2022年11月21日

●「ナデラCEOは何をどう変えたか」(第5858号)

 スティーブ・バルマー氏の後を継いでCEOになったサティア
・ナデラ氏は、インド生まれ。父親は公務員で、転勤が多かった
そうです。ナデラ氏の10代の頃の目標は、名門インド工科大学
ヘの入学です。しかし、試験に失敗。父親は失望、落胆したそう
です。マニパル工科大学に入学し、電気工学の学士号を取得しま
す。コンピュータ関連の学科に入りたかったのですが、そういう
学科がこの大学にはなかったからです。
 21歳のときに大学院に入るため、米国に留学します。しかし
入学したのはMITやカルフォルニア工科大学などの有名校では
なく、どちらかというと、地味なウィスコンシン大学ミルウォー
キー校の情報科学学科でしたが、成績は優秀だったといいます。
サン・マイクロシステムズに入社しますが、マイクロソフトから
オファーがあり、1992年にマイクロソフトに転職します。
 月曜日から金曜日、シアトルのマイクロソフトに勤務しながら
金曜日の夜にはシカゴに飛び、シカゴ大学の土曜日のクラスに出
席し、その後マイクロソフトに戻るという生活をし、2年半かけ
てMBAを取得しています。
 マイクロソフトに入社したナデラ氏は、バルマー氏とは正反対
の穏やかな性格ながら、ゆっくりとではあるが着実に業績目標を
達成し、少しずつ出世の階段を上がっていったのです。
 サーバー部門、ビジネスソリューション部門などを経て、20
08年にオンライン・サービス部門の上級副社長、2011年に
はサーバー&ツール部門副社長、2013年には、クラウドやエ
ンタープライズエンジニアリング部門の上級副社長に就任。そし
て2014年、スティーブ・バルマーCEOの後を継いで、3代
目のCEOに就任しています。
 CEOに就任したサティア・ナデラ氏は、マイクロソフトをど
のように改革したのでしょうか。それは、「内向き」になってい
るマイクロソフトを「外向き」に、いい換えると、外に向かって
心を開くことを求めたのです。
 そのためにまずやったことは、最悪の人事制度といわれる「ス
タック・ランキング」を廃止したことです。これによって、マイ
クロソフトの社員は、自分を守るため、自分の周囲に築いていた
壁を少しずつ壊しはじめ、恐る恐る外に目を向けるようになって
いったといいます。
 ナデラCEOは、社員に対して、次の趣旨のことを繰り返し、
説いています。
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 自分の言いたいことばかりを言うのではなく、他人の話によく
耳を傾ければ、向こう見ずに前に進むことは防げるだろう。常に
外に向かって心を開いていれば、固定観念を排除できる。そうす
れば、行動の結果は自ずと良くなるはずだ。他人に惜しみなく何
かを与えられる人になれば、周囲から感謝されるようになる。皆
が互いに感謝し合っている環境では新しいものが生まれやすい。
「敵」とみなせる相手に対しても、過剰に攻撃的にならなければ
敵を仲間に変えられる可能性がある。
 なぜこの態度が良いのかは、立場を反転させてみればよくわか
る。いつも話をよく聴いてくれて、長所を最大限活かせるよう手
助けをしてくれ、絶えず周囲から守ってくれる、そういう人がい
たら、共に働きたいとあなたも思うのではないだろうか。
                  https://bit.ly/3gfQN87
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 ナデラCEOは、「マイクロソフトは何のために存在するべき
か」について真剣に考えたといいます。そして、そのときナデラ
CEOは、今起きている次の2つの現象に注目したのです。
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          @デバイスの多様化
          Aクラウド化の拡大
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 マイクロソフトのかつての戦略は「世界中の机と家庭に1台の
コンピューターを」というものです。これは、PCの普及によっ
て実現しています。そしてそのPCのOSのシェアを制すれば、
マイクロソフト製品は黙っていても売れると考えたのです。
 確かにPCのOSのシェアを制すれば、世界中のソフトウェア
企業は、そのOSをベースにしてソフトウェアを開発せざるを得
なくなり、この分野でマイクロソフトに対抗する企業は消滅する
──これは「敵を完膚なきまで叩きのめし、息の根を止める」戦
略です。マイクロソフトはそれをミッションにし、PCの世界で
はこのミッションを実現しています。
 しかし、「今は違う」とナデラCEOは考えたのです。現在は
PCだけでなく、あらゆるデバイスがインターネットに接続され
る時代です。「一家に1台」どころが、当時のコンピュータより
もはるかに高性能なスマートフォンを1人1台保有して使ってい
ます。つまり、「デバイスの多様化」が起きています。
 これに伴い、各企業の情報を自社コンピュータに保存する、い
わゆるオンプレミスではなしに、外部の事業者のクラウドサービ
スを利用する方式に移行する動きが加速しています。その方がは
るかにメリットが大きいからです。それに、あらゆる情報がデジ
タル化されることで、これによって、物理的な制約を気にするこ
となく、情報の保存や活用が自由にできる状態づくりが進んでい
ます。すなわち、すなわち、「クラウド化の拡大」です。
 ナデラCEOは、現代はハードウェアのモバイル化ではなく、
「経験のモバイル化」が進んでいると見ています。つまり、個々
のデバイスに縛られず、いつでも、どこでも、人間が知的体験が
得られる社会づくりが進んでいるというのです。
 このような社会においては、従来のように、競争に打ち勝って
自社製品を売り込み、成長しても、企業として価値が薄いと考え
たのです。それよりも世の中のすべての企業や個人が力を得られ
るサービスを提供することが価値があると考えたわけです。
           ──[ウェブ3/メタバース/034]

≪画像および関連情報≫
 ●「自分たちはなんのために存在しているのか」売上高10兆
  円企業の改革とは?――マイクロソフト再始動(1)
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   新時代に乗り遅れていたとばかり思われていたマイクロソ
  フトが、実は大きく躍進していることをご存じだろうか。日
  本では、まだまだ知られていないが、売上高10兆円、従業
  員12万人の巨大企業が、大きく変貌を遂げているのだ。株
  価は急伸し、先端企業と十分に伍している。何が変わったの
  か。なぜ変わることができたのか。『マイクロソフト/再始
  動する最強企業』(ダイヤモンド社)の著者、上阪徹氏がお
  届けする第1回目。
   マイクロソフトと聞いてどんなイメージを持つだろうか。
   真っ先に思い浮かぶのは、ウインドウズであり、ワードで
  あり、エクセルであり、パワーポイントであり、ビジネスに
  欠かすことのできないソフトウェアを作っている会社、だろ
  う。ITの世界で近年、大きな話題を獲得してきたのは、い
  わゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、ア
  マゾン)。マイクロソフトは、PC時代からスマートフォン
  時代への切り替わりに乗り遅れ、全盛期はとうに過ぎた企業
  というイメージを持つ人も少なくないかもしれない。しかし
  世界では(日本でもITの世界を知る人たちの間では)、そ
  うではないのだ。マイクロソフトは今、大いなる注目企業な
  のである。ところがこの事実は、日本では一般の人に驚くほ
  ど知られない。         https://bit.ly/3Xb3fXn
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マイクロソフトCEO/サティア・ナデラ.jpg
マイクロソフトCEO/サティア・ナデラ/CEO


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする