「悪い円安」といわれています。人口減少、少子高齢化を背景と
する日本の国力低下や、先進国のなかで突出して悪いといわれる
財政状況などの日本特有のネガティブな事情から「悪い円安」と
いわれているのです。
3月28日の外国為替市場での円相場は一時「1ドル=125
円10銭」と、6年7か月ぶりの円安/ドル高水準をつけたので
す。「有事の円買い」どこへやらです。
原因は、米連邦準備委員会(FRB)がインフレを防ぐために
急速に金利を上げたのに対し、日銀は「物価安定目標」2%の持
続的な達成に向けて、依然として、異次元金融緩和を維持してい
るからです。つまり、日本と米国の金利差が開くことによって、
円を売ってドルを買う動きが加速しているのです。
テレビのワイドショーでは、この急速な円安に対して日銀が金
利引き上げに動けないのは、1000兆円を超す政府の借金のせ
いであるとコメンテーターがいっていましたが、これはためにす
る意見です。つまり、日銀が金利を上げようとすると、利払い費
が暴騰してしまうからというのです。しかし、何でもかんでも政
府の借金のせいにするのは考えものです。
これに関する黒田日銀総裁は、次のように「悪い円安」を否定
しています。
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黒田東彦日銀総裁は1月18日の金融政策決定会合後の記者会
見で、この「悪い円安」論について問われた際、「為替円安が全
体として経済と物価をともに押し上げて、わが国経済にプラスに
作用しているという基本的な構図に今のところ変化はないと考え
ています。従って、悪い円安ということは考えていません」と明
言。「為替円安の影響が、業種や企業規模、あるいは経済主体に
よって不均一であるということには十分留意しておく必要がある
と思っている」ものの、「いずれにしても、悪い円安というよう
なものは、今考えていませんし、考える必要がないと考えていま
す」と、否定的な見解を何度も繰り返した。
──2022年3月29日/日経ビジネスより
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3月30日の昼、首相官邸で、岸田首相と黒田日銀総裁が会談
をしています。会見後、黒田総裁は記者団に対して「為替は経済
情勢を反映し、安定的に推移することが望ましいと申し上げた」
と語っています。
外国為替市場では、この会見の様子が伝わると、一時「1ドル
=121円台」と前日の夕刻に比べて2円以上円高が進んでいま
す。政府・日銀が協調して円安対策を打つとの思惑から、円買い
が進んだものと思われます。「1ドル=124〜5円」が黒田ラ
インと呼ばれ、このラインを超えて戻らないと、何らかの手が打
たれる可能性はあります。
しかし、このところ日本はずっと円安です。最近の円安は、こ
こまで述べてきたことと無関係ではないのです。日本は、国力を
強くするための大事な投資──インフラ投資も、教育投資も、デ
ジタル投資も、その他の投資も、政府の借金が多いというトラウ
マにとらわれて、何もしてきていないのです。
国が行う投資だけではないのです。個人も投資しないのです。
元本を失いたくない、損をしたくないと思っているからです。リ
ーマンショックのときの日経平均株価は7162円です。それが
アベノミクスでは3万円を超えているのです。もし、そのとき、
日経平均株価に連動する投資信託を購入していたら、大きく資産
を増やせたはずです。
日本の家計金融資産構成比率は、「現金・預金」が54・3%
です。他国と比較すると、米国は13・3%、ユーロエリアでは
34・3%。日本の現金・預金保有率は、他国を大きく上回って
います。損したくないと考える人が、日本では、他の先進国と比
較して実に多いのです。
日本でビックマックを買うと390円です。これを2021年
当時の為替レート「1ドル=110円」で換算すると、3・55
ドルになります。ところが、米国のビックマックは5・65ドル
です。日本円にすると621・5円。つまり、日本のビックマッ
クは、米国の62・8%ということになります。
米国人が日本に来て、ビックマックを買うと、「なんて安いん
だ」と感じますし、日本人が米国でビックマックを買うと、「米
国は物価が高い」と感じるわけです。
ちなみに、ユーロ圏のビックマックは、ドル換算で5・02ド
ル、英国のビックマックは3・5ドル、韓国は4・0ドル。日本
は、韓国よりも安いのです。海外旅行をしたとき、米国など先進
国の国民は豊かな旅行を楽しむことができ、日本人は貧乏旅行し
かできないことになります。これに関して「ビックマック指数」
というものがあります。次の算式で計算します。
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ビックマック指数=「(ドル表示のその国のビックマック価
格)÷(米国のビックマック価格)−1」×100
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2022年2月5日時点のビックマック指数のベスト5を以下
に示します。日本は33位の390円です。
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価格(円) 価格(ドル)
1位: スイス 804円 6・98ドル
2位: ノルウェー 734円 6・39ドル
3位: アメリカ 669円 5・81ドル
4位:スウェーデン 667円 5・79ドル
5位:ウルグアイ 625円 5・43ドル
33位: 日本 390円 3・38ドル
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──[新しい資本主義/060]
≪画像および関連情報≫
●ひろゆきが断言、日本はどんどん安い国になって「アフリ
カ化」していく
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日本は安い国になりつつあります。これは事実。そしてお
金を持っている人にとっては、すごく快適な国です。ビジネ
スをするときには低い給料で人を雇えるし、オフィスでも住
宅でも家賃が安い。ご飯が安くておいしい。治安もいい。
この日本の「快適さ」の裏にあるのは、人のコストが安い
ということです。そしてなぜ安いかというと、非正規労働者
という立場の弱い働き手がいるから。
労働者はずっと雇ってもらえるという安心感がないと、雇
う側と対等に戦えない。「働けなくなったら怖い」なんて思
って、嫌でもサービス残業を受け入れてしまう。日本は最低
賃金が低いのに、サービス残業まで受け入れているから、実
際の時給に換算するとかなり低くなりますよね。
20代ならまだしも、30代や40代になって非正規で体
を壊しでもしたら「あ、俺もうアウトだわ」ってなる。お金
はなくて、自分の頭脳と肉体しか戦えるものがないという人
にとっては、日本はすごく厳しい国です。
フランスには派遣労働がなくて、人のコストが高い(注:
フランスにも派遣のような間接雇用の制度はあるが、厳しい
制限が設けられている)。だから企業は人間の代わりに機械
を使ってコストを下げようってなる。たとえばファストフー
ド店には大体、タッチパネル式の注文端末が導入されていて
人が注文を受けることがすごく少なくなっています。それが
日本だと今でも、「人のぬくもりが大事」なんて言って、人
を減らす方向にいかないじゃないですか。
https://bit.ly/3Lzyp3I
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ビックマック