2022年11月10日

●「日本ではGAFAMは誕生しない」(第5851号)

 「ウィナー・テイクス・オール/Winner takes all」という言
葉があります。「一人勝ち」「勝者総取り」という意味です。元
来選挙用語──とくに米国の大統領選挙において使われている用
語です。州での勝者がその州の代議員を総取りする仕組みです。
 この現象が米国でGAFAにおいて起きているのです。GAF
Aは、高いシェアと売上高を獲得し、結果としてビッグデータを
取得する。そしてGAFAは、それらを駆使しながらさらに新し
いソリューションをユーザーに提供し、ますますシェアを伸ばし
不動の地位を確立するという「ウィナー・テイクス・オール」が
実現されつつあります。
 したがって、日本にGAFAのような企業が生まれないのは、
当然であるといえます。先行者利益が大きいので、同じような企
業は育たないのです。これについて、カルフォルニア大学バーク
レー校のスティーヴン・ヴォ―ゲル教授は、ベンチャーキャピタ
ルや活発な労働市場の土台がない日本ではGAFAは育たないと
して、次のように述べています。
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 日本にGAFAがないことは、賃金停滞の一要因かもしれませ
んが、主要因、ましてや最大の要因だとは思いません。繰り返し
ますが、GAFAがあるのは米国だけだからです。中国には独自
のテック大手がありますが、それは、国内市場が巨大で閉鎖的だ
という理由によるものです。
 欧州にもGAFAはありませんが、欧州経済はGAFAなしで
も大丈夫でしょう?韓国では日本を上回る賃上げが見られますが
韓国にもGAFAはありません。日本は独自のGAFAを持たず
とも賃金と経済成長を押し上げる大きな可能性を秘めています。
 日本が第2のシリコンバレーを目指し、うまくいかなかったか
らといって、ほかの分野でもだめだというわけではありません。
米国モデルを真似るのではなく、独自の道で、成功を目指すべき
です。もちろん、日本がデジタル革命のリーダーだったとしたら
生産性の大幅な上昇に伴い、賃金も上がっていたことでしょう。
しかし、そのようなシナリオは描きにくいうえに、そうした道を
目指すことが日本にとって最も生産的な戦略だとも思いません。
   ──「プレジデント・オンライン」/2022年6月8日
                  https://bit.ly/3Ut8teL
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 スティーヴン・ヴォ―ゲル教授は、日本はデジタル化など、不
得意な分野で勝負しようとせず、得意な分野で力を発揮すべきで
あるといっています。かつての日本や日本経済は、イノベーショ
ンに溢れていたと教授はいいます。ひとつ例を上げるならば、現
在、世界中に浸透している自動車の製造モデルは、トヨタ式の日
本型モデルを基準にしています。自動車の先進国の米国でさえト
ヨタ式を取り入れています。これはとても凄いことであるといえ
ます。とにかく日本は、製造業の分野においては、見事なまでイ
ノベーティブであったと教授はいいます。
 ところが世界第2の経済大国になった頃から、日本はイノベー
ション力を失っているようにみえます。どうしたのでしょうか。
豊かな国になったので、気が緩んでしまったのでしょうか──ス
ティーヴン・ヴォ―ゲル教授はこのようにいっています。
 日本のデジタル化について、スティーヴン・ヴォ―ゲル教授は
次のように日本にアドバイスしています。とても的確な指摘であ
ると思います。
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 米国のデジタル革命は、ユーザー側から推し進められたもので
す。それがインターネット革命の本質なのです。米IBMや米通
信大手のAT&Tがトップダウンでできるものではありません。
顧客のソフトウェア企業やメガバンクなどが、情報システムを使
うための新しいアプリや方法を生み出し、ボトムアップで進んで
いったのがデジタル革命なのです。
 日本には、ボトムアップ型のデジタル革命が必要です。日本は
米国のように、デジタル革命の配当をめいっぱい享受するところ
までいっていません。デジタル革命は生産性を高めますが、革命
が道半ばであれば、生産性の上昇も道半ばです。
 日本はデジタル化を進めるべきです。それもかなり積極的に。
それには、ソフトウエア・エンジニアを増やす必要があります。
もっと多くの人々がプログラミングを学ぶべきです。
             ──スティーヴン・ヴォ―ゲル教授
                 https://bit.ly/3WAHfVg
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 岸田内閣は「リスキリング(学び直し)」を強化する政策を推
進しようとしていますが、それなら、スティーヴン・ヴォ―ゲル
教授がいうように、プログラミングを強化すべきです。「国民総
プログラミング」ぐらいの気持ちでやるべきではないかと思いま
す。そうすれば、日本のデジタル化は一挙に進みます。
 ところで「リスキリング」とは何でしょうか。
 リスキリングとは、新しい職業に就くために、あるいは今の職
業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要な
スキルを獲得する、獲得させることをいいます。岸田首相は「労
働移動を促しながら、就業者のデジタル分野などでのリスキリン
グ支援を大幅に強化する」といい、そのために「5年で1兆円を
注ぎ込む」と言明しています。
 「リスキリング」と似た言葉に「リカレント教育」というのが
あります。リカレント教育とは、一旦仕事から離れて、大学や専
門学校などの教育機関で学ぶことを意味しています。したがって
リカレント教育は、多くの場合、「従業員が自主的に別のスキル
を学ぶ」ことを意味しています。これに対して、リスキリングの
場合は、仕事から一旦離れるのではなく、業務と並行しながら必
要なスキルを身につけていきます。これを多くの国民が生かせれ
ば、日本はかつてのイノベーティブな力を取り戻せるはずです。
           ──[ウェブ3/メタバース/027]

≪画像および関連情報≫
 ●岸田政権が注力する「リスキリングで資格取得」の時代錯誤
  本来学ぶべきスキルとは
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   今年、ビジネス分野で注目されている言葉のひとつが「リ
  スキリング」だ。社会人が、市場のニーズや成長分野のビジ
  ネスに対応できるよう、新たなスキルを身につけることであ
  る。岸田政権も“人への投資”に大きな予算を振り分ける方
  針を打ち出し、「リスキリング支援」に1兆円を投じること
  を示した。だが、経営コンサルタントの大前研一氏は「岸田
  政権の唱えるリスキリングでは経済成長につながらない」と
  指摘する。
   岸田文雄首相は開会中の臨時国会の所信表明演説で、個人
  のリスキリング(成長分野に移動するための学び直し)に対
  する公的支援に「5年間で1兆円」を投じると表明した。も
  ともと政府は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基
  本方針(骨太の方針)」の中で「人への投資」に3年間で、
  4000億円規模の予算を投入するとしていたが、そのパッ
  ケージをさらに拡充することにしたのである。
   主要な経済誌も、こぞって大特集を組み、官民挙げてリス
  キリングやリカレント(社会人になっても、それぞれのタイ
  ミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていく
  こと)、資格取得のブームを盛んに煽っているが、その中身
  は噴飯物である。なぜなら、そこで主に勧めているのは公認
  会計士、税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、宅
  地建物取引士、不動産鑑定士、中小企業診断士、建築士など
  のいわゆる「サムライビジネス(士業)」だからである。こ
  れらは国家資格であり、各分野の専門知識の記憶力を問う試
  験に合格すれば取得できる。  https://bit.ly/3TgIeam
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スティーヴン・ヴォ―ゲル教授.jpg
スティーヴン・ヴォ―ゲル教授


posted by 平野 浩 at 06:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする