のの、ロシアに大きなダメージを与えるにいたっていません。ま
た、ウクライナへの欧米の武器の支援もスムーズではなく、数が
決定的に不足しており、そうしている間に、ロシア軍は東部のル
ハンスク州の完全制圧を宣言し、この州の隣のドネツク州におい
て、複数のウクライナ軍支配地に対し、砲撃をはじめています。
戦況はロシア軍に有利な状況が続いています。
正確な情報ではないものの、現在ロシア軍の兵力は約30万人
であり、これに対してウクライナ軍は約100万人といわれてい
ます。ロシア軍の数が少ないのは、あくまで「特別軍事作戦」で
あって戦争ではないからです。戦争ということになれば、国家総
動員令によって大軍を送ることができますが、特別軍事作戦への
ロシア国内の反対の声が多くなっている現状では、プーチン大統
領は、国家総動員令をかけるのに躊躇っているようです。
今後は、ドネツク州西部地域の攻防に移り、もし、ドネツク州
全体がロシア軍に制圧されるような事態になると、ロシアは軍の
体制を立て直し、国家総動員令をかけて、首都キーウに攻撃をは
じめるという一部の専門家の意見もあります。ウクライナ軍には
欧米に支援を期待する火力が決定的に足りないのです。欧米から
のウクライナに対する武器支援がうまくいっていないのです。
ところで、ウクライナを支える米国のバイデン政権の国内の支
持率が思わしくないのです。
中間選挙に向けて、米メディアによる「議会で共和党を望むか
民主党を望むか」という問いに関しては、6月25日の時点では
次のように共和党がリードしています。
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◎6月25日現在
共和党 ・・・・・ 44・8%
民主党 ・・・・・ 42・5%
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現在、米国の中間選挙(上院の3分の1と全下院議員改選)に
立候補する候補者を決める予備選は、全米の半分を超える26州
で既に投開票を終えていますが、トランプ前大統領が支持する候
補者が圧倒的に優勢です。
野党・共和党の予備選では、上下両院と州知事選の合計で、ト
ランプ前大統領が推薦する候補者の9割超が勝利しています。ト
ランプ推薦候補の成績は次のようになっています。
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上院選 ・・・・・ 12勝01敗
下院選 ・・・・・ 89勝05敗
州知事選 ・・・・・ 7勝03敗
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2022年5月にクイニピアック大学の実施した調査によると
バイデン政権の現在の支持率は次のようになっています。
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◎バイデン政権の支持率
支持 不支持
経済政策 32% 63%
コロナ政策 48% 47%
ウクライナ政策 44% 50%
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バイデン政権の支持を奪っているのは、米国におけるインフレ
です。4月8・3%、5月8・6%と上昇しつつあります。バイ
デン政権の発足時には1%であったことを考えると、米国民はバ
イデン政権の明らかな失政であるとみています。
問題は、中間選挙で民主党が勝てるかどうかです。米国の中間
選挙は、上院の3分の1が入れ替わり、下院は全議員が改選され
ることになっています。この場合、下院で過半数が維持できない
と、議会がいわゆる「ねじれ」の状態になり、法案が通りにくく
なってしまうのです。
重要なのは、上院のゆくえです。現時点では、上院はかろうじ
て民主党に有利です。上院の定員は100ですが、60以上を確
保する必要があります。上院では、60を取らないと「フィリバ
スター」といって、議事妨害を受ける恐れがあるからです。日本
の議会でいえば「牛歩戦術」のようなものです。フィリバスター
とは、オランダ語で「海賊」の意味です。
果たして、バイデン政権は、中間選挙で勝てるのでしょうか。
もし中間選挙で負けてしまうと、法案がほとんど通らず、必要な
政策を何も打てなくなります。つまり、バイデン政権は2年にし
て、レイムダック化してしまうことになります。もし、そうなる
なら、当然ロシアへの姿勢も変化するし、ウクライナへの対応も
変わる可能性があります。
これについて、経済評論家の渡辺哲也氏と、中国ウォッチャー
として著名な宮崎正弘氏が、次のように話しています。
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渡辺:現状では、中間選挙で民主党が上下院とも負けるとすでに
予測されています。
宮崎:逆に言うと、中間選挙で共和党が両院とも勝利するのが見
えてきたということですね。(中略)上院と下院ともに共和党
が勝利すると同時に民主党のバイデン大統領はレームダック化
します。
渡辺:上院と下院ともに共和党が過半数を占めると、共和党政権
と同じ状況になって、グリーン政策も全部ひっくり返ります。
バイデン政権がCOP26などで約束した温暖化対策も完全に
すっ飛ぶ格好になるのです。トランプ時代に完全に先祖返りす
ると言っていいでしょう。 ──宮崎正弘/渡辺哲也著
『プーチン大恐慌/ウクライナ後の世界で日本が生き残る道』
ビジネス社
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──[新しい資本主義/124]
≪画像および関連情報≫
●バイデン大統領が中間選挙で「敗北濃厚」な深刻事情
=前嶋和弘氏
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「国の中に多くの不満と疲労感があることは、承知してい
る」──。バイデン米大統領は1月19日、政権発足から1
年の節目に演説し、雇用状況の改善などの成果を挙げながら
も、国内に課題が山積していることを認めた。バイデン氏は
新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」が広がる中で
「パニックは起きていない」と強調するとともに、もう一つ
の課題に挙げたインフレについては、供給網の混乱解消など
を通じて沈静化を図る考えを力説した。
だが、就任から丸1年の節目となったこの日、バイデン氏
自身は強い徒労感に襲われたのではないか。というのも、同
日の連邦議会上院で、バイデン氏が強く推進してきた投票権
擁護に関する2法案の可決が絶望的になったからだ。
バイデン政権と与党・民主党は、人種マイノリティー(少
数派)の投票の機会を広げる「投票の自由法案」と、各州で
進む投票ルールの変更について司法省の監督権限を拡充する
「ジョン・ルイス投票促進法案」の二つの連邦法の制定を目
指してきた。米国の各州で投票を制限する州法が広がる動き
に対抗するのが狙いだ。
ニューヨーク大学ブレナン司法センターによると、米国で
は2021年に郵便投票の利便性の縮小、投票の時間や場所
の制限、身元確認の強化など34の規制法が19の州で施行
された。テキサスやジョージアなど共和党が地盤とする南部
で顕著だ。 https://bit.ly/3RaYjyx
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中間選挙で敗色濃厚のバイデン政権