国の経済をけん引してきた米IT大手、いわゆるGAFAMの成
長に黄信号が点滅しています。2022年7〜9月期の業績は、
次の通りです。
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◎米IT大手/2022年7月〜9月期業績/1
売上高 増減率
アップル 901.46億ドル 8%
マイクロソフト 501.22億ドル 11%
アルファベット 690.92億ドル 6%
メタ 277.14億ドル ▲4%
アマゾン 1271.01億ドル 15%
◎米IT大手/2022年7月〜9月期業績/2
純利益 増減率
アップル 207.21億ドル 1%
マイクロソフト 175.56億ドル ▲14%
アルファベット 139.10億ドル ▲27%
メタ 43.95億ドル ▲52%
アマゾン 28.72億ドル ▲ 9%
──2022年10月29日付、日本経済新聞
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これによると、GAFAMのうち、アップルをのぞく4社は減
益に追い込まれており、景気減速と競争激化が原因であると考え
られます。これを受けて株式市場では、市場予想を下回ったとし
て、失望売りが広がり、GAFAMの時価総額の合計は、この1
週間で約4300億ドル(約63兆円)減少しています。
アマゾンは、決算説明会において、CFO(最高財務責任者)
は、次のように説明しています。
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消費者は、買い物に慎重になり、企業もテクノロジーや広告へ
の支出を見直す傾向が強まっている。
──ブライアン・オルサブスキーCFO
──2022年10月29日付、日本経済新聞
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しかし、景気の影響を受けやすい広告事業と違って、アマゾン
マイクロソフト、アルファベット(グーグルの持ち株会社)の3
強にはクラウド事業があります。クラウド事業は、おりしも新型
コロナ禍が後押しした企業のDX(デジタルトランスフォーメー
ション)の波に乗って、ここ数年は、ドル箱となっていたはずで
す。しかし、これら3強はいずれも「景気後退がクラウドの成長
を妨げている」と口を揃えています。
クラウド事業は急成長しましたが、景気が減速し、過剰なクラ
ウド投資に対する懸念が生じ始めています。それに、エネルギー
コストの上昇も懸念されています。電気や天然ガスの価格が高騰
し、ここ数年で2倍に跳ね上がっているからです。
売上高の増減率でみると、GAFAM5社中アルファベットと
メタの2社が低くなっています。メタにいたっては、広告事業が
ほとんどなので、4%のマイナスです。これは、競争の激化によ
るものとして、日本経済新聞は次のように書いています。
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さらに深刻なのは、競争の激化だ。SNS(交流サイト)では
中国発のTikTok(ティックトック)が若年層を中心に利用
者を増やし、広告の売上高が急増している。メタの画像共有アプ
リ、インスタグラムなどと、利用者層が重なり、アルファベッド
の動画共有サービス、ユーチューブとも競合。7〜8月期にユー
チューブの広告売上高は、初めて減少した。
──2022年10月29日付、日本経済新聞
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この7〜9月期の業績で凋落が目立つのは、メタ(フェイブッ
ク)です。メタの売上高は、前年同期比4%減の、277億ドル
(約4兆円)、純利益は、52%減の44億ドル(約6400億
円)になっていますが、4半期連続で前年同期を下回っており、
これは過去10年で初めてのことです。
そもそも2021年10月28日にフェイスブックがメタに社
名を変更した理由は、直接的には、顧客情報保護をめぐるアップ
ルとの対立です。この事情について、2021年10月29日付
の日本経済新聞は次のように報道しています。
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フェイブックが社名を変更した背景には、同社が世界で36億
人近い利用者を抱える一方、事業基盤を他社に依存している弱み
がある。直近では米アップルがスマートフォンでプライバシー保
護策を強めたことで、主力の広告事業が直撃を受けた。ザッカー
バーグ氏は2021年10月28日もアップルのアプリ配信サー
ビスなどを念頭に「選択肢の乏しさと高い手数料が技術革新を阻
害している」と主張した。 ──2021年10月29日付
日本経済新聞 https://s.nikkei.com/3DhMe4w
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フェイブックは、交流サイト(SNS)で収集した個人データ
を分析し、利用者の関心に沿った広告を表示するターゲティング
(追跡型)広告で巨額の利益を上げてきたのですが、アップルは
2021年春からアプリによる利用者情報の追跡通知の可否を利
用者に求めると表明。これに対してフェイスブックは、収益源の
広告ビジネスが打撃を受けると猛反対し、シリコンバレーの隣人
同士の争いが泥沼化したのです。この理由について、アップルの
クックCEOは次のように述べています。
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生活の全データが収集され、販売されるのが当たり前になれば
私たちは人間としての自由を失う。──アップル/クックCEO
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──[ウェブ3/メタバース/022]
≪画像および関連情報≫
●Amazon赤字転落、Google減益、Facebook株価暴落/GA
FAの「この世の春」はなぜ終わったのか
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2022年になってアップルを除くGAFAの業績悪化が
顕在化している。業績悪化の原因はそれぞれ異なるようなの
で、会社別に詳しく見てみよう。
【アマゾン】
2022年第1四半期の最終損益は38億ドルの赤字だっ
た。アマゾンの赤字転落は2015年1〜3月期以来7年ぶ
り。アマゾンのCEO(最高財務責任者)によると、赤字要
因はインフレ、生産性低下および過剰設備による60億ドル
(約8100億円)ものコスト増で、中でも米国外への輸送
コストはコロナ前の2倍以上に、燃料費は1年前の1・5倍
になっているそうだ。
アマゾンは主に単価の低い日用品等を高頻度で小口配送す
る業態だ。「プライム会員は何回でも配送料無料」という看
板サービスは(米国内で)10年前の79ドルから、現在は
119ドルまで値上げしているが、筆者はここに「物流コス
トの高騰分をストレートに価格転嫁できない」という弱点が
あるとみている。アマゾンの株価は7月15日終値で113
・55ドル。昨年11月18日の最高値から38%も下げて
いる。コロナパンデミックによる物流の混乱はいまだ続いて
おり、米国内の人件費高騰、燃料費高騰も長引きそうだ。こ
れらが解消されるまで同社の収益は不安定な状況が続くだろ
う。 https://bit.ly/3DpNzX1
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米IT大手の株価/2021