月10日投開票ですので、19日間と選挙戦が非常に長期間に及
びます。20日現在の岸田内閣の支持率を見ると、次の2つの新
聞社については、支持率が5〜6%下がっています。
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◎6月20日現在/岸田政権支持率
支持 不支持
日本経済新聞 60%(▲6%) 32%(9%)
朝日新聞 48%(▲5%) 44%(7%)
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支持率自体は高いのですが、支持率のグラフのトレンドは下方
に向かっています。原因は物価上昇です。日本経済新聞の調査に
よると、資源高騰や円安などによる足元の物価上昇については、
「許容できない」が64%で、「許容できる」の29%を大きく
上回っています。物価高対策を「評価しない」は69%で5月か
ら8ポイント上昇しています。
物価の問題は、国民全般に関係するので、与党としては、よほ
ど具体的な対策を打ち出さないと、野党攻勢もあるので、支持率
は投開票日までどんどん下落し、思わぬ敗戦を喫することがあり
ます。21日午前に物価対策本部で岸田首相は、次のように述べ
ていますが、肝心の物価高への対策としては、具体的には何もな
い状態です。
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正確に直結する物価動向を注視し、きめ細かく切れ目なく対応
していく。 ──岸田首相
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これに対する野党7党は、「消費税減税」にマトを絞っており
こちらはきわめて具体的な政策をぶつけてきています。しかし、
21日午後の党首討論では、岸田氏は、消費税減税に対しては、
次のように発言しています。
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消費税減税は考えておりません。消費税は法律上、社会保障目
的税として位置づけられております。 ──岸田首相
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岸田首相のこの発言が出るや、SNS上では、「目的税ではな
くて、何でも使える普通財源」「一般財源でごちゃ混ぜになって
いる」「ウソを垂れ流すのダメ」という、もの凄い批判のツイー
トが飛び交ったのです。
この岸田首相の「消費税は法律上社会保障目的税として位置づ
けられている」という発言は、間違っています。それでは岸田首
相は何を根拠にそういっているのかというと、次の消費税法第1
条第2項の条文です。
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◎消費税法第1章第2項
消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによる
ほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会
保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充て
るものとする。
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しかし、条文に書かれているといっても、「消費税は社会保障
目的税」とはいえないのです。これに対して、税理士で、立正大
法制研究所特別緊急員の浦野広明氏は次のように述べています。
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岸田首相が消費税を社会保障目的税と断言したのは、国民をミ
スリードする問題発言です。確かに消費税法上、使途は社会保障
や少子化対策と規定されており、目的税のように錯覚しがちです
が、法人税や所得税と同じく一般財源です。実際には、消費税は
国の借金返済や社会保障以外の歳出に充てられています。この規
定自体、国民を欺くために設けられたと考えられます。
──浦野広明氏
──22日発行「日刊ゲンダイ」/ https://bit.ly/3ynj0QF
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「お金に色はない」といいますが、たとえ法律上使途を明らか
にしていても、一般財源として入ってくると、基本的には何にで
も使えるのです。実際に2019年1月の衆参本会議で安倍首相
(当時)は、「消費税の増税分の5分の4を国の借金返しに充て
ていた」と認めています。要するに、消費税は何にでも使える一
般財源(普通財源)であり、社会保障の目的税ではないのです。
まして、物価が1%上がると、年間の消費税負担は、約2000
億円も増えるので、財務省はホクホクです。
19日(日)にも、SNSを騒がせる事件があったのです。そ
れは、NHKの日曜討論においてです。れいわ新選組の政審会長
大石晃子議員と高市政調会長の次のやり取りです。
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大石:数十年にわたり法人税は減税、お金持ちは散々優遇してき
たのに消費税減税だけをしないのはおかしい。
高市:れいわ新選組から消費税が法人税の引き下げに流用されて
いるかのような発言が何度かありました。これは事実無根であ
ります。消費税は法律で社会保障に使途が限定されており、デ
タラメを公共の電波で言うのはやめていただきたい
──20日発行「日刊ゲンダイ」/https://bit.ly/3xLOU7G
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れいわ新選組の大石晃子議員といえば、6月10日のEJでご
紹介したように岸田首相を「財務省の犬」と命名した議員です。
大石議員は大阪大学工学部出身のリケジョで、消費税のことは十
分すぎるほど調べ上げている人物です。
このときの高市発言に対して、SNS上では「デタラメ、ウソ
つきはどっちだ」「高市に税収の表見せてやって」など批判が溢
れたのです。これの真偽は明日のEJで明らかにします。
──[新しい資本主義/115]
≪画像および関連情報≫
●岸田政権の空っぽインフレ対策で参院選は波乱あり
選挙中発表の「経済指標」に自民ビクビク
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参院選の最大の争点は物価高──時事通信が10〜13日
に実施した世論調査によれば、岸田政権の物価高への対応に
ついて「評価しない」が54・1%と「評価する」の13・
8%を大幅に上回った。内閣支持率も、4カ月ぶりに5割を
切った。国民は岸田政権の空っぽの物価対策に気づきつつあ
る。参院選は「自民優勢」との前評判だが、「波乱含み」に
なってきた。
7月10日の投開票が確定した参院選。勝敗のカギを握る
のが接戦の17選挙区だ。この17選挙区を、与党、野党の
どちらが制するのかで選挙結果は大きく変わってくる。北海
道(改選数3)は自民、立憲がそれぞれ2人の候補を立て、
大激戦となっている。東京(同6)は、自民が2人擁立して
いるが、2議席確保は困難とみられている。維新が関西掌握
を目指す京都(同2)も自民候補は決して安泰ではない。新
潟、長野、山梨、沖縄は、6年前、野党が勝った1人区。自
民は野党と激しく競り合っている。
この17選挙区は投開票日までに自民に“逆風”が吹けば
自民が落としてもおかしくない。自民党に打撃を与えそうな
のが、選挙中に発表される2つの経済指標だ。岸田首相周辺
もどんな数字が出るのか戦々恐々としているという。公示日
(22日)直後の24日、総務省が発表するのが5月の「消
費者物価指数」だ。4月は2%台の物価上昇率だったが、5
月は、さらに物価高騰と円安が進行しているだけに、2%台
を上回る可能性がある。 https://bit.ly/3OeSU7D
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浦野広明氏