2022年07月29日

●「住宅は人が住むためのものである」(第5782号)

 中國には、「炒房(チャオファン)」という言葉があります。
投機目的で住宅を何軒も購入して、高く売りさばくことを意味す
る言葉です。「炒」は転がすという意味であり、「房」は、不動
産、住宅を意味します。しかし、「炒房」が成功するには、不動
産価格が右肩上がりで高騰していることが条件になります。
 現在、日本では、住宅ローンは年収の8倍から10倍ぐらいは
借りることができます。現在日本は金利が安いですから、14倍
ぐらいまでは大丈夫です。日本のバブルの全盛期のピークは、東
京は年収の18倍、京都が18・6倍、地方は13倍といったと
ころです。
 しかし、中国の場合、不動産購入者の支払い能力からすれば、
不可能なレベルの価格になっています。深せんで年収の60倍、
北京と上海は50倍、地方は35倍ぐらいで、異常なほど価格が
膨れ上がっています。完全なバブルです。
 こういう状況において、2020年冒頭に習近平主席は次の発
言を行っています。同様の発言を2022年3月の全人代で、李
克強首相も行っています。
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  住宅は人の住むためのものであって、投機の対象ではない
                   ──習近平国家主席
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 ここで中国における不動産の位置づけについて、簡単にふれて
おく必要があります。記述に当たっては、ジャーナリストの中島
恵氏のレポートを参考にさせていただいております。
 そもそも中国では、土地は国家のものであり、企業や個人が土
地を売買することは禁止されています。しかし、土地の使用権に
ついは、地方政府の許可を得れば取得することは可能であり、住
宅の使用権については、最大で70年までとなっています。
 1978年の改革開放以前の話ですが、住宅を建設または管轄
していたのは、地方政府や国有企業であり、不動産は民間には解
放されなかったのです。当時、都市部に住むほとんどの人は「単
位(ダンウエイ)」と呼ばれる組織(職場や学校、団体)などか
ら、非常に安い家賃で誰もが平等に住宅が分配されていました。
しかし、それは住宅ではあるものの、職場の敷地内か近隣に存在
し、今でいうところの社宅や寮のようなものだったのです。19
78年の資料によると、都市部の1人当たりの居住面積は、たっ
たの3・6平方メートルしかなく、トイレや台所は、共用であっ
たとされています。
 ところが改革開放期を経て、1980年代に入ると、住宅制度
改革がはじまり、いわゆる「分譲住宅」が登場し、その販売が解
禁されます。中国初の分譲住宅は、恒大集団が本拠を置く深せん
に登場し、「東湖麗苑」と称するマンションだったとされていま
す。この「東湖麗苑」について、ジャーナリストの中島恵氏は、
次のように述べています。
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 このマンションは現存しており、当時の販売価格は1平方メー
トル当たり1000元(当時の為替レートで計算すると約12万
9000円)だったが、中国の不動産サイトによると、2020
年には、同、約5万8000元(約87万円)となっている。今
は外観も古くなったマンションだが、中国元ベースで見れば、約
40年間で50倍以上も値上がりしたことがわかる。
                  https://bit.ly/3Bhrk6h
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 1990年代の後半に入ると、大きな変化が起こります。分譲
住宅の開発や売買ができるようになり、これまで「単位(ダンウ
エイ)」に住んでいた人に、その住宅を非常に安い価格で払い下
げられるようになったからです。その後、この時点で住宅を入手
できた人と、入手できなかった人との間にもの凄い格差が生まれ
ることになります。
 これらの住宅を取得した都市部に住んでいた人に対しては、当
分の間、転売が禁じられていましたが、上海市を皮切りに徐々に
転売が認められるようになっていきます。これが非常な高値──
平均10倍──で売れたのです。これによって、巨額の資金を手
にした都市部の住人は、その資金でさらに不動産を購入し、それ
を転売することを繰り返す、いわゆる「炒房(チャオファン)」
によって、大金持ちになっていくのです。
 こうなってくると、住宅は住むためのものでなく、お金を生む
手段、すなわち、投機の手段と化しています。これがますます過
熱しているので、習近平主席が「住宅は人の住むためのものであ
る」とクギを刺したのです。
 中国の不動産問題には、もうひとつ厄介な問題があります。そ
れは「理財商品」といわれるものです。
 「理財商品」とは、中国国内で販売されている高利回りの資産
運用(投資信託)商品のことです。商品の元本は保証されていな
いものも多く存在します。預金金利より高い利回りが提示され、
中国国内の投資家や国有企業の巨額資金が入っています。融資先
の債権を小口化して販売するなどし、シャドーバンキングの代表
的な商品ともいえます。
 恒大集団も資金集めのため理財商品を発行していますが、今年
の1月早々次の問題を起こしています。
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[広州/1月4日/ロイター]──巨額債務を抱え経営難に陥っ
ている中国の不動産開発大手、中国恒大集団が販売する資産運用
商品(理財商品)を購入した投資家約100人が、4日、広東省
広州市の同社ビルに詰めかけて、資金の返済を求める抗議活動を
行った。同社が不動産プロジェクトを継続するため、理財商品の
償還が見送られるとの懸念が背景。投資家は昨年秋にも抗議活動
を実施。「恒大、金を返せ」と叫んだ。https://bit.ly/3PCwOgg
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                 ──[新中国論/009]

≪画像および関連情報≫
 ●天下の国営企業ですら経営難に・・・「恒大集団の破綻」で
  ついに始まった中国の倒産ドミノ
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   中国の不動産会社が震源となった信用不安が、いよいよ収
  拾がつかなくなってきた。昨秋から社債の元利払いが懸念さ
  れてきた恒大集団の他にも、社債の元利払いが滞らせる債務
  不履行(デフォルト)が続出。その頻度は日本の「失われた
  10年」にもなかったほどで、中国の資本市場が機能不全を
  起こすなど、97〜98年ごろの日本に、そっくりの状況に
  なってきた。そこで日本の「失われた10年」に照らして考
  えていきたい。
   日本で上場企業の経営破綻が相次ぐようになったのは97
  年からだった。この年の夏に「影響が大き過ぎて潰せない」
  と言われ続けてきた上場ゼネコン(総合建設会社)が立て続
  けに3社も破綻し、9月にはスーパーマーケットを国内外で
  展開していたヤオハンジャパンの転換社債が債務不履行を起
  こした。さらに11月には、三洋証券、山一証券、北海道拓
  殖銀行が破綻し、三洋証券は短期金融市場でデフォルトを起
  こした。
   この97年後半を境に、信用不安が一気に広がった。信用
  不安を媒介したのは株式市場や資本市場、短期金融市場など
  のマーケットである。ここでは98年の資本市場を例にとっ
  てみよう。資本市場に欠かせないインフラの一つに、債券格
  付けがある。最上級のAAA格からAA格、A格、BBB格
  と続き、ここまでが投資適格とされる。ところが98年当時
  BBB格のれっきとした投資適格企業でも債券を発行できな
  くなった。           https://bit.ly/3ze3Zzy
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恒大集団に資金返還を求める抗議活動.jpg
恒大集団に資金返還を求める抗議活動


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする