2022年10月04日

●「Webはどのように変遷したのか」(第5826号)

 Web、すなわち、インターネットの変遷について考える必要
があります。それをまとめると、次のようになります。
─────────────────────────────
       Web1.0  ・・・   見る
       Web2.0  ・・・   書く
       Web3.0  ・・・ 参加する
─────────────────────────────
 「Web1.0」の特色は「見る」です。
 かつて情報を公開する方法としては、出版社による紙媒体の書
籍や新聞や雑誌と、放送局を通じての電波によるラジオやテレビ
しかありませんでした。まして、情報の公開者と情報の受信者が
直接つながることは簡単なことではなかったのです。
 それが、いわゆるウェブサイト(ホームページ)を通じて、出
版社や放送局の介在なしで、誰でも情報を公開でき、その情報に
誰もがウェブブラウザによって、ダイレクトにつながることがで
きるようになったのです。これはきわめて画期的なことであった
といえます。これによって、ウェブサイトを通じてモノを売るe
コマースも可能になっています。
 ところで、日本で個人として、最初のウェブサイトを立ち上げ
たのは、誰だかご存知ですか。
 日本で最初の個人ホームページは「富ヶ谷」と命名され、株式
会社デジタルガレージの前身である有限会社エコシスが立ち上げ
ています。この有限会社エコシスというのは、伊藤穰一氏が創業
した企業です。1993年のことです。
 1993年といえば、ウインドウズ95の発売よりも前であり
日本におけるPCの世帯普及率は10%台程度、一部専門家やマ
ニアに限られた普及だったといえます。199O年代後半、とく
にウインドウズ95が発売されてからは、一挙に世帯普及率が倍
増し、2000年には50%台に乗っています。
 しかし、ウインドウズ95が発売された1995年には、検索
エンジンはまだ登場していなかったのです。1995年12月に
ソフトバンクが、米国のヤフー!株を一部買い取り、1996年
4月から、日本版の「ヤフー!ジャパン」サービスを開始してい
ます。ポータルサイトの出現です。これによって、インターネッ
ト上のウェブサイトを探す「ネットサーフィン」が大流行するこ
とになります。
 ポータルサイトとは、インターネットにアクセスするさい、最
初に訪問するサイトのことです。ポータルとは、門や入口を意味
し、特に大きな建物の門に使われた言葉です。ユーザーは、PC
を立ち上げると、ブラウザを起動し、ポータルサイトにアクセス
します。そこには、項目別にサイトのありかを示すURLが整理
されているので、自分が探したいサイトにアクセスできます。
 そうすると、ポータルサイトには多くのユーザーがアクセスす
ることになるので、そこは有力な広告媒体になります。
 ところが、1998年にグーグルが、独創的な検索技術──ロ
ボット型検索エンジンを開発し、バナー広告などを排除したシン
プルな画面を提供することによって、多くのユーザーを集めるこ
とに成功します。
 以上が「Web1.0」 の概要です。そのキーワードは、あく
までウェブサイトを「見る」であったのです。このWeb1.0
から現在のインターネットであるWeb2.0 への変化に関して
スタートアップ企業Kusan の創業者兼CEOである高橋卓巳氏は
自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 1990年代、欧州原子核研究機構(CERN)のティム・バ
ーナーズ=リー氏が開発したのがWWW(ワールド・ワイド・ウ
ェブ)。これを使って個人や企業がホームページを開設し始めた
Web1.0 は、利用者が様々な情報に触れられる(read)よう
になった革命だった。続く2000年代に、米オライリーのティ
ム・オライリー氏が提唱したWeb2.0 は、ブログなどからは
じまり、SNSが登場したことで個人が誰でも自由に自ら情報を
世界に発信(Write) 可能にする革命だった。市民によるSNS
への書き込みは社会や政治を左右し、10年末には中東で民主化
活動「アラブの春」が起こった。  ──高橋卓巳著/日経BP
『Web3コンテンツ革命/個人と企業の経済ルールが変わる』
─────────────────────────────
 ここで覚えておくべきは、ウェブサイトの開発者の名前です。
これほど画期的な発明をしながら、ほとんどの人、少なくとも日
本人でティム・バーナーズ=リー氏のことを知っている人が少な
いからです。
 「Web2.0」 の特色は「書く」です。
 「Web2.0」 は現在のインターネットのことです。その典
型はブログの登場です。これによって、「Web1.0」 の「見
る」に加えて、個人の情報発信がさらに容易になり、それをホス
ティングする企業が登場しています。ホスティングとは、サーバ
ーを貸し出すことをいいます。2005年頃のことです。
 それまで、ウェブサイトを立ち上げるには、自らサーバーを用
意し、プログラミングをする必要があり、そのハードルは、いさ
さか高かったのです。しかし、ブログは、サーバーをホスティン
グする企業の提供するツールによって、誰でも容易に立ち上げる
ことができるようになったのです。これによって、ブログを含む
ウェブサイトを見たり、書いたりできるようになっていきます。
 2005年3月末の日本国内のブログの閲覧者数は、1651
万人に達しています。これは、月に一度はブログを閲覧する人の
人数を意味しています。
 2008年にアイフォーンが発売されると、日本語対応のフェ
イスブックとツイッターが使えるようになって、一段とウェブに
「書く」ことが簡単になり、ウェブ上で、見ることも書くことも
簡単にできるようになっています。これが「Web2.0」 の概
要です。       ──[ウェブ3/メタバース/002]

≪画像および関連情報≫
 ●Web2.0 的キーマンに聞く/次世代ビジネスモデル
              小川浩氏/2005年12月
  ───────────────────────────
   筆者は、自分自身でもWeb2.0 に関わる事業を行って
  いく立場にあります。また、さまざまなブログや著作を通し
  て自らの見解を発表させていただく機会にも恵まれているわ
  けですが、本連載ではWeb2.0 におけるビジネスモデル
  情報・分析を適宜お届けしていきたいと考えています。
   特にケーススタディを重要視し、原則としてWeb2.0
  という領域に関わる企業や、組織のキーマンをお招きして、
  Web2.0 をキーワードにインタビューしていきます。実
  際に事業に携わる最前線の人たちの生の言葉をお伝えするこ
  とで、Web2.0 のリアルな部分に焦点を合わせていける
  ことでしょう。
   今回はその導入部として、まず筆者が「Web2.0 とは
  何か」を整理してみたいと思います。改めて、Web2.0
  という言葉を目にしたり耳にしたことがある方は、少なから
  ずいると思います。
   この数年間にWebの世界で起きたさまざまなイベントに
  よって、Webの環境が激変してきており、その状態を分析
  した多くの識者が、現在から近未来にかけての方向性をまと
  めて定義づけようとしていますが、それらを端的に表現した
  もの、それがWeb2.0 です。
   その意味で、Web2.0 はいまだ進行形であり、現時点
  での静的なポイントを示すものというより、数年間のスパン
  での“環境変化”として認識されるべきと筆者は考えていま
  す。             https://bit.ly/3dYlRYJ
  ───────────────────────────
ティム・バーナーズ・リー氏.jpg
ティム・バーナーズ・リー氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ウェブ/メタバース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする