2022年09月21日

●「すへてのロシア軍を追い出す作戦」(第5818号)

 9月15日〜16日、習近平主席とプーチン大統領は、中ロ主
導の地域協力組織「上海協力機構(SCO)」首脳会議に合わせ
て、対面での会談を行っています。これについて、9月16日付
日本経済新聞は次のように報道しています。
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 プーチン氏は会談で「ロシアはウクライナ危機に関する中国の
バランスのとれた立場を高く評価する」としたうえで、「ウクラ
イナ危機に関する中国の懸念を理解しており、すべての問題を説
明する用意がある」と述べた。中国側が長期化するウクライナ侵
攻に懸念を伝えていたようだ。(中略)
 台湾情勢に危機感を強める習氏と、ウクライナの戦況悪化に焦
るプーチン氏。両者の接近は、ロシアが経済で中国に従属し、中
国がロシアの「反米」路線に引き込まれる危うさをはらむ。今回
の中ロ首脳会談には、ウクライナでのロシア軍の苦戦が影を落と
した。     ──2022年9月16日付、日経電子版より
              https://s.nikkei.com/3qJeSp8
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 ロシアのプーチン大統領としては、苦境に陥っているウクライ
ナ情勢に対して、中国に何らかの支援を求めたいところですが、
それを避けたい中国としては、先手を打って、事前に長期化する
ウクライナ侵攻に対する懸念を伝えていたようです。そのため、
プーチン大統領の「中国の懸念に対して説明する」という発言に
なったのです。中国はこの問題に深入りしたくないからです。
 実は一般にいわれている以上にロシア軍は、軍事的にウクライ
ナ軍に追い込まれているのです。それは、ウクライナ軍が奪還し
た東部ハリコフ洲だけでなく、ロシア軍がほぼ制圧したはずの隣
のルハンシク洲のクレミンナ市からも兵を引いているという情報
があるからです。それだけでないのです。メリトポリ市長による
と、ロシア軍は南部でもクリミア半島に逃げ込んでいるというの
です。ロシア軍に何が起きているのでしょうか。
 元防衛省情報分析官、西村金一氏は、現在のロシア軍について
次のように述べています。
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 現在、ロシアの主な攻撃手段は火砲。イジュム市などの戦いが
あったこの20日間で大きな損害を出した。侵攻当初の保有数の
70%を失った。このままでは、ロシア軍は火砲不足により、継
戦能力を失うだろう。  ──元防衛省情報分析官、西村金一氏
      8月15日/TBS「BS/TBS報道1930」
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 この西村金一氏の発言を裏付けるロシア軍が失った火砲などに
ついて、9月13日現在の数字です。
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     ◎戦車/歩兵戦闘車など
      2175台(7929台)↓27%減
     ◎多連装ロケット
       311台( 711台)↓44%減
      8月15日/TBS「BS/TBS報道1930」
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 ロシアのウクライナ侵攻から、丸7カ月です。それだけの期間
戦っていれば、当然兵器は失われていきます。しかし、その補給
がうまくいっていないようです。それに比べると、ウクライナ軍
は、もともと総動員で兵力が多いうえ、米欧から最新兵器が届き
つつあり、勢いを増しています。
 それでは、今後ウクライナ軍は、どのような作戦でウクライナ
の領地を占領しているロシア軍を攻めるかです。これについては
ウクライナと支援する米欧との間で合意形成ができているといわ
れています。
 これについて、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長、吉田成
之氏は、次の事実を明かしています。
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 米英をはじめとするウクライナ支援の枠組みである連合国側と
の連携緊密化だ。公表されていないが、反攻作戦開始直前、アメ
リカとの間でウクライナは高官協議を開催、作戦の概要について
調整を行った。
 アメリカ側からはジェイコブ・サリバン大統領補佐官(安全保
障問題担当)、アメリカ軍制服組トップのマーク・ミリー統合参
謀本部議長が、ウクライナ側からはアンドリー・イェルマーク大
統領府長官とヴァレリー・ザルジニー総司令官が参加した。ここ
で戦争の進め方について合意できた。今後も両国は、ロイド・オ
ースティン国防長官とオレクシー・レズニコフ国防相の間でも、
今後適宜、意見や情報を交換するという。
 さらに2022年9月8日には、アメリカのブリンケン国務長
官が事前の予告なしにキーウ入りして、ゼレンスキー大統領と会
談した。ここで、両国は戦争をめぐる大戦略ですり合わせができ
たといわれる。合意内容は公表されていないが、同じ時期にキー
ウで開催されたウクライナ情勢に関する国際会議での議論が合意
内容を反映したものになっている。https://bit.ly/3BMyMWB
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 ここでの合意内容は公表されていないものの、容易に推測でき
ます。それは、最近ゼレンスキー大統領がしばしば口にしている
「ウクライナを2014年以前の状態に戻す」ということです。
つまり、クリミア半島も含めて、ロシア軍を追い出し、すべてウ
クライナに取り戻すということです。それは、米欧の武器支援が
順調に行われれば、戦略上十分可能であるといえます。
 しかし、そこまで追い詰めると、ロシアは核兵器を使うのでは
と懸念がありますが、それはできないと考えられます。なぜなら
ロシアの国内でもプーチン大統領退陣の声が上がりつつあるから
です。そんな状況では、さすがのプーチン大統領でも、とても核
兵器を使うことなどできないと考えられるからです。
             ──[新中国・ロシア論/045]

≪画像および関連情報≫
 ●ロシア軍敗走で強まるプーチン批判/ニューズウィーク
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   ウクライナ軍の反転攻勢でロシア軍の敗走が重なるなか、
  ロシアの当局者の間でウラジーミル・プーチン大統領の辞任
  を求める声が広がっている。政権が反体制派を厳しく取り締
  まるロシアでは異例の事態だ。
   プーチンは2月24日、ウクライナに対する軍事侵攻を開
  始。圧倒的な兵力を誇ったロシア軍は数日で首都キーウを陥
  落させる勢いだったが、アメリカをはじめとする同盟諸国の
  支援を受けたウクライナの強力な抵抗に遭った。これにより
  ロシア政府はウクライナ侵攻の当初の目標を達成することが
  できずにいる。
   ウクライナ軍は、先週から、南部ヘルソンや東部ハルキウ
  (ハリコフ)でロシア軍部隊を奇襲し、1600平方キロ以
  上の領土を奪還した。とくにこの週末、ロシア軍はイジュー
  ムなどの主要都市から撤退を余儀なくされた。この一連の敗
  北が「反プーチン」機運の広がりにつながっているようだ。
  サンクトペテルブルクのスモルニンスコエ地区の区議である
  クセニア・トルストレムは、9月12日にツイッターに投稿
  を行い、ロシア地方議会の区議35人がプーチンの辞任を求
  める要請書に署名したと明かした。プーチンによるウクライ
  ナ侵攻が、ロシアに「害を及ぼしている」というのが理由で
  ある。モスクワなど複数の主要都市の区議グループも要請書
  に署名している。トルストレムはこの要請書について、誰の
  「名誉を傷つける」ものでもないとしている。
                 https://bit.ly/3eZEZ8Z
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苦境に立っているプーチンロシア大統領.jpg
苦境に立っているプーチンロシア大統領
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする