2022年09月12日

●「共同富裕の一環/極端な教育介入」(第5812号)

 習近平主席が3期目就任をかけて打ち出した「共同富裕」の3
つの統制強化を再現します。@とAについては既に説明が終わっ
ており、Bについて説明します。
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          @金持ち崇拝の戒め
          A新三座大山の退治
        → B若年層の教育指導
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 第3の統制は「若年層の教育指導」です。
 中国では理解できないことが突然起こります。2021年2月
24日のことです。中国政府が学校教育に関する「ある通知」を
出してきたのです。その通知には、5月1日から次の2つのこと
を実施するという内容です。これら2つを削減するという意味で
「双減」と称しています。この双減政策は、北京・上海など9つ
の大都市で試行されるということです。
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           @宿題負担軽減
           A学習塾の削減
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 中国の義務教育は、日本と同じ「6・3・3制」をとっていま
す。それを前提として簡単にまとめると、次のようになります。
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 宿題については、小学校1・2年生には出さない。小3〜6年
生は60分以内で仕上がるもの、中学生は90分以内で仕上がる
ものにする。このさい、親は宿題を監督・指導せず、教師が行う
ことにする。
 塾について、関係機関の厳正な審査と認可の下で非営利型のみ
運営を認め、新規の教科学習を認めず、国外でオンラインなどを
通して勤務する外国人講師を雇用してはならず、夜の9時までに
は授業を終える。学校の教員について、塾との兼職禁止、週5日
毎日最低2時間の放課後の教科教育以外の指導に従事する(5+
2モデル)などがある。
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 この通知は、学校や学習塾関係者にとってまさに「寝耳に水」
だったといえます。これによって大手の学習塾はもちろん、中小
の教育関係会社も免れることなく、軒並み株価が30〜50%以
上急落し、「全滅」の状態です。しかし、不思議なことに、習近
平政権は、それによって経済が落ち込むことなど、まるで気にし
ていないようです。経済オンチなのでしょうか。
 なお、このことと関係があるかどうかはわかりませんが、その
直前のことです。2月18日に中国の教育部、日本でいえば文部
科学省が通達を出し、5月1日から全国の小中学校に「法治副校
長」を配置すると発表しています。この法治副校長は、全国の裁
判所、検察、公安警察から推薦派遣されます。彼らは一体何のた
めに配置され、どんな仕事をするのでしょうか。これについて、
石平氏は次のように述べています。
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 建前においては学校のなかの法治教育、犯罪予防、安全管理を
担当するということですが、考えてみれば、小中学校の犯罪予防
や法治教育を別に公安要員がやらなければならないことはありま
せん。結局、これは、公安から小中学校に監視要員が配置され、
「洗脳教育」の役目を果たすという意味合いになります。
 中国の文化大革命時代には、全国の小中学校にいわゆる労働者
宣伝隊という人々が派遣されてきたのです。私の学校にもいまし
たね。工場の労働者が学校に乗り込んできて、学校を牛耳るんで
すよ。学校の校長先生も彼らの話を聞かなければならない。そう
いう人々が教育現場の教師が、きちんと共産党の方針に従ってい
るかどうかを監視したり、別の意味では生徒側に対して洗脳教育
も担当したのです。         ──石平著/ビジネス社
       『バカ殿を指導者にした/断末魔の習近平政権』
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 この中国版のゆとり教育ともいえる「双減政策」の狙いは何で
しょうか。それは、長期的な少子化対策であると考えられます。
 その背景には、中国の出生数の激減があります。2022年1
月17日、中国統計局は、2021年の出生数を発表しましたが
前年比で138万人減の1062万人で、1949年の建国以来
最低の数字だったのです。
 こうした出生数の削減は5年以上続いていて、2015年には
36年間にわたって実施してきた一人っ子政策を廃止し、「第2
子を容認」を実施しています。しかし、時すでに遅し、一向に出
生率は増えず、2021年には「第3子容認」をしましたが、史
上最低の出生率になってしまったというわけです。
 そこで、宿題などの量を減らし、子供の負担軽減と、親たちの
負担も軽くさせることに成功すれば、子育ての余裕が生まれ、結
果として少子化対策につながると考えたものと思われます。それ
にしても、内容が極端で、きわめて対症療法的な施策です。
 この双減政策に関して、福島香織氏は次のように厳しく論評し
ています。
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 理念として掲げられた子供たち、保護者たちの受験プレッシャ
ー、教育費プレッシャー問題が解決され、貧富の差による教育格
差の問題なども解決されたのか、という点にっいては、私の仄聞
する限りでは、「塾・学習支援企業」の地下組織化、ヤミ化が進
み、むしろ時間当たり単価が高騰し課外授業の質が落ちて、都市
に比べて、農村の情報やコネや資金のない家庭が割を食う状況に
なっているらしい。             ──福島香織著
   『習近平/ゼロコロナ、錯綜する経済、失策続きの権力者
                 /最後の戦い』/徳間書店
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             ──[新中国・ロシア論/039]

≪画像および関連情報≫
 ●「中国版ゆとり教育」が目指す「安定」と引き起こす
  「混乱」
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   中国政府はこの夏から小中学生の@宿題A塾通い――の二
  つを大幅に減らす「双減」政策を強力に推進している。受験
  競争に伴う子どもの負担を緩和しようとの取り組みは、いわ
  ば「中国版ゆとり教育」だと言えそうだ。ただ、一連の政策
  の背景には若年層の不満を抑えこみ、社会の不安定化を未然
  に防ごうという中国政府の狙いも透けて見えるうえ、塾の経
  営を困難にし、子どもたちの進路を政府が左右しようとする
  強引な手法は反発も呼んでいる。
   「要するに、本当にやる気のある子どもだけが大学に行け
  ばいいということだ。そもそも今後の中国では事務職の仕事
  が減る一方、技能労働者は不足する。そうした社会では、み
  んなが大学に行く必要はないし、塾も必要ないということだ
  ろう」
   教育改革に関する中国政府の狙いについて中国政府系研究
  機関の研究者に聞くと、こんな解説が返ってきた。将来的に
  は中国も人工知能(AI)技術の発展などで事務系のホワイ
  トカラーの仕事は減り、ブルーカラーの技能労働者の需要が
  増えると見通しこうした未来に合わせた改革なのだという。
  中国の大学進学率は、この10年間、急速に上がり続けてき
  た。中国教育省によると、2010年には26・5%だった
  が、20年には54・4%と倍増している。
                 https://bit.ly/3BqhZbM
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双減政策.jpg
双減政策
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする