2022年09月16日

●「皇帝気取りの第3回目の歴史決議」(第5816号)

 2022年9月13日付の日本経済新聞によると、習近平主席
が14日から16日の日程で、中央アジアの2カ国──カザフス
タンとウズベキスタンを訪問します。コロナ後の初外遊になりま
す。14にはカザフスタンのトカエフ大統領と会談し、16日に
はウズベキスタンで、ロシアのプーチン大統領と会談する予定に
なっています。
 10月16日には、第20回共産党大会が行われますが、この
時期の外遊は、異例の第3期目入りを既に決めている余裕が感じ
られます。プーチン氏との会談は、11月にインドネシアで開か
れるG20サミットを前に中ロの結束を確認するためです。
 9月13日付の日経には、もうひとつ重要なニュースが出てい
ます。10月16日の党大会で、中国軍の最高意思決定機関であ
る党中央軍事委員会の副主席が入れ替わるというニュースです。
習近平氏は、党のトップの総書記と国家主席、そして中央軍事委
員会主席の3つの肩書を持っています。
 注目されているのは、実際に実務を担う中央軍事委員会副主席
のポストを誰が占めるかということです。このポストには、現在
中央軍事委員の苗華氏の副主席昇格がほぼ確定しているといわれ
ます。苗華氏は、習氏が福建省勤務時代に知り合った30年来の
関係があり、陸軍偏重の人民解放軍を陸・海・空軍が一体となっ
て戦える体制に尽力した人物といわれます。これは、台湾奪取の
布石と考えられます。
 メディアの記事などを読むと、習近平主席は、要所要所にしか
るべき人材を配置し、例えば「台湾侵攻」などの重要決断をする
ときは、そういう専門家の意見を聞いて判断する体制を築いてい
るように見えます。
 しかし、習主席は、重要ポストに自分に忠誠を誓う人材を配置
するいわゆる側近政治をやっているという意見があります。ウク
ライナへの侵攻を始めたプーチン大統領も似たようなことをやっ
ています。これは、大きなリスクです。福島香織氏は、習近平主
席について次のように述べています。
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 習近平は、自分を肯定し賞賛する人間しか許さず、自分と異な
る意見や批判の粛清に明け暮れたため、出世を願う官僚たちは習
近平を懸命に肯定し、自ら率先して習近平路線に沿うように動い
た。習近平路線に内心不服であっても、習近平ににらまれて粛清
されたくないために、あえて自我を出さず、習近平の命令に粛々
と従うようになった。習近平の方針に従えば、まずい結果になる
とわかっていても、あえて反対せず、失敗に向かって言われた通
りのことしか行わない。これは一種のサボタージュという形によ
る消極的な抵抗にも思われた。        ──福島香織著
   『習近平/ゼロコロナ、錯綜する経済、失策続きの権力者
                 /最後の戦い』/徳間書店
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 こういうことをしていると、トップの耳には正しい客観的な情
報が届かなくなります。もし、正しいと思うことを進言すると、
粛清されてしまう恐れがあるからです。実際に、「台湾への軍事
侵攻は米国の介入を招き、成功しない」と警告した劉亜洲空軍上
将は、現在行方不明になっています。
 習近平主席が、いかに自分を偉く見せるかに腐心しているかは
2021年11月8日の中央委員会全体会議(6中全会)で採択
された「歴史決議」の構成を見るとよくわかります。そもそも中
国では、歴史決議がこれまでに2回行われています。したがって
習近平総書記の歴史決議は3回目となります。
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  ◎1945年/毛沢東総書記
   「若干の歴史問題に関する決議」
  ◎1981年/ケ小平総書記
   「建党以来の若干の歴史問題に関する決議」
  ◎2021年/習近平総書記
   「党の100年奮闘の重大成果と歴史経験に関する
   中共中央の決議」
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 第1回の歴史決議も第2回のそれも、路線競争に決着をつける
ために行われたものです。1回目は、中国共産主義の毛沢東と、
ソ連共産主義の王明との対立の決着をつけるためのものであり、
2回目は、毛沢東路線継続の華国峰と改革開放のケ小平の対立に
決着をつけるためのものです。それでは、3回目の歴史決議の意
義は何でしょうか。
 これについて、福島香織氏は、3回目は、「習近平の勝利戦宣
言」の内容ですが、勝利宣言としては、長いだけで、前2回の歴
史決議に比べると、きわめてインパクトに欠けるとして、次のよ
うに厳しく論評しています。
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 この歴史決議は、勝利宣言としては実に中途半端で、冗長なだ
けで、内容的にはこれまでの2度の歴史決議に比べてインパクト
に欠けるものだった。また党内・人民からの支持・評判もさほど
高くない。
 内容を簡単に説明すると、共産党100年の歴史分割について
は、毛沢東時代前期、毛沢東時代後期、ケ小平・江沢民・胡錦濤
時代、習近平時代と4分割で見出しをとり、習近平時代に関して
は13の小見出しをとって、そこに、「党の100年奮闘の歴史
意義」「党の100年奮闘の経験」の総括、「新時代の中国共産
党」という展望の章が加わり、全部で序言と7章で構成されてい
る。全文約3万6000字のうち2万字が習近平新時代の解説に
割かれ、予測を裏切らない習近平権力至高化に向けた宣伝決議で
その意義は、はっきりと書かれていないが、文脈として改革開放
終結宣言といえる。  ──福島香織著/徳間書店の前掲書より
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             ──[新中国・ロシア論/043]

≪画像および関連情報≫
 ●「第3の歴史決議」で見えた習近平の権力と脆弱性
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   日本を含め世界中が注目した中国共産党の「第3の歴史決
  議」なる文書が先日、公表された。タイトルは『党の百年奮
  闘の重要な成果と歴史的経験に関する中共中央の決議』(新
  華社日本語版の表記)。中国語での字数は約3万6000字
  日本語訳は約5万5000字にのぼる。日本の新聞1ページ
  の活字が約1万1000字なので、5ページ分相当の膨大な
  文書だ。
   日本語訳が公表されたからといって全文を読む人は、中国
  研究者や政府関係者らごく一部の専門家に限られるだろう。
  筆者も覚悟して日本語訳を読んでみたが、これほど読みにく
  くわかりにくい文書はあまり見たことがない。翻訳が悪いの
  ではなく、定義や意味が不明な抽象的な言葉や造語がこれで
  もかというほど次から次へと列挙されているから読みにくい
  のである。
   しかし、決議が言いたいことだけはよくわかった。まずア
  ヘン戦争以降に屈辱的な歴史を刻んだ中国の運命を変えて今
  の素晴らしい中国を作ったのは、結党百年を迎えた中国共産
  党であるということ。次にこれから先、「中華民族の偉大な
  復興」という「中国の夢」を実現するためにも中国共産党の
  指導が不可欠であるということ。最後は、その中国共産党に
  とって習近平国家主席の存在が党の「核心」として不可欠で
  あるということだ。      https://bit.ly/3BAHFCN
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3回の歴史決議.jpg
3回の歴史決議
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする