かについて考えています。
さくらインターネットの田中邦裕社長は、1985年の著作権
法の改正で、コンピュータのプログラムが著作権法の保護の対象
になった時点で、日立、NEC、富士通などの日本の巨大ITベ
ンダーは、ソフトウェア会社に転換すべきではなかったかと問い
かけています。その理由について田中社長は、次のように意見を
述べています。
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ソフトウェアなしにはコンピューターは動かない。しかも、ソ
フトウェアはオンラインで簡単に配布でき、一度開発すれば無限
にコピーでき、著作権法で守られている。限界費用が限りなくゼ
ロに近くて、ものすごく効率がいい。だから、ソフトウェアを自
社で持っている会社はうまくいきましたよね。
例えば、独立系システムインテグレーターのオービックは、自
社開発の会計ソフトなどパッケージソフトが好調で、時価総額は
1兆8000億円。これはNECより高い。
──さくらインターネット田中邦裕氏
https://bit.ly/3U69JEF
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田中社長が激白するのは、巨大ITベンダーである日立、NE
C、富士通などが、ソフトウェア産業ではなく、ソフトウェア製
造業になってしまっているからです。年間2兆円近い国や地方自
治体のIT調達の多くは、ITゼネコンと化しているソフトウェ
ア製造業の日立、NEC、富士通などの巨大ITベンダーが受注
しています。これがベンダーロックインを招き、極めて割高な発
注になってしまっている。これでは、中小のIT企業、ましてス
タートアップ企業には資金は回らない。これについて田中社長は
さらに次のように批判しています。
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ソフトウェア産業とソフトウェア製造業は全く違う商売。だが
日本では、ソフトウェア製造業ばかりに金が集まるので、そこに
安住し、本当のソフトウェア産業に生まれ変わろうとはしなかっ
た。IT企業を名乗りながら、売っているのはモノと人。ソフト
ウェアは海外からの借りもののまま。これでは、いつまでもイノ
ベーションは生まれない。──さくらインターネット田中邦裕氏
https://bit.ly/3U69JEF
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日本では、巨大ITベンダーがベンダーロックインを招き、中
小IT企業やスタートアップ企業に資金が回らないことに加えて
そもそも日本のベンチャー投資額が他国に比べて非常に低いこと
が上げられます。
7万社のベンチャー企業の資金調達データを持つオランダの調
査会社、ディールームの資料によると、2021年の国別のベン
チャー投資の流入額は、1位は米国の3761億ドル(約49兆
円)で、全体の62%を占めて圧倒的です。2位は中国の611
億ドル、3位はインドの477億ドルです。
日本は11位の35億ドルで全体に占める割合は、0・57%
でしかないのです。米国の100分の1です。これは、英国、ド
イツ、フランス、スウェーデンなど欧州各国よりも低い。
米国には、世界の羨望のマトになっているベンチャーキャピタ
ルが存在します。ベンチャーキャピタルとは、基本的には、新興
企業の事業計画と人材の質について、念入りに評価をくだし、潜
在的な成長力が大きいとみなせた企業に初期段階で投資します。
ある聡明な起業家が新しいウェブサービスのアイデアを思い付
いたとします。しかし、このアイデアは2%の確率で大成功を収
めるが、失敗する確率は98%であるとします。
銀行は、資金の回収のことを最優先に考えるし、これらの新興
企業は、質の高い担保も提供できないので、この種のビジネスに
は関心を示さないはずです。しかし、もしその企業が成功した場
合、当然ですが、その恩恵に浴せないことになります。
この場合のベンチャーキャピタルの考え方について、米国の経
済学者のタイラー・コーエン氏は次のように説明しています。
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ベンチャーキャピタルは、成功の確率が乏しいことを承知のう
えで投資をおこない、成功した場合に恩恵を手にする。ベンチャ
ーキャピタルは、何十社、時には何百社にも投資する。その大半
が失敗しても、ごく一握りが成功するだけで十分な利益を得られ
ると考えているのだ。ベンチャーキャピタルが新興企業に提供す
るのは、資金だけではない。専門知識や経験を提供する体制も整
えている。助言や指導、メンタリングや監督もおこなう。
シリコンバレーのベンチャーキャピタルが最も力を入れるのは
新興企業の人材の質を見極めること、そして、投資先企業が優れ
た人材を採用し、適切な取締役をそろえ、有用な人的ネットワー
クをはぐくむのを支援することだ。有能なベンチャーキャピタリ
ストは人を見る目が肥えていて、人と人とを結びつけ、ほかの人
たちの活動を後押しすることに長けている。投資を通じて創造的
活動に人材を結集させ、大きな成果を生み出させているのだ。こ
の点で、ベンチャーキャピタルは、人々の能力を最大限発揮させ
る役割を果たしていると言える。 https://bit.ly/3NFADRK
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ベンチャーキャピタルとIPOは、米国の資本主義システムの
なかで銀行融資や債券市場とともに、資金が流れる企業を選別す
る役割を果たしています。IPOは、株を投資家に売り出して証
券取引所に上場することをいいます。
しかし、日本は、長い間にわたって、「ゾンビ銀行」や「ゾン
ビ企業」を生き延びさせてきています。これでは、新しいビジネ
スに資金が流れにくくなるのです。ベンチャーキャピタルを増や
し、的確に資金を提供する必要があります。
──[ウェブ3/メタバース/025]
≪画像および関連情報≫
●日本ではスタートアップ企業が育たない。その深刻な理由
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日本では、年間40万人にも及ぶ人口減が問題として騒が
れているが、実は企業数も急激に減少している。2017版
中小企業白書によると、99年には484万社あった企業数
が、09年には421万社へ、さらに14年には382万社
へと減っている。15年間で実に100万社以上の減少であ
る。09年から14年で見ると、開業数は66万社、廃業は
113万社であった。中小企業の経営者の高齢化が進んでい
ることを考えると、廃業数が増えるのは仕方がない。問題は
開業数が増えないことである。特に、将来の大企業に発展し
ていく可能性のあるIT、バイオテクノロジー、ロボティッ
クス等のスタートアップ企業の不足は深刻である。
なぜ、日本でスタートアップが育たないのか。
まず考えられるのは、ベンチャー・キャピタルが育ってい
ないことである。ベンチャー企業の16年の資金調達額は、
2099億円、そのうち950億円をベンチャー・キャピタ
ルが占めている。14年の資金調達額が1390億円、15
年は1716億円であったから、順調に伸びてきていること
は間違いない。しかし、アメリカの状況と比較してみると、
その差に愕がく然ぜんとする。 https://bit.ly/3zKSTTR
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日本のベンチャー投資額/米国の100分の1