2022年07月26日

●「中国のGDP数値を信用できるか」(第5779号)

 2022年1月17日のことです。中国政府国家統計局は、次
の発表をしています。
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 2021年の国内総生産(GDP)の成長率は、8・1%で
 ある。             ──中国政府国家統計局
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 8・1%──これは主要国と比べてとんでもなく高い成長率で
あるといえます。それからもうひとつ、中国のような巨大な国で
前年(2021年)のGDP成長率が1月に出る異常な計算の速
さです。しかも、この数値は予想値ではなく、確定値なのです。
普通は4月か5月頃に発表されます。
 そこで、中国の2021年の四半期ごとのGDP成長率を以下
に示すことにします。
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  ≪2021年度≫
  第1四半期( 1〜 3月) ・・・・・ 18・3%
  第2四半期( 4〜 6月) ・・・・・  7・9%
  第3四半期( 7〜 9月) ・・・・・  4・9%
  第4四半期(10〜12月) ・・・・・  4・0%
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 これによると、第1四半期(1月〜3月)が18・3%と異常
に高いことがわかります。この高い成長率が、2021年全体の
成長率を大きく押し上げても8・1%増になっています。なぜ、
こんなに高いのか、その原因は何でしょうか。
 2021年の第1四半期の成長率は、その前年、2020年第
1四半期のGDPと対比しています。当時の中国は、武漢発の新
型コロナウイルスの感染が拡大し、武漢市をロックダウンをして
いるところから、経済活動も消費活動もマヒしており、2021
年第1四半期の成長率は6・8%のマイナス成長だったのです。
だから、経済の回復した2021年第1四半期が18・3%と大
飛躍したということになります。一応理屈は通っています。
 しかし、中国のこうした経済に関する公表数値は水増しされて
いるといわれています。国家が、いや今や世界第2位の経済大国
の中國が公表数字を水増しするとはとんでもないことですが、中
国では、しかるべき地位のある人がその事実を認めています。
 一番有名なのは「李克強指数」です。2007年に、遼寧省の
トップを務めていた李克強氏が、米国の大使に次のように述べた
話は有名です。
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 遼寧省のGDP成長率など信用できません。私は、省の経済状
況を見るために、省内の鉄道貨物輸送量、銀行融資残高、電力消
費の推移を見ています。            ──李克強氏
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 2017年1月のことです。この遼寧省で中国の統計をめぐっ
て、歴史な出来事が起きたのです。2017年2月9日の産経新
聞は次のように報道しています。
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 【上海=河崎真澄】中国全土に31ある省クラスの地方政府が
8日までに個別に公表した2016年の域内総生産(GDP)の
規模の合算が、中国国家統計局が1月20日に発表した全国GD
P統計の総額を2兆7559億元(約47兆円)も超過していた
ことが分かった。超過額は、省クラス経済規模で国内11位の上
海市ひとつ分に相当する。地方のGDP水増し疑惑は、たびたび
指摘されてきたが、中国国家統計の信頼性にも改めて疑問符がつ
きそうだ。
 国家統計局の発表では、香港やマカオを除く全土の16年GD
Pが名目で74兆4127億元だった。欧米諸国などに比べ異常
に早い発表で、信頼性が問われる数字とはいえ、地方政府からの
報告とは別に独自集計した公式なものだ。一方、中国紙、21世
紀経済報道が伝えた31の地方政府の個別発表統計を産経新聞が
合算したところ、中央の発表額を3・7%上回っていた。
 物価変動の影響を除く16年の実質成長率は国家統計局発表で
前年比6・7%だが、31の地方のうち27までが6・7%を超
え、中央との整合がとれなかった。残る4地域は、北京市が全国
と同じ6・7%で、6・1%の黒竜江省と4・5%の山西省が下
回った。遼寧省のみは、2・5%のマイナス成長に落ち込んでい
る。          ──2017年2月9日付、産経新聞
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 この事件をきっかけに、中国の公表数字が正確になると期待し
たものの、2017年1月20日、中国国家統計局の局長は、記
者会見を開き、次のようにこれに全面反論しています。
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◎「中国の統計は正確/捏造疑惑に高官反論」
 【北京時事】中国国家統計局のねいきってつ局長は、20日、
記者会見で「全国レベルの統計は正確で信用できる」と述べ、こ
のところ国内で急速に高まっている統計捏造(ねつぞう)疑惑に
反論した。遼寧省の陳求発省長が17日、財政統計の数字は虚偽
だったと表明したのが騒ぎの発端。中国メディアが相次いで報じ
国内総生産(GDP)統計もうそではないかとの疑念が一気に強
まった。遼寧省のケースでは、省内の県などの自治体が2011
〜14年に財政収入を2割ほど水増しして報告していた。出世を
目指す幹部が、地元経済の好調ぶりをアピールする狙いがあった
ようだ。              https://bit.ly/3aZ8KVL
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 公表数字のウソに関しては、日本でも国土交通省の統計不正が
発覚しており、他国を批判できませんが、中国のGDPの数値に
ウソがあったとすると、日本は現在でも世界第3位の経済大国で
あるだけに、無関心ではいられないところです。今回は、このこ
とについても徹底的に掘り下げてみたいと考えています。
                 ──[新中国論/006]

≪画像および関連情報≫
 ●中国政府発表の「GDP8・1%成長」が大ウソだと断言
  できるこれだけの理由/経済評論家朝香豊氏
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   中国国家統計局により2021年のGDP速報値が発表さ
  れ、年間のGDP成長率は8・1%に達したことになってい
  る。だが、この数字を文字通り受け止めてはいけないのは今
  回も同じである。深刻な電力不足があり、度重なるロックダ
  ウンがあっても、GDPは年率8・1%も成長したと主張し
  ているのである。すごい国である。
   恒大集団に代表される不動産危機が訪れる中でも、国家統
  計局の数字では、不動産セクターは前年比5・2%、建設業
  も前年比2・1%の成長を果たしている。こんなことがあり
  うるだろうか。
   中国の2021年の粗鋼生産量は10・3億トンで、20
  20年の10・65億トンより3%減少している。だが、工
  業は9・6%成長したことになっている。粗鋼(鉄)は大半
  の工業の基礎材料であり、粗鋼生産量が大きく落ち込む中で
  工業分野が10%近くも成長することはどう考えてもありえ
  ないだろう。
   また、2021年の前半だけで35・1万社の飲食店が閉
  店したことからもわかるように、今、中国の実店舗経営は大
  変な苦境に陥っている。鄭州市のある火鍋料理店は、入口の
  ガラス戸に「私たちの辛い歴史(辛酸史)」という、開業か
  ら現在に至るまでの厳しい状況についての箇条書きの説明を
  掲載した。           https://bit.ly/3zsoSbB
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中国国家統計局の記者会見.jpg
中国国家統計局の記者会見
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする