速報値が、内閣府から発表されました。14日の日本経済新聞夕
刊は、これについて次のように報道しています。
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◎日本のGDP年率0・6%増
/10〜12/2四半期ぶりプラス
内閣府が14日発表した2022年10〜12月期の国内総生
産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整
値で前期比0・2%増、年率換算で0・6%増だった。プラス成
長は2四半期ぶり。22年の実質GDPは前年比1・1%増で、
2年連続のプラスだった。新型コロナウイルス禍から経済の正常
化が緩やかに進んでいる。 ──2022年2月14日付
日本経済新聞夕刊より
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これによって、2022年の成長率は、個人消費や設備投資な
どが全体を押し上げた結果、2022年における実質経済成長率
は、1・1%になっています。海外需要は0・6ポイント押し下
げになったものの、国内需要が1・7ポイントのプラスになって
います。
GDPを項目別にみると、個人消費は2・1%増加し、コロナ
禍からの回復によって、サービスなどの消費が伸びています。設
備投資は1・8%増と、2021年の0・8%増からの伸びが加
速しています。
しかし、2022年は、1〜3月期と7〜9月期がマイナス成
長になるなど、コロナ禍からの回復の足取りは鈍く、2022年
暦年のGDPは546兆円と、コロナ禍前の水準である550兆
円を下回っている状態です。後藤茂之経済財政・再生相は、次の
ようにコメントを出しています。
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ウィズコロナの下で景気が緩やかに持ち直している。目下の物
価高に対する最大の処方箋は、物価上昇に負けない継続的な賃上
げの実現である。 ──後藤茂之経済財政・再生相
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ちなみに、名目GDPは1・3%で、実質GDP1・1%を上
回っています。これは、物価が上昇し、時価のGDP、すなわち
名目GDPが膨らんだ結果です。これを調整するためのGDPデ
フレーターは、前年比プラス0・2%であり、これは2021年
のマイナス0・2%から、上昇に転じています。
なお、GDPデフレータは、名目GDPの物価水準の変化分を
調整するときに使われます。物価が上昇している場合には、「名
目GDP>実質GDP」となりますが、物価が下落している場合
には、物価の下落分をGDPデフレーターにより膨らませるため
反対に「名目GDP<実質GDP」となります。
2月9日のEJ第5903号でご紹介した2023年のIMF
の「世界経済見通し」について、2月14日の日本経済新聞夕刊
では、次のようにコメントしています。このなかで日本の経済見
通しについては、1・8%と上方修正し、インフレで苦しむ欧米
と違って、日本は、G7トップの成長率を確保できるものと伝え
ています。
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国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しによると、23年に
日本の実質成長率は1・8%に加速する。この数字だけとれば、
インフレ退治の利上げの影響もあって、成長が鈍化すると思われ
る米国(1・4%)やユーロ圏(0・7%)を上回る予測だ。実
態として経済の正常化は米欧が先行しており、日本はコロナ前と
比べたGDPの回復ではなお後れを取る。
──2022年2月14日付、日本経済新聞夕刊より
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それでは、2023年1〜3月期はどうなるかについて、日本
経済新聞は、民間エコノミスト10人に対して、今後の経済見通
しを聞いたところ、次のように、2022年10〜12月期に続
いて、2期連続のプラス成長と予測しています。
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◎2023年1〜3月期経済見通し
実質成長率の予測平均=前年比年率1・6%
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10人の予測によると、1〜3月期の実質成長率は1%台半ば
に回復し、2023年を通して1%台を維持すると予測していま
す。個人消費が前年比0・4%増加し、設備投資も0・6%増加
して支えるからです。
10人の民間エコノミストの予測で一番意見が分かれたのが、
「外需」です。外需とは、輸出から輸入を差し引いたものです。
多くのエコノミストは、世界経済は利上げによる景気減速懸念が
高まると判断し、輸出は減少するとみています。輸出の減少は、
日本経済を下押しします。
しかし、前向きの見方もあります。伊藤忠総研の前田淳氏は、
外需は0・3ポイントプラス寄与するとしています。それは、イ
ンバウンドが大きく回復するとみているからです。
インバウンド(Inbound) とは、外国人が訪れてくる旅行のこ
とで、日本へのインバウンドを訪日外国人旅行または訪日旅行と
いいます。これに対し、自国から外国へ出かける旅行をアウトバ
ウンド(Outbound)または海外旅行といいます。
このインバウンドは、GDP統計では「輸出」に含まれます。
経済学では、輸出が増加すると、国民の収入が増えて国内の消費
も増加するという理論があります。さらに、消費が増えると、ま
た誰かの収入が増え、さらに消費が増えるという好循環が発生す
るため、インバウンド需要による経済効果は、単純な輸出額の増
加よりも大きなものとなるという考え方です。いずれにせよ、日
本経済は、多くの人が考えているより、良い方向に向かっている
といえます。 ──[メタバースと日本経済/025]
≪画像および関連情報≫
●緩慢な経済成長/インフレ、ピークに達する/国際通貨基金
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世界経済成長率は、2022年の3・4%(推定値)から
2023年に2・9%へ鈍化した後、2024年には3・1
%へと加速する見込みだ。2023年の予測は、2022年
10月の世界経済見通し時点から0・2%ポイント上方修正
されたものの、歴史的(2000―2019年)な平均であ
る3・8%を下回っている。物価上昇に対処するための中央
銀行による利上げと、ロシアのウクライナでの戦争が引き続
き、経済活動の重しとなっている。中国では2022年に新
型コロナウイルスの急速な感染拡大が成長の妨げとなったが
最近国境を再び開放したことで当初の予想よりも速い回復の
道筋がついた。
世界のインフレ率は、2022年の8・8%から2023
年に6・6%、2024年に4・3%と鈍化していく見込み
だが、両年とも依然としてパンデミック前(2017―20
19年)の水準である約3・5%は上回っている。
リスクのバランスは依然下振れ方向に傾いているが、20
22年10月のWEO以降、下振れリスクは和らいだ。上振
れリスクとしては、各国で見られる繰延需要によって景気が
押し上げられることや、インフレが予想よりも速く落ち着く
ことが挙げられる。 https://bit.ly/3xqWepG
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日本経済/2019との比較