2022年07月19日

●「いま中國経済で何が起きているか」(第5774号)

 2022年7月15日付、日本経済新聞/夕刊は、次の記事を
一面トップで報道しています。
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◎中国、0・4%成長に失速/4〜6月実質ゼロコロナ直撃
 【北京=川手伊織】中国国家統計局が7月15日発表した20
22年4〜6月期の国内総生産(GDP)は、物価の変動を調整
した実質で前年同期比0・4%増えた。新型コロナウイルスの感
染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で経済活動が滞り、1〜3
月の4・8%増から失速した。景気は6月から持ち直しているが
政府が22年の成長率目標とする「5・5%前後」の達成は厳し
い。     ──2022年7月15日付、日本経済新聞夕刊
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 中国の習近平政権による「ゼロコロナ」政策で、中国の経済が
おかしくなっていることはわかっています。しかし、どうもそれ
だけではないようです。最近の経済に関する中国のトピックスを
以下、いくつかひろってみます。
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◎中国の就活、悲観論拡大
 【北京=川手伊織】16〜24歳の若年失業率は6月、19・
3%と最高を更新した。大卒でも希望の職につけず、内定の取り
消しで涙をのむ学生も多い。現役学生には、将来の就職活動がさ
らに厳しくなるとの悲観論も広がる。(中略)
 「博士課程への進学も視野に入れている」。6月に中国人民大
学を卒業したばかりの蔡さん(22)は不安そうに語る。9月に
始まる新学期に修士課程に進むが、視線は3年後にある。「若年
雇用は今後数年間、さらに厳しくなる」とみているからだ。
 中国の若年失業率は、6月まで3カ月連続で最高を更新した。
上海市のロックダウン(都市封鎖)など新型コロナウイルスの感
染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で、景気が悪化した影響が
大きい。     ──2022年7月16日付、日本経済新聞
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 良い就職先に就けない学生が多いので、大学院に進学する学生
が増えています。20年に修士課程を終えた学生数は、10年前
の2倍に達し、20年の国勢調査によると、最終学歴が大学院と
いう割合が24歳で3・7%、33歳(1・8%)の2倍に達し
ています。中国の就活市場は、企業に有利な「買い手市場」の色
彩が濃くなりつつあります。
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◎中国新幹線/負債120兆円
 【大連=渡辺伸】中国版新幹線「高速鉄道」を運営する国有企
業、中国国家鉄路集団の路線延伸がとまらない。景気底上げを目
指す政府の意向をくみ、2035年に路線を現在より7割増やす
方針だ。ただ、無軌道な拡大で不採算路線が増え、足元の負債総
額は120兆円の大台に達した。今後さらに70兆円超の建設費
がかかるとみられ、巨大国有企業が抱える「国の隠れ債務」が、
中国経済のリスク要因となる懸念がある。
          ──2022年7月6日付、日本経済新聞
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 コロナ禍からの景気底上げを狙う政府の意向を汲み、中国の新
幹線を運営する国有企業、中国国家鉄路集団が路線の伸長にやっ
きになっています。鉄路集団は、巨額の費用捻出のため、社債な
どの債権を発行し、国有の銀行や証券会社がそれを引き受けるこ
とを政府は認めています。しかし、この無軌道な拡大によって、
不採算路線が増加し、借金は増える一方です。
 このように中国はいろいろな問題を抱えています。中国経済の
実態は本当のところどうなっているのでしょうか。
 宮崎正弘氏という中国ウオッチャーがいます。中国全土をくま
なく踏査し、中国経済の実態報告に定評があり、中国に関する著
書も多くあって、私はその多くを持っています。その宮崎氏は、
新著の冒頭で、最近の中国について次のように書いています。
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 体温調節ができないほどの悪性の風邪をごまかしていたら末期
癌になっていた。脳死状態を宣告されたため生命維持装置を装着
し、かろうじて循環機能を維持しっつ、臓器移植を待っているの
が中国経済の真の姿である。
 そもそも中国経済は国内総生産(GDP)世界第2位とされて
いるが、その真偽も精査されなければならない。中国政府の公表
数字には「ごまかし」しかないからだ。
 中国国家統計局の3割水増しは常識にしても、在庫を統計に入
れている。海外資産も大半が不良債権である。外国銀行からのド
ルの借り入れも外貨準備高に算入しているのだ。
 こうした特殊事情を理由に推測するしかないが、1600兆円
と吹聴されている中国GDPは、かなり正確に見積もって、実質
900兆円あたりだろう。それでも日本の530兆円より多いこ
とは確かだが・・・。            ──宮崎正弘著
          『中国経済はもう死んでいる』/徳間書店
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 深刻な話です。しかし、外から見ていると、中国はそのように
見えません。本当のところはどうなのでしょうか。その実態を掴
むことは、日本にとっても重要なことです。
 ロシアによるウクライナへの侵攻によって、中国とロシアは連
携をしています。中国もロシアも日本にとっては隣国です。それ
らの国と日本との関係は今後どうなっていくのかについて、次の
テーマで考えます。
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     「中国とロシアは今後どうなっていくのか」
      ──中国でいま何が起きているのか──
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                 ──[新中国論/001]

≪画像および関連情報≫
 ●中国経済は悪化、20年のコロナ禍より幾つかの側面で
  深刻/李首相
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   中国の李克強首相は同国経済について、新型コロナウイル
  スのパンデミック(世界的大流行)が世界を襲った2020
  年よりも幾つかの側面で悪化しているとの見方を示し、失業
  率の低下に取り組むよう求めた。
   首相は当局者らに対し、失業率を低下させ、今年4−6月
  (第2四半期)の経済活動が「妥当なレンジ」で推移するよ
  う確実を期すことを求めたと、国営メディアが報じた。
   ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストらは、
  首相が4−6月の経済成長を強調した点について、3月初め
  に設定された成長目標の達成が「厳しい」ことを「暗に認め
  る」ものかもしれないとリポートで指摘。「4月の非常に弱
  い経済活動の伸びや5月に入ってからの勢いに欠ける回復、
  継続的な失業率上昇を踏まえ、中国の政策当局者の間では景
  気下支えの緊急性が高まっている」と分析した。
   首相は厳格な新型コロナ対策が経済に与える影響の抑制に
  努めると示唆したが、そのための具体的な方策は示さなかっ
  た。「われわれは防疫対策と同時に、経済発展の任務もやり
  遂げなくてはならない」と語った。
   コロナ感染封じ込めのロックダウン(都市封鎖)が繰り返
  し実施されているため、米国の経済成長率が1976年以降
  で、初めて中国を上回る可能性が高まっている。こうした状
  況の中、中国政府の指導部は成長の下支えに努めている。
                  https://bit.ly/3yHr6m1
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チャイニーズGDP.jpg
チャイニーズGDP
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 新中国論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする