2022年07月20日

●「中国がゼロコロナにこだわる理由」(第5775号)

 2022年3月14日のことです。中国・広東省の深せん、東
莞両市がいきなりロックダウンされたのです。読売新聞オンライ
ンは、次のように報道しています。
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◎「ゼロコロナ」の中国で感染拡大、深センが都市封鎖
 【広州=吉岡みゆき、北京=川瀬大介】新型コロナウイルスの
感染が広がっている中国で、国内外の製造業が集積する広東省の
深セン、東莞両市が14日、事実上のロックダウン(都市封鎖)
に踏み切った。わずかな感染拡大も許さない「ゼロコロナ」政策
の徹底により、日系企業などの操業に早くも影響が出ている。
                 https://bit.ly/3aNV67S
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 深せん、東莞両都市は、広東省を代表する大都市で、深せん市
の人口は大阪府の倍の1756万人、東莞市の人口は、1000
万人です。これらの大都市がロックダウンされたのです。しかし
ロックダウン前日の3月13日の深せんのコロナ感染者は無症状
者を含めて86人、東莞市にいたってはたったの12人、これで
ロックダウンするのですから、考えられないことです。深せんの
半分の人口の大阪府の同じ日の感染者は4897人、深せん市と
東莞市の両方を合わせた人数の50倍の感染者です。
 3月17日に、習近平国家主席は、共産党政治局常務委員会に
おいて、次の演説を行っています。
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 中国におけるコロナ蔓延の抑制は、世界をリードしている。世
界のどの国よりも中国はコロナを抑え込んでいる。このような政
策が共産党指導体制と社会主義の優越性を表している。自分の緊
急の任務として感染拡大を1日も早く徹底的に封じ込めよう。
                    ──習近平国家主席
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 国のトップがこんなことをいっているようでは、西側諸国が実
施している「コロナ共存」なんか、中国ではとてもじゃないが、
口にできないと思います。
 続いて上海市です。上海市のトップは李強上海市共産党委員会
書記。習近平国家主席の側近中の側近です。上海市は、3月27
日と4月5日の2段階にわたって、上海市全域がロックダウンさ
れたのです。上海市といえば2600万人の大都市です。解除さ
れたのは6月1日ですから、約2カ月間、上海市は、機能不全に
陥ったのです。
 この上海市のロックダウンに関して、やはり著名な中国ウオッ
チャーである福島香織氏は次のように書いています。
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 上海の場合、武漢と違ってわずか4日、東西地域合わせても8
日という短期間で、終わりの見える封鎖だ、と当初は予告されて
いた。だから、さほど恐れるほどでもない、と思ったら大間違い
だった。ロックダウンは2か月以上に及んだ。武漢よりもずっと
外国人が多く、中国経済のエンジン部であり、国際社会へのショ
ーウインドーでもある2600万人都市の上海でロックダウンが
行われるインパクトは、2020年1月の武漢の60日のロック
ダウンに匹敵、あるいはそれ以上の悲劇をもたらした。上海の新
規感染者数はロックダウン2日目の3月30日の段階で6000
人弱。無症状感染がほとんどだ。それなのに4日も家から一歩も
外に出られないのだ。            ──福島香織著
   『習近平/ゼロコロナ、錯綜する経済、失策続きの権力者
                 /最後の戦い』/徳間書店
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 この上海のロックダウンのさい、上海市トップの李強共産党委
員会書記が住宅を視察したさい、住民から「食べ物がない」「恥
を知れ」などと住民から罵声を浴びせられたのです。住民として
は、準備不足のまま厳しいロックダウン(都市封鎖)を強いられ
たことによる市政府への不満をぶつけたかたちです。
 習近平主席の構想によると、この李強上海市書記は自分の側近
中の側近で、その能力を買っており、上海で実績を積ませて、現
首相の李克強が務める首相の地位を任せる予定の人物です。それ
が上海のコロナロックダウンで失敗をしてしまったということで
話題になっています。
 これについて、4月29日のブルームバークは、次のように報
道しています。
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 中国が現在見舞われている新型コロナウイルスを巡る混乱で、
誰が責任を取ることになるのか。共産党指導部の人事を決める重
要な党大会を秋に控え、それが習近平総書記(国家主席)の権力
の強さを示す試金石になる。
 習氏は3月、党幹部が新型コロナ対策の職務を怠れば誰であれ
罰するとあらためて強調した。だが、数週間に及ぶ上海のロック
ダウン(都市封鎖)で処分されたのは下級の職員15人だけだ。
上海市のトップは、党中央政治局員で習氏の最側近の1人とされ
る李強氏が務めるだけに、同市の失態に対する批判は習氏にまで
及ぶリスクがある。         https://bit.ly/3cnJfhf
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 ここでいろいろな疑問が湧いてくると思います。中国のコロナ
対策は、誰の目からしても過激であり、異常です。他国からみれ
ば、わずかな数の感染者に対して、大都市をロックダウンしてま
で「感染者ゼロ」にこだわるゼロコロナ政策を国家主導で展開し
て経済を悪化させています。
 そもそも中国では、経済運営の担当は国務院総理(首相)、す
なわち、李克強首相の仕事です。しかし、習近平主席は、その権
限を李首相から奪い、経済問題を審議する中央財経委員会の主導
権を自ら握っているのです。これまで経済に関する重要な決定は
すべて習近平主席の判断で実施されてきています。
                 ──[新中国論/002]

≪画像および関連情報≫
 ●中国の「ゼロコロナ」政策は来年に入っても続く
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   米国のバーンズ駐中国大使は6月16日、新型コロナウイ
  ルス感染を徹底的に抑え込む中国の「ゼロコロナ」政策は来
  年に入っても続く公算が大きいと指摘した。大都市のロック
  ダウン(都市封鎖)や移動制限を伴う同政策によって、米欧
  の対中投資が大きく妨げられているとも述べた。
   バーンズ大使は、同日開かれたオンラインイベントで「私
  の率直な想定ではゼロコロナは恐らく2023年の最初の数
  カ月も続く。中国政府がこれを示唆している」と語った。中
  国はゼロコロナ堅持、大規模検査で封じ込め、むしろ危険と
  の指摘も。
   同大使は、また、上海市の厳格なロックダウンが多くの米
  ビジネス関係者の出国を促したと分析。一時は米大使館と上
  海総領事館で80人の館員が昼夜を問わず、対応にあたり、
  「出国を望んだり、水や食料、医療を求めたりした」米国民
  を支援したと明らかにした。上海がコロナ大規模検査を毎週
  末実施、7月末まで新規感染16人でもバーンズ氏はますま
  す「攻撃的な」中国政府が自国経済をどの方向に導こうとし
  ているのか依然として不透明だとも指摘。中国はテクノロジ
  ーなど特定のセクターに対する締め付けを継続するのかに関
  して相反するメッセージを発しているとも述べた。
   さらに、中国市場は外国企業にとってあまりに重要であり
  全面撤退はできないものの、商業会議所の調査や意見交換に
  基づくと、コロナ対策の移動規制を中心とする不確実性で対
  中追加投資に関して企業が二の足を踏んでいるとも語った。
                 https://bit.ly/3OdDIad
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李強上海市書記.jpg
李強上海市書記
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする