て、30年ぶりに巡ってきた経済成長のチャンスのようです。2
月7日の日本経済新聞の報道によると、政府が次期日銀総裁の後
任として、雨宮正佳副総裁に就任を打診したことがわかると、円
相場は3円以上値下がりし、「1ドル=132円」台半ばまで円
安が進み、日経平均株価は、一時300円以上値上がりしていま
す。金融緩和が当分続くとの期待からです。
環境面から判断すると、日本の経済成長はやっと軌道に乗ろう
としています。マイルドなインフレが続く限り、日本の経済成長
は軌道に乗ると考えられるからです。しかし、大きなマイナス要
因があります。それは、岸田政権による増税路線が、日本経済に
とってこの千載一遇のチャンスをブチ壊しかねないことです。そ
のバックには財務省の存在があります。
この財務省がどのような省庁であるか、もっと多くの人が知る
必要があります。事実上の「官庁の官庁」であり、莫大な国家予
算を握り、各政権に重要な影響力を持つ主力官庁です。最近では
「増税カルト教団」と呼ぶ人さえいます。
ところで、『安倍晋三・回顧録』(中央公論新社)という本が
発刊されているのをご存知でしょうか。
この回顧録は、安倍氏が首相を退任後の2020年10月から
21年10月、読売新聞特別編集委員の橋本五郎氏らが18回、
計36時間行ったインタビューを中心に構成され、2月6日に店
頭発売されています。
この本で安倍氏は、森友学園への国有地売却をめぐる問題につ
いて、次のように述べています。
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「籠池泰典学園理事長という人物に一度も会ったことがないの
で、潔白だという自信があった」と自身の関与を否定。「財務省
の策略」の可能性に言及し、「財務省は当初から土地取引が深刻
な問題だと分かっていたはずだ。でも、私の元には、土地取引の
交渉記録などは届けられなかった。森友問題は、マスコミの報道
で初めて知ることが多かった」としている。
──2023年2月7日付、朝日新聞
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森友学園事件が安倍首相失脚への策略であったか否かは別とし
て、故安倍晋三氏という政治家は、私の判断ではもっとも厳しく
財務省と対立した人物であったと思っています。このようにいう
と、5%の消費税の税率を自分の任期中に10%に倍増させたで
はないかと反論されますが、この増税は、民主党の野田政権が、
当時下野中の自民党の増税派と組んで法律化したもので、安倍氏
としては、実施するより、他に方法がなかったといえます。その
代わり、安倍首相は、複数の延期と解散総選挙で信を問うていま
す。なお、アベノミクスが成功しなかった原因の一つもこの増税
にあるといえます。
岸田政権による「1兆円増税」決定を映画のエンドロール風に
書くと、次のようになります。
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主演:岸田文雄内閣総理大臣
助演:宮沢洋一自民党税調会長
脇役:木原誠二官房副長官
製作/脚本/演出:財務省
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岸田首相の周りは、ぎっしりと財務省人材で埋まっています。
税調会長の宮沢洋一氏は首相のいとこですし、政権の内閣官房副
長官の木原誠二氏や総理大臣補佐官の村井英樹氏は財務省出身で
す。さらに、首相の義弟に、財務省理財局長、国税庁長官を務め
た可部哲生氏がいます。加えて、自身の不祥事で総務大臣を辞任
した前総務大臣の寺田稔氏も財務省の出身です。
まさに財務省一家です。これを財務省が利用しないとは考えら
れないことです。
それでは「1兆円増税」がどのように決まったかについて、ご
紹介します。
2022年12月8日(木)のことです。81年前の同日、太
平洋戦争が勃発しています。政府与党政策懇談会という聞き慣れ
ない名前の会議において、岸田首相がいきなり与党側に次のこと
をいい出したのです。トップダウンです。
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安全保障環境が急速に厳しさを増すなか、防衛費は5年以内に
緊急的に強化する必要がある。2027年度以降、財源が毎年4
兆円不足するが、うち約1兆円については国民の税制で協力をお
願いしなければならない。 ──岸田首相
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これを宮沢洋一自民党税調会長は、まるで総理からそういう発
言があることをあらかじめ知っていたかのように、「防衛費の財
源問題が降ってきた。来週から議論する」と引き取っています。
12月15日の与党税制改正大綱の取りまとめまで1週間しかな
いタイミングです。
これに対して、高市早苗経済安全保障担当相、西村康稔経済担
当相が反対を表明したが、そのまま押し切られています。もとも
と2人が呼ばれたのは政府与党連絡会議であり、そんな案件が飛
び出す会議ではなかったのですが、会議名は財務省の策略によっ
て「政策懇談会」と直前に変更されていたのです。
翌9日から自民党内は蜂の巣をつつく騒ぎになり、萩生田政調
会長が開いた会議では、発言者の8割が反対論をぶったといわれ
ます。しかし、そのときの会議での反対論は、財務官僚によって
逐一記録され、官邸に上げられています。
その後、官邸の根回しによって、森元総理が動き、反対の動き
は、鎮静化させられています。官邸ではこの策略を「令和の真珠
湾攻撃」と呼んでいるといわれています。
──[メタバースと日本経済/020]
≪画像および関連情報≫
●年1兆円の「防衛増税」はあり得ない/その前に講じるべき
打ち手
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岸田文雄首相が表明した、いわゆる年間1兆円の「防衛増
税」をめぐって批判が噴出している。自民党で行われた会合
では怒号が飛び交う展開になった。岸田首相は、2023年
年度から2027年度の5年間の防衛費を43兆円規模とす
る方針で、2019年度から2023年度の総額の約1・5
倍の金額となり、新たに十数兆円の財源が必要となる。
財源確保の対象となっているのが「法人税」「たばこ税」
「所得税」だ。12月11日時点では、法人税7000億〜
8000億円・たばこ税2000億円強・東日本大震災の復
興特別所得税2000億円を確保する案が出ている。地政学
リスクが高まるなか、GDPの2%程度に防衛費を増強する
ことは既定路線になっている。ただ「そもそも2%で足りる
のか」「防衛費を何に使うのか」といった議論も必要だ。イ
ンフラや国際協力など、直接防衛費とは関係ない費目が入る
のかもしれないという懸念もある。明らかに、「防衛力の中
身」の説明が足りていない段階での増税はあり得ない。
現在候補に挙がる3つの税についてはどう考えるべきか。
「法人税」は企業が賃金を払った後、残った利益に対して
課税するものであるため、賃上げに影響はないとの意見も見
かける。しかし、そうとは言い切れない。企業は、法人税が
課税されるとなれば設備投資や人的資本への投資を萎縮し、
保守姿勢になるのが普通だ。経営者の決断に、数値だけでな
く、「不安感・気持ち」の判断も寄与することを考えれば、
「賃上げ」は明らかにマイナス。 https://bit.ly/3ll184O
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年1兆円強の財源が不足