2022年12月01日

●「ゲームからメタバース世界に入る」(第5865号)

 昨日のEJにおけるアップルのクックCEOの次の発言を再現
します。気になる言葉だからです。
─────────────────────────────
 われわれは個人情報を取り引きするようなことはしない。われ
われにとってプライバシーは人権。市民の自由である。
                    ──ティム・クック
─────────────────────────────
 1月28日は何の日かご存知ですか。
 「データプライバシーデー」です。データプライバシーデーと
というのは、プライバシーの尊重とデータの保護への信頼を確保
することをテーマとし、毎年1月28日に行われるデータの守秘
と保護に関する意識の向上および議論の喚起のための国際的な取
り組みのことです。
 2021年1月28日には、コンピュータ、プライバシー、デ
ータ保護に関する国際会議「CPDP」が開催され、アップルの
ティム・クックCEOがスピーチをしています。
─────────────────────────────
 私の考えでは、プライバシーは今世紀最大の問題の一つです。
気候変動は最大の問題であり、プライバシーも同じぐらい重要な
問題なのです。(中略)この2つの問題は、その重大性に応じて
対処しなければなりません。深く考え、どうすれば改善できるか
どうすれば次の世代に今よりもずっとよい未来を残せるかを考え
る必要があるのです。
 ご存じのとおり、私は暗号化──バックドアのないエンドツー
エンドの暗号化の熱烈な支持者です。私はエンドツーエンドの暗
号化をなくそう、弱めようとする動きをつねに警戒しています。
                 ──クーリエ・ジャポン編
        『変貌する未来/世界企業14社の次期戦略』
                  講談社現代新書2625
─────────────────────────────
 クックCEOのいうエンドツーエンドの暗号化というのは、各
デバイスから派生したキーと、そのデバイスの持ち主しか知り得
ないデバイスパスコードを使って、情報を暗号化して、サービス
の管理者や第三者などがデータをコピーできないようにする技術
のことです。
 GAFAMのなかで、フェイスブック、すなわち、メタが一番
Web3に熱心なことはわかりますが、もうひとつ、Web3に
熱心な企業があります。それはマイクロソフトです。
 2021年10月にオンラインで開催された企業向けのプライ
ベートイベントの基調講演において、サティア・ナデラCEOは
次のように述べています。
─────────────────────────────
 メタバースは物理的な世界とデジタルの世界を横断した共有体
験を実現できる。例えば、企業が自社のDX(デジタルトランス
フォーメーション)を推進する中で、メタバースは人々がデジタ
ル環境で出会い、アバターを使って会議をより快適に行い、クリ
エイティブなコラボレーションをグローバルで促進できるように
支援することができる。(中略)
 メタバースというのは、仮想空間における社会というだけでな
く、そこに参加する私たちそれぞれの社会への関わり方について
も、これまでにないさまざまな選択肢を与えてくれるのではない
か。そうした社会との新しい関わり方について、これからみんな
で考えて創り上げていきたい。今、マイクロソフトからお見せし
ているメタバースは、新しい社会への可能性のまだほんの一部だ
と考えている。ぜひ、多くの皆さんのご協力をお願いしたい。
   ──サティア・ナデラCEO https://bit.ly/3VDuPuq
─────────────────────────────
 日本でマイクロソフトというと、ワード、エクセル、パワーポ
イントのビジネスユースのソフトウェア企業という印象が強いで
すが、実際には、任天堂、ソニーと並ぶゲーム業界における3大
プラットフォームのひとつなのです。同社が2005年に発売し
た「Xbox360」 という家庭用ゲーム機は、世界で8600万台
を売り上げています。
 そのハードウェアは、「Xbox Series X/S」 で最高レベルに達
し、これを「XBox Game Pass」というコンピュータゲームのサ
ブスクリプションサービスで利用することができます。
 2022年1月18日のことです。マイクロソフトは、ゲーム
大手のアクティビジョン・ブリザードを687億ドルで買収する
と発表したのです。ブルームバークは、このニュースを次のよう
に伝えています。
─────────────────────────────
 米マイクロソフトはゲームソフト会社アクティビジョン・ブリ
ザードを1株当たり96ドルで買収すると発表した。買収は全て
現金で行い、アクティビジョンの純現金を含む企業価値を687
億ドル(約7兆8700億円)と評価する。
                  https://bit.ly/3Vxcr6A
─────────────────────────────
 なお、マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザードの
買収手続きは、まだ終わっていませんが、もし、買収に成功する
と、マイクロソフトは、テンセント、ソニーに次ぐ世界第3位の
ゲーム会社となります。しかも、アクティビジョン・ブリザード
の現在の業績を含めたとしても、マイクロソフト内のゲーム部門
は、年間売上高の約13%に過ぎないのです。
 なぜ、マイクロソフトがゲームに力を入れるかというと、メタ
バースの成否のカギは、世界中のゲーマーを上手に取り込めるか
にかかっているからです。まず、ゲームで切り拓いて、経済圏を
形成し、そのうえでビジネス分野に参入することになりますが、
この場合、もともとビジネス分野に強いマイクロソフトにとって
非常に有利な状況になります。
           ──[ウェブ3/メタバース/041]

≪画像および関連情報≫
 ●マイクロソフトのActivision Blizzard買収に暗雲?
  ───────────────────────────
   マイクロソフトが今年1月より進めているアクティビジョ
  ン・ブリザードの買収ですが、内部関係者が買収の破談を懸
  念する状況になっていると海外メディア・ニューヨーク・ポ
  ストが報じています。この買収は現在米国、英国、欧州連合
  の独占禁止法当局が調査中。しかし、買収発表時のアクティ
  ビジョンの株価が82ドル以上であったのに対し記事執筆時
  点では71・10ドルにまで下落しており、買収が成立する
  かどうかに対し投資家が懐疑的になっているようです。一部
  関係者やアナリストは、メタやグーグルといった企業に比べ
  比較的規制当局との関係が良好だったマイクロソフトが、こ
  れほどの厳しい調査を受けることを予想していなかった可能
  性が高いとコメントしています。
   当局で問題とされているのは、マイクロソフトが規制当局
  やライバルであるソニーに対し提示している約束です。マイ
  クロソフトは以前より買収後も『コール オブ デューティ』
  をプレイステーションなど他のプラットフォーム向けに提供
  することを公言していますが、法的拘束力を持つ契約はまだ
  行われていない状態です。しかし、現地時間11月8日より
  開始される可能性のある本格的な調査を前に、『コール・オ
  ブ・デューティ』をプレイステーション向けに提供し続ける
  ことを正式に契約するといった行動的救済など、EU規制当
  局に対する法的救済措置の提供を拒否したとロイター通信が
  報じています。         https://bit.ly/3ENitsV
  ───────────────────────────
Xボックス・シリーズX.jpg
Xボックス・シリーズX
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2022年12月02日

●「メタバースすぐそこまできている」(第5866号)

 世の中は既にWeb3の世界に入っています。その兆候はあち
こちにあらわれています。
 11月28日のことです。株式会社ローソンから次のニュース
リリースが出されました。
─────────────────────────────
 株式会社ローソン(本社:東京都品川区、代表取締役社長:竹
増貞信、以下「ローソン」)は11月28日(月)に、食品ロス
削減やプラスチック削減などの環境負荷軽減や、アバターによる
制約のない働き方の実現、DX活用で創出するお客様との温かい
コミュニケーションなど、20を超えるサステナブルな施策を集
約した「グリーンローソン」を東京都豊島区にオープンします。
                  https://bit.ly/3OShjRD
─────────────────────────────
 「グリーンローソン」は、ローソンが目指す近未来型店舗の1
つです。この店舗には、次の男女のアバター店員が登場し、接客
にあたる点がユニークです。
─────────────────────────────
          @あおいさん(女)
          Aそらとさん(男)
─────────────────────────────
 この「アバター接客」は、アバター事業を手掛けるAVITA
(アビータ)株式会社とローソンが組んで実現したものです。そ
の狙いは、「時間」や「場所」、「年齢」や「性別」、「様々な
障害」に制約されない新たな働き方を実現するために導入された
ものです。
 アバター接客を行うことによって、時間・距離・年齢・介護や
育児で外出しづらい・身体的なハンディキャップがあるなど、さ
まざまな障害や制約にとらわれることなく、誰もがいきいきと働
くことができる“全員参加型社会”の実現を目指すことが可能に
なるというのです。
 メタバースについて考えるとき、そこでは自分の分身であるア
バターが自分に代わって活躍するということになるのですが、そ
のアバターが何となく、漫画チックというか、現実味がないとい
うか、しょせんゲームの世界と考えてしまうものです。
 アバターについて基本的なことをいうと、ユーザーはアバター
の1人称視点でその空間を見ることができ、頭や手の動きはその
ままアバターの動きに反映されるのです。また、メタバースのな
かで他のユーザーと会話をすると、発言したユーザーの声はその
アバターの位置から聞こえ、身振りや手振り、聞いている人の顔
の向きや頷きなども見ることができ、実際にその空間にいる感覚
でコミュニケーションをとることができます。
 この3年間、コロナ禍によって、私自身ZooMによるリモー
ト講義を何回もやってきましたが、このようなビデオ通話による
リモート会話よりも、アバターによるコミュニケーションの方が
視覚的、感覚的な情報量の多さや会話のしやすさに大きな優位性
があるように感じます。
 もうひとつ、11月29日付の日本経済新聞(電子版)にもメ
タバース関連の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
◎しごと進化論
 製薬大手の英アストラゼネカ日本法人が、医師との接点を担う
医薬情報担当者(MR)の働き方を大胆に見直した。全国67カ
所の営業所を廃止。その上でMRがメタバース(仮想空間)で働
ける環境を整え、医師との面談もオンラインに切り替えた。営業
所と病院を何度も往復する伝統的な働き方にメスを入れ、生産性
の向上をめざす。製薬以外の幅広い業界にも参考になりそうだ。
        ──2022年11月29日付の日本経済新聞
               https://s.nikkei.com/3iqQ7xo
─────────────────────────────
 ところで、MRとは何でしようか。
 医療ドラマなどには、必ず登場しますが、病院などで医師に近
づき、医薬品の情報を提供する女性、もちろん女性とは限らない
ですが、ドラマではなぜか女性のMRがよく登場します。ちなみ
に、MRは、次の言葉の省略形です。
─────────────────────────────
        ◎MR(医療情報担当者)
         Medical Representatives
─────────────────────────────
 アストラゼネカ日本法人は、2020年8月から営業所閉鎖を
開始し、2021年4月までに全廃しています。当初は、コミュ
ニケーションをとるために、オンライン会議を実施していたので
すが、オンライン会議の場合、会議が終わって退出すると、そこ
で会話が終わってしまうことに気が付いたのです。これによって
業務以外のプライベートの会話が激減し、チームとしての一体感
がなくなってしまったといいます。
 アストラゼネカでは、検討の結果、バーチャルオフィスの導入
を決め、「オヴィス(oVice)」 のバーチャルオフィスを採用し
たのです。なぜ、オヴィスかというと、初期投資や月額費用が、
リーズナブルであり、導入しやすかったからです。それにオヴィ
スのバーチャル空間は後から必要に応じて拡張することも可能で
あり、現在では600人規模のイベントも開催できるようになっ
ています。
 これはメタバースに非常に近くなっています。これまで会うこ
とが困難だった人ともコミュニケーションがとれます。例えば、
沖縄の人と北海道の人が隣の席で働くこともできるし、上司と部
下の距離も以前よりも格段に縮まっています。病院での仕事が終
わったあと、カフェなどでPCを操作してバーチャルオフィスに
出勤し、いろいろな人とコミュニケーションがとれる──このよ
うに、メタバースは、すぐそこまで近づいてきているのです。
           ──[ウェブ3/メタバース/042]

≪画像および関連情報≫
 ●アステラス製薬、VR・メタバースで「デジタル営業」
  ───────────────────────────
   アステラス製薬が仮想現実(VR)と現実世界を融合した
  クロスリアリティー(XR)を活用した「デジタル営業」の
  領域を強化している。2022年度からMR(複合現実)を
  使って病気の概要を患者に伝えるサービスや、メタバースを
  使った講演会システムの構築を始めた。新型コロナウイルス
  の感染拡大で患者や医師、製薬会社の営業担当者らのコミュ
  ニケーションが減るなか、疾患への理解を深めてもらう狙い
  である。
   「薬を飲み続けないと、腰が曲がって冷蔵庫の一番上にあ
  る魚のパックに手が届かなくなりますよ」
   VRゴーグルをかけた患者に対し、医師がこう説明する。
  骨粗しょう症の患者は骨が曲がるのを防ぐため、定期的な薬
  剤の服用が求められる。ただ、すぐに症状が出ないため服薬
  を面倒に感じる患者も少なくない。
   VRでは仮に患者の背中が曲がった場合に、どれくらい視
  野が変わってしまうのかを表示する。背骨が曲がらなければ
  冷蔵庫の一番上まで手が届くが、症状が進むと冷蔵庫を見上
  げなければ一番上の棚が見えない。こうした症状が悪化した
  ケースをリアルに見せることで、医師は服薬を続けるよう促
  せる。現在は骨粗しょう症と高コレステロール血症で実証実
  験を続けており、数年後をめどに、医療機関への導入を目指
  す。将来的に手がける領域を広げる考えで、VRを使ったサ
  ービスは医療機関に無償で提供する。
               https://s.nikkei.com/3XLWkEc
  ───────────────────────────
グリーン・ローソン.jpg
グリーン・ローソン
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2022年12月05日

●「『仮想現実』は完全な誤訳である」(第5867号)

 ここからが、今回のテーマの本番です。「メタ・バース」とは
何でしょうか。
 「メタ」とは「超越」であり、「バース」は「宇宙/ユニバー
ス」の意味があります。したがって、メタバースは「超越した宇
宙」ということになります。それでは、この「超越した宇宙」と
は具体的に何でしょうか。今日からEJは、それを明らかにして
いきます。
 まず、「VR」から考える必要があります。VRとは、次の言
葉の省略形です。
─────────────────────────────
      ◎VR/Virtual Reality /仮想現実
─────────────────────────────
 この訳語は、バーチャル(Virtual) を「仮想」と訳し、リア
リティ(Reality) を「現実」と訳しています。実は、これは誤
訳なのです。リアリティを「現実」と訳したことはよいとして、
問題は、バーチャルを「仮想」と話したことにあります。
 ジャーナリストで、東京VRスタートアップスの役員である新
清士氏によると、それには次のいきさつがあります。コンピュー
タ製品や関連するサービスを提供する日本IBMが1965年に
「Virtual Memory」という商品を発表したとき、そのさいにシス
テムエンジニアが、それを「仮想記憶」と訳したことに原因があ
るといいます。「仮想」とは辞書で調べると、「仮に考えること
仮に想定すること」と出ています。しかし、本来の「Virtual」
の意味はそれと違うからです。オンライン版「ロングマン現代英
英辞典」で「Virtual」 を調べると、次のように出ています。
─────────────────────────────
◎「Virtual」
 1.very nealy a particular
   ほとんど実質的なもの
 2.made,done,seen,etc on the Internet or on a computer,
   rather than in the real world
   現実世界よりもむしろ、インタネットや、コンピュータに
   よって作られ、行われ、見られる。
               ──新清士著/NHK出版新書
  『VRビジネスの衝撃/「仮想世界」が巨大マネーを生む』
─────────────────────────────
 これによると、「Virtual Memory」は物理的なメモリではない
ものの、実質的には同じメモリとして使えるということを意味し
ているのです。このことから、「Virtual Reality」 は仮想現実
と訳すべきではなく、「現実世界とは異なるものの、ほとんど実
質的には現実世界である」と解釈すべきです。日本語としては、
それに適合する言葉がないので、「バーチャル・リアリティ」と
カタカナ表記するか、「人工現実感」などと意訳すべきです。
 欧米では、「VRはimmersive である」と言われているそうで
す。イマーシブとは「没入感がある」という意味です。具体的に
いうと、イマーシブとはどういう意味になるのでしょうか。
 VRが今ひとつ理解しにくいのは、VR映像には、基本的に次
の2つがあることです。
─────────────────────────────
            @実写の映像
            ACGの映像
─────────────────────────────
 「実写の映像」とは、無人航空機ドローンに360度の全方位
カメラを取り付け、撮影した空撮映像を、ヘッドセットマウント
ディスプレイで見ると、あたかも自分が空を飛んでいるような感
覚を味わうことができます。これなら、没入感も少し感じられる
かもしれません。
 これに対してCG(コンピュータ・グラフィックス)とは、コ
ンピュータが作り出す映像です。コンピュータゲームをプレイす
るとき、描かれる世界はCGであることがほとんどです。このC
Gを発達させたものが、「ジュラシック・パーク」のような実写
とCGの融合です。
 これらの技術を融合させたものをヘッドマウントディスプレイ
で見ることによって、ほとんど現実世界と同じような世界を作り
出すことができるようになります。そのさいの没入感について、
新清士氏は自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 たとえば4Kテレビを思い浮かべてください。たしかに高精細
な映像ですし、圧倒的な臨場感があります。しかし、目の前にあ
るのはあくまで四角いディスプレイであり、そこに視線を向けて
いる自分がいることは今までのテレビと変わりません。カメラで
捉えられた高解像度の映像を四角い画面上で再現して、臨場感の
ある世界を見ているに過ぎないのです。
 一方でヘッドマウントディスプレイは、その画面の中の世界に
入りこむような感覚を伴います。たとえば、音楽のライブに参加
しているときの視点と、そのライブをDVDで鑑賞しているとき
の視点を思い出しながら、両者を比べてみるといいでしょう。ヘ
ッドマウントディスプレイの視点は前者です。前後左右を見れば
自分と同じようにライブに参加する観客がおり、遠くのステージ
にはアーティストがいます。残念ながらDVDの映像のようにア
ーティストの表情までを見ることはできませんが、あたかもその
ライブ会場にいるような感覚があるのです。
         ──新清士著/NHK出版新書の前掲書より
─────────────────────────────
 リアリティを感じられるVRの実現は、ヘッドマウントディス
プレイが成否のカギを握っているようです。VRは誰が発明し、
どのように発展してきたか──このVRの歴史を知ることは、メ
タバースに迫る有力な方法であるといえます。明日のEJから歴
史をたどることにします。
           ──[ウェブ3/メタバース/043]

≪画像および関連情報≫
 ●360度動画とは?VRとの違いは何?
  ───────────────────────────
   コンピュータやスマートフォンの映像も高精細な映像が当
  たり前となり、通信速度の向上によって高度な映像体験を楽
  しむことができるようになりました。ゲームの世界ではプレ
  イヤーが向きを変えることによって周りの様子を全て眺める
  ことができるものも誕生しています。
   多くの飲食店や商業施設のサイトでは、自由に内部を眺め
  ることができるような映像を提供しています。不動産事業者
  のサイトでは賃貸物件や販売物件の内部を、全方位にわたっ
  て視聴できるような映像を掲載しています。
   旅行業界ではコロナウィルスの感染拡大による渡航制限に
  対応するために、オンライントラベルサービスを提供してい
  ます。なかにはあらゆる方向を自由に視聴できる、観光スポ
  ットの映像を楽しむことができるサービスもあります。
   このような全方位を視聴できるような動画映像を「360
  度動画」といいます。YouTube などの動画サービスでも、数
  多くの360度動画を提供しています。現在では比較的安価
  に入手できる全方位カメラを利用することで、誰でも容易に
  360度動画の作成を行うことができます。全方位の映像を
  自由に視聴できるような映像としては、VRもゲームをはじ
  めとしてさまざまな場面で利用することができます。
                  https://bit.ly/3gRiGUh
  ───────────────────────────
ヘッドマウントディスプレイ.jpg
ヘッドマウントディスプレイ
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2022年12月06日

●「サザランドの究極のディスプレイ」(第5868号)

 VR(Virtual Reality) の発展フェーズは、次の3つに分け
られます。
─────────────────────────────
         黎明期 ・・・ 1960年代
      第1次ブーム ・・・ 1990年代
      第2次ブーム ・・・ 2010年代
─────────────────────────────
 1960年代の「黎明期」に何が起きたのでしょうか。
 この年代は、今になって考えると、映像の革命が起きた年代で
あったといえます。帝劇では「シネラマ」という立体映画を長期
間上映していました。シネラマは、3台の撮影機でパノラマ式に
撮影し、これを横長の画面に3台の映写機で映す映画の一方式で
す。私はこのシネラマを帝劇で見たことがあります。
 1964年のことです。この年の10月10日に東京五輪が開
催されています。映像作家であるモートン・ハイリグという人が
「センソラマ/Sensorama」 というものを発表したのです。イメ
ージとしては、添付ファイルを見ていただきたいのですが、機械
のなかに頭を突っ込んで椅子に座ると、目の前のスクリーンに道
路が映り、バイクに乗って走るイメージを体験できるのです。自
動車教習所などにあるシミュレータのようなものです。
 体験者はこのシステムの椅子に座り、ストリートを走る映像を
見ていると同時に、ファンが向かい風を送風し、街のノイズや臭
いを模擬して聴覚と嗅覚を刺激してきます。これらの要素、映像
音響、臭い、振動や風などは、同期しており、体験者は、その排
気ガスの臭いの化学物質も排出され、バスのエンジン音が聞こえ
るといった仕組みになっています。これがVRデバイスのはしり
といわれています。
 1990年代の第1次ブームの立役者は、アイバン・サザラン
ド氏(84歳)です。サザランド氏は、米国のコンピュータ科学
者で、現在のカーネギーメロン大学(当時カーネギー工科大学)
で学士号、カルフォルニア工科大学で修士号、1963年にMI
T(マサチューセッツ工科大学)で、「情報理論の父」といわれ
るクロード・シャノン氏の指導の下で、博士号を取っています。
CGや設計現場で使われるソフトウェアCADの発明者であり、
コンピュータ上で、グラフィックをどう扱うかについての基礎を
作った人物です。
 当時のコンピュータでは、文字はドットで表示できますが、ラ
イン(線)は描けなかったのです。そこでサザランド氏は、「ス
ケッチパッド」を開発し、それを可能にしています。GUI(グ
ラフィカル・ユーザー・インターフェイス)という概念がない時
代に、コンピュータと人間とのインターフェースについて、最先
端を走っていたといえます。驚くなかれ、電子ペンを使って図形
を描いているのです。
 スケッチパッドをデモしている貴重な映像が残っています。解
説は英語で約20分の映像ですが、内容は貴重なものです。興味
があれば、ぜひご覧ください。
─────────────────────────────
     ◎「スケッチパッド/Sketchpad」のデモ
             https://bit.ly/2QaAYh3
               時間:19分19秒
─────────────────────────────
 もうひとつサザランド氏については、特記すべきことがありま
す。それは、インターネットの原型といわれるアーパネットを生
み出した米国国防総省の高等研究計画局のプロジェクト(ARPA)
のメンバーの一人であるということです。
 1965年にサザランド氏は、次のタイトルの短い論文を発表
しています。
─────────────────────────────
        ◎「究極のディスプレイ」
          The Ultimate Display
─────────────────────────────
 この論文は、今日のVR技術の原点ともいえる画期的なもので
あるといえます。「究極のディスプレイ」とは何か。これについ
て、スタートアップ「クラスター」代表の加藤直人氏は、自著で
次のように述べています。
─────────────────────────────
 そのビジョンとはざっくり言えば、「究極のディスプレイとは
コンピュータが物体の存在をコントロールできるような部屋であ
る」というものだった。サザランドが示した世界観は、たとえば
その部屋に椅子がほしいと思ったら、ボンと出てくるという魔法
のような生活スタイルであった。
 他に論文の中で示されていたのは「手錠を出そうと思った瞬間
サッと手錠が現れて、その部屋にいる人間を拘束できる」といっ
たものだ。究極を謳うからには、他者という存在に影響を与え、
強制的に制御することができてしまうものでなければならないと
考えたらしい。
 VRデバイスをかぶったことのある現代人にとってあまりピン
とくる内容ではないかもしれないが、この論文が画期的だったの
は、ディスプレイを「映像が映るもの」という固定観念に縛られ
ず、その上位概念として「部屋」を用いて人類が至るべき生活ス
タイルを夢想し、今から50年以上前の時点で提示しているとこ
ろにある。(中略)
 このサザランドの考え方は、バーチャル・リアリティの根幹に
あるものだ。黎明期というよりは、発芽期といったほうがいいか
もしれない。ここにバーチャル・リアリティの原型、ひいては、
メタバースの土台となる世界の始まり、ビジョンが生まれた。
                      ──加藤直人著
       『メタバース/さよならアトムの時代』/集英社
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/044]

≪画像および関連情報≫
 ●スケッチパッドで「合生」される世界
  ───────────────────────────
   1963年にアイヴァン・サザランドは、博士論文「スケ
  ッチパッド:マンマシン・グラフィカル・コミュニケーショ
  ン・システム」を発表した。サザランドはそこで、「スケッ
  チパッド・システムは、線を描くことで(キャプション以外
  の)文章入力を不要にし、マンマシン・コミュニケーション
  の新しい世界を切り開いた」と書いている。
   スケッチパッドで特徴的なインターフェイスは、ディスプ
  レイに線を描く「ライトペン」というペン型のデバイスであ
  る。ライトペンとディスプレイ外に設置されたボタンの操作
  により、スケッチパッドでは、様々な図形を描くことができ
  る。また、スケッチパッドが実装されたTX─2コンピュー
  タには多くのボタンが備え付けられ、それぞれに、「円を描
  く」「直線を描く」「消す」「コピー」「移動」などの機能
  が割り当てられていた。ユーザはそれらのボタンを押すこと
  で、これから行う操作をあらかじめコンピュータに伝え、ラ
  イトペンを動かしながらディスプレイに図形を描いていく。
  サザランドはTX─2の入出力のコントロールの柔軟性と拡
  張性の高さによって、自らのアイディアをいろいろと試すこ
  とができ、最終的にコンピュータによる描画を実現できたと
  書いている。          https://bit.ly/3gXXFqV
  ───────────────────────────
センソラマ.jpg
センソラマ
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2022年12月07日

●「すべてのVRはサザランドに通ず」(第5869号)

 1968年のことです。1968年というと、VRの発展フェ
ーズでいうと、黎明期の終わり頃になります。当時ハーバード大
学の准教授であったアイバン・サザランド氏は、学生との共同研
究で、現在のヘッドマウントディスプレイ(HMD)に最も似て
いるディスプレイを発明しています。このディスプレイは「ダモ
クレスの剣」と呼ばれ、現在のHMDの原型になっています。
 その「ダモクレスの剣」の貴重な映像があります。説明などの
音声はなく、たった21秒の映像なので、ご覧ください。
─────────────────────────────
        ◎ダモクレスの剣/21秒
         https://bit.ly/3h020dg
─────────────────────────────
 ところで、なぜ、このHMDは「ダモクレスの剣」といわれて
いるのでしょうか。
 ダモクレスというのは、シラクサの王、ディオニシオスの延臣
の名前です。あるとき、ダモクレスは、王位の幸福さをほめそや
したところ、王は彼を天井から髪の毛1本で剣をつるした王座に
座らせ、王者の身辺には常に危険があることを悟らせたという故
事が伝えられています。
 サザランド氏が開発したHMDが「ダモクレスの剣」と呼ばれ
るのは、そのような難しい話ではなく、それが非常に重いので、
天井からぶら下げたことに基づいています。しかし、頭に装着す
るというアイデアが後世のHMDの重要なヒントとして、伝わっ
たことは確かです。
 アイバン・サザランド──この名前を知る日本人はあまりいな
いと思いますが、既に述べているように、VRにとっては欠かせ
ない存在であるとともに、インターネットの開発にも寄与してお
り、大学教授として多くの部下を育てています。これについて、
加藤直人氏は自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 サザランドの教え子には、「パソコンの父」アラン・ケイ、グ
ラフィックソフトの「フォトショップ」や「イラストレーター」
で有名なアドビの創業者ジョン・ワーノック、ネットスケープを
立ち上げたジェームズ・クラーク、ピクサーの創業者エド・キャ
ットムルなど、錚々たるメンバーが名を連ねている。CGやVR
に関わる系譜をたどっていくと、すべてアイバン・サザランドに
たどり着くといっても過言ではない。     ──加藤直人著
       『メタバース/さよならアトムの時代』/集英社
─────────────────────────────
 1990年代に入ると、さまざまな企業がVRに参入して、V
Rは社会現象になります。これが第1次VRブームです。それら
の企業のなかで注目すべきは、VPLリサーチという企業です。
1984年にコンピュータ・サイエンティストのジャロン・ラニ
アー氏が創立した企業です。VPLは次の言葉の省略です。
─────────────────────────────
      ◎VPL
       Visual Programming Languages
─────────────────────────────
 VPL──ビジュアル・プログラミング・ランゲージとは何で
しょうか。
 一般的にプログラミングというと、テキストで記述しますが、
VPLは視覚的なオブジェクトでプログラミングするのです。い
ろいろな種類がありますが、矩形や円を画面上のオブジェクトと
し、それらを矢印や線や弧でつなぐものや、空間上でテキストや
グラフィックシンボルを配置するものや、ブロック状のものなど
いろいろあります。
 VPLリサーチ社は、VRに関連する次のようなものを次々と
作り出し、多くの特許を取得したものの、事業としてはうまくい
かず、1999年には倒産し、サン・マイクロシステムズによっ
て買収されています。
─────────────────────────────
       @データグローブ(Data Glove)
       A アイフォーン(Eye Phone)
       B データスーツ(Data Suit)
─────────────────────────────
 @の「データグローブ」とは、仮想世界の物体と相互作用でき
るグローブです。Aの「アイフォーン」とは、ユーザーがコンピ
ュータシミュレーションの世界に没入できるヘッドマウントディ
スプレイシステムです。Bの「データスーツ」は、腕、脚、そし
て、体幹部の運動を計測するセンサが埋め込まれた全身スーツで
す。そのイメージは、添付ファイルの図をご覧ください。
 1989年にVPLリサーチは、サンフランシスコの「テクス
ポ」という展示会のパシフィックベルという電話会社のブースで
同社のHMDである「アイフォーン」をかぶって、バーチャルの
空間で会話できるデモを行っています。VRでの会議が1989
時点で既に行われていたのです。「アイフォーン」とは、つまり
「目の電話」という意味になります。それにしても1989年に
もアイフォーンなるものがあったとは驚きです。
 VPLリサーチの創業者、ジャロン・ラニアー氏は、はじめて
展示会のデモや講演のさい、「バーチャル・リアリティ」という
言葉を使っていたといわれます。それまでは「バーチャル・ワー
ルド」という言葉が使われていたようです。
 1990年のことです。米国のサンタバーバラに研究者が集ま
り、VRについての初めての国際会議「サンタバーバラ会議」が
行われています。その会議において、それまで別々の名称で呼ば
れていた研究領域を「バーチャル・リアリティ」で同一すること
になったのです。
 この会議を契機として、多くの企業がHMDを競って発表する
ようになっています。これが第1次VRブームです。
           ──[ウェブ3/メタバース/045]

≪画像および関連情報≫
 ●身の回りにあるバーチャルリアリティ/桜井研三氏
  ───────────────────────────
   バーチャルリアリティ(VR)が日本で最初に注目された
  のは1980年代末期であるから、2019年の時点で、約
  30年が経過したことになる。その間に何度か訪れたVRブ
  ームは、3次元立体(3D)テレビと同様に一時的に脚光を
  浴びたものの、長くは続かなかったように思える。確かに、
  VRと聞いて連想するのは大掛かりな機械に囲まれた特殊な
  場所での体験であり,そのような意味でのブームは、続かな
  かった。しかしその陰で,VRを構成する個々の基盤技術は
  着実に日常生活に浸透しており,心理学が取り組むべき問題
  が生まれている。本稿では最初のVRが誕生した背景とその
  後の変遷を概観した後,拡張現実感、広視野角と多感覚,モ
  ーションキャプチャというVRの3要素を取り上げ,我々の
  身の回りにVRが存在する現状を考えてみる。
   多くの読者がVRと聞いて連想するのは,ゴーグルのよう
  な頭部搭載型ディスプレイ(HMD)を装着してコントロー
  ラーを手にした観察者の姿であろう。このタイプのVRの特
  徴は,HMDを通して見える範囲が限定されていても観察者
  が後ろを向けば後ろの景色が見える点にある。このように観
  察者の身体の動きに連動して映像が変化するHMDと他の技
  術を組み合わせた現在のVRの原型は、アメリカ航空宇宙局
  (NASAWS)のエイムズ研究所で1980年代に誕生し
  た。仮想インターフェイス環境ワークステーション(VIE
  W)と名づけられたプロジェクトが現在のVRのの出発点で
  ある。             https://bit.ly/3unzR2H
  ───────────────────────────
VPL製品.jpg
VPL製品
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2022年12月08日

●「第1次VRブーム技術不足で失速」(第5870号)

 1990年代に第1次VRブームが起きていますが、このとき
は、技術のかべを乗り越えることができず、ブームは終息してし
まっています。技術のかべとは次の3つです。
─────────────────────────────
           @ディスプレイ
           Aレンダリング
           Bトラッキング
─────────────────────────────
 第1は「ディスプレイ」です。
 ディスプレイは、ユーザーが直接目で見る接点です。しかし、
CGを表示する当時のディスプレイの解像度は、高精密度とはい
い難く、十分な没入感が得られないという難点があったのです。
当時のハードウェアの限界です。
 第2は「レンダリング」です。
 ここでいうレンダリングとは、3次元グラフィックス(3DC
G)において、数値データとして与えられた物体や図形に関する
情報を計算して画像化することをいいます。当然計算量は膨大に
なりますが、当時のコンピュータの性能では、十分なものが得ら
れなかったのです。
 第3は「トラッキング」です。
 VRのトラッキングとは、頭や手や身体などの動きを感知し、
追尾する技術のことです。VRが映画と異なる点は、ユーザーの
動きに合わせて、映像が変わっていくことにあります。HMDを
かぶって、頭を動かすと映像が変わり、それがリアルタイムで表
示される必要があります。しかし、当時のHMDでは、満足すべ
き結果が得られないで終わっています。
 第1次VRブームでは、日本のメーカーもヘッドマウントディ
スプレイ(HMD)を発売しています。
─────────────────────────────
     @バーチャルボーイ ・・・ 任天堂
     A  グラストロン ・・・ ソニー
     B ダイノバイザー ・・・ タカラ
─────────────────────────────
 しかし、これらは、いずれも当時の技術のかべを乗り越えるこ
とはできなかったのです。ただ、ちょうどこの1990年代は、
映画やゲームの世界では、CGが本格的に使われ、大飛躍を遂げ
ています。とくに映画において代表的な作品としては、次の2つ
が上げられます。
─────────────────────────────
    ◎映画
     @「ジュラシック・パーク」/1993年
     A    「マトリックス」/1999年
─────────────────────────────
 映画「マトリックス」は、1999年に封切られ、既に4作を
重ねています。私は4作品ともすべて見ましたが、とくに第1作
については、きわめて興味深く、これほど仮想世界を感じさせる
ものはないといえます。
 この第1作を中心として、主演のキアヌ・リーブスらが振り返
る次のユーチューブは興味深い内容です。
─────────────────────────────
    ◎映画「マトリックス」/特別映像/1分21秒
               https://bit.ly/3P3M5qM
─────────────────────────────
 この映画の設定は、きわめてユニークそのものであり、この映
画を観た多くの人が、仮想世界について関心を持ったものと思わ
れます。この映画の設定に関しては、「現実世界と仮想世界」と
題する次の記述が参考になると思います。
─────────────────────────────
 『マトリックス』では、多くの人々が生きている世界は、実は
現実世界ではないという設定が世界中に衝撃を与えた。人々は生
まれながらにして機械が動くための生体電池として機械につなが
れて“栽培”されており、「仮想世界」である“マトリックス”
の幻を見せられながら生きている。「現実世界」では、ごく一部
の“マトリックス”から覚醒した人類たちや、彼らの子孫たちが
“ザイオン”と呼ばれる人類最後のとりでを拠点に、現実世界と
仮想世界の両面で機械との戦いを続けていた。
 そんな本作の設定について、今や若い世代にも強い影響力を持
つ2ちゃんねる開設者のひろゆき(西村博之)も、その革新性を
熱弁。10月21日開催された本作の公開記念ファンイベントで
「今、高校生がファンタジーの世界に転生するような、いわゆる
“異世界転生モノ”の漫画や小説が流行っているけど、1999
年公開の『マトリックス』では、転生したかと思いきや、現実だ
と思っている世界が仮想世界だったという裏をかいたストーリー
をもうやっていた」と語っていた。  https://bit.ly/3XX0E3w
─────────────────────────────
 映画「マトリックス」では、「VFX/Visual Effects」とい
う技術が使われています。これはCGとは違うものです。これは
「視覚効果」と訳され、リアルの世界では見ることができない画
面を演出させるために使われます。
 例えば、「マトリックス」で主役のキアヌ・リーブスが銃で撃
たれるシーンがありますが、身体をひねると銃弾が身体すれすれ
に飛んでいくのが見えます。これは、撮影した映像に加工を施し
ており、これがVFXです。(添付ファイル参照)
 これに対してCGは、コンピュータを使って映像を加工する点
は同じですが、撮影された映像に加工を施すのではなく、キャラ
クターやモノをすべて1から作り上げていく点に違いがあるとい
えます。したがって、映像とCGを組み合わせると、実際にはあ
り得ない映像を作り上げることができます。最近の映画では、こ
の手法がよく使われるようになっています。
           ──[ウェブ3/メタバース/046]

≪画像および関連情報≫
 ●映像技術「SFX」「VFX」「CG」って何が違うの?
  ───────────────────────────
   宇宙空間やファンタジーな世界、激しい戦闘シーンなど、
  ただ現実にあるものを撮影するだけでは映すことができない
  映像に必要不可欠な映像技術があります。
   それらは「SFX」、「VFX」、「CG」とそれぞれ呼
  ばれています。映画のメイキング映像や関連記事でもよく見
  かける言葉ですが、何を意味しているのか、いまいちピンと
  来ていない人も多いのではないかと思われます。これらの違
  いとは一体何なのでしょうか。映像技術の種類を見ていきま
  しょう。
   「VFX」は略称で、本来は、「ビジュアル・エフェクツ
  (視覚効果)」と呼ばれます。VFXはは映像制作における
  技術の一つですが、撮影後の映像制作作業(ポストプロダク
  ション)の中で作られる映像効果です。
   そしてVFXには、コンピュータを使って作られる「CG
  (コンピュータ・グラフィックス)」の映像が必須となりま
  す。例えば、撮影現場では役者のみ撮影している映像に、後
  から背景にCGで作った広大な宇宙の世界を合成したり、現
  場では実弾が出ないモデルガンを使って撮影された銃撃シー
  ンに、CGで作った銃弾を後から追加するといった映像効果
  は、全てVFXと呼ばれます。撮影された実写映像素材を元
  に新たな映像効果を追加する技術をVFXと呼び、VFXで
  用いられる広大な宇宙や銃弾のデジタル映像素材を作り出す
  のがCGなのです。       https://bit.ly/3Fv1A8b
  ───────────────────────────
映画「マトリックス」より.jpg
映画「マトリックス」より
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2022年12月09日

●「セカンドライフはなぜ失速したか」(第5871号)

 第1次VRブームの2000年代に「セカンドライフ」が登場
します。その開発元はリンデンラボ社、運営を開始したのは20
03年6月。2007年には一種のブームになり、NHKの「ク
ローズアップ現代」に取り上げられ、当時のキャスター、国谷裕
子氏のアバターが紹介されるなど、話題を集めたものです。
 実は、EJでも「セカンドライフ」は、次のようにテーマとし
て取り上げています。
─────────────────────────────
    2007年 8月 6日付/EJ第2137号〜
    2007年10月19日付/EJ第2188号
  「経営者はセカンドライフをどのようにとらえるべきか」
   ―― ネットの世界に起こっている革命を追う ――
―――――――――――――――――――――――――――――
 このEJの連載の第1回で、「セカンドライフ」の定義にふれ
ている部分があります。その部分を再現します。
─────────────────────────────
 ところで、「セカンドライフ」とは何なのでしょうか。このあ
たりで、一応定義しておく必要があると思います。数ある「セカ
ンドライフ」の定義の中で、一番優れていると思われるものをご
紹介しましょう。
*****************************
 セカンドライフとは「メタバース」と呼ばれる3次元(3D)
 仮想空間の中を自分自身の分身である「アバター」を操って動
 き回る、見た目は多人数参加型オンラインゲームそのものとい
 うプラットフォームである。
      ――前掲『週刊/東洋経済』2007・8/4より
*****************************
 確かに、ここでいうところのアバターなるものが動き回る3D
空間を見せられると、オンラインゲームの一種という感じがしま
すし、「人形芝居」という表現もそんなには外れていないと思う
のです。アバターは人形には違いないのですから。
 しかし、セカンドライフは、2005年頃から顕著になって現
在も続いているインターネットにおける激変というか革命のひと
つとしてとらえないと、本質を見失うことになります。
       ──2007年 8月6日付/EJ第2137号
─────────────────────────────
 興味深いのは、セカンドライフの時点で既に「メタバース」と
いう言葉が出てくることです。つまり、「3次元仮想空間=メタ
バース」というわけです。
 しかし、セカンドライフは、ヘッドマウントディスプレイ(H
MD)をかぶるわけではなく、PCのディスプレイに表示される
3Dのリアルタイムグラフィックスの世界に自分の分身であるア
バターを潜入させて操作するのです。したがって、「人形芝居」
と揶揄されたわけです。この仮想空間では、ゲームを楽しむこと
もできますが、ビジネスとして重視されたのはコミュニケーショ
ンです。ジャーナリストの新清士氏は、セカンドライフについて
次のように述べています。
─────────────────────────────
 セカンドライフには、ゲームのように倒すべき敵や最終的なゴ
ール、クリアすべき具体的な目標などが存在しません。ユーザー
は、自分の似姿であるアバターを作成し、仮想空間内のバーチャ
ルな土地を借りて家を作り、3Dデータでモノを制作して、現実
の通貨と互換性を持つ仮想通貨リンデンドルを使って売買するこ
とができます。サービス内で恋人を作り、結婚式を挙げる人もい
ます。これまでのコンピュータゲームとは違い、仮想空間での生
活そのものを楽しめるところが決定的に違ったのです。まさに、
VRが目標とする現実世界の延長線上を作り出していました。
               ──新清士著/NHK出版新書
  『VRビジネスの衝撃/「仮想世界」が巨大マネーを生む』
─────────────────────────────
 それでは、なぜ、セカンドライフは、うまくいかなかったので
しょうか。その原因は2つあります。
─────────────────────────────
    @当時としては高価な高性能のPCが必要である
    Aネット上でつながるためのサーバー処理の限界
─────────────────────────────
 原因はコンピュータの能力の問題です。セカンドライフを立ち
上げてアバターを自由に動かすには、2007年当時の通信環境
と、一般の人が保有していたPCではセカンドライフに入るのは
困難で、仮想空間内の基本単位である256メートル四方の空間
には、サーバー処理の関係上、100人前後のユーザーしかアク
セスできないというネックがあったのです。したがって、大勢の
人の集まるイベントを仮想空間内で実施するのは、困難だったと
いえます。つまり、セカンドライフは、アイデアは秀逸であった
ものの、時代を先取りし過ぎたともいえます。早過ぎたアイデア
というわけです。
 もうひとつセカンドライフが失速した原因は、スマホの登場に
よるSNSの普及です。メールとは異なる普通の言葉で、簡単に
コミュニケーションがとれるSNSは、急激にユーザーを増加さ
せ、セカンドライフは完全に忘れ去られたといえます。
 その原因を作ったのは、ほかでもないフェイスブックの創業者
であるマーク・ザッカーバーク氏です。今やフェイスブックはS
NSの王者であり、そのユーザー数は世界レベルで実に約30億
人に達しています。
 しかし、その同じザッカーバーク氏がセカンドライフならぬ本
物のメタバースの実現を目指して、社名を「メタ」に変更し、そ
の構築を目指しているのです。皮肉な話です。本当にメタバース
はうまくいくのでしょうか。セカンドライフの二の舞になるとい
う厳しい意見もあります。
           ──[ウェブ3/メタバース/047]

≪画像および関連情報≫
 ●メタバースは「セカンドライフ」の二の舞になる?
  /識者が対談
  ───────────────────────────
  ――まずは、お二人がこれまでセカンドライフとどのように
  関わってきたか、教えてください。
  杉山知之氏:「バーチャルリアリティー」は僕がずっと好き
   なもので、1980年代から研究などを続けてきました。
   Webの時代に入ってからは「Web3D」というムーブ
   メントが起こり、その次にブームとなったのがセカンドラ
   イフでした。セカンドライフを見た三淵啓自先生(デジタ
   ルハリウッド大学教授)や、当時の大学院生たちはすぐに
   米国へ行って「何か面白いことをやりましょう!」と言っ
   てきました。そこで僕らも会社で島を買ってみたのです。
   当時は月々でも結構な値段でしたね。そしてみんなで集ま
   り、何もない開拓地に家を建てるところから始めました。
   一番驚いたのは、「リンデンドル」というお金があったこ
   とです。まだ暗号資産(仮想通貨)という概念もない時代
   に、セカンドライフの中だけで通じるお金があって、なお
   かつ両替所もあり、本物の米ドルに交換できる。そこに引
   き付けられましたね。もしかして儲かるんじゃないかと。
  渡邊信彦氏:私は当時、金融機関のSI(システムインテグ
   レーター)をやっていました。ちょうど、「金融ビッグバ
   ン」が起きた頃で、金融機関がインターネットに参入し始
   めた時期です。そんな中、みずほ銀行の方と一緒に米国の
   フィンテックイベントを見に行き、そのとき隣に座ってい
   た人が連れて行ってくれたのが、セカンドライフ運営企業
   のリンデンラボでした。    https://bit.ly/3UCfcTl
  ───────────────────────────
クローズアップ現代と週刊東洋経済.jpg
クローズアップ現代と週刊東洋経済
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2022年12月12日

●「『FTC』マイクロソフトを提訴」(第5872号)

 12月10日付の日本経済新聞に、今回のテーマに関係する次
の記事が掲載されています。
─────────────────────────────
◎ゲームも米テック独占警戒/マイクロソフトをFTC提訴
 成長市場/囲い込み阻止
 ゲーム業界で最大のM&A(合併・買収)に、「待った」がか
かった。米連邦取引委員会(FTC)が8日、米マイクロソフト
による米ソフト大手アクティビジョン・ブリザードの買収を差し
止める訴訟を起こした。ゲーム機に加え、定額制の配信サービス
やクラウドゲームでの競争阻害を懸念する。新市場での「独占」
にも警戒を強める当局の姿勢は、減速が目立ち始めたテック大手
には新たな逆風となる。    https://s.nikkei.com/3Y51Odr
        ──2022年12月10日付/日本経済新聞
─────────────────────────────
 米マイクロソフトによる米ゲームソフト大手企業のアクティビ
ジョン・ブリザード(以下、アクティビジョン)の買収について
は、12月1日のEJで取り上げています。このニュースは、今
年の1月18日に687億ドル(約7兆8700億円)での買収
が発表されています。この買収が成功すると、マイクロソフトは
テンセント、ソニーに次ぐ世界第3位のゲーム会社になるところ
だったのです。
 問題は、米連邦取引委員会(FTC)は、なぜ、この買収にス
トップをかけたかです。FTC競争局のホリー・ベドバ局長は、
その理由について、次のように述べています。
─────────────────────────────
 マイクロソフトが大手ゲーム会社を支配し、急成長するゲーム
市場の競争に害を及ぼすのを食い止める。
             ──FTCホリー・ベドバ競争局長
─────────────────────────────
 アクティビジョンは、多くの人気ゲームソフトを保有しており
なかでも「コール・オブ・デューティ」や「オーバーウォッチ」
の人気が凄いです。その1カ月当たりのプレーヤー数は3億68
00万人にもなるからです。
 「コール・オブ・デューティ」や「オーバーウォッチ」が、ど
ういうゲームかというと、超人気の「シューティングゲーム」と
いえます。すなわち、シューティングゲームとは、敵を撃つこと
がメインのコンピュータゲームのジャンルの一つです。「コール
・オブ・デューティ」は一人称視点のシューティングゲームであ
り、オフラインで4人まで対戦可能です。
 「オーバーウォッチ」は、6人ずつのチーム対チームで対戦す
るアクションシューティングゲームです。オーバーウォッチとは
英語で「見張る・監視する」を意味する言葉です。
 FTCは、マイクロソフトがアクティビジョンを買収すること
によって、それらの人気ゲームソフトを囲い込んで、他のゲーム
会社にソフトが供給されなくなり、競争阻害につながることを警
戒したのです。
 しかし、既に述べているように、マイクロソフトのナデラCE
Oは「ライバルに力を与える」戦略を実施し、それまでの囲い込
み戦略を否定しています。そのため、任天堂をはじめソニーグル
ープなどに積極的に働きかけ、ソフトの供給を続けることを約束
していますが、FTCはそれを認めず提訴に踏み切っています。
それは、これまで認めてきた買収において、既に囲い込みが生じ
ていると判断したたからです。
 なお、これには、現バイデン政権の産業政策が色濃く反映され
ています。このところを12月10日付けの日本経済新聞は次の
ように報道しています。
─────────────────────────────
 米国の産業政策の変化も影響している。バイデン政権は大企業
による独占が働き手の所得格差を広げ、技術革新を阻害するとの
問題意識を持つ。とりわけ21年にFTCの委員長に就任したリ
ナ・カーン氏は、巨大テック企業に対する規制強化を訴えてきた
人物だ。カーン氏はテック大手がM&Aを重ねて成長する戦略に
否定的な考えを持ち、新しい技術領域で将来起こりうる「独占」
に対しても監視を強めている。 https://s.nikkei.com/3Y51Odr
        ──2022年12月10日付/日本経済新聞
─────────────────────────────
 マイクロソフトだけではないのです。米フェイスブック(現メ
タ)は、画像共有ソフト「インスタグラム」の運営会社を201
2年4月に買収しています。買収金額は10億ドルといわれてい
ます。当時運営会社には、従業員が13人しかおらず、大きな収
益を上げていないインスタグラムに対して、フェイスブックは、
10億ドルの大金を支払って買収したのです。その理由は、競合
相手になることを恐れたからです。
 確かにザッカーバークCEOの先見の明による判断ということ
はできますが、今やインスタグラムのユーザーは10億人を超え
フェイスブックの年間収益に200億ドル以上貢献しています。
一部のアナリストからは、インスタグラムが1000億ドル以上
つまり、フェイスブックの時価総額の5分の1を占めていると評
価されています。そういう意味では、この買収によってフェイス
ブックは大成功したといえます。
 しかし、国として見た場合は違うのです。もし、インスタグラ
ムが買収されなければ、そこに激しい競争が起き、多くの画像共
有アプリが誕生していたはずです。その結果、もっと便利なもの
が生まれた可能性は大です。当然フェイスブックとしても対抗上
いろいろなアイデアを案出したものと思われます。そういう意味
では、芽が出ないうちに買収し、将来の競合対手を消し去ってし
まうと発展も止まってしまいます。競争がないところには発展は
あり得ないのです。そのため、FTCは監視を強めています。こ
の取引はおそらく破談必至でしょう。
           ──[ウェブ3/メタバース/048]

≪画像および関連情報≫
 ●マイクロソフトのアクティビジョン買収計画FTCが阻止へ
  ───────────────────────────
   米連邦取引委員会(FTC)は8日、マイクロソフトによ
  690億ドル(現在のレートで約9兆4300億円)規模の
  アクティビジョン・ブリザード買収計画を阻止するための手
  続きに入ることを決めたと発表した。ゲーム機「Xbox」
  のメーカーであるマイクロソフトと人気ゲームを開発するア
  クティビジョンの統合は競争阻害につながるとしている。
   FTCによると、マイクロソフトの傘下に入ることで競合
  他社によるアクティビジョンの主力ゲームソフトへのアクセ
  スが制限され、2000億ドルを超える規模のゲーム市場の
  競争を抑制する恐れがある。
   FTCのベドバ競争局長は「マイクロソフトはゲーム分野
  の競合相手に、コンテンツを提供しないことが可能でその姿
  勢を既に示している」とした上で、「同社が独立系の主要ゲ
  ーム制作会社を支配し、それを通じて、活力があり急成長中
  の複数の市場における競争を損なうことをわれわれは阻止す
  る」と説明した。
   マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、アクティビジ
  ョンとの「合意が競争を拡大し、ゲーマーやゲーム開発業者
  にとって、より多くの機会を創出すると引き続き確信してい
  る」とコメント。競争上の懸念を解消する決意であり、今週
  にはFTCに譲歩案を出したとも指摘。「当社の主張には完
  全に自信を持っており、審判で主張を示す機会を歓迎する」
  とした。            https://bit.ly/3VNK98p
  ───────────────────────────
コール・オブ・デューティ.jpg
コール・オブ・デューティ
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2022年12月13日

●「メタの現況をどのように考えるか」(第5873号)

 フェイスブックが社名を「メタ」に改称したは2021年10
月のことです。その後、メタにとっては厳しい事態が続いている
ようです。何といってもメタは、メタバースに最も多くの投資を
している企業です。そういう意味において、メタバースの成否の
カギを握っている企業であり、何が起きているのか、調べてみる
ことにします。
 2022年2月4日、メタの株価が暴落します。マイナス26
%を超える大暴落で、額にして27兆円の暴落です。これは、た
だの暴落ではなく、専門家は「SNSの終わりの始まり」とみる
べきであるとしています。
 今年の4月から5月にかけて実施した調査(添付ファイル)に
よると、フェイスブックは71から32に大幅なダウン、ツイッ
ターも33から23、ワッツアップも33から11へダウンして
います。これに対して、ユーチューブは100から95と下がっ
たものの盤石、インスタグラムは52から62、ティックトック
は、52から67へとアップしています。文字系のSNSはダウ
ンし、映像・画像系のSNSは伸びています。
 米国の調査によると、10代の若者にもっとも人気のあるSN
Sはユーチューブで、95%が利用しており、2位は短尺動画の
ティックトックで67%が利用しているといいます。画像系/動
画系の強さを感じます。
 グラフのなかに「スナップチャット」というのがあって、41
から59に伸びていますが、これは、メッセージや写真や動画が
閲覧してから一定時間経つと消えることに特色があります。
 これについて、作家でアルファーブロガーの鈴木傾城氏は、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 ツイッターの創業者であるジャック・ドーシーも、去年の12
月にCEOを降りてツイッター社から逃げている。ジャック・ド
ーシーは以前からSNSのビジネスから縁を切りたがっていた。
なぜか。SNSは憎悪を煽り立て、対立と衝突を増幅する暴力装
置であることが世間に分かったので、責任を負いたくなかったと
いうことだ。
 多文化共生の世界観を徹底的に押し進めた世界がSNSだ。で
は、このSNSの中で世界中の人々を結びつけて何が起こったの
か。立場が異なる人間たちの暴言、批判、憎悪が飛び交う世界が
生まれたのだ。日本でも「テラスハウス」に出演していたプロレ
スラー木村花さんがSNSの炎上で自殺したという事件もあった
が、人が自殺するまで効率的に呪詛を投げつけることができるの
がSNSである。SNSの行く末は荒廃だったのだ。
                 https://bit.ly/3HpCM2y
─────────────────────────────
 考えてみると、フェイスブックの創業者のマーク・ザッカーバ
ークCEOは、ユーザーデータの扱いについて批判されることは
多々あるものの、この変化の多い業界において、これまで時代を
先取りしてきていることは確かです。そもそもGAFAM5社の
なかで、創業者がCEOであるのは、メタだけなのです。
 まず、文字中心のSNSであるフェイスブックを立ち上げ、同
系統のワッツアップを買収し、49億人という驚異的なユーザー
を獲得しています。しかし、画像共有サイトであるインスタグラ
ムが誕生すると、将来強敵になると予測して、直ちに10億ドル
で同社を買収し、傘下に入れていますが、今やフェイスブックよ
りもインスタグラムの方が人気になっています。現在(2020
年9月現在)、メタの傘下のユーザー数は、次の通りです。
─────────────────────────────
       フェイスブック ・・ 29億人
        ワッツアップ ・・ 20億人
       インスタグラム ・・ 10億人
           ──2020年9月現在
─────────────────────────────
 しかし、その画像共有サイトもいずれ限界に達すると考えて、
ザッカーバークCEOは、VRからメタバースの世界へと脱皮を
図りつつあります。その証拠に2014年3月、ザッカーバーク
CEOはオキュラスVR社(以下、オキュラス)を電撃的に20
億ドルで買収したのです。オキュラスはVRヘッドマウントディ
スプレイ「オキュラスシフト」を提供している企業です。これは
メタバースへの先取り投資と考えられます。
 オキュラスは、パーマー・ラッキー氏という若者が24歳で創
業した企業です。HMDを製作するため、クラウドファンディン
グで応募し、240億ドル(約2億5000万円)の調達を行い
注目を集めたスタートアップです。このパーマー・ラッキー氏は
メタバースについて語るうえで欠かせない人物の一人であり、明
日のEJから詳しく紹介することにします。
 さて、ザッカーバークCEOは、2022年11月9日、社員
1万1000人を解雇すると発表しています。削減人数は会社全
体の約13%に当たりますが、その理由は、コロナ禍で行った増
資で期待通りの結果が出せなかったことが原因としています。
 10月発表の第3四半期(7〜9月)の決算では、売上高は、
前年同期比4%減の277億1400万ドル、純利益は52%減
の43億9500万ドルになっています。前四半期に続く減益と
なり、さらにその幅が拡大しています。マクロ経済の影響で主力
の広告事業が減速したほか、クエストシリーズのヘッドセットや
メタバースを担う「リアリティ・ラボ」の売上高がほぼ半減して
しまっています。
 ザッカーバークCEOは、今回のレイオフについて、次のよう
に述べています。「これは悲しいことで、どうしようもないこと
だ。去っていく人たちには、この場所に全てを注いでくれたこと
に、あらためて感謝したいと思う。皆さんの努力のおかげで、今
の私たちがあるから」と。
           ──[ウェブ3/メタバース/049]

≪画像および関連情報≫
 ●メタの1万1000人もの大量解雇の元凶は、失敗続きの
  プロジェクトと過剰な採用にある
  ───────────────────────────
   本業をおろそかにして、これらのプロジェクトに気をとら
  れたことがメタに害を及ぼしているのであり、今回のレイオ
  フが相当な規模になった理由だとこの元従業員は指摘する。
  イノベーションの各種の試みが失敗したり、挫折したりする
  たびに自然なかたちで縮小していれば、従業員数も時間をか
  けて徐々に減少したはずだ。
   「ちょうど、数百人か、それ以上の人員を要するブロック
  チェーンの巨大プロジェクトを立ち上げたところでした」と
  元従業員は語る。「そのプロジェクトが頓挫したとき、その
  人たちはどうなったでしょうか。そのまま、何となく社内に
  残って、ほかの実験や研究に就いたのです」
   この元従業員はこうした人員がメタという巨大な機械のよ
  うな会社で不明瞭な立場に流れていった原因として、社内コ
  ミュニケーションの問題が考えられるのではないかと言う。
  「わたしたちは行く末もわからないようなあらゆることに取
  り組んでいたようでした。しかし、『どこにもたどり着けま
  せんでしたね、では、こういうアクションをとることにしま
  しょう』といったアップデートはまったく得られませんでし
  た」メタはフェイスブック時代から、各種の新規プロジェク
  トのために急速に従業員数を増やしてきた。世界有数の企業
  として保有する大量の資金、そして消費者の生活のあらゆる
  側面を支配するための大規模計画をもって、かつてフェイス
  ブックという社名で知られたメタは十分すぎるほどの人材を
  意気揚々と採用したのだ。   https://bit.ly/3VPx3aH
  ───────────────────────────
フェイスブックの株価暴落.jpg
フェイスブックの株価暴落
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2022年12月14日

●「パルマー・ラッキー氏とは何者か」(第5874号)

 パルマー・ラッキー氏──1992年生まれの30歳。米カリ
フォルニア州で生まれ育ち、10代の頃SFの世界に強い興味を
抱き、映画では「マトリックス」や「バーチャル・ウォーズ」、
日本のアニメでは、「ドット・ハック」や「攻殻機動隊」など、
バーチャルな世界をテーマにした映像作品を暇さえあればいつも
視聴している少年だったそうです。そして、彼は何とかその映像
の世界に入りたいという願望を抱くようになります。
 10代の頃からエレクトロニクス分野への関心が強く、とくに
コンピュータのハードウェアに関してはとくに造詣が深かったと
いいます。またハッカーとしての才能も高かったといわれます。
こういう人物を「ギーク」といいます。いわゆる「技術オタク」
という意味になります。
 パルマー氏が10代の頃は、第1次VRブームが終息し、かな
りの時間が経っているので、オンラインショップを利用すれば、
古くなったVR機器を格安で手に入れることが可能な状態であっ
たことは確かです。
 パルマー少年は、ゲーム機の修理や改造、アイフォーンの修理
などで稼いだお金で古いVR機器を次々と買い集め、それらを改
造し、やがて自分自身でVRのヘッドマウントディスプレイ(H
MD)の開発を始めるようになります。
 しかし、当時入手できるHMDは大きな難点があったのです。
この難点について、新清士氏は次のように説明しています。
─────────────────────────────
 当時のヘッドマウントディスプレイの出来は、お世辞にもいい
ものではなく、視野角は25〜45度であることは当たり前であ
り、いくら買いそろえても、満足するものには出会えませんでし
た。画質の低さと視野角の狭さは、当時のヘッドマウントディス
プレイに搭載されていた液晶パネルの技術が足りず、小さかった
ために起きていたことです。ヘッドトラッキングシステムを搭載
しているとはいえ、センサーの性能も低かったために、簡単にV
R酔いが起きてしまうという問題もありました。
               ──新清士著/NHK出版新書
  『VRビジネスの衝撃/「仮想世界」が巨大マネーを生む』
─────────────────────────────
 2010年11月にパルマー氏は、自宅のガレージでHMDの
試作機1号を作り上げます。その形状としては、まさに巨大なヘ
ルメットそのものとしかいえない代物です。しかし、5・6イン
チの液晶パネルを装備し、これまでのHMDの1・5倍の画面を
作り出すことに成功しています。これによって、90度の視野角
が可能になっています。これは、HMDとしては、常識を超える
ものであったのです。
 パルマー氏は、これをインターネットを通じたギークコミュニ
ティに技術内容を公開し、幅広く助言を求めています。それを見
た重要人物がいます。ジョン・カーマック氏です。カーマック氏
は、ゲーム業界の伝説的プログラマーであり、ギークの代名詞と
いえる存在です。このカーマック氏について、新清士氏は、次の
ように紹介しています。
─────────────────────────────
 1970年生まれのジョン・カーマックが、コンピュータグラ
フィックスの歴史に与えたインパクトは計り知れないものがあり
ます。(中略)
 20歳で共同創業したパソコン向けゲーム会社イドソフトウェ
アで、1993年の「ドゥーム」、1996年の「クウェーク」
などの大ヒット作品を次々に開発し、世界中で高く評価されてい
る天才プログラマーです。パルマーが熱中していたゲームをまさ
に作っていた人物です。銃で撃ち合って得点を競うタイプの一人
称シューティング「FPS」と呼ばれる分野は、カーマックが生
み出したといっていいほどで、彼のゲームに使われている3Dの
CGをリアルタイムに表示するためテクニックは、現在にまで続
くCG技術の基礎となっています。
 高速にCGを表示するカーマックが作り上げた独自のプログラ
ムによって、テレビモニターで実現できる最高の没入体験が生ま
れたのです。   ──新清士著/NHK出版新書の前掲書より
─────────────────────────────
 2012年4月のことです。カーマック氏は、パルマー氏がプ
ロトタイプのHMDを作っているとのギークコミュニティへの書
き込みを見て、パルマー氏に直接連絡を取り、HMDの試作機を
を送ってくれないかと申し入れをします。パルマー氏はこの申し
入れを喜んで受け入れ、2台のHMDの試作機のうち1台をカー
マック氏に送付します。
 カーマック氏が受け取った試作機は、拡大レンズが組み込まれ
視野角を90度に拡大することに成功していましたが、この状態
でゲームエンジンを作動させると、拡大レンズの屈折の関係から
画面の中心点からはずれるほど、映像がいびつに歪んで見えてし
まう欠陥があったのです。
 そこでカーマック氏は、自身がメインプログラマーとして参加
した2004発売の「ドゥーム3」のプログラムを改造し、レン
ズが生み出す屈折をあらかじめ織り込んで、コンピュータに計算
させることによって、画像の歪みを補正したのです。実際にそれ
を拡大レンズを通して見ると、歪んだ映像は補正され、鮮明な映
像として見えるようになったといいます。
 2012年6月のことです。米ロサンゼルスで開催されたゲー
ム見本市において、カーマック氏は、パルマー製作の「オキュラ
スリフト」を出展したのです。そしてカーマック氏自身が自分が
行っている研究開発の作品として、オキュラスリフトで動作する
「ドゥーム3」を観客に対して、デモンストレーションして見せ
ています。このカーマック氏によるデモは、イベントに参加した
ゲーム関係者から大反響を呼び、これがバルマー氏によるオキュ
ラスVR社立ち上げの契機になります。
           ──[ウェブ3/メタバース/050]

≪画像および関連情報≫
 ●「DOOM3」
  ───────────────────────────
   「DOOM」。たった4文字のこのタイトルに、さまざま
  な記憶をともなって深い感慨を抱ける人がいるとしたら、相
  当に年季の入ったPCゲーマーだろう。そして恐らく、私は
  その中の1人に数えられる人間である。
   初代「DOOM」がリリースされた10年前は、いまやほ
  とんど見られない「草の根ネット」の時代。インターネット
  は一般にほとんど普及しておらず、PCを使ってゲームをす
  ることもそれ自体が特別なことだった。対戦するならモデム
  直結(相手に直接ダイヤルする)しか手段が無く、ハマったと
  きの電話料金は今日のインターネットの利用料金などとはケ
  タが違う。それだけにPCゲームをプレイするのは単なる暇
  つぶしなんてものではなくて、もっと気合の入った、強い積
  極的な感情を伴ってゲームに向かうのがあたりまえだったよ
  うに思う。
   そんな中でプレイしてきたPCゲームはそれぞれに思い入
  れがあるものだが、その中でも「DOOM」はひときわ特別
  な存在だ。私的な感想で恐縮だが、これほど熱狂的にハマっ
  たゲームを私は他に挙げることができない。客観的にみても
  まず、「DOOM」はそれまでにまったく無かったゲーム的
  要素の塊であった。それまでのFPSがすべて平面のマップ
  で展開する迷路ゲームの延長だったところに、立体的で複雑
  戦略的な内容をもつ「DOOM」は衝撃的だった。
                  https://bit.ly/3UOvPv8
  ───────────────────────────
パルマー・ラッキー氏.jpg
パルマー・ラッキー氏
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2022年12月15日

●「VR仮想空間でDOOMを楽しむ」(第5875号)

 メタバースについて書こうとすると、どうしてもコンピュータ
ゲームの話が出てきます。なぜなら、メタバースの成功の条件と
して、世界中のゲーマーを取り込めるかどうかが、カギを握って
いるからです。そういうわけで、ジョン・カーマック氏のことを
もう一度ご紹介することにします。
 ジョン・カーマック氏──ゲーム業界の伝説的な優れたプログ
ラマーであり、ゲームクリエイターであり、エンジニアです。カ
ーマック氏は、パルマー・ラッキー氏の製作した「オキュラスリ
フト」の試作品を使って、自身の開発した人気ゲーム「ドゥーム
3」をプログラミングのテクニックを駆使して動作させることに
成功させた人物です。
 ところで、「ドゥーム3/DOOM3」とはどういうゲームな
のでしょうか。
 DOOM3は、一人称視点からプレイするストーリードリブン
のアクションゲームです。このシリーズの主要な目的は、プレイ
ヤーキャラクターを真剣に殺そうとしてくる、様々な敵キャラク
ターを倒し、無事ステージを通過することです。いわゆる一人称
シューティングゲームです。
 カーマック氏は、このゲームを「オキュラスリフト」を使うこ
とによって、自分がプレーヤーとして、3D空間の中に入って行
おうとする企画です。それに近い2分の映像を見てください。イ
メージが掴めると思います。
─────────────────────────────
       ◎Oculus Rift | Step into Rift
           https://bit.ly/3iQZ0QN
                  2分1秒
─────────────────────────────
 ジョン・カーマック氏が、あるインタビューので、オキュラス
リフトについて次のように語っています。
─────────────────────────────
 20年前から、さまざまなVR機器の企業が私の開発してきた
ゲームをVRで動作するように対応してきたが、どの企業も今は
残っていない。ごく一部の先端のテクノロジーに関心がある人だ
けに向けた、とても高価な製品だったからだ。しかし、今回紹介
するオキュラスリフトは、500ドルのハードウエアの組み立て
キットだ。3Dテレビにも過去に関わってきたが、3Dを実現す
るためには何かを諦めなければならなかった。ヘッドマウントデ
ィスプレイは根本的にクールなもので、本当にゲームのなかに没
入することができる。今回のデモは過去に作られたVRデモのな
かで最高のものだと思う。一般向けに販売できるのは、そんなに
遠い未来のことではない。     ──ジョン・カーマック氏
               ──新清士著/NHK出版新書
  『VRビジネスの衝撃/「仮想世界」が巨大マネーを生む』
─────────────────────────────
 パルマー・ラッキー氏は、カーマック氏の努力で「オキュラス
リフト」上でゲームソフトが動くことを確認できたとして、正式
にオキュラスVR社を立ち上げたうえで、クラウドファンディン
グサイト「キックスターター」でのキャンペーンを開始したので
す。2012年8月のことです。
 キャンペーンの内容は、300ドル以上支払えば、オキュラス
リフトの開発者キット(DK1)と、VRに対応した「ドゥーム
3」を獲得できるという魅力的なものです。そしてクラウドファ
ンディングの目標額は25万ドルに設定されましたが、この目標
は、プロジェクト公開後わずか24時間で達成してしまい、1カ
月後の募集終了時には、243万ドルという巨額の開発資金を集
めることに成功しています。
 そして、2013年3月には、開発者キット(DK1)の出荷
がはじまり、オキュラスリフトは、世界的に注目を浴びるハード
ウェアになったのです。そして2013年8月、ジョン・カーマ
ック氏は、古巣のイドソフトウェアを離れ、パルマー・ラッキー
氏が率いるオキュラスVR社のCTO(最高技術責任者)に就任
しています。カーマック氏は、オキュラスVR社に加わるさいに
次のように述べています。
─────────────────────────────
 VRは、今後数年のうちに極めて大きな影響力を持つようにな
るでしょう。将来には誰もが当然のように思うであろうVRのパ
ラダイムは、おそらくこのメッセージを読んでいる人々の手で、
今まさに作られようとしています。そこに至るまでの仕事はまだ
まだ多く、存在すらわかっていない課題も見つかるでしょうが、
私は早く取り組みたくてしかたがありません。きっとすばらしい
体験になるでしょう。
         ──新清士著/NHK出版新書の前掲書より
─────────────────────────────
 ところで、「開発者キット(DK1)」について説明する必要
があります。普通であれば、特許を取得して自身の開発した技術
を守るものですが、パルマー・ラッキー氏は、技術仕様書を公開
し、誰でも自由にヘッドマウントディスプレイ(HMD)を作れ
るようにしたのです。少しでも良いものを作りたかったので、あ
えてオープンソースにしたというわけです。
 その結果、様々なHMDが世界中に登場し、オキュラスリフト
の精度の向上に寄与しています。なかでもパルマー氏は、日本の
貢献度を称賛し、次のように期待を寄せています。
─────────────────────────────
 日本では、たった数千個しか開発キットを売っていないのに、
何百人もの開発者が何百ものデモを作ってくれたのです。日本の
開発キットの所有者のほとんどが何らかの開発をしている。だか
ら、DK2の最初の数千個は日本に出荷しようと思っています。
         ──新清士著/NHK出版新書の前掲書より
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/051]

≪画像および関連情報≫
 ●VR技術に、ついに“本物”が来た
  ───────────────────────────
   「今度こそ、これは本物だ――オキュラスリフトの実物を
  体験した時、それを実感しました」と、株式会社エクシヴィ
  代表取締役社長、近藤義仁氏は語る。オキュラスリフトは、
  ゴーグルのように頭に装着する、いわゆるヘッドマウントデ
  ィスプレイ(HMD)の一種。ただし、最初からVRゲーム
  用を第一目的にうたい、民生用の既存のデバイスを組み合わ
  せ、安価でありながら高性能を目指して作られている。
   南カリフォルニア大出身のパーマー・ラッキー氏が開発。
  2012年に最初のプロトタイプが公開された。その後のク
  ラウドファンディングによる資金調達では、なんと目標額、
  25万ドルの10倍に迫る240万ドルが集まったという。
  2013年春からは「開発者向けキット」の提供も始まり、
  体験者を中心に、さらに熱狂的な関心も広まりつつある。こ
  のオキュラスリフトのどこが、そこまで開発者たちの心を捉
  えるのか。
   「今までもVR用HMDはあったが、オキュラスリフトは
  “没入感”が全く違う。まず、今までのテレビやテレビゲー
  ム、携帯のゲーム、それらはすべて平面だった。そこから一
  歩進んだものとして、3Dテレビや3D映画などというもの
  もあったけれど、実のところ、それらは全然3Dではなかっ
  た。単に、正面の画面が若干浮き出て見えるだけ。どうして
  も限界がある。         https://bit.ly/3FmXn52
  ───────────────────────────
オキュラスVR社立ち上げメンバー.jpg
オキュラスVR社立ち上げメンバー
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2022年12月16日

●「マイケル・アブラッシュFB参加」(第5876号)

 2014年3月のことです。フェイスブックのマーク・ザッカ
ーバークCEOが、第2世代の開発機「DK2」を出荷したばか
りのオキュラスVR社を買収すると発表し、騒然となりました。
その時点でオキュラスVR社は、設立からまだ1年半しか経って
おらず、消費者向けの製品も発売していないのです。そんなスタ
ートアップ企業への買収価格は超破格の20億ドルです。
 買収は成立し、それから約1年後の2015年5月、オキュラ
スVR社主催のカンファレンス「オキュラス・コネクト2」で、
ザッカーバークCEOは次のように述べています。
─────────────────────────────
 フェイスブックのミッションは、世界をよりオープンにしてつ
なげることです。人々が世界のさまざまな側面をシェアする力を
持つことができれば、世界はよりよくなる。人々はリッチなツー
ルを持つことができるようになり、より深く没入するメディアの
コンテンツを使うようになつていきます。
 (新しい技術の)VRはフェイスブックのミッションに合致し
ます。VRは次のプラットフォームです。ほんの数年前、VRは
まだサイエンスフィクションの夢物語でした。しかし、オキュラ
スがあればゲームをプレイして、友達とコミュニケーションをと
り、いっしょにコラボレーション作業をするチャンスが生まれま
す。コンピュータやスマートフォンは発売された最初の年に、1
億台も売れるようなことはありませんでした。しかし、アイデア
は現実になっていきます。   ──新清士著/NHK出版新書
  『VRビジネスの衝撃/「仮想世界」が巨大マネーを生む』
─────────────────────────────
 異常ともいえるザッカーバークCEOのVRへの力の入れよう
ですが、その真の狙いは何でしょうか。
 それはGAFAMにおける基盤の確立です。なぜなら、フェイ
スブックの90%は広告事業であり、ハードウェアは持たず、G
AFAM内での基盤が脆弱であるからです。
 アップル、マイクロソフト、グーグルはいずれもOSを有して
います。アップルのiOS、マイクロソフトのウィンドウズ、グ
ーグルのアンドロイド──このうち、ウィンドウズとアンドロイ
ドは最大のシェアを誇っています。
 フェイスブックはハードウェアを持っていません。これに対し
てアップルは、マックPC、アイフォーン、アイパッド、アップ
ル・ウォッチなど、マイクロソフトは、サーフェス(PC)、X
ボックスなどがあります。グーグルは、ピクセル(スマホ)とそ
の関連商品を有しています。アマゾンは、ECで世界中にネット
ワークを広げており、AWSでクラウド業界を制覇しており、そ
の基盤は盤石です。
 このような状況において、フェイスブックが「オキュラスリフ
ト」というヘッドマウントディスプレイ(HMD)を持てば、念
願のハードウェアが持てるし、それをプラットフォームとして提
供することによって、ゲーム業界を支配できるし、GAFAM内
のポジションを高めることができると、ザッカーバークCEOは
考えているのです。
 オキュラスVR社が、フェイスブックに買収された直後の20
14年3月に、フェイスブックに参加した重要人物がいます。マ
イケル・アブラッシュ氏です。この人もジョン・カーマック氏と
並び称されるゲーム分野における伝説的なプログラマーとして知
られる人物です。カーマック氏とは友人の関係であり、イドソフ
トウェアで一緒に仕事をしたことがあります。
 アブラッシュ氏は、もともとマイクロソフトでウィンドウズの
開発に携わっていた人物です。しかし、プログラミング雑誌に専
門的なレポートを何本も発表しており、有名なプログラマーとし
て知られています。
 そういう人が、なぜ、ゲームなのか、なぜ、VRなのかという
と、彼が次の2つのSF小説に大きな影響を受けたからです。
─────────────────────────────
      ニール・スティーブンソン著/1992年
    『スノウ・クラッシュ/上下』/ハヤカワ文庫
        アーネスト・クライン著/2011年
     『ゲーム・ウォーズ/上下』/  SB文庫
─────────────────────────────
 ニール・スティーブンソンの描く舞台は、近未来の米国で、国
家経済が破綻し、国土が非常に小さな区画に分割されているとい
う状態で、フリーランスのハッカーである主人公は、世界最高の
剣士であり、現実世界ではピザの配達人という設定です。
 アーネスト・クラインの描く舞台は、革新的なVR空間のネッ
トワーク「オアシス」が張りめぐらされた近未来の世界です。イ
ンターネットがオアシスと一体化し、世界中の多くの人が生活の
大半をVRデバイスをかぶって暮らしているという設定です。
 ニール・スティーブンソンの描く世界は、まさにメタバースそ
のものといえる高度なバーチャル空間であり、メインストリート
だけで、6万5000キロの長さがある巨大な仮想空間です。小
説の主人公たちは、ゴーグルとイヤホーンを装着して、メタバー
スにアクセスし、自分の分身であるアバターを操作して、他のプ
レイヤーたちと、コミュニケーションをとりながら暮らすことが
できます。これを読んだとき、アブラッシュ氏は、この本の世界
のほとんどは実現可能であると感じ、カーマック氏と話し合った
といいます。
 アーネスト・クラインの小説を読んで、アブラッシュ氏は「こ
れはVRの将来のロードマップが示されている」と感じたそうで
す。アブラッシュ氏は、それまでVRよりもAR(拡張現実)の
方に関心を持っていたのですが、VRの方が奥が深いのではない
かと感ずるようになったといいます。なお、この小説は、スピル
バーク監督によって2018に映画化され、「レディ・プレイヤ
ー1(ワン)」として上映されています。
           ──[ウェブ3/メタバース/052]

≪画像および関連情報≫
 ●世界はいかにハックされうるか?/『スノウ・クラッシュ』
  解読/鈴木健
  ───────────────────────────
   『スノウ・クラッシュ』の舞台は、近未来のアメリカであ
  る。グローバル経済が行き着くところまで達し、世界はフラ
  ット化したあげく、アメリカの経済力は世界でも最低レベル
  になった。アメリカが世界に誇れるのは、音楽、映画、ソフ
  トウェア、高速ピザ配達の4つだけになってしまった。
   大統領の権威も失墜した。物語の後半、アメリカ合衆国大
  統領が登場するシーンでは、まわりの人物は誰も彼が大統領
  だと気づかない。政府は数あるステイクホルダーのひとつに
  すぎず、様々なフランチャイズ国家が国土を分割統治するよ
  うになっている。例えば、マフィアのドンであるアンクル・
  エンゾが経営する〈ノヴァ・シチリア〉や、〈ミスター・リ
  ーの大ホンコン〉のように、マフィアや資本家がフランチャ
  イズ国家を運営しており、その中は治外法権で、大統領とい
  えども口出しできない。
   近年アメリカでみられるゲーテッド・コミュニティとフラ
  ンチャイズを合体させ、それが国家に並ぶような力を得たの
  が、フランチャイズ国家である。会員以外が区域に入れない
  よう、それぞれのフランチャイズは技術を駆使した物理的抑
  止力で守られている。
   一方でメタヴァースの中も同様の世界が構築されている。
  主人公ヒロの友人のDa5idがメタヴァースの中で経営す
  る会員制のバー〈ブラック・サン〉には、普通の人は入るこ
  とはできず、会員だけが静かな会話を楽しむことができるよ
  うになっている。        https://bit.ly/3Pr1FwU
  ───────────────────────────
マイケル・アブラッシュ氏.jpg
マイケル・アブラッシュ氏
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2022年12月19日

●「会議システム/ホライゾンワールド」(第5877号)

 オキュラスVR社の創業者で、「オキュラスリフト」の開発者
のパルマー・ラッキー氏、後から同社に加わったCGの歴史に劇
的なインパクトを与えたプログラマーのジョン・カーマック氏、
それからゲーム分野で伝説的な存在として知られるマイケル・ア
ブラッシュ氏──この3人を中心に、ヘッドマウントディスプレ
イ(HMD)の歴史についてここまで述べてきています。
 オキュラスVR社は、2014年に当時のフェイスブックに買
収され、2018年9月からオキュラスVR社は「フェイスブッ
ク・テクノロジーズ」として、当時のフェイスブックの一つの部
門になっています。その間、オキュラスのHMDは次のように飛
躍的な進歩を遂げてきています。
─────────────────────────────
  2016年 3月 ・・       オキュラスリフト
  2016年12月 ・・       オキュラスタッチ
  2018年 5月 ・・        オキュラスゴー
  2019年 5月 ・・ オキュラスクエスト/リフトS
─────────────────────────────
 しかし、パルマー・ラッキー、ジョン・カ−マック、マイケル
・アブラッシュというオキュラスを支える3氏のうち、オキュラ
スVR社の創業者であるパルマー・ラッキー氏は、2017年に
オキュラスVR社を退社しています。なぜ退社したのかについて
は、はっきりしていませんし、メタ社も口を閉ざしています。
 一説によると、2016年9月にパルマー・ラッキー氏は、大
統領選挙にさいして、トランプ候補に1万ドルを寄付し、それが
原因で退社させられたといわれています。現在、パルマー氏は、
防衛関係の仕事に従事しているといわれます。
 さて、オキュラスVR社を買収したフェイスブックのマーク・
ザッカーバークCEOは、ことあるごとに次のようにいうように
なったといわれます。
─────────────────────────────
    VR機器を、全世界で10億台普及させたい。
         ──マーク・ザッカーバークCEO
─────────────────────────────
 ここでいう「10億台」という数字は、単なる普及させたい数
字目標ではなく、意味があります。というのは、2022年現在
スマートフォンは年間10億台生産されており、その精度は年々
向上しています。VR機器もきっとそうなるし、そうさせたいと
ザッカーバー氏は考えています。ムーアの法則がそうであったよ
うに、性能が上がれば、価格も下がるのです。つまり、VR機器
オキュラスを現在のスマートフォンのようにしたいし、きっとそ
うなると信じているのでしょう。
 ザッカーバークCEOは「メタバースには1兆ドル(110兆
円)の市場価値がある」といっています。そのため、オキュラス
VR社を買収し、傘下の研究開発部門として「リアリティラボ/
Reality Labs」を設立し、毎年100億ドル(1・1兆円)の投
資を行っています。
 その結果、2022年4月に公表されたこのリアリティラボ部
門の22年第1四半期決算は、次のようになっています。
─────────────────────────────
   売上高  6億9500万ドル/前年同期比35%増
   損 失 29億6000万ドル/前年同期比55%増
─────────────────────────────
 リアリティラボでは、「メタクエスト2」が売り上げを伸ばし
ている一方、メタバースへの投資強化により、巨額の損失が発生
しています。ザッカーバークCEOは、投資家向けには次のメッ
セージを発しています。
─────────────────────────────
 メタバースを構築する戦略の中心にあるのは、ソーシャルプ
 ラットフォームである。──マーク・ザッカーバークCEO
─────────────────────────────
 ソーシャルプラットフォーム──ザッカーバークCEOのいう
この言葉の意味は重要です。つまり、メタはメタバースの世界に
おける覇権を狙っているのです。これを具体化させるものとして
「ホライゾンワールド/Horizon Worlds」というソーシャルVR
サービスを立ち上げています。
 これは、メタバースを利用する会議サービスのことです。まだ
日本には入ってきていませんが、このシステムでは、会議に参加
する人はアバターの姿で現れ、きちんと相手の目を見ながら、身
振り手振りをしつつ、会議ができます。現在のZOOMでの対話
よりもリアリティがあり、しかも音声の遅延はほとんどないとい
う優れものです。
 なお、メタでは、このホライゾンワールドのウェブ版を製作中
であるといわれます。ウェブ版では、VRヘッドセットを持って
いなくてもPCやスマホなどのデバイスで利用できます。自分の
バストショットを相互に表示させてコミュニケーションをとるZ
OOMなどのオンライン対話よりも、自分の全身ショットのアバ
ターがメタバースの会議室に現れ、身振り手振りを交えながら対
話する方がリアリティがあるのではないかと思います。
 ちなみにアバターもAIの活用などにより、本人の特徴を掴ん
だものができるようになっています。つまり、アバターを見れば
それが誰であるか識別できるレベルまで進化しているのです。
 しかも、自分が手や身体を動かしたり、話したりする動作や音
声は、自分がそのように振る舞えば、アバターも同じように動作
するので、慣れるとずっとリアリティが増すと思われます。現在
流行しているオンライン会議システムの進化系として、十分実現
性があると思います。
 しかし、2022年に入ると、米国IT業界では、異変が起こ
りはじめています。しかも、GAFAMのなかでは、メタはとく
に状況が厳しいようです。
           ──[ウェブ3/メタバース/053]

≪画像および関連情報≫
 ●メタが展開するメタバース「Horizon Worlds」バーチャルア
  イテムの販売手数料は47.5%に
  ───────────────────────────
   メタ(旧フェイスブック)は2022年4月11日、同社
  が展開するメタバース「ホライゾンワールド」における、ク
  リエイター向けの新たなツールのテストを開始すると発表し
  た。まずは少数の選ばれたクリエイターが対象となり、制作
  したバーチャルアイテムをホライゾンワールド内で販売する
  ことが可能になる。その際の販売手数料が、計47・5%に
  なることが明らかになり、注目を集めているようだ。海外メ
  ディアビジネス・インサイダーなどが報じている。
   ホライゾンワールドでは、メタが展開するメタバースだ。
  昨年12月から、アメリカとカナダで先行してサービスが開
  始。ユーザーは、VRヘッドセット「メタクエスト2」など
  を用い、自らのアバターを通じて体験する。バーチャル空間
  にて、ほかのユーザーとさまざまなかたちで交流できるほか
  独自のワールドを作成することも可能だという。今年2月時
  点で、すでに1万以上のワールドが作成・公開されていると
  のこと。
   今回開始されたテストにおいて、ホライゾンワールドに参
  加しているクリエイターは、自らのワールド内にて独自に制
  作したバーチャルアイテムを販売できるようになるという。
  アイテムの例として、アバター向けアクセサリなどのファッ
  ションアイテムや、ワールド内の特定のエリアへのアクセス
  が可能になる鍵が挙げられている。https://bit.ly/3BGMutT
  ───────────────────────────
「ホライゾンワールド」での会議風景.jpg
「ホライゾンワールド」での会議風景
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2022年12月20日

●「メタは現在どのような状況にあるか」(第5878号)

 2022年に入ると、他の通貨に対してドルが強くなり、イン
フレが加速します。米国のIT業界では、コンシューマー向けの
ネットサービスの多くがその影響を受けて、深刻な不況に突入し
ています。なかでも、メタの場合は、GAFAMのなかでもとく
に経営に深刻な影響が出つつあります。
 メタによるメタバース事業がうまくいくかどうかは、連続して
そこへの投資が続けられるかどうかにかかっています。そもそも
世の中が不況になると、広告を出す企業は減少するので、広告収
入が企業収益のほとんどを占めるメタにとっては、深刻な事態を
招くのです。
 メタの経営が厳しくなっていることについては、12月13日
のEJでも述べていますが、インフレによる影響以外でもメタに
とっては、経営を圧迫する要因があります。整理すると、次の4
つになります。4つの要因について以下に簡単に説明します。
─────────────────────────────
    @フェイスブックのブランド価値が下落している
    Aターゲッティング広告が出しにくくなったこと
    B同種ライバル企業との競合が厳しくなったこと
    CインフレでHMDの大幅値上げが不可避である
─────────────────────────────
 @の「フェイスブックのブランド価値が下落している」ことに
ついては、同社の個人情報の扱いをめぐってさまざまな問題が噴
出したことです。これは、後を引く問題であり、メタバース事業
にも良くない影響を与えることは必至です。
 Aの「ターゲッティング広告が出しにくくなったこと」につい
ては、アップルがプライバシーを重視して導入したATTに原因
があります。ATTとはApp Tracking Transparrency の省略語
で、iOS版アプリがユーザーの個人データを取得するさいに、
事前に本人から許可を得ることを義務付けるものです。
 Bの「同種ライバル企業との競合が厳しくなったこと」につい
ては、文字中心のSNSが人気を失いつつあるなかで、画像中心
のインスタグラムがティックトックに押されており、メタの広告
収入に影響を与えています。
 Cの「インフレでHMDの大幅値上げが不可避である」ことに
ついては、メタの唯一のハードウェアである「メタクエスト2」
の製造・出荷コストの上昇で値上げをせざるを得なかったことで
す。米国では、299ドルからだった製品が、399ドルからと
100ドルの値上げ、日本の場合は、円安の影響もあり、ストレ
ージ容量128GBモデルが3万7180円だったものが、5万
9400円、ストレージ容量が256GBモデルでは、4万92
80円だったものが7万4400円という大幅値上げです。
 「メタクエスト2/Meta Quest 2」は、2022年9月の時点
では、メタの最新のHMDです。このHMDは、それまで全世界
で約1600万台売れていたとみられます。もちろん、この程度
の台数ではまだ赤字ですが、ゲーム機としてみた場合、ソフトが
ヒットすることで収益が大きくなるギリギリの数であるといわれ
ています。もっと売り上げを伸ばす必要があるのです。
 しかし、インフレによる大幅値上げで、売れ行きは相当ダメー
ジを受けると思われます。売れ行きに影響を与えるのが必至であ
るのになぜ値上げしたかというと、赤字の額をなるべく小さくす
るためと思われます。
 メタは、2022年10月に、「メタクエスト2」よりも性能
が高い次のHMDを発表しています。
─────────────────────────────
      ◎メタクエストプロ/Meta Quest Pro
                 1499ドル
          日本価格/22万6800円
─────────────────────────────
 「メタクエストプロ」は、ゲーム機ではなく、仕事に使える機
器として開発されているHMDであり、むしろPCに近い存在と
いえます。「メタクエストプロ」の最大の特色は、VRだけでな
く、MR(複合現実)にも対応できるデバイスとして、現実世界
と仮想世界をシームレスつなぐことが目的です。遠方にいてもア
バターを介して3DCGオブジェクトを共有したり、同じ空間に
存在しているかのように共同作業を進めることができます。
 ここで、VRだけでなく、ARやMRが出てくるようになった
ので、ここでは簡単に整理しておくことにします。
─────────────────────────────
      ・VR/仮想現実  Virtual Reality
      ・AR/拡張現実  Augmented Reality
      ・MR/複合現実  Mixed Reality
─────────────────────────────
 第1は「VR」です。
 VRは、コンピュータ・グラフィックスなどのテクノロジーに
よって、メタバースの世界を作り出すことができます。この世界
に入るのは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)や専用ゴー
グルを装着する必要があります。目の前に映像が映し出され、そ
の中で、ユーザーは自由に動き回わることができます。
 第2は「AR」です。
 VRがメタバースを作り出すのに対して、ARは現実世界を拡
張させるのが特徴です。具体的にいうと、現実世界に本来存在し
ないものが出現します。現実世界のさまざまな情報に対し、コン
ピュータで作り上げた画像や情報を重ねるようにして、目の前の
世界を拡張させるのです。
 第3は「MR」です。
 ARの技術をさらに発展させたのがMRです。ARが現実世界
を拡張しているのに対し、MRはあたかも現実世界にデジタル画
像が存在するように投影することができます。代表的な事例とし
ては、マイクロソフト社の「マイクロソフト・ホロレンズ」が上
げられます。     ──[ウェブ3/メタバース/054]

≪画像および関連情報≫
 ●ザッカーバーグ氏の苦境はどれほど深刻か?
  ───────────────────────────
   夜更けのソープストーン・コメディ・クラブに来ている。
  と言っても、ここはいつも夜更けだ。
   米メタ(旧フェイスブック)の主力メタバースアプリ「ホ
  ライゾン・ワールズ」のなかにあるスペースで、ユーザーは
  仮想現実(VR)でコメディを見ることができ、自ら演じる
  こともできる。
   「足がないと難しいんだよね、立ち上がるのって」自分の
  アバターが宙に浮いていることを身振り手振りで表現しなが
  ら、ある演者がそんな皮肉を口にしたところ、次の瞬間、何
  かのはずみで仮想マイクを落とし、ステージの外に、飛んで
  行ってしまった。VRの夜のバーには、本物のバーの雰囲気
  にはある何かが少し欠けているものの、本物そっくりのめま
  いと吐き気を引き起こしてはくれる。
   会社の名前がフェイスブックからメタに変わるとマーク・
  ザッカーバーグ氏が発表してほぼ1年が過ぎた。メタバース
  への取り組みの真剣さを示すためだったが、悪化した企業イ
  メージから逃げ出すためでもあったことは間違いない。
   メタバースという言葉が何を意味しているのかピンとこな
  い人が多かったものの、同社の市場時価総額が1兆1000
  億ドルという過去最高に近い水準にあったこと、中核のSN
  S(交流サイト)広告事業がパンデミックを背景に、絶好調
  だったことから、投資家はこの実験の成り行きを見守ること
  にした。その後の1年で状況は変わったようだ。
                  https://bit.ly/3PyB6pu
  ───────────────────────────
「メタクエストプロ」発売.jpg
「メタクエストプロ」発売
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2022年12月21日

●「ザッカーバークメタバースを語る」(第5879号)

 米国に「SXSW」という一大イベントがあります。「サウス
・バイ・サウス・ウエスト」と呼びます。これは、スタートアッ
プの登竜門といえる一大イベントです。SXSWは、次の4つの
部門に分かれています。
─────────────────────────────
        @  SXSWミュージック
        A    SXSWフィルム
        BSXSWインタラクティブ
        C    SXSWコメディ
─────────────────────────────
 Bの「SXSWインタラクティブ」は、IT関連企業、スター
トアップの新規事業アイデア、プロトタイプ紹介がメインとなっ
ています。2022年3月11日、このイベントで、メタのマー
ク・ザッカーバークCEOが司会者との対談形式でメタバースに
ついて発言しています。以下、その要点について、ご紹介するこ
とにします。
 まず、メタバースの本質について、ザッカーバークCEOは次
のように述べています。
─────────────────────────────
司会者:まずは基本的なことから。メタバースの本質とは、何で
    しょうか。
ザッカーバーク:メタバースの最大の特徴は、世界中のどこにい
 ても、自分がそこにいて、他の人と一緒に存在しているように
 感じられることです。それは素晴らしい感覚で非常に人間的な
 ものです。現在のインターネットとはその部分が異なります。
  多くの人が長い間、このようなソーシャル体験を実現したい
 と願い、今それが実現できるところまで技術が進歩してきまし
 た。私たちの目標は、メタバースで素晴らしい体験を実現する
 ための基本的な技術を提供することです。VRやARのヘッド
 セットや通信、他者と一緒にいる感覚を生み出すシステムなど
 あらゆるものをうまく活用し、対話を必要とする仕事やさまざ
 まなサービスの助けになるものをつくろうと考えています。
            ──久保田瞬/石村尚也著/日経BP
     『メタバース未来戦略/現実と仮想世界が融け合う』
─────────────────────────────
 テキストメッセージのやり取りの対話より、ZOOMなどのよ
うに、顔出しのバストショット同士の対話の方がよりリアリティ
を感ずるように、お互いがアバターとしてメタバース内のある対
話のできる場所に出かけて行き、そこで対話する方が一段とリア
リティを感ずることは確かです。メタは、そういう仮想空間、メ
タバースの実現を目指しています。
 メタバースに入るにはヘッドマウントディスプレイ(HMD)
が必要になります。メタはそのHMDの性能を高める努力をする
とともに、ゲームに加えて、ビジネスにおいても使える場を用意
することをザッカーバークCEOは約束しています。
─────────────────────────────
司会者:人々がつながる体験をどうやって良いものにしていきま
    すか。
ザッカーバーク:本当に素晴らしい体験が、すでに作られていま
 す。その多くはゲームから始まりましたが、現在ではVRヘッ
 ドセットで過ごす時間は、ソーシャル体験へと移りつつありま
 す。私たちは「ホライゾン」というプラットフォームを構築し
 ています。参加する人々が、ジョークを言い合うコメディ−ク
 ラブや、アート作品を販売する美術館など、さまざまな体験が
 できる場をつくっています。
  ビジネス向けの「ホライゾンワークルーム」もあります。ビ
 デオ会議のような写実的な表現ではないものの、大勢でテーブ
 ルを囲んでいるときに、隣の人とアイコンタクトを取ったり、
 ジェスチャーで伝えたりできる。その臨場感はまさに魔法のよ
 うです。さらなる投資で技術が進歩すれば、リアルはさらに増
 し、体験はますます改良されていくと想像できます。
      ──久保田瞬/石村尚也著/日経BPの前掲書より
─────────────────────────────
 続いて、アバターに関する質問です。アバターはどのメタバー
スでも使えのかという質問です。また、このメタバースによって
経済圏をどのように作るのかについても、司会者はザッカーバー
クCEOに質問しています。
─────────────────────────────
司会者:アバターについては、1つだけでなく、複数の姿を使い
    分けるような人も出てくるのではないでしょうか。
ザッカーバーク:その通りです。さまざまな形で自分を表現した
 いと思う人が増えてくるでしょう。将来、フォーマルなビジネ
 スミーティングなどで、VRやARのヘッドセットを装着し、
 ホログラムのソファとテーブルの前で写実的な自分に示し、対
 話するようになるでしょう。しかし、時にはもう少し遊び心を
 出したいこともあるかもしれません。
  1日に何時間もビデオ会議に費やすような人は、会議で着る
 服を気にしますね。それと同じように、アバターの服装も、自
 分自身をどう表現するかに気を配ります。そこに経済が生まれ
 人々はそこで大量の消費をして、物理的な世界で服を着るよう
 に自分自身を表現するようになるでしょう。
  そのときに私が重要だと考えているのは相互運用性です。セ
 ーターやジャケットなど、自分を表現したいものを、別のメタ
 バースにも持ち込めることが大切です。1つのアプリあるいは
 1つのゲームだけでしか使えないという制約があれば、人々は
 ものを買わなくなり、クリエーターエコノミーが小さくなって
 しまいます。
      ──久保田瞬/石村尚也著/日経BPの前掲書より
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/055]

≪画像および関連情報≫
 ●メタバースは新たな経済圏〜何故メタバースが話題なのか
  ───────────────────────────
   現状は、肉体がある世界である、リアルが重視されていま
  す。それは、「五感で感じ取れる」「できることが多岐にわ
  たる」など色々ありますが、結局は生活をしているからでは
  ないでしょうか。
   今後はバーチャルでできることが増えていき、バーチャル
  でもリアルと同等の生活ができるようになります。五感はも
  ちろん、仕事や交流、エンタメなども、バーチャルで行えま
  す。極端な例ですが、ゲーム廃人などは自身の現実はゲーム
  内と捉えていることがあります。これと同様にメタバースが
  自身の現実と捉える人が増えていくと考えられています。
   既にスマホの普及で多くの時間やお金をバーチャル上で消
  費しているので兆しは見えているのかもしれません。メタバ
  ースが話題になったのは、バーチャルを現実世界に変える力
  を持っているからです。
   メタバースでは、仕事や交流、エンタメなどリアルと同等
  か、それ以上のことが実現できます。肉体でしか行えない行
  動があるように、アバターでしか行えない行動もあります。
  しかし、多くの活動は肉体/アバターどちらでもできるよう
  になります。将来的にはどちらが生活のメインなどの垣根が
  なく  なるのかもしれません。 https://bit.ly/3uXGkBJ
  ───────────────────────────.
ザッカーバーク/SXSWでの講演.jpg
ザッカーバーク/SXSWでの講演
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2022年12月22日

●「メタバースとNFTチケットの関係」(第5880号)

 「SXSWインタラクティブ」における、メタのマーク・ザッ
カーバークCEOのコメントの続きです。
─────────────────────────────
司会者:メタバースはフェイスブックやインスタグラムのように
    毎日使いたいと思うサービスになっていきますか。
ザッカーバーク:「私たちのアプローチは他の企業とは何が違う
 のか」という質問に改めてお答えしますと、違いの1つはフェ
 イスブック、インスタグラム、メッセンジャーアプリのワッツ
 アップと、モバイルでソーシャル体験を構築してきた歴史があ
 ることです。これらのサービス上で、人々がクリエーターエコ
 ノミーを構築し、成長してきました。
  例えば、アパレルのクリエーターたちがフォロワーを増やし
 インスタグラムやフェイスブックでイベントを開催し、売り上
 げを立てています。
  長期的には、メタバースで自分のアバターが着ている服が、
 さまざまな場所と場所を結ぶ、NFTチケットとして流通する
 可能性があると思います。シームレスに活用できるようにする
 には、技術的問題を解決する必要があります。我々は、そうし
 た仕組みをインスタグラムに取り入れていきます。10億とい
 う桁のユーザーがいるプラットフォームでNFTを取り入れる
 ことで、かなり強力なことができるはずです。
            ──久保田瞬/石村尚也著/日経BP
     『メタバース未来戦略/現実と仮想世界が融け合う』
─────────────────────────────
 上記のザッカーバークCEOの言葉のなかに「NFTチケット
として流通する」という言葉が出てきます。このNFTとは何で
しょうか。
─────────────────────────────
    ◎NFT/「ノン・ファンジブル・トークン」
                Non-Fungible token
─────────────────────────────
 NFTは、メタバースに深く関係するので、いずれ詳しく説明
しますが、現在の時点では、それが何であるか、簡単に説明する
ことにとどめます。
 「トークン」というのは、仮想通貨のことである考えてよいと
思います。「ファンジブル」は「代替可能」という意味です。財
布に5万円の現金を持っている人が、1万円の支払いをする場合
5枚の1万円札のどれでも使うことができます。代替可能である
からです。これが、ファンジブルです。
 しかし、ノン・ファンジブルには、「ノン」という否定語が付
いているので、代替できないという意味になります。わかりやす
い例を上げると、デジタルで購入したコンサートチケットがあり
ます。デジタルで購入すると、購入者の名前や座席番号が記録さ
れ、会場では、スマホなどでチェックを受けるので、購入者以外
には代替できません。紙のチケットであれば、購入者以外の人で
も利用できます。
 デジタルのデータは、基本的にはコピー可能であるので、それ
をノン・ファンジブルにするには、ブロックチェーンが不可欠に
なります。つまり、ノン・ファンジブルトークンとは、ブロック
チェーン上で発行される「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きの
デジタルデータ」のことです。
 続いて、メタバース時代の働き方についてのザッカーバークC
EOの見解です。
─────────────────────────────
司会者:メタバースが広がっていく中、人々の働き方はどう変化
    していきますか。
ザッカーバーク:会社や職場によって求める形は異なると思いま
 すが、私たちは世界中のどこに住んでいても、働ける環境をつ
 くろうと考えています。これが未来の働き方です。優秀な人材
 を定着させるために必要ですし、それを実現する複数のツール
 を開発しようとしています。
  現在は遠くの人と話すにはビデオ会議を使っています。メタ
 バース時代にはVRでテーブルを囲むこともできますし、近い
 将来はARが広がるでしょう。とはいえ、向き不向きはありま
 す。取り組んでいる事業がハードウエア開発で、あなたのチー
 ムが新しいプロトタイプを作っているのなら、メンバーがすぐ
 隣にいるほうが効率的でしょう。とはいえ、世界はリモートの
 分散型の組織となっていく方向へ向かっていると思います。
      ──久保田瞬/石村尚也著/日経BPの前掲書より
─────────────────────────────
 メタバースの実現には技術的な問題を含む多くの課題が残って
います。小型のハードウェアの開発、低遅延でシームレスな体験
や、セキュリティの確保など、解決すべき課題は多くあります。
メタ自身が投資家への文書で「メタバース製品が完全な形となる
には、10〜15年はかかる可能性もある」と説明しています。
 しかし、米金融大手シティグループは、メタバース市場は30
年までに8〜12兆ドルに膨れ上がると予測しています。
 マーク・ザッカーバークCEO自身は、メタバースには強気の
予測を立てており、次のように述べています。
─────────────────────────────
 私は常に未来はどうなるのか、次に来るものは何か、というこ
とに焦点を合わせています。フェイスブックの立ち上げから18
年間続けてきた私の経験では、未来は意外に早くやって来ます。
5〜7年先と思っていたことが、「これをやろう」と旗を立てた
ら、1年半後あるいは2〜3年後には、「これはうまくいく」と
分かるようになります。数年間は完全な結実には至らないかもし
れませんが、兆候は受け取ることができるはず。いや、うまくい
くのです。 ──久保田瞬/石村尚也著/日経BPの前掲書より
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/056]

≪画像および関連情報≫
 ●メタバース(仮想空間)の新規事業における成功ポイント!
  活用事例も紹介
  ───────────────────────────
   2021年10月にフェイスブックが社名を「メタ」に改
  名、メタバース(仮想空間)へ注力すると表明したことが話
  題となりました。メタバースとは、VR(仮想現実)やAR
  (拡張現実)を利用して、インターネット上に構築された仮
  想空間のこと。
   メタバースといえばこれまでゲームが主流でしたが、今後
  ビジネスに活用できるプラットフォームとして注目されてい
  ます。ブルームバーグではメタバースの市場規模は2020
  年の5000億ドル(約56兆円)から、2024年には、
  7833億ドル(約88兆円)まで伸びると予測。エンター
  テイメント業界だけではなく、観光や医療など幅広い分野で
  活用が進むと言われています。日本でも、日産などメタバー
  スをビジネスに活用する事例が増えてきました。グリーをは
  じめ、今後新規事業として、メタバースへの投資を表明する
  IT企業もあります。とはいえ「ゲームの仮想現実と何が違
  うのか」「新規事業として何ができるのか」といった疑問を
  持つ方も多いのではないでしょうか。そこで本コラムでは、
  メタバースなどの仮想空間でのビジネスについて、基本的な
  考え方やビジネスに活用するポイントなどを解説します。
   メタバースは「高次の」「超える」という意味の「Meta」
  と、「宇宙」という意味の「Universe」を合わせた造語。一
  般的にインターネットにおける3次元の仮想空間を意味しま
  す。実は今後の成長分野として、経済産業省も注目するメタ
  バース。経済産業省が2021年年7月にまとめた資料によ
  れば、メタバースを「多人数が参加可能で、参加者がその中
  で自由に行動できるインターネット上に構築される仮想の三
  次元空間」と解説しています。  https://bit.ly/3WoDly0
  ───────────────────────────
メタCEO/マーク・ザッカーバーク氏.jpg
メタCEO/マーク・ザッカーバーク氏
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2022年12月23日

●「ZOOMで伝わらない右脳的な情報」(第5881号)

 2022年は今日を含めてあと9日間です。EJの配信は28
日まで行い、新年は1月4日から配信します。年内はあと3回の
配信になりますが、今回のテーマはまだ完結していません。そこ
で、テーマは変更しますが、新しいタイトルでメタバース関連の
話を続けることにします。
 ZOOMなどによるオンライン会議や研修が普及拡大していま
す。期せずしてコロナ禍がもたらしたIT通信技術の成果の享受
といえます。コロナ禍によって、厳しい外出制限がかかり、出社
や外出が難しくなった結果、ZOOMなどによるオンライン会議
をやらざるを得なくなったのです。
 ところが、ZOOM会議をやってみると、オンライン会議でよ
いものと、やっぱり、リアルでないと問題があるものとがはっき
りしてきたといえます。これについて、11月29日のEJでご
紹介したスターアップ企業サードバースの代表者である国光宏尚
氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 メタバースで決定的に重要なのが、「センス・オブ・プレゼン
ス」=実在感。いま、そこに「いる」感じです。
 センス・オブ・プレゼンスがメタバースになぜ重要かをZOO
Mを例に説明します。オンライン会議を通じて私たちが気がつい
たのは、何がZOOMで十分で、何がリアルのほうがいいかとい
うことだと思います。ちょっとした打ち合わせだとZOOMなど
オンラインでいい。
 でも、少し前に流行った「ZOOM飲み」をいまやっている人
はほとんどいませんよね?
 やはり食事をしたりお酒を飲んだりするのにZOOM越しって
楽しくないよね、と気がついたからです。ここを解決することが
バーチャルファーストでは重要になってきます。ZOOMだと、
「そこにいる感じがしない」。この実在感を作るために重要なこ
とは次の2つです。
 @レゾリューション(解像度)
 Aレスポンス
      ──国光宏尚著『メタバースとWeb3』/MDN
─────────────────────────────
 国光宏尚氏が指摘した2つのポイントにうち、レゾリューショ
ン(解像度)については、現在、どんどん技術が向上しており、
向上すればするほどそこにいるリアル感が出てきます。しかし、
実際に会うのとは大きな差があります。さらに問題なのは「レス
ポンス」の方です。
 お互いに気の合う仲間同士が何人か集まって、話し合いながら
一杯やる──これがコロナ禍でできなくなったので、例えば、Z
OOMを通して何人かがそれぞれ酒や肴は自分で用意して、オン
ライン飲み会をやってみたところ、あんまり面白くないし、盛り
上がらない。その原因は会話のレスポンスにあるのです。
 国光氏によると、現在のインターネットではレスポンスはまだ
遅く、ノンバーバルな(言語を使わない)仕草やうなづきが、リ
アルタイムで伝わってこないし、そのため、話がかぶるし、表情
が読み取れないと指摘しています。
 人と人のコミュニケーションというのは、面と面を突き合わせ
て行う対話の場合、お互いの仕草、目の表情、顔の表情、何気な
い体の動きといったノンバーバルなやり取りがあり、それに言葉
が加えられて、コミュニケーションが成り立っています。それ全
部を含めて、人と人の対話なのです。飲み会であっても、そうい
うものが、全て得られるからこそ、楽しいし、盛り上がるのだと
思います。言葉だけがコミュニケーションではないのです。
 ところが、オンラインの場合、バストショットであることと、
解像度がよくないので、顔の表情が読み取れず、それにレスポン
スの遅さが加わって、実際に会う場合に比べて、はるかに少ない
情報しか伝わってこないので、ノンバーバルコミュニケーション
は、不満足なのです。
 私もコロナ禍で、ここ2年ほど、ZOOMによるオンラインで
毎回かなり長時間、講義を行ってきていますが、そのつど確かに
受講者の情報の少なさは感じています。そのためZOOMを通し
て接している人の印象は低く、おそらく実際に会っても誰だかわ
からないと思います。しかし、こちらが伝えたいことは、感想文
を見る限り、しっかりと伝わっています。
 これについて、国光宏尚氏は、現在のオンライン会議では「左
脳的コミュニケーションは伝わるが、右脳的コミュニケーション
は伝わりにくい」というきわめて独特な表現で、このことについ
て、次のように述べています。国光宏尚氏の著書から、その部分
を引用します。
─────────────────────────────
 ZOOMだと、それがリアルタイムで伝わらない。つまり、左
脳的な言葉でのコミュニケーションはできても、右脳的な感覚的
なコミュニケーションは、ZOOMではムリなのです。
 これはすごく重要な点で、たとえば、人が誰かを好きになると
きは、おそらくノンバーバルな部分で、「この人とは気が合う」
などを判断しています。バーチャル空間で人と出会い、友達や恋
人になるという人間関係を作ろうとすると、ZOOMだけでは厳
しい。だからVR、ARが、ここの部分を完全に解決していく。
これが実在感です。
 バーチャルでも「人間関係を築ける」=ノンバーバルなコミュ
ニケーションを可能にすることが、一つの大きなゴールです。そ
こにNFTなどがくっついてきて、バーチャル空間上に新しい経
済圏を作っていく。
 ここが交わってきたところで、初めてバーチャルでもリアルと
変わらない人間関係、生活が完成していくのです。
            ──国光宏尚著/MDNの前掲書より
─────────────────────────────
           ──[ウェブ3/メタバース/057]

≪画像および関連情報≫
 ●「オンラインだと上手く発言できない」テレワークやWEB
  会議での困りごとの解決策は「アレ」がポイントだった
  ───────────────────────────
   組織改革支援を行う企業「スコラ・コンサルト」が提案す
  る、「WEB会議での困りごと」を解決するためのコツをご
  紹介します。テレワークの導入や働き方改革でどんどん取り
  入れられている「WEB会議」。しかしコミュニケーション
  にはまだまだ課題感が残るそう。まずは「WEB会議での困
  りごとチェックリスト」を冒頭でご紹介します。それを踏ま
  え、困りごとが起こる原因や、WEB会議特有の性質などを
  理解していきましょう。また「会話の質」を高めるためのい
  くつかのポイントを抑えることで、より円滑なコミュニケー
  ションが実現し、仕事の生産性も高まるそうです。
   昨今の新型コロナウイルス感染症の影響や、近年のテレワ
  ーク推進や働き方改革の動きに伴い、「WEB会議」を導入
  している企業が増えています。しかし、組織改革支援を行う
  企業「スコラ・コンサルト」の調べによれば「WEB会議」
  においては、「相手の真意が読み取りづらい」「仕事の依頼
  が正しく伝わらず、手戻りが多くなった」「ちょっとした意
  思疎通に時間がかかる」などの課題が挙げられています。仕
  事の生産性を高めるために、円滑なコミュニケーションは不
  可欠ですよね。しかしオンラインのやりとりでは、対面で一
  緒に仕事をするのに比べて、まだまだ100%円滑にコミュ
  ニケーションが取れる、とは言えない現状です。
                  https://bit.ly/3VcyQp9
  ───────────────────────────
株式会社サードバース代表/国光宏尚氏.jpg
株式会社サードバース代表/国光宏尚氏
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2022年12月26日

●「左脳と右脳の働きについて学習する」(第5882号)

 12月23日のEJでも述べたように、人と人のコミュニケー
ションには、次の2つがあります。
─────────────────────────────
   @言 語によるコミュニケーション ・・ 左脳的
   A非言語によるコミュニケーション ・・ 右脳的
─────────────────────────────
 実際に会って対面で話す場合、上記2つのコミュニケーション
がとれます。相手が話しているときはもちろん、何も話していな
いときでも、ちょっとした仕草、顔の表情、目の動き、体の動き
など非言語コミュニケーションによって、相手の伝えようとして
いることがわかります。これによって、相手に関する好感度とい
うか、そういうものまで伝わってくるのです。非言語コミュニケ
ーション、右脳的、感覚的コミュニケ―ションがいかに大切であ
るかがよくわかります。
 しかし、ZOOMの対話では、ディスプレイ越しであることと
解像度に限界があること、あくまでバストショットであることな
どにより、顔の表情などの右脳的、感覚的コミュニケーションが
伝わりにくいのです。
 人間は生まれて間もなくは、ほぼ右脳で行動します。嫌だった
ら泣くし、嬉しければ笑います。感情がそのまま出るのです。そ
れが言葉を発する3歳ごろになると、左脳が発達しはじめ、論理
的な思考が出来るようになります。文字を覚えるのは右脳ですが
文字を並べて意味を定めるのは左脳の役割です。
 例えば、本の物語を読んで映画のように情景が浮かぶ人は、右
脳がかなり強い人です。理路整然と話が出来る人は左脳がかなり
強いといえます。両方が得意という人は数少ないですが、右脳左
脳を交互に使い、結果を出せる人が右脳左脳とも強い人、すなわ
ち、「能力の高い人」であるといえます。
 意外に知られていないことに、右脳と左脳の情報処理力の違い
があります。
─────────────────────────────
     ◎右脳と左脳の情報処理力の違い
      左脳 ・・ 1秒間に  40バイト
      右脳 ・・ 1秒間に430万バイト
─────────────────────────────
 これは凄い差です。アルファベットや数字はそれぞれが1バイ
トと考えてよいです。日本語の漢字やひらがなは、それぞれが2
バイトです。そうすると、左脳の1秒間の情報処理力は、日本語
20文字程度であるのに対し、右脳のそれは、文庫本2冊程度の
情報処理力ということになります。絵画などを見た瞬間、その価
値を一瞬で見抜く能力の持ち主がいますが、その人は右脳が優れ
ている人ということができるでしょう
 右脳と左脳の違いについて、非常に適切にまとめた文章がある
のでご紹介することにします。
─────────────────────────────
◎「論理」対「感性」・・・左脳と右脳の違い
 右脳と左脳はそっくりな形をしているものの、特性はそれぞれ
に異なっています。空間的な認識力がすぐれており、視覚的な情
報を総合的に支配するのが右脳です。絵や音楽などの芸術的な分
野に強く、「感性の脳」とも呼ばれています。右脳は情報を絵や
図形といった、「イメージ」でとらえるのが特徴です。それに対
して、左脳は「言語脳」と呼ばれます。その名のとおり、言語機
能をつかさどる器官です。言語や数字に強く、論理的な思考を得
意とします。左脳は、数字や言葉で、情報をとらえます。
 映画を観るシチュエーションを例に、右脳・左脳の働きについ
て、説明しましょう。映画は、セリフとシーンで構成されていま
す。俳優が話すセリフを理解するのは、左脳です。対して、スク
リーンに流れるシーンをとらえるのは右脳です。セリフの言語情
報は左脳で、シーンの視覚的情報は右脳で、と私たちの脳は役割
分担をしているのです。
 こうした性質の違いを発見したのは、英国の神経科学者ロジャ
ー・スペリーです。スペリーが発表した論文は、1981年にノ
ーベル生理学・医学賞を受賞しました。
 かつては左脳が優位脳とされていました。文字の読み書きや数
の計算など、高度な処理をつかさどる論理的な能力を、高く評価
されていたからです。一方、右脳は劣位脳とされ、やや軽んじら
れていました。しかし近年、これまで劣位脳とされていた右脳が
にわかに注目を浴びるようになりました。
 スペリーは論文の中で、「右脳には情報を同時並行で処理でき
る能力があり、かつ記憶を長く保つことができる」と述べていま
す。この発表により、右脳の評価は一変しました。「情報処理能
力」「記憶」のいずれも、現代人にとって必要不可欠な能力だか
らです。ようやく、右脳が認められる日がきたのです。
         ──SP速読学院 https://bit.ly/3HYtSJK
─────────────────────────────
 本を読んだり、何かを研究したりする、いわゆる勉強といわれ
るものは左脳を鍛えているのです。しかし、そのように、左脳を
鍛えると同時に、音楽を聴いたり、芸術を観賞するなど、感性を
磨き、右脳を鍛えることも必要です。左脳と右脳を意識してバラ
ンスよく鍛えることが能力アップに寄与するのです。
 いずれにせよ、コロナ禍によって、否応なしにZOOMなどに
よるオンライン・コミュニケ―ションを体験できたことは、メタ
バース化に向かう現代人によってよかったことと思います。オン
ライン学習のその意外なメリットの大きさと、デメリットがよく
認識できたからです。
 私の場合、年明け早々に長時間のZOOMの講義が予定されて
います。現在、それに合わせて、少しレベルの高いウェブカメラ
など、小道具の導入を進めています。私は、これをセミ・メタバ
ース講義であると考えています。
           ──[ウェブ3/メタバース/058]

≪画像および関連情報≫
 ●オンライン授業とは?メリットと導入の注意点、おすすめ
  ツールを紹介
  ───────────────────────────
   「オンライン授業」とは、その名の通りインターネット回
  線を通して遠隔で行う、時間や場所に囚われない教育手段の
  ことです。米国のハーバード大学といった海外の有名な教育
  機関が先進的に取り入れ始め、近年では日本でも教育現場や
  企業研修などで導入されるようになってきました。
   実際に予備校、一部の企業などをはじめとして講義をライ
  ブ配信し、講師と受講者がインタラクティブにコミュニケー
  ションを行うスタイルの授業も増えています。録画をして後
  から受講者が動画を視聴することもできるため、見逃してし
  まった授業でも好きなだけ見返せることが特徴です。
   また、インターネット回線さえあればどこからでもオンラ
  イン授業は受けられるため、たとえ授業が行われている拠点
  から離れた場所に住んでいたとしても、自分のペースで専門
  講師による質の高い授業を受けることができます。
   それでは、なぜオンライン授業は現在注目されているので
  しょうか?
   まず、学校や家庭におけるパソコンやタブレット端末の普
  及率の高まりによって「生涯学習」が当たり前の時代になっ
  ていることが挙げられるでしょう。なお、生涯学習とは、学
  校教育だけでなく企業内や趣味などにおける、自身の勉強全
  てを指します。さらに、2020年の新型コロナウイルス感
  染拡大により、オンライン授業を導入する学校は急増しまし
  た。外出が制限される中でも授業を行えるオンライン授業は
  教育を続けるために遠隔授業の一環として全国的に広まって
  います。            https://bit.ly/3hQt8Mc
  ───────────────────────────
どちらに見えますか.jpg
どちらに見えますか
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2022年12月27日

●「メタバースの現況についてまとめる」(第5883号)

 今年のEJは、今日と明日、あと2回お届けします。ここまで
58回書いてきましたが、何を書いてきたか、簡単に振り返るこ
とにし、2023年1月4日からの新テーマに繋げる予定です。
 インターネットが変わろうとしています。
─────────────────────────────
       Web1.0  ・・・   見る
       Web2.0  ・・・   書く
       Web3.0  ・・・ 参加する
─────────────────────────────
 現在のインターネットは「Web2.0」 、それが次世代のイ
ンターネット「Web3.0」 に変わろうとしています。それは
「書く」から「参加する」に変化するというのです。どのような
インターネットになるのかについて知るには、今のインターネッ
ト、Web2.0 (Web2)について知る必要があります。
 Web2といえば、その中心企業は巨大メガテックGAFAM
であり、これについて、11月25日まで37回にわたって、書
いてきています。GAFAMが提供する諸サービスは、多くの日
本の国民にも深く浸透しており、そこに積み上げられる膨大な個
人情報の扱いにはどうしても慎重にならざるを得ません。GAF
AMのサービスには、どうしても中央集権的な情報の積み上げが
不可欠とされるという特性があります。
 問題は、これらの情報が不正に使われることであり、実際に使
われているケースがあることです。情報悪用のケースでは、20
18年に、メタ(旧フェイスブック)が、英コンサルティング会
社のケンブリッジ・アナリティカに、最大8700万人の情報を
不正利用を許したことが、明らかになったことです。これは20
16年の米大統領選に深く関連することになったので、絶対に、
あってはならないことです。
 この事件の決着は、2022年12月24日の日本経済新聞夕
刊に次のように報道されています。
─────────────────────────────
【シリコンバレー=奥平和行】米メタ(旧フェイスブック)によ
るSNS(交流サイト)の利用者情報の管理が不適切だった問題
を巡る集団訴訟で、同社が7億2500万ドル(約960億円)
の和解金の支払いに合意したことが23日、明らかになった。原
告団の弁護士は同日、米国におけるプライバシーに関連する集団
訴訟で過去最大の和解金となると説明した。
 旧フェイスブックの情報管理が不適切だった問題は2018年
に発覚し、英コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティ
カが、最大8700万人の情報を不正利用したことが、明らかに
なった。16年の米大統領選でトランプ陣営が同社と契約して選
挙結果をゆがめたとの見方が浮上し注目を浴びていた。(中略)
 ケンブリッジ・アナリティカへの個人情報の流出を巡っては、
旧フェイスブックが12年に米連邦取引委員会(FTC)と合意
した個人情報の管理に関する取り決めに違反したとの見方も浮上
した。FTCとは19年に50億ドルの制裁金の支払いで合意し
ている。情報開示が不適切だったとして米証券取引委員会(SE
C)も調査し、同年に1億ドルの支払いで和解した。
     ──2022年12月24日付、日本経済新聞/夕刊
               https://s.nikkei.com/3WLjzgu
─────────────────────────────
 今回の連載で、テーマの中心であるメタバースのことを書き始
めたのは、11月28日のEJ第5862号からです。ここから
は、来る日も来る日もオンラインゲームの世界の話です。自分で
やったことのないゲームの話をするのですから、内容を理解する
のは大変です。とくに、「コール・オブ・デューティ」や「オー
バーウオッチ」などのシューティング・ゲームなど、いちいち調
べながら書くので、1本のEJを書くのに丸1日かかってしまい
非常に大変でした。
 GAFAMについては、メタバースについて、メタだけでなく
マイクロソフトが非常に頑張っているという印象を受けました。
マイクロソフトとしては、今回暗礁に乗り上げた米ゲームソフト
大手アクティビジョン・ブリザードの買収が大きなカギを握って
いたと思います。この買収はおそらく失敗に終わると思いますが
もし成功していたとしても、マイクロソフト社のゲーム部門は、
年間売上高の13%に過ぎないのです。本当に「マイクロソフト
恐るべし」です。
 メタバースに意欲を見せているのは、メタだけではなく、GA
FAMのなかでも、マイクロソフトの他に、グーグルはARグラ
スを発表しているし、メタバースについてもさまざまな憶測や報
道があります。アップルについても、高価格・高性能なMR(複
合現実)ヘッドセットや、ARグラスを開発中とう報道がありま
す。また、米国特許商標庁では、アップルのVR/AR関連技術
と思われる特許がいくつか確認されています。
 GAFAM以外にもメタバースのプレーイヤーはたくさんいま
す。名前を上げてみると、エピックゲームズ、ロブロックス、V
Rチャット、ザ・サンドボックス、ネイバーZ、エムビディア、
クラスター、ヒッキー、リアリティーなど、たくさんあります。
 このなかで最も有名であり、名前が売れているのは、おそらく
エヌビディアでしょう。世界的な半導体メーカーであり、メタバ
ースのカギを握るとされるグラフィックをつかさどる半導体技術
を有しています。グラフィック専門の半導体(GPU)の世界市
場では、企業向け、消費者向けともにトップシェアを誇り、近年
では、AIや自動運転、ロボティクスのためのデータセンター用
プロセッサの開発からソフトウェアへの技術提供など、コンピュ
ーティングの基礎を支えています。
 メタバースはまだ始まったばかりです。これからも多くの発明
や工夫や新技術がメタバースに関して生まれてくるはずです。そ
れらは、新年からの新テーマに引き継いでいくつもりです。
           ──[ウェブ3/メタバース/059]

≪画像および関連情報≫
 ●【急落?】NVIDIAの凄さとは?急成長の秘密や
  自動運転システムの開発を行う理由を解説
  ───────────────────────────
   アメリカの半導体メーカーであるNVIDIA。一般的に
  は、パソコン用のGPUをつくっているメーカーというイメ
  ージがありますが、実は今はただのGPUメーカーではあり
  ません。いまや、人工知能チップのシェアを支配し、自動運
  転システムの開発も手掛ける「半導体の覇者」ともいえる存
  在なのです。
   NVIDIAの歴史や事業内容を紹介する前に、まずは、
  「NVIDIAは何がどうすごいのか?」といった点を紹介
  していきますNVIDIAの凄さがわかる、わかりやすい
  事例は下記の3つが挙げられます。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   @株価が5年で15倍に
   A人工知能アルゴリズムの訓練関連の市場をほぼ100%
    支配する半導体メーカー世界ランキングで7位
   B予測を上回り、何度も過去最高売上を更新している
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   NVIDIAの株価は5年で15倍にもなっています。ま
  た、2021年の1年間だけで57%も上昇しており、20
  20年と比べると95%もの上昇を見せています。さらに、
  半導体の需要が高騰したことを受けて一時期125%もの上
  昇を見せ、2021年に大きな期待を寄せられた一社となり
  ました。           https://bit.ly/3YNDWeA
  ───────────────────────────
エヌビディア本社.jpg
エヌビディア本社
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2022年12月28日

●「メタバースとWeb3との関係」(第5884号)

 今回のテーマは「Web3/メタバース」ですが、Web3と
メタバースは基本的には関係がないのではないかと思います。な
ぜなら、Web3にならないと、メタバースが構築できないわけ
ではないからです。メタバース関連の本を何冊も読んでみました
が、既に述べたように、これらのテーマに関する本には、次の2
つのタイプがあります。
─────────────────────────────
       @Web3からの解明を試みる本
       Aメタバースから説明を試みる本
─────────────────────────────
 @のWeb3からメタバースの解明を進めると思われる本をい
くら読んでも、メタバースにはスムーズにつながってこないし、
GAFAMに代表されるビックテックの問題点ばかりが強調され
てしまうことになります。Web3になっても、ビックテックか
らの支配から逃れられるわけではないのです。
 Aのメタバースから入る本は、今度はWeb3がなかなか出て
こないし、まったく出てこない本もあります。だから、両者は関
係がないともいわれるのです。Web3が出てきても、とって付
けたような感じの解説でしかないのです。ここまで、60回にわ
たって書いてきたEJの今回のテーマの解説がまさにそれに当て
はまります。
 これについて、中央大学国際情報学部教授の岡嶋裕史氏は、次
のように述べています。
─────────────────────────────
 メタバースはどうだろう。これをWeb3にくっつけるのは、
流行りものをセットにする以上の意味はないと思う。
 メタバースはネット上に構築される仮想世界だが、これを構築
するのにこそ大組織、大資本が必要だ。利用者が満足するほどの
精度の「世界」を作り上げるには、莫大なお金と技術の蓄積と人
的資源がいる。
 だからAAAと呼ばれる水準のゲームは、その開発に数十億を
かけ、トツプクラスのクリエイタを引き抜き、それでも足りずに
建築物や山野河川などの背景を、AIで作ろうとしているのであ
る。たとえばロボロックスなどのメタバースで、「子どもたちが
自由な発想で仮想世界ならではのゲームを制作して自分を表現し
ている。主役は彼らだ」などと言われるが、ロボロックスこそ、
その主たるコンテンツはゲームであって、無償かそれに近い形で
子どもたちをその生産に従事させていると捉えることもできる。
 メタバースはその成り立ちからいっても、自然発生的なものに
はなり得ない。だからこそ、あまた数多のプレイヤが勝ち名乗り
を上げるためにメタバースに参入してしのぎを削り、先行者利得
を手にしようともがいているのである。その様子は「巨大IT企
業の支配から個人が解放されたWeb」からはかけ離れている。
                ──岡嶋裕史著/光文社新書
『Web3とは何か/NFT、ブロックチェーン、メタバース』
─────────────────────────────
 しかし、メタバースが、ひとつの経済圏として機能する場合は
そこに”お金”が必要になります。かつての「セカンドライフ」
では「リンデンドル」という独自通貨を使っていましたが、メタ
バースでは仮想通貨を使うことになります。Web3はブロック
チェーンという基盤技術の上に成り立っているので、その世界で
は仮想通貨が使えるのです。
 この場合、メタバースは、Web3という「次世代分散型イン
ターネット」を構成するさまざまな技術革新の「受け皿」のよう
な存在として機能することになります。つまり、メタバースが経
済圏を構築するさいに、はじめてWeb3と深く結び付くことに
なります。Web1からWeb2、Web2からWeb3への変
化は、整理すると、次のようになります。
─────────────────────────────
    Web1.0  ・・   見る → 一方通行
    Web2.0  ・・   書く →  双方向
    Web3.0  ・・ 参加する →   分散
─────────────────────────────
 このブロックチェーンとメタバースとの関連について、岡嶋裕
史氏は、さらに自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 メタバース自体は「閉じた系」であるから、その系の中で真正
性の確保や、永続性の担保のためにブロックチェーンを使うとい
う言い方はできる。
 でも、その系そのものがビックテックが作ったものであって、
当然その中で使われる仮想通貨もビックテックの手が入るであろ
うから、ブロックチェーンが使われていたとしても、あまり意味
がない。ありそうなシナリオとしては、
・メタバースについてはそこで住むような使い方をする(仕事や
 勉強もメタバース内で完結させる)から、現実世界とお金をリ
 ンクさせたい
・と同時に、あるメタバース内で稼いだお金を、複数のメタバー
 スでまたいで使えるようにもしたい
 これを満たす共通金融基盤をブロックチェーンで作ることだろ
う。ただ、同じしくみは個別の仮想通貨を相互接続する形でも作
れるし、それで使い勝手が悪ければそこから基軸通貨が出てくる
こともあるだろう。不正利用が心配なら第三者監査のしくみを入
れてもよい。
 逆に上記の仕様を満たすとなると、けつこうな数のトランザク
ション(取引)が発生するが、その量にブロックチェーンが耐え
られるかは疑問である。 岡嶋裕史著/光文社新書の前掲書より
─────────────────────────────
 2022年のEJは本日で終了とします。新年は、1月4日か
ら配信します。よいお年をお迎えください。
       ──[ウェブ3/メタバース/060/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●「本質的にWeb3とメタバースは相互に関連していない」
  :メタバース専門家 マシュー・ボール氏
  ───────────────────────────
   昨年マーク・ザッカーバーグが、フェイスブック――では
  なくメタが「メタバース企業」になる方向に旋回していると
  宣言した後、メタバースというコンセプトが、時代の潮流と
  なった。しかし、シリコンバレー内外の未来学者たちは、メ
  タバースの構築方法について、それよりもずっと以前から真
  剣に議論してきた。
   マシュー・ボール氏はそのような先見の明のある人の一人
  だ。ボール氏は、いくつかの有名なメディア企業やテクノロ
  ジー企業(最近ではアマゾンスタジオで、2016年から、
  2018年にかけて戦略部門の責任者を務めた)の役員を経
  て、現在はベンチャーファンド、エピリオン社のマネージン
  グパートナー、ならびにゲームおよびメタバース分野のベン
  チャーファンドや投資グループのパートナーおよびアドバイ
  ザーを務めている。
   ボール氏は「メタバース分野のリーダー」としても知られ
  ている。これは、このテーマについて彼が自分のドメインで
  発表してきた一連のエッセイの影響が大きい。これらのエッ
  セイは、近年になってメタバースが一般の人々の意識に浸透
  するのに貢献した。ワシントン・ポスト紙は2020年4月
  メタバースとゲーム業界を結び付けた重要なレポートのなか
  で同氏に言及している。そして中国の政府系メディアである
  セキュリティ・タイムズが2021年8月にメタバースの概
  念に反対する公式声明を出した際にも、同氏の研究を引用し
  ている。            https://bit.ly/3jtPrrq
  ───────────────────────────
メタバース経済圏.jpg
メタバース経済圏
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