です。ニューヨークでは、家賃が今年1月までの1年間で33%
アップし、今年3月までの消費者物価は8・5%に上昇している
からです。何しろ醤油ラーメンが約20ドルといいますから、現
在のレートであれば、2500円を超えることになります。それ
にチップも支払う必要があります。しかし、平均時給は5・6%
上昇するなど、賃上げも行われているので、苦しいけれども米国
人は何とかやっていけるのです。ただ、ガソリン高などの影響で
バイデン大統領の支持率は低下しています。
19日に投開票されたフランス国民議会(下院)の決選投票で
マクロン大統領率いる与党連合が議席を346から245に減ら
し、過半数ラインの289を大きく下回り、敗北しました。物価
高騰への有権者の不満が逆風になったのです。
日本の場合、さまざまな要因で物価が高騰しているのに、賃上
げは行われておらず、年金が6月から減額されており、実質的な
収入減で生活が苦しくなっています。しかし、岸田内閣はそのた
めの対策としては何も行っておらず、参院選に突入しようとして
います。この内閣は、何かをやったわけでもないのに支持率は高
く、参院選は乗り切れると考えているのでしょう。
しかし、物価に関わるときの選挙は厳しいのです。1998年
7月の参院選がそうです。当時の橋本龍太郎政権は、支持率は高
かったのですが、選挙中所得税の恒久減税をめぐる総理の発言が
二転三転したことによって、国民の「橋龍人気」は急落し、自民
党は予想を大きく下回る44議席で大敗し、橋本政権は退陣に追
い込まれています。
気になるのは、立憲民主党です。立憲民主党の泉健太代表は、
5月20日の衆院予算委員会において、次のように政府に対して
質問しています。
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物価高を止めるという意味では、金融政策において、金利を少
し引き上げることも選択肢に入れるべきではないか。
──立憲民主党泉代表
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また、民主党出身の元首相で、公約に反し、自民党と組んで、
社会保障と税の一体改革を成立させ、5%の消費税を10%にさ
せた野田佳彦氏は、6月20日に街頭演説で、次のように訴えて
います。
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世界中どの国も物価を下げようと努力しているが、日本だけ金
融緩和を続けている。金融緩和ということは物価を上げようとい
うことだ。内外金利差が広がれば、金利が高いところにお金が流
れるのは当たり前だ。ドルがどんどん買われ、円安になる。こん
な国に誰がしたのか。 ──野田元首相
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このように立憲民主党は、日銀の金融政策は間違っており、こ
のさい、他国のように、金利を引き上げて、物価上昇に歯止めを
かけるべきであると訴えていますが、これは間違っています。
ジャーナリストの歳川隆雄氏は、6月20日発行「夕刊フジ」
の自身のコラム「歳川隆雄の永田町・霞が関インサイド」におい
て、次のように泉健太代表を批判しています。
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(日米の金融政策の違いにおける)こうした円安に加えて、ロ
シアのウクライナ侵攻による原油高騰のダブルパンチを受けた日
本は、急速な物価高に直面している。
では、金融緩和路線にこだわる黒田氏にその責を求めるべきな
のか。答えは「否」である。
野党第一党の立憲民主党は、物価上昇を奇貨として、岸田文雄
政権批判を強め、日銀にインフレ対策(金融引き締め)を要求し
ている。他方、物価高対応という面では岸田政権の財政出動(財
政拡大)は不十分だとする。まさに「金融引き締め」と「財政拡
大」を同時に求めるという、相矛盾した支離滅裂な批判である。
──2022年6月20発行「夕刊フジ」より
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ここまで述べてきているように、経済学はけっしてやさしくは
ありませんが、国の経済を動かす立場の国会議員としては、もっ
ときちんと勉強すべきです。
現在、米FRBのとっている金利の性急な引き上げは、「ビハ
インド・ザ・カーブ」ではないかという声が出ています。ビハイ
ンド・ザ・カーブ(behind the curve)とは何でしょうか。
ビハインド・ザ・カーブとは、一般的に「遅れる」とか「後手
に回る」という意味になります。投資に関しては金融政策におい
て、景気の過熱や物価の上昇に遅れるかたちで政策金利の引き上
げ(利上げ)を行うことを意味します。
戦略的・意図的に利上げを遅らせる場合と、意図しないうちに
利上げが遅れてしまっている場合の両方に、ビハインド・ザ・カ
ーブという言葉を用いることができますが、今回の場合は、後者
ではないかといわれています。
これについて、マネックス証券のチーフFXコンサルタントの
吉田恒氏は、FRBの金融政策の急速な見直しは、ビハインド・
ザ・カーブであるとして次のように述べています。
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FOMC(米連邦公開市場委員会)の金融政策見通しの急変が
続いている。これほどの急変ぶりでは、「ビハインド・ザ・カー
ブ(後手に回る)」批判を受けるのも当然ではないか。そして、
「ビハインド・ザ・カーブ」を巻き返す急激な金融政策の変更は
金融市場の混乱をもたらす可能性があることを過去の歴史が示し
ているだけに、今後の影響は要注意だろう。
https://bit.ly/3QLceLE
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──[新しい資本主義/113]
≪画像および関連情報≫
●米FRBはまだわかっていない。インフレ率は2023年
も高いままだ
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0・75%の大幅金利引き上げを実行しながらも、FRB
(連邦準備制度)はいまだにインフレを理解していない。そ
の結果、米国民は今後数年間、強いインフレを経験し、最終
的にFRBは、現在予想されている以上に高い金利を推し進
めることになるだろう。6月15日に発表された0・75%
の金利引き上げは、それまでのより緩やかな政策からの好ま
しい転換だった。FRBによるバランスシート縮小の決定は
正しい方向への新たな一歩だ。そして政策決定委員会は「本
委員会はインフレ目標を2%に戻すことを確約します」と正
しい発言をした(金融政策は、FRBの理事7名と地域連邦
準備銀行総裁12名中5名からなる連邦公開市場委員会によ
って実施される)。しかし、そのインフレ予測と金融政策は
FRBが理解していないことを示している。彼らはインフレ
のダイナミクス、とりわけ金融政策がインフレに影響を与え
るのに要する時間を誤解している。供給問題は不定期に去来
することから、FRBは「コアPCEインフレ」を監視して
いる。これは食料とエネルギーを除いた個人消費支出の価格
指標の変化のことだ。この指標が過去12カ月間に5%上昇
した。今回の決定に合わせて公表された見通しによると、委
員会は2022年のインフレ率(12月における前年同月と
の比較)を4・3%と予測している。
https://bit.ly/3ObvOir
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立憲民主党泉健太代表の質問