急激に上昇しています。これらに対する緊急対策の財源として、
当然補正予算を組むべきです。しかし、岸田内閣は、今年度予算
の予備費で対応すると主張し、あくまで補正予算を組むべきとす
る公明党とモメていたのですが、4月21日、自民党と公明党は
2022年度補正予算案を編成し、今国会中の成立を目指すこと
で合意しました。
実は、一時は決裂しそうになったのですが、夏の参院選が迫っ
てくるなかで、連立を組む公明党とゴタゴタを起こすのはマイナ
スと考えて、岸田首相が公明党の山口代表と協議して、補正予算
を組むことで合意したのです。茂木自民党の幹事長の調整能力の
低さが露呈した感があります。
はっきりしていることがあります。岸田内閣では、デフレから
の脱却は無理であるということです。最初は「所得倍増」といっ
ていたのに最近は一切口にしていません。それから看板に掲げた
「新自由主義との決別」は、新自由主義のシンボルである竹中平
蔵氏を政府の会議メンバーに入れて事実上ダメにし、「プライマ
リーバランス(PB)の黒字化は先延ばし」といっていたのに、
最近では「PBは堅持する」に変わっています。それでいて、支
持率は60%台を維持しています。
今回、当初は、補正予算を組まず、今年度予算の予備費で対応
すると自民党が主張したのは、参院選を意識したからです。なぜ
なら、補正予算の場合は、国会で審議しなければならず、参院選
直前に予算委員会で野党にいろいろとやりこめられるリスクを避
けたかったという動機からです。今年度の予備費を使うのであれ
ば、そういう国会審議はスルーできるからです。
しかし、肝心の補正予備案の額は、まさに妥協の産物で、緊急
対策で使った予備費の補充と、原油価格高騰対策も合わせて、2
兆7000億円程度というミミッチイ額なのです。これは、完全
に、ケタが1桁違います。2兆円ではなく、20兆円以上必要で
す。これについて高橋洋一氏は、夕刊フジの自身の22日のコラ
ムで、次のように述べています。
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今回のロシアによるウクライナ侵攻では、エネルギー価格上昇
や原材料価格上昇が懸念されている。しかしながら、本コラムで
強調してきたように、国内には供給が需要を上回る「GDPギャ
ップ」が相当額ある。筆者は30兆円程度以上と試算しており、
約17兆円とする政府の試算は過少推計だと考える。
GDPギャップにより、エネルギー価格や原材料価格の上昇が
最終消費価格に転嫁できないことへの対策は比較的シンプルだ。
それらの価格上昇を抑えるために、ガソリン税や個別消費税を減
税することだ。その一方で、値上がり分を価格転嫁し、その悪影
響を吸収するために、GDPギャップを解消するくらいの有効需
要を作る補正予算が必要だ。要するに、減税財源を含んだ大型補
正予算が最良の経済対策になる。 ──高橋洋一著
2022年4月22日付、「日本の解き方」/夕刊フジ
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高橋洋一氏は、減税財源を含めた30兆円程度の補正予算を組
むべきといっているのです。それがたったの2兆7000億円。
どうしてこんな少額なのでしょうか。ケチというか、先が見えて
いないというか、国民のことなんか考えていないというか、唖然
とせざるを得ません。
岸田内閣は前にも指摘したとおり、岸田首相の周りを財務省出
身の補佐官や大臣がぎっちり固めており、岸田首相は彼らの意見
を聞いて、政策を進めています。それによって、何か問題が起き
ると、首相が足して2で割る政策にする。したがって、政策が中
途半端になり、効果のある政策にならないのです。今回も茂木幹
事長と山口代表の両方の顔を立てたのです。
はっきりしていることは、この内閣では絶対に減税をやらない
ということです。このコロナ禍で、米国をはじめ主要国のほとん
どは、大規模な減税を行い、そのうえで巨額の特別給付金を繰り
返し給付しています。ところが、日本では、特別給付金の話が出
ると、特定の貧困者に絞って、わずかばかりの給付金案に矮小化
し、間違っても減税はしない方針です。貧困者も税金を払えとい
うわけです。もしかすると、矢野康治財務次官の例の論文は、必
ず出てくる消費税の特定期間減税の話を潰すため、財務省が仕組
んだ画策だったのではないかと思われます。つまり、財務大臣以
下、財務省全体が仕組んだ減税潰しです。
それにしても、予備費を積み増す補正予算とは前代未聞です。
なぜなら、予備費を多く持っていると、与党にとっては、国会審
議をしないで、好きなことに使えるので便利だからです。しかし
予備費は国民の税金であり、自民党や公明党のポケットマネーで
はないのです。おそらく、補正予算の審議では、与党は野党に相
当厳しく追及されると思います。
予備費とは何でしょうか。内閣は、予見し難い予算の不足に充
てるため、予備費として相当と認める金額を歳入歳出予算に計上
することができます。さらにすべての予備費の支出について、日
本国憲法第87条により、事後に国会の承諾が必要ですが、国会
の承諾が得られない場合でも、取引の安全を保つため支出は有効
になっています。ただし内閣の政治責任が問われます。過去には
1989年12月1日と2008年5月28日に参議院が予備費
を承諾しなかったことがあります。
4月23日付、日本経済新聞は、トップ記事として、次の記事
を掲げています。
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「予備費」使途9割追えず/12兆円
コロナ以外流用懸念
──2022年4月23日付、日本経済新聞
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──[新しい資本主義/074]
≪画像および関連情報≫
●トリガー条項の凍結解除が先送りされる「本当の理由」
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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が4月11日
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。燃油価格
の高騰対策に関する検討チームがトリガー条項の凍結解除を
先送りにする理由について解説した。
自民、公明、国民民主の3党は4月8日、燃油価格の高騰
対策に関する検討チームで協議を行った。ガソリン税の一部
を減税する「トリガー条項」の凍結解除については結論を先
送りする方向で、国民民主党は凍結解除が困難な場合、同等
の効果が見込める対策を講じるよう求めた。
野村)今回、国民民主党は予算に賛成しました。その理由と
して、トリガー条項の凍結解除をするのであれば、という
話がありました。それにも関わらず先送りになっている。
それが、「一体なぜなのか」、ということが重要だと思い
ます。
飯田)予算に賛成したにも関わらず。
野村)ガソリン価格が上がっているということは、重要な問
題です。これからウクライナの戦況悪化が予想されるなか
で、原油価格は上がる一方なわけです。そうすると、ガソ
リンも含めて、さまざまなものの値上がりにつながってい
く。「悪いインフレ」という言葉がありますけれども、原
材料が上がることによって、経済が悪化するという問題が
生じるわけです。 https://bit.ly/38fV6LX
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トリガー条項解除をめぐる会談