2022年09月28日

●「ロシアが南東の風の日に核を使う」(第5822号)

 ウクライナ軍による東部ハルコフ州の奪還をはじめとする反転
攻勢は、ロシアに一大衝撃をもたらしたことは確かです。それは
ロシアのプーチン大統領が、30万人の予備役の動員を可能にす
る大統領令にサインし、既に占拠しているルガンスク洲とドネツ
ク洲において、無理を承知で、急遽住民投票を強行してロシア領
とし、ウクライナ軍のこれ以上の攻撃を防ぐ手立てをとったこと
によくあらわれています。ロシアとしては、「このままでは、負
ける!」という危機感を感じたからです。
 問題は、ロシアによる「核の脅し」です。もし、ウクライナ軍
が、ロシア領──住民投票によって、ロシア領とした地域を含む
──に対して攻撃を加えた場合、プーチン大統領が「核の利用も
辞さない」ともとれる発言をしていることです。それは、演説中
に、次の表現で宣言されています。
─────────────────────────────
 わが国の領土の一体性が脅かされる場合には、ロシアとわが国
民を守るため、われわれは、当然、保有するあらゆる手段を行使
する。これは脅しではない。       ──プーチン大統領
                  https://bit.ly/3SaI6tr
─────────────────────────────
 プーチン大統領は、上記の話の前段では「わが国は、さまざま
な破壊手段を保有しており、一部はNATO加盟国よりも最先端
のものだということを思い出させておきたい」と述べています。
NATO加盟国よりも優れた破壊手段を持っていることを忘れる
なという脅しです。
 ここで考えてみるべきことがあります。ロシアは、どのような
状況に陥ったとき、核兵器を使うかということです。これには、
大別すると、次の2つのケースが考えられます。
─────────────────────────────
 1.ロシアが、ウクライナの占領している地域から撤退せざ
  るを得なくなったとき
 2.ロシアが、西側の諸国から何らかの「核によるブラフ」
  を受けたと実感したき
─────────────────────────────
 「1」について考えます。
 「1」は、ロシアがこの戦争に負けるときです。既に支配して
いるドンバス地域(ルガンスク洲+ドネツク洲と)に加えて、ク
リミアからも撤退することを意味します。当然、ウクライナ軍の
目的は、ウクライナからロシアに占領された全地域を奪還し、ロ
シア人をウクライナから追い出すことですから、今後も攻撃を続
けることになります。
 ロシアのやっていることは、住民投票によって国境線を決める
暴挙です。これは明らかに国際法違反です。しかも、その選挙に
しても、銃を持った兵士が投票用紙を持って住居を個別訪問し、
目の前で書けと迫っています。こんなものは、選挙ではないし、
暴挙そのものです。
 「2」について考えます。
 プーチン大統領は、演説で、しきりと「西側からの核の脅し」
という言葉を使っていますが、何を意味しているのでしょうか。
これについては、昨日のEJでも取り上げていますが、もう少し
ていねいに考えてみます。
 「核の脅し」は、もっぱらプーチン大統領がやっていることで
西側諸国はロシアに対して核の脅しなどかけていません。しかし
プーチン大統領は、ロシア軍が占拠しているウクライナ南部のザ
ポリージャ原発に対して、ウクライナ軍が攻撃を加えているとし
て、それを核の脅しとしているようです。これは、誰が考えても
ロシアの自作自演です。ロシアがわざと原発を攻撃し、ウクライ
ナのせいにしているのです。しかし、これは今後の伏線です。
 今回のウクライナ危機で分かったことですが、ロシア人は明ら
かにウソとわかるウソを平気で何回もつき、それを既成事実化し
ています。ウソも100回つくと、真実になるというわけです。
これは、国家としての信用失墜につながり、国として大きなマイ
ナスですが、プーチンロシアは、それを平然と行っています。
 もうひとつあります。これは、真偽がわからないのですが、西
側NATO諸国は、水面下でロシアが核兵器を使うことを憂慮し
て、何回も警告を発していると思われることです。
 バイデン米大統領は、表面的には、9月18日放映の米CBS
テレビのインタビューで、ウクライナ侵攻で劣勢に立たされてい
るロシアが、もし化学兵器や戦術核兵器を使えば、次のように発
言しています。
─────────────────────────────
 もし、ロシアが核兵器を使えば重大な結果を招くことになる。
ロシアが何をするかによって対策を決める。
                   ──バイデン米大統領
─────────────────────────────
 実はこの問題については、米国情報局では、何度も議論されて
いるようですが、結論は出ていないようです。「核には核で反撃
する」から「通常兵器で反撃する」までいろいろあり、結論は出
ていないと考えられます。
 しかし、米情報当局は、ロシアの核兵器保管施設を監視してお
り、核弾頭がトラックやヘリコプターに積み込まれたり、核兵器
を扱うための特殊訓練を受けた部隊の活動が活発化したりした場
合にそれを素早く検知することが可能であるといっています。
 しかし、ウクライナ軍としては、不当に占拠されている地域の
奪還を進めることは確実です。ロシア軍は増強されても士気が低
下しており、ウクライナ軍が勝ち進む可能性は大です。これを西
側NATO諸国は止めることはできません。そうなった場合、プ
ーチン大統領が決断するかもしれない最悪の選択はザポリージャ
原発に戦術核を撃つことです。それもロシアに影響の及ばないよ
うに、南東の風の吹く日にです。こういう情報も伝わってきてい
るのです。        ──[新中国・ロシア論/049]

≪画像および関連情報≫
 ●プーチンが「小型核」を撃ったら、世界はどのようにして
  核戦争に突入するのか
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   冷戦時の核兵器はその破壊力において、広島を破壊した原
  爆を凌駕していた。実験爆発では、ワシントンの兵器が最大
  で広島の1000倍、モスクワの兵器には3000倍の威力
  があった。これには「巨大な報復の可能性」という脅威を見
  せることによって相手の攻撃を抑止する、いわゆる「相互確
  証破壊」の効果があった。この心理的ハードルは、非常に高
  い。そのため、核攻撃など考えられないと見なされるように
  なったのだ。
   そして今日のロシアとアメリカは共に、破壊力の弱い核兵
  器を持っている。威力は広島に落とされた原爆の数分の一に
  過ぎない。その分、使うことに対する恐怖心は少なく、選択
  肢として考えやすいものだろう。
   プーチン大統領はウクライナ戦争のさなかで自国が持つ核
  の威力を警告し、原子爆弾を警戒態勢に入れ、軍には危険な
  原発を攻撃させた。こうした経緯を踏まえ、先述の小型兵器
  に対する懸念が高まっている。紛争で追い詰められたと感じ
  たら、プーチンが「小さい核兵器」を爆発させることを選ぶ
  かもしれない、という懸念である。76年前の広島・長崎で
  定められたタブーを破るかもしれないのだ。
   ハンブルク大学やカーネギー国際平和基金に所属する核の
  専門家、ウルリッヒ・キューンいわく「可能性はまだ低いが
  高まっている」と指摘する。「ロシアの戦況は良くなく、西
  側諸国からの圧力も強まっている」からだ。
                  https://bit.ly/3Sb0n9L
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戦術核爆弾.jpg
戦術核爆弾
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする