2023年02月09日

●「日本は『眠れる森の美女』である」(第5903号)

 2022年12月の話です。慶応義塾大学名誉教授の竹中平蔵
氏の話です。彼は次のようなことを話していたそうです。
─────────────────────────────
 先日参加したロンドンの会合で、参加者から「日本はスリーピ
ングビューティー(眠れる森の美女)」と言われた。企業にはテ
クノロジーも、人材もお金もある。円安をきっかけに、改めて日
本に進出する機運が高まっている。      ──竹中平蔵氏
─────────────────────────────
 「眠れる森の美女」は、ヨーロッパに伝わる古い童話で、魔法
使いによる100年の呪いで眠り続けているお姫様のことです。
ある王子様がその呪いを解いて、お姫様が目を覚ますという話で
す。チャイコフスキー作曲のバレエ音楽にもなっています。
 「眠れる獅子が目を覚ます」という言葉もありますが、現在の
日本は「獅子」というよりも「美女」の表現の方がふさわしいと
いう判断になったものと思われます。
 なぜ、このように、いわれたかというと、2022年10月に
発表されたIMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し」が原因
と思われます。これについては、添付ファイルの3つのグラフの
うち、左上の棒グラフをご覧ください。数字を書き出しておくこ
とにします。
─────────────────────────────
    ◎IMFの主要先進国の予想経済成長
          日本 ・・  1・6%
         カナダ ・・  1・5%
          米国 ・・  1・0%
        フランス ・・  0・7%
          英国 ・・  0・3%
        イタリア ・・ ▲0・2%
         ドイツ ・・ ▲0・3%
─────────────────────────────
 これによると、2023年の日本は、G7のなかで最も経済成
長率が高く、適度なインフレがあって、金融緩和が続くという、
株式のようなリスク資産にとっては、極めて居心地の良い外部環
境が続くという判断がされていることがわかります。
 失われた30年といわれ、成長しない経済が特色であった日本
が、予測とはいえ、2023年度は経済成長率がトップになると
は、考えられないことです。昨年後半に急速な円安が進んだこと
によって、多くの人が黒田日銀総裁のことをボロクソに批判しま
したが、黒田総裁の方針は間違っていなかったといえます。
 これについては、添付ファイルの左下の折れ線グラフを参照し
てください。三井住友DSアセットマネジメントの解説を以下に
示します。
─────────────────────────────
 エネルギーや食品の価格上昇を背景に、世界的な高インフレが
続いています。特に欧米諸国は一次産品の値上がりがサービス価
格や賃金にも波及し、ユーロ圏では10%超、米国でも7%台後
半のインフレが続いています。一方の日本では、久しぶりの物価
高が大いに話題となっていますが、消費者物価指数(CPI)
の前年同月比上昇率は3%台にとどまり、変動の大きい食品(酒
類を除く)やエネルギーを除いたCPIは、1・5%の上昇にと
どまっています(2022年10月現在)。
 エネルギー価格の高騰や円安の一服から、日本のインフレは今
後もマイルドな水準に留まる可能性が高そうです。このため日銀
は、当面現在の金融緩和を続けるものと思われ、欧米のように大
幅な利上げによる景気後退リスクをあまり意識しなくてもよさそ
うです。       ──三井住友DSアセットマネジメント
─────────────────────────────
 解説にもあるように、欧米諸国は7%から10%の高インフレ
に見舞われ、中央銀行は政策金利の利上げを行うことによって、
インフレを抑え込もうとしています。しかし、それが長期化する
と、景気が失速し、必然的に経済が弱体化します。
 しかし、日本は、もともと30年デフレで、欧米諸国とは真逆
の金融緩和を現在も続けているのです。それでも物価は高騰して
いますが、欧米諸国よりもはるかに低く、約3%程度に抑えられ
ています。いわゆるマイルドなインフレですが、もともと日本は
それを目指していたはずです。
 黒田日銀総裁は、「異次元金融緩和」の目的として、「2%の
物価上昇」を目指していたのです。もっとも日銀の目指している
のはCPIでも「コアコアCPI」の方です。コアコアCPIと
は、天候や市況など、外的要因に左右されやすい食料(酒類を除
く)とエネルギーを除いて算出した指数のことです。これについ
て、竹中平蔵氏は、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 市場であまり議論されないのが不思議だが、日銀の黒田東彦総
裁が就任してから、コアコアCPIの上昇率が2%を超えたのは
初めてのこと。これが続くと日銀は政策を変えやすくなる。
                      ──竹中平蔵氏
─────────────────────────────
 「コアコアCPIの上昇率が2%を超える」とは、日銀の目標
であり、このレベルのマイルドなインフレが持続することは、日
本にとって好都合なことです。これについては、添付ファイルの
右上の折れ線グラフをご覧ください。
 これは、主要株価指数の推移を示していますが、日本のTOP
IXと日経平均がダントツです。この状況が持続して、岸田政権
が経済政策を間違えなければ、日本は完全にデフレから脱却し、
経済は成長するはずです。マイルドなインフレなら、企業は賃上
げをし易くなるし、設備投資も活況化するはずです。そうすれば
日経平均株価4万円超えも実現する可能性があります。しかし、
岸田政権はうまく経済をコントロールできるでしょうか。
           ──[メタバースと日本経済/019]

≪画像および関連情報≫
 ●2023年の日本経済見通し
  ───────────────────────────
   日本は欧米と比べてコロナ禍からの回復が遅れていたが、
  2022年には感染症と経済活動の両立が進む中で順調に回
  復した。ただし、実質GDPは、2019年平均の水準まで
  回復しきれていない。
   2023年の実質GDP成長率は、前年比+1%台の緩や
  かな回復が続く見通しである。海外経済の減速により輸出は
  弱含むことが想定されるが、コロナ禍からの回復余地が残っ
  ている個人消費や設備投資の回復が続き、内需主導の緩やか
  な回復が続くとみられる。2022年は欧米で記録的な高イ
  ンフレが続いていた中、日本のインフレ率は相対的に低位で
  はあったものの、4月以降は日銀の物価目標である2%を超
  えて推移してきた。       https://bit.ly/3x0c8a6
  ───────────────────────────
2023年の日本を占う3つのグラフ.jpg
2023年の日本を占う3つのグラフ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | メタバースと日本経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。