップすることを余儀なくされている
  と述べている。この報告書には、先月NVIDIAがARM
  の買収に失敗し、その後ARMが米株式市場への再参入を計
  画していることが、サーバーの採用にどのような影響を及ぼ
  すかについては言及されていない。
   いずれにせよ、人工知能(AI)や高性能コンピューティ
  ングなどの分野でより大きな需要に直面するクラウドプロバ
  イダーにとって、こうした自社開発のARM互換チッププロ
  ジェクトは、より柔軟な対応を可能にしている。これがデー
  タセンターにおけるARMの採用が今後も続くと、トレンド
  フォースが考える大きな理由の1つだ。「テストが成功すれ
  ば、これらのプロジェクトは2025年に大量導入を開始す
  ると予想される」        https://bit.ly/3npzhBl
  ───────────────────────────
「ネオバースV2」.jpg
「ネオバースV2」
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2023年03月31日

●「日の丸半導体はなぜ敗れたか」(第5937号)

 今回のテーマ「メタバースと日本経済」で、3月7日から半導
体のことを書いています。メタバースが成功するかどうかも、日
本経済が立ち直れるかどうかについても、半導体と無関係ではな
いからです。本日で18回目です。
 「チップ4」という米国主導の枠組みをご存知ですか。
 これは、特定国家──中国のことですが、半導体から中国を排
除しようという意図を持つ考え方です。もっとわかりやすくいう
と、米国主導で、日本、韓国、台湾をまとめ、一種の「半導体同
盟」を作ろうという試みです。
 米バイテン政権がこの枠組みを提案したのは、世界の半導体生
産の8割がアジアに集中しており、それが、米国半導体の弱点に
なっていることに気が付いたからです。半導体生産に関しては、
米国は10%のシェアしか持っていないのです。
─────────────────────────────
      ◎半導体生産の8割はアジア集中
        韓国 ・・・・・・ 24%
        台湾 ・・・・・・ 23%
        中国 ・・・・・・ 15%
        日本 ・・・・・・ 14%
        米国 ・・・・・・ 10%
        欧州 ・・・・・・  5%
       その他 ・・・・・・  9%
                  https://bit.ly/40nNeyt
─────────────────────────────
 半導体生産のシェアで重要なのは、韓国と台湾で47%を生産
していることです。約半分です。とくに台湾は、世界最大のファ
ウンドリのTSMCを中心に米国半導体の多くを作っているとこ
ろです。この状況で、もし、台湾有事で中国が台湾に侵攻し、手
中に収めたら、何が起きるでしょうか。中国側にサプライチェー
ンを握られてしまい、国家の安全保障、軍事防衛を考えると、そ
れは米国の危機そのものといえます。
 かつての日本は半導体生産に圧倒的に強く、1988年には世
界の半導体生産の50%以上を占めていたのです。その日本が今
や中国にも抜かれており、世界第4位に転落しています。一体何
があったのでしょうか。
 これについて、東洋経済・解説部コラムニストである山田雄大
氏は、次のことを指摘しています。
─────────────────────────────
 1940年代後半に、半導体を発明したのはアメリカだ。19
80年代にそのアメリカに日本は半導体の製造で勝った。それは
1970年代に日本が新しい技術を作ったからだ。たとえば、ク
リーンルームという概念を生み出した。アメリカでは製造現場に
靴で入っていたが、日本では清浄な環境で造らないと不良品が出
るとクリーンルームを作った。半導体の基本特許はアメリカ発か
もしれないが、LSI(大規模集積回路)にしたのも日本だ。私
たちの先輩がゼロから切磋琢磨しながらやった。
  もう1つ大事なことがある。マーケットがあったことだ。当
時日本の大手電機は、みんなNTTファミリーで通信機器やコン
ピュータを造っていた。半導体は自社の通信機器やコンピュータ
の部門が大口顧客だった。自社のハードを強くするために強い半
導体がいる。通信機器部門やコンピュータ部門にとって、自社で
半導体部門を持つメリットがあった。各社がよりよいコンピュー
タを作ろうと競い合った。自社の大口顧客に応えるために、半導
体部門も開発に力を注いだ。半導体を利用する顧客が近くにいる
ことでよいものができた。それを外に売れば十分に勝てた。19
80年代から90年代の初頭まではね。
                 https://bit.ly/3M1KWAM
─────────────────────────────
 それほど天下無類であったの日の丸半導体が、なぜ崩壊してし
まったのでしょうか。
 それは、マーケットが通信機器からPC(パソコン)に変わっ
たことが原因です。それも各社独自仕様のPCを作っていたとき
はまだ良かったのですが、1981年からのIBM互換機の時代
になると、半導体は良いものを作るというよりも、同じものをい
かに安く作るかの競争になったのです。
 当時の日本としては、NTT仕様の自社通信機器向けの半導体
は35年の世界で、設計、プロセス、品質管理もその水準でやっ
ており、PC向けについても同じサービスを提供したのですが、
そのとき必要とされたものは、品質よりも安さだったのです。当
時のPCは数年持てばよいと考え方であったといいます。
 もう1つ原因があります。日本は、技術振興のための国家プロ
ジェクトが上手ではないということです。国産コンピュータ製作
国家プロジェクト「TAC」が、個人で製作した富士写真フィル
ムの「FUJIC」に敗れています。その理由について、山田雄
大氏は「半導体部門が決定権を持っていない」として、次のよう
に訴えています。
─────────────────────────────
 半導体部門自体が決定権を持っていないということは、国プロ
が成功しないという問題だけにとどまらなかった。投資などを決
めるのは本社様で、半導体のマーケットをわかっている人間が、
(投資の)賭けに打って出ることはほとんどできなかった。しか
も、半導体が儲かったときは(利益を)全部吸い上げられるし、
損をしたときは(事業を)止めろと言われる。
 欧米では1990年代に半導体事業が総合電機からスピンアウ
トした。日本でそれが起こったのは2000年になってからだ。
そうしてできたのがエルピーダ(メモリ)とルネサス(エレクト
ロニクス)の2社だが、意思決定が10年以上遅かった。
                  https://bit.ly/3ZnELK3
─────────────────────────────
           ──[メタバースと日本経済/053]

≪画像および関連情報≫
 ●日本が半導体戦争に惨敗した真因ーーソフト開発軽視
  が致命傷に
  ───────────────────────────
   1954年、東京通信工業(現ソニー、以下:東通工)で
  テープレコーダーの製造部長を務める岩間和夫氏が、米国ペ
  ンシルベニア州にあるウエスタン・エレクトリック(WE)
  社を訪れた。
   多くの人にとってウエスタン・エレクトリックはまだ聞き
  慣れない名前かもしれないが、傘下にかの有名なベル研究所
  を抱えている。世界のチップ産業の土台をなす「トランジス
  タ」はベル研究所で発明された。1952年、ちょうど米国
  を視察中だった東通工の創業者・井深大氏はトランジスタが
  テープレコーダーの開発に活用できると考え、2万5000
  ドル(当時のレートで約900万円)でトランジスタの特許
  使用契約を結んだ。しかしこの決断は社内から猛反対を受け
  る。トランジスタを発明した米国人でも作れないのに、日本
  人が製造できるはずはないというのだ。井深氏が買い取った
  特許権には、技術の詳細や製造方法は含まれておらず、どう
  作るかも分からないものの図面に大枚をはたいたようなもの
  だった。当時、東通工にあった唯一の資料といえば、同じく
  創業者の盛田昭夫氏が米国から持ち帰った書籍「トランジス
  タ技術」3冊のみだった。途方にくれていたとき、前出の岩
  間氏がトランジスタ研究のため米国に赴くことを申し出る。
  米国ではウエスタン・エレクトリック社の職員が家族のよう
  に喜んで迎えてくれたものの、写真撮影やノートをとること
  は一切許されなかった。    https://bit.ly/42MOaxT
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IC(集積回路).jpg
IC(集積回路)
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする