わっているのでしょうか。
それには2つの理由があると思います。
1つの理由は、武漢での成功体験です。
中国は武漢で、最初のロックダウンをし、新型コロナウイルス
感染者を封じ込めるのに成功しています。10日間で架設の「火
神山医院」を完成させ、武漢市をロックダウンするなど、あっと
いう間にコロナ感染者を抑え込んでいます。それがテレビで報道
され、世界中の人がそれを目にしています。
そして、時間差で世界中が新型コロナパンデミックに襲われ、
大騒ぎになっているときに、中国の感染者は、ほとんど抑え込ま
れていたのです。コロナの発生元が自国かもしれないのに不謹慎
の誹りを免れませんが、習近平主席は、このときの成功体験に、
酔ってしまったといえます。そして、WHOのテドロス事務局長
が中国にやってきたときに、その自慢話をしています。
実は、武漢での一連の指揮をとったのは、習近平主席ではなく
李克強首相だったのですが、それを自分の手柄のようにテドロス
事務局長に伝えています。そのとき、習近平主席は、ミャンマー
に外遊中であり、中国にはいなかったからです。
もう1つの理由はワクチンの事情です。
現在、中国と西側諸国の感染対策の違いは、ワクチンの種類と
接種率の違いです。これについて、福島香織氏は、新著で次のよ
うに述べています。
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習近平がゼロコロナ政策を堅持できたのは、なにも官僚たちが
習近平のメンツを重んじたからだけではなかった。実際にウィズ
コロナに転換したくてもできない事情もあった。
中国国家衛生健康委員会・感染症対応処置工作指導チームの専
門家組長、梁万年はCCTV(中国中央電視台)のインタビュー
番組で、中国は多くの国家と違って現行の防疫措置政策を転換で
きないとし、その理由として目下のワクチン接種率を挙げた。特
にブースター接種率が高くなく、老人や虚弱な体質の人々が依然
として感染しやすい状況にあると説明していた。梁万年は「もし
中国でワクチン接種が強化され、科学技術研究が加速して治療薬
ワクチン開発が進めば、そしてオミクロン株がまた変異してより
感染率や致死率が低くなれば、それが最もよい(ゼロコロナ政策
を転換する)機会となる」とも説明していた。 ──福島香織著
『習近平/ゼロコロナ、錯綜する経済、失策続きの権力者
/最後の戦い』/徳間書店
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感染症対応処置工作指導チームの専門家組長、梁万年氏は言葉
を濁しているものの、要するに、「中国製のワクチンがほとんど
効かない」という事実です。
中国製の新型コロナ対応ワクチンには、次の3種類があります
が、日本を含む西側諸国で接種されているファイザー製やモデル
ナ製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンとは、性質が
異なり、昔ながらの技術で作られているのです。
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@ 中国医薬集団:シノファーム
A科興股生物技術:シノバック・バイオテック
B 康希諾生物:カンシノ・バイオロジクス
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中国としては、武漢での感染者封じ込めの成功実績と、中国製
のワクチンを中国寄りの国に提供することによって、中国の世界
覇権に貢献させるつもりだったのです。ワクチン外交です。
ところが、中国製のワクチンは、効き目が低く、3回目以降の
接種には、ほとんどの国で使われなくなったのです。コロナワク
チンの海外供給量については、添付ファイルを参照していただく
として、2022年5月7日付、日本経済新聞は、次のように報
道しています。
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(英国の調査会社)エアフィニティによると、中国製ワクチン
は1〜2回目の接種では使われても3回目の追加接種(ブースタ
ー接種)では利用が激減している。パキスタンは1回目と比べて
3回目が98%減、インドネシアは93%減、バングラデシュは
92%減、ブラジルは74%減だった。北京の調査会社ブリッジ
・コンサルティングによると、ブラジルとインドネシアは21年
に終了した中国製ワクチンの購入契約を更新しなかった。
新型コロナワクチンは中国、欧米勢ともに20年末ごろに実用
化したが、輸出では中国勢が先行した。東南アジア、中東、南米
などにいち早く供給し、20年12月〜21年3月は中国3社が
ファイザーを上回った。欧米製はまず先進国が大量確保し、新興
国や発展途上国は中国製しか選べなかった事情もある。
──2022年5月7日付、日本経済新聞
https://s.nikkei.com/3uUy0TD
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中国国内では、「中国製ワクチンは効かない」とは誰もいえな
い雰囲気があります。今さらmRNAワクチンを米国から輸入す
るわけにもいかず、習近平主席の推進するゼロコロナ政策を推し
進めるしかない──これが中国の対応です。中国のワクチン外交
の失敗といえます。
実はもうひとつ理由があります。それが、党内権力闘争になっ
ているということです。中国共産党内にはゼロコロナ緩和主義者
がいます。それは、李克強首相を中心とする一派です。3月11
日の全人代閉幕時の記者会見で、李首相は「起こり得る変化に速
やかに対応しつつ、少しずつ物流や人の行き来を正常化させてい
く」と答えています。李首相としては、経済の担当者としてそう
いう発言をする責任があります。しかし、習近平主席にとっては
絶対にそれを受け入れることはできないのです。
──[新中国論/003]
≪画像および関連情報≫
●中ロのワクチン外交を苦々しく感じているあなたへ
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先日、南米ペルーから一時帰国した友人に驚く話を聞きま
した。同国の多くの政治家が、承認前の新型コロナウイルス
のワクチンを内密に接種していたことが発覚し、現職の閣僚
が次々と辞任に追い込まれているというのです。国民を守る
べき政治家が、自分や家族の接種を急ぐ姿は、「みっともな
い」の一言に尽きます。私がびっくりしたのは、使われたの
が中国シノファーム社のワクチンだったということ。中国製
のワクチンを打ちたい人がどれほどいるのか・・・というの
が多くの日本人の偽らざる本音ではないでしょうか。
「ワクチン外交」──という言葉を最近よく耳にします。
中国やロシアが自国で開発・製造したワクチンを途上国など
に提供して、外交上の“武器”にしているという意味で使わ
れています。実際、ペルーでは中国大使館を通じて同国の政
治家などに“儀礼的に”提供されていたというのですから、
その裏にどのような思惑があるのかと疑ってしまいます。た
だ、我々日本人が直視しなければならない現実があります。
日本では、塩野義製薬やアンジェスなどがワクチン開発を急
いではいますが、実現は早くても2022年以降と見込まれ
ています。日本は世界有数の経済大国であり、近年は毎年の
ようにノーベル賞受賞者が日本人から選ばれています。日本
発の画期的な新薬だって少なからずあるのに、新型コロナに
関しては海外からの輸入ワクチンに頼らざるを得ない。こう
した状況が、残念ながら当面は続いていくのです。国産ワク
チンの実現が危ぶまれている状況を、「ワクチン敗戦」と称
する口さがない人も少なくありません。
https://nkbp.jp/3aFvvOt
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コロナワクチンの海外供給量