で、7月15日(金)で終了する予定です。本当は次のテーマと
しては、「メタバース」を考えており、現在、本などを読んで準
備していますが、まだ情報が足りません。そこで、別のテーマを
用意することにします。19日からそのテーマを取り上げます。
現在、財務省が一番警戒しているのが、防衛予算の増大です。
「GDP対比2%」という数字が出ていますが、岸田政権は「は
じめから数字ありきではない」と否定しています。
これに対し、岸田首相は、安倍元首相が猛反対することは承知
のうえで、電光石火ある人事を断行しています。6月17日の決
定です。この人事について、6月17日付の朝日新聞デジタルは
次のように伝えています。
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政府は17日の閣議で、防衛省の島田和久事務次官(60)を
退任させ、後任に鈴木敦夫防衛装備庁長官(60)を充てる人事
を決めた。(中略)ただ、島田氏は国の外交・防衛政策の基本方
針となるNSSを9年ぶりに改定するという岸田政権にとって重
要課題を担っており、続投が既定路線だった。それだけに島田氏
の交代には省内に驚きが広がっている。
政府関係者によると、交代は首相官邸の主導で決まり、「次官
は2年間が通例」と理由が防衛省に示された。岸信夫防衛相は、
継続性の観点から反対の意向を示したが、覆らなかったという。
島田氏は約4年間空席だった防衛相の政策参与に就任する。
安倍氏も島田氏の交代を疑問視しているという。岸田政権に影
響力をもつ安倍氏が防衛費の議論をリードするようにGDP(国
内総生産)比2%を訴えてきたが、島田氏との関係を指摘する声
がある。省内には、「安倍氏と島田氏が近いことはみんな分かっ
ている。官邸がよく思わなかったのでは」(幹部)との見方もあ
る。 ──2022年6月17日付、朝日新聞デジタル
https://bit.ly/3uFsoNb
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岸田首相のいい分は、「事務次官の任期は2年が原則である」
の1点張りです。それも、後進者に道を譲るというのでもないの
です。新しく任命された鈴木敦夫防衛装備庁長官は、島田次官と
同期であって、霞が関では、同期の任命はないというのが原則に
なっています。実際問題として、同期が2代続けて事務方のトッ
プである事務次官に就任するのは、2007年の防衛省発足後、
一度もないことです。
岸田首相の本当の狙いは、今後の防衛費増大の決定に関し、安
倍元首相に近い人物を重要ポストに置きたくなかったことにあり
ます。なぜなら、島田和久氏は2次安倍政権で6年間も首相秘書
官を務め、安倍元首相に近いことで知られるからです。岸田首相
としては、そういう安倍元首相に近いを人を外したかったという
ことに尽きます。
この人事には、岸防衛相が難色を示し、松野博一官房長官に反
対を申し入れましたが、聞き入れられなかったといいます。そこ
で、安倍首相は首相官邸にクレームの電話を入れています。その
ときのやり取りについて、「フライデイ・デジタル」は次のよう
に伝えています。
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栗生俊一内閣官房副長官(63)は、(安倍元首相のクレーム
の電話に対して)、「次官の就任2年での交代は慣例」「決定事
項ですので」と電話一本で冷たく切り捨てたそうです。今回の人
事を主導したのは、栗生副長官と木原誠二内閣官房副長官、そし
て財務省の面々です。そもそも、安倍元総理は今年の経済財政運
営の指針「骨太の方針」で、防衛費の大幅増額を主張。原案では
「GDP2%」を本文に入れ、必要額達成までの年限を「5年以
内」と明記させた。その立役者こそ、安倍元総理の腹心である島
田次官でした。この動きを苦々しく思っていた財務省は、島田氏
を議論から排除することが念願だったのです。安倍元総理の骨太
に関する発言を受け、文言を修正するハメとなった岸田総理は周
囲に恨み節を吐いており、今回の人事はその意趣返しという側面
があります。 https://bit.ly/3Rk5ODz
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この岸田側近の無礼な対応に腹を立てた安倍元首相は、岸田首
相に電話をかけて、事務所に呼びつけ、島田次官を続投させるよ
う迫ったといいます。しかし、岸田首相は、「事務次官の任期は
2年であり、既に決まったことである」と一方的に安倍首相に伝
えています。これによって、岸田首相と安倍元首相の間にはかな
り亀裂が入ったものと考えられます。
岸田首相が狙っているのは次の内閣改造での防衛相を交代させ
る人事です。現在の岸防衛相は、このところ身体が悪く、車椅子
で移動するまでになっています。岸田首相は、病気を理由に岸防
衛相を退任させる意向です。しかし、岸防衛相は、安倍元首相の
実の弟であり、安倍元首相との対立は必至ですが、それでもやる
つもりだったといいます。しかし、その安倍元首相はいないので
す。岸田首相にとって、側近にとって、財務省にとって、こんな
都合の良い話はないということになります。
それでは、岸田首相は、誰を防衛相に任命しようとしているの
でしょうか。
その意中の人は、寺田稔内閣総理大臣補佐官(国家安全保障に
関する重要政策及び核軍縮・不拡散問題担当)です。寺田氏は、
元財務官僚であり、広島県出身で、自民党の広島県連会長を務め
ています。安倍元首相がいないなか、この人事はほぼ確実に実行
されると思います。岸防衛相退陣です。
添付ファイルとして、首相官邸、防衛省の人脈図を図解してい
ます。そのためにこそ、島田財務事務次官をやや強引に辞任させ
たのです。岸田首相は、寺田稔防衛大臣、鈴木敦夫防衛事務次官
のコンビで、防衛費増大問題をコントロールさせようとしている
のです。 ──[新しい資本主義/127]
≪画像および関連情報≫
●島田防衛次官、退任し参与に 官邸は留任認めず
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防衛省の島田和久事務次官が1日付で退任した。年末に国
家安全保障戦略などの改定を控え、岸信夫防衛相は島田氏の
留任を求めたが、首相官邸側が「任期2年」の慣例を主張し
認めなかった。岸氏はこれを受け、島田氏を同日付で防衛相
政策参与と防衛省顧問に充てた。
「日本が作る防衛計画に世界中が注目し、期待している。
皆さんの力で大いなる成果を出してほしい」。島田氏は1日
の離任式で、幹部職員らを前にこう訓示した。関係者による
と、岸氏の実兄である安倍晋三元首相も、島田氏の交代に反
対した。島田氏は、2012年12月から約6年半、首相秘
書官として安倍氏に仕え、現在でも関係が深い。
今回の人事は、防衛費増額をめぐる政府・自民党内の対立
が原因との見方がある。安倍氏はかねて、大幅増を求める発
言を繰り返してきた。政府が先月閣議決定した経済財政運営
の基本指針「骨太の方針」をめぐっても、「国内総生産(G
DP)比2%」に言及した上で、「防衛力を5年以内に抜本
的に強化する」と明記させた。
こうした動きに対し、官邸幹部は「一線を退いた人は発言
を控えるべきだ」と反発。島田氏を退任させることで、安倍
氏をけん制するとともに、安保戦略などの改定論議を、岸田
文雄首相の主導で進める狙いがありそうだ。
https://bit.ly/3yvEwRT
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防衛省事務次官人事相関図