2022年11月17日

●「ナデラCEOはどう改革をしたか」(第5856号)

 マイクロソフトという企業は、従業員12万人をかかえる売上
高約10兆円の巨大企業です。これほどの巨大企業を変革するの
は尋常なことではありませんが、サティア・ナデラCEOはそれ
を見事にやり遂げたのです。ナデラCEOが何をやったかについ
ては後から述べることにし、マイクロソフトの最近の業績からそ
の成果の一端を示すことにします。
 前のスティーブ・バルマーCEOのときは、時代の変化である
スマートフォン、ソーシャル・メディア、クラウドなどの変化に
すべて乗り遅れてしまったマイクロソフトですが、直近のマイク
ロソフトの業績を見ると、米国の株式市場において、時価総額で
はアップルとトップ争いを繰り広げています。
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 ◎時価総額(ドル)
  第1位:マイクロソフト ・・・ 1兆3211億ドル
  第2位:   アップル ・・・ 1兆2559億ドル
             ──2020年4月14日現在
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 2019年6月期のマイクロソフトの売上高は、前年比14%
増の1258億ドル(13兆8380億円)であり、営業利益、
経常利益、純利益を含めていずれも過去最高となっています。
 とくに純利益については、前年比で2・4倍になる392億ド
ル(4兆3120億円)になっています。トヨタ自動車の201
9年3月期の純利益が1兆8829億円ですから、マイクロソフ
トがいかに高収益であるかがわかると思います。
 とくに成長ぶりが際立っているのは、クラウドサービスのウィ
ンドウズ・アジュールです。調査会社のガートナーが2020年
8月に発表したところによると、クラウド市場のシェアは、20
19年8月時点で次のようになっています。
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     ◎クラウド市場のシェア
        AWS ・・・・・ 45・0%
      アジュール ・・・・・ 17・9%
       アリババ ・・・・・  9・1%
            ──2020年8月現在
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 AWSのシェアは盤石ですが、年間の成長率で見ると、アマゾ
ンの29%に対して、マイクロソフトは57・8%であり、その
差は確実に迫っています。眠れる巨人が今や目を覚ましつつある
といえます。
 サティア・ナデラCEOは、どのようにしてマイクロソフトを
再生させたのでしょうか。
 ナデラCEOは、「企業ミッション」に続いて「世界観」を掲
げたのです。
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【Mission(企業ミッション)】
  地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達
 成できるようにする
【Worldview(世界観)】
  モバイルファースト、クラウドファースト
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 ところで「世界観」とは何でしょうか。
 世界観とは、この世界で自分はどのような役割を果たしていく
ことが期待されているのかを明らかにしたものです。これを企業
ミッションとともに企業が掲げるのは稀有なことです。
 「モバイルファースト、クラウドファースト」という世界観は
さまざまなモバイル機器が世の中に広がり、クラウドによって、
ネットワークが実現されて、どこでも使える、どこでも働けると
いうことを意味しています。
 この世界観は、2年後の2017年に次のように変わっている
のです。
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【Worldview(世界観)】
  インテリジェントクラウド、インテリジェントジェット
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 この「世界観」について、マイクロソフト日本法人の前社長の
平野拓也氏は次のように述べています。
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 サティアはいろんな話をしますが、この世界観というのを、と
ても大事にするんです。ここがひとつ、とてもユニークなところ
だと思いました。ミッションを語るトップは多いと思うのですが
世界観を語る人は、なかなかいないと思います。
 今、我々がいる世界はどこで、今後ある世界はこうですよ、と
いう世界観を毎回、話していくんです。会社が何か変わらないと
いけないというときに、わかりやすい形でシンボリックに語って
いく。(2017年の世界観に関しては)モバイルデバイスは一
度クラウドに接続して、そこから何かをやっていたというところ
から、デバイスにもAIがつき、インテリジェントに自らが動く
時代になるということです。ありとあらゆるもので、デバイス側
でコンピューティングができる時代が来るということです。では
そのために何をしないといけないか。ハードウェアとの関係をど
うしないといけないかですね。
         ──平野拓也前マイクロソフト日本法人社長
                 https://bit.ly/3g4N5hg
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 どうやらマイクロソフトのナデラCEOは、かなり変わった人
物のようです。しかし、マイクロソフトは目に見えて着実に立ち
直っており、「+M」の地位から脱却しつつあり、ナデラCEO
の手腕は高く評価されています。明日のEJでは、ナデラCEO
はどのような人物か、さらに探ってみたいと思います。
           ──[ウェブ3/メタバース/032]

≪画像および関連情報≫
 ●マイクロソフトの社風を一変させた“再興の立役者”サティ
  ア・ナデラがすすめる必読書11冊
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   マイクロソフトCEOのサティア・ナデラの人生にとって
  読書は欠かせないものだ。ナデラはグローバル企業のCEO
  の中でもトップクラスの存在感を誇る。そのリーダーシップ
  には定評があり、2020年度の報酬額は、4290万ドル
  (約42億9000万円)にものぼる。
   米キャリア情報サイト「コンパラブリー」の2019年ベ
  ストCEO、また『フォーチュン』の「2019年を代表す
  るビジネスパーソン」にも選出されている。さらにマーケッ
  ツ・インサイダーでは、ナデラ率いるマイクロソフトが創業
  から44年で1兆ドル(約100兆円)を超える企業価値を
  達成したと紹介している。
   そんな輝かしいキャリアを歩むナデラは「自分のアイデア
  は読書習慣によるものだ」と言う。「ファストカンパニー」
  のインタビューでは、次のように話している。
   「この本を数ページ、あの本を数ページと読み進めます。
  もちろん最初から最後まで読む本もありますが、とにかく本
  がないと生きていけないんです」エコノミック・タイムズの
  インタビューではスタンフォード大学の心理学者キャロル・
  ドゥエックの『マインドセット』を読んだことが、マイクロ
  ソフトの文化を変えるきっかけになったと語っている。
   「何でも学ぶ」マインドセットを取り入れた結果、枠にと
  らわれずに考えるようになり、やりづらい企業改革も、進め
  やすくなったという。     https://bit.ly/3GhUJ2O
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サティア・ナデラMS/CEO.jpg
サティア・ナデラMS/CEO
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする