称していますが、それぞれの意味は混乱しています。「通貨の単
位及び貨幣の発行等に関する法律」では、「通貨とは、貨幣及び
日本銀行が発行する銀行券を言う」としています。
ここで「貨幣」とは、政府貨幣(硬貨)のことであり、日本銀
行の発行する銀行券とは紙幣(お札)を意味し、両方合わせて、
いわゆる「現金通貨」ということになります。
しかし、日本銀行の定義によると、「預金」も通貨の一種とし
ています。なぜかというと、現代経済では、支払いの大部分が銀
行預金を用いて行われているからです。まして、現代はデジタル
社会であり、カードやスマホでの支払いが増加し、現金通貨を使
う人は急激に減りつつあります。
預金には、M1、M2、M3の種類があって、全体のほぼ80
%を占めています。市中に流通する通貨量の残高のことを「マネ
ーストック」といいますが、そのなかで、「通貨の単位及び貨幣
の発行等に関する法律」でいうところの現金通貨はわずか20%
に過ぎないのです。
さて、どうしたら、景気を良くし、経済を活性化することがで
きるでしょうか。
はっきりしていることがあります。それはマネーストックを増
やせばよいのてです。つまり、市中に流通する通貨の量を増やせ
ばよいのです。もっと具体的にいうと、マネーストックの約80
%を占める銀行預金を増やすのです。
といっても、何らかの方法で預金者を増やすということではあ
りません。それは銀行の営業の仕事です。信用創造のメカニズム
を使って、マネーストックを増やすのです。つまり、信用創造で
銀行預金を劇的に増加させることです。
角谷快彦氏という学者がいます。現在、広島大学大学院社会学
研究科准教授です。その角谷准教授からの設問です。
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【問題】
安倍政権で「黒田バズーカ」と言われた大規模な量的緩和(日
銀が市中銀行の持つ国債を大量に買い取ってのマネタリー・ベー
ス増加)に関する質問です。黒田日銀総裁は「インフレ率2%」
を目標に、2013年3月から、マネタリー・ベースをおよそ、
380兆円増やしましたが、その間、日本の実質の物価はほとん
ど何も変化しませんでした。これは要するに、市中銀行が持って
いる大量の国債を、日銀が現金化し、市中銀行の日銀当座預金を
380兆円程度も積み上げたということです。この政策が物価に
ほとんど何も影響しなかった理由について考えてみてください。
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この問題中の「マネタリーベース」とは、市中に流通している
現金通貨(預金を含む)、すなわち、マネーストックに、各金融
機関が日銀に設けている日銀当座預金の合計額のことです。
さて、インフレ率を上げるには、マネーストックを増やす必要
があります。そのためには、銀行に大量の資金を提供しなければ
ならないと日銀は考えるわけです。そのため、黒田総裁は、大規
模な量的緩和を行い、銀行の保有する国債を買い取って、その代
金を金融機関の日銀当座預金に積み上げたのです。それが380
兆円です。しかし、2022年4月現在でも2%のインフレ目標
は達成されていません。なぜ、でしょうか。
日銀としては、マネタリーベースを増やせば、銀行はそれを引
き出し、企業や個人の融資に回せると考えたのです。セイの法則
ではありませんが、供給を増やせば、それに見合う需要が増える
はずと考えたのでしょうか。
しかし、日銀が提供した膨大な資金は、一向に引き出されるこ
となく、日銀当座預金に「ブタ積み」にされたままです。肝心の
企業や個人に資金需要がないからです。それは、デフレが原因だ
からです。
こういう場合、どうすればよいのでしょうか。
企業や個人に資金需要がない場合、その分政府がお金を使って
何かをやる必要があります。金融政策ではなく、大規模な財政政
策をやる必要があるのです。具体的には、政府が借金をして、公
共投資を増やし、信用創造によって、マネーストックを増やすの
です。そうすれば、インフレ率の2%は達成できます。しかし、
これは、信用貨幣論に立った考え方です。ただ、過度のインフレ
にならないよう留意する必要があります。
ところが、主流派経済学が立脚する商品貨幣論に立つと、ただ
でさえ政府の借金が膨大なのに、そのうえまだ借金をするなんて
考えられない。そんなことをすれば日本は財政が破綻するという
武藤財務事務次官のような考え方になってしまいます。そのため
には、政府の借金を少しでも減らすために、消費税をさらに増税
して、プライマリーバランス(PB)を黒字化する必要があると
いう、一見正しく思える政策が推進されるのです。なぜ、正しく
見えるかというと、国の財政を家計と同一視しているからです。
だから、20年以上デフレから脱却できないのです。
「信用創造」の仕組みを1分40秒で説いた珍しい動画がある
ので、ご紹介することにします。広島大学大学院の角谷快彦准教
授のサイトに出ていたものです。残念ながら、英語ですが、何と
か理解できます。
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◎Where does money come from?/お金はどこから来るか
https://bit.ly/3ry0eSB
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角谷快彦氏によると、フローニンゲン大学の Dirk Bezemer 教
授の説明に加え、後半でIMFエコノミスト Michael Kumhof 氏
氏が「銀行の又貸し説は完全に間違っている」とした上で「銀行
は何もないところからお金を生み出す」と証言しています。手品
ではありません。これが信用貨幣論の考え方です。
──[新しい資本主義/073]
≪画像および関連情報≫
●日本景気はコロナ以前から重症ですよね
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お金を作り出しているのは日銀だけではない。民間銀行も
お金を作り出している。ここを理解するのに邪魔になる概念
が存在し、それを作り出しているのは貴方自身なのです。
ここで貴方がお金を借りると想定します。貴方は20万円
が必要になり、知人に借金を申し込みます。知人は子供時代
からの親友でAさんとBさんです。
Aさんは預金が5万円。
Bさんは預金が200万円。
当然ですが貸してくれるのはBさんです。理由は現金(預
金)を20万円以上持っていなければ貸すことができないか
らです。しかしこの発想が「管理通貨制度」「信用創造」を
理解する障害になるのです。個人レベル(価値観や常識)で
考えてはいけません。何故ならお金は物ではないからです。
2022年現在、現金で商品を購入する人は昭和の時代と
比較すると減少しています。クレジット・カードを利用する
人が増えているからで、現金を持ち歩かなくても買い物がで
きます(100円ショップでも利用できる)。
昭和の時代は現金が主流でしたので、「お金=物」と感じ
ていたと思います。今でも現金主義の人は存在しますが・・
財布にお金が無くても買い物ができる。この現実を受け止め
ることは可能だと思います。何故ならお金は物ではなくデジ
タル・データーだからです。では、貴方が優良企業の社長だ
と仮定します。貴方の会社は新規ビジネスを起こすことにな
り、取引銀行に20億円の融資を持ち掛け承諾されました。
しかし取引銀行の金庫には1億円しか存在しません。取引銀
行はどのように貴方の会社の口座に20億円を振り込むので
しょうか? https://amba.to/3JTFIC5
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「信用創造」の解説動画