2022年09月22日

●「ロシア軍は今や敗北の危機にある」(第5819号)

 ロシアの始めたウクライナへの「特別軍事作戦」について、プ
ーチン大統領は、次のようにいっています。
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 国連憲章第7章51条に則り、ドネツク人民共和国とルガンス
ク人民共和国の要請に応えて、ウクライナの非軍事化と非ナチ化
を目的に特別軍事作戦を実施するが、ウクライナの占領は目的と
していない。           ──プーチンロシア大統領
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 上記国連憲章第7章51条は、「平和に対する脅威、平和の破
壊及び侵略行為に関する行動」について定めています。なお、ド
ネツク人民共和国とルガンスク人民共和国は、特別軍事作戦を始
める前に、ロシアが勝手にウクライナから切り離し、その独立を
承認したものであり、2014年のクリミア共和国も同じです。
 要するにロシアは、ウクライナのなかで自国領にしたい地域に
おいて親ロシア派勢力を結集し、人民共和国を結成させ、それを
ロシアが国家として勝手に独立を認め、その国からの要請を受け
たかたちで軍隊を派遣する──こういう筋書きで特別軍事作戦を
実施したのです。クリミア半島も同じ筋書きで奪取しています。
 しかし、そんなことをウクライナ政府が認めるはずがないので
政治工作でゼレンスキー政権を崩壊させ、ウクライナに親ロシア
政権を樹立させることによって、それぞれの共和国の主権を認め
させるという戦略です。
 しかし、プーチン大統領は、この特別軍事作戦で、最初に大き
なミスを冒します。この作戦の計画通りに、ドネツク洲とルガン
スク洲に兵力を集中させ、その制圧に全力を尽くせばよかったの
ですが、いきなりウクライナの首都キーウを攻めたことです。そ
れは、部下の進言によるものとされていますが、プーチン大統領
は、ゼレンスキー大統領の評判の悪さや、支持率の低さを見て、
まず、キーウを占領し、ゼレンスキー政権を倒し、電撃的に親ロ
シアの傀儡政権を樹立し、そのうえで、ドネツク洲とルガンスク
洲、そしてクリミア半島を正式にロシア領にする──そういう構
想を描いていたものと思われます。
 しかし、それが大誤算だったことは明らかです。2014年に
クリミア半島をロシアに占拠されて約8年間、ウクライナ軍は米
軍の指導を受けて見違えるほど強くなっていたのです。どこの国
でも、あのように自国の領土を略奪されて、何とも思わない国は
ありません。欧米からの武器支援を受けて、ウクライナ軍は精強
な軍隊に変貌していたのです。
 ところで、今回のウクライナ軍による東部ハルコフ州の大部分
の地域の奪還は、一部の軍事専門家によると、この戦争の帰趨を
決するほどのロシア軍の大敗北であり、もはやロシア軍の負けは
決まったと考えても不思議はないそうです。
 それを正確に伝える番組が、9月18日にテレビ朝日(BS)
で放送されています。その特別軍事作戦に関する部分のビデオが
あるのでご紹介します。時間は、約55分かかりますが、興味の
ある方はご覧いただきたいと思います。内容は充実しています。
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◎テレビ朝日「日曜スクープ」/2022年9月18日放送
 「領土奪還で形成逆転/ロシア敗走/ウクライナ快進撃に続く
 展開は?」テレ朝news
 ゲスト/駒木明義(朝日新聞論説委員)、山添博史(防衛省防
 衛研究所)
 アンカー/木内登英(野村総合研究所エグゼクティブエコノミ
 スト)             https://bit.ly/3QSSgNN
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 詳しくはビデオを見ていただくとして、ロシア軍がハリコフ洲
のイジュム市を失ったことが、なぜ致命的なのかについて、要点
をまとめることにします。添付ファイルを見てください。
 これは、ウクライナ東部の地図ですが、ウクライナ軍の奪還前
(9月6日)と奪還後(9月17日)の比較をしています。赤が
ロシア支配地域、青がウクライナの奪還地域です。これを見ると
ウクライナ軍がわずかな期間で、非常に広大な地域を奪還したこ
とがわかると思います。約8500キロ平方メートルの地域を奪
い返したのです。この地図を基にして説明します。地図と地名の
表記が異なっていますが、これまで述べてきた地名の表記にした
がって説明します。
 ウクライナ軍の奪還前の地図(左)をご覧ください。ロシア軍
にとって、補給を担う重要地域は、イジュム市とクビャンスク市
の2つです。ともに交通の要衝であり、食料や兵器や弾薬の補給
を担う重要都市です。
 イジュム市は、ウクライナ東部ハリコフ州の都市で、ハリコフ
の約138キロ南東、そしてドネツ川両岸に位置しており、ドン
バス地域の玄関口といわれています。イジュム市は4月1日にロ
シア軍が制圧し、東部侵攻の司令部を置いています。ロシア領の
ベルゴルドからは道路が整備されており、そこから大量の物資が
運び込まれる要衝になっています。もう1つのクビャンスク市も
ロシア国内と道路だけではなく、鉄道もつながっており、ロシア
軍にとって重要な補給線になっています。
 ロシア軍にとってこの2つの重要都市が、今回のウクライナの
反撃によって、奪還されてしまったのです。つまり、ロシア国内
からの補給線は完全に断ち切られてしまったことになります。こ
れでは、ロシアの特別軍事作戦の目的であるドンバス地域のロシ
ア化は、ほぼ不可能になったといえます。
 しかし、ウクライナ軍は、南部のヘルソン市にも攻撃をかけて
おり、ドニエプル川にかかる橋を攻撃し、ロシア軍の兵器や弾薬
の補給路断絶を実施しています。そのため、多くのロシア軍がク
リミア半島に逃げ込んでおり、情報によると、一部の部隊からは
ウクライナ側に降伏交渉を持ちかけてきているといいます。ロシ
ア軍は深刻な兵士不足に陥っているとみられます。
             ──[新中国・ロシア論/046]

≪画像および関連情報≫
 ●ウクライナ軍攻勢、ロシア軍敗走?/小川敏氏
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   ウクライナ情勢が激変する兆候が見られだした。ロシア軍
  のウクライナ占領が近づいたのでなく、ウクライナ軍がロシ
  ア軍に占領された領土を奪還してきたのだ。ウクライナのゼ
  レンスキー大統領は9月11日、「イジュームやウクライナ
  東部ハルキウ(ハリコフ)州の小さな都市バラクリアがわが
  軍によって解放された」と表明した。ウクライナ軍の発表で
  は「奪還された領土の広さは約3000平方キロになる」と
  いうのだ。
   ロイター通信やAFP通信はその状況を感動的に伝えてい
  る。「バラクリヤの中心に再びウクライナ国旗がはためく。
  ハルキウ北東部の小さな町は、ウクライナ軍が奪還した最初
  の町であり、ロシア軍が3月下旬にウクライナ中部から撤退
  して以来、初めてだ。町の人々はウクライナ軍兵士を見て泣
  き出すものもいる一方、パンケーキを兵士たちに差し出す人
  々もいる」と報じている。ドイツのメディアは、「バラクリ
  ヤは戦争のターニングポイントとして、ウクライナの歴史に
  残る可能性がある」とまで報じている。
   注目すべき点は、ハルキウとドネツク州を結ぶ交通の要所
  イジュームが10日、ウクライナ軍側に落ちたとすれば、ロ
  シア軍にとって戦略的に大きな痛手だ。ロシア国防省はウク
  ライナ軍の攻勢を認める一方、「現在、軍の再編成中」とい
  う。ロシア軍はウクライナ軍の攻勢にパニックになって、大
  量の戦争装備を置き去りにしていったという。
                 https://bit.ly/3UjATZm
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ウクライナ軍「電撃作戦」の戦果.jpg
ウクライナ軍「電撃作戦」の戦果
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする