2022年04月01日

●「現実を説明できない主流派経済学」(第5702号)

 2008年11月のことです。英国の女王エリザベス二世は、
著名な経済学の世界的権威たちに対し、リーマン・ショックの金
融危機に関して、次のように問いかけたそうです。しかし、みな
押し黙ったままであったといいます。
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 なぜ、誰も、このような危機が来ることを、わからなかったの
でしょうか。              ──エリザベス二世
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 エリザベス女王がいうように、権威あるエライ経済学者たちが
なぜ、金融危機を予測できなかったのか疑問です。私は、大学で
経済学を学びましたが、正直いって、何となく現実と乖離した学
問のように感じたものです。むしろ、トンデモといわれるMMT
の方が、現実を説明てきるように感じるのです。
 こんな話があります。ある理論経済学者が、「実際の日本経済
について講義してくれと言われて困ったことがある」と書いてい
るそうです。つまり、主流派経済学の理論では、現実のことを説
明できないようです。
 中野剛志氏は、権威ある経済学者たちが、金融危機を予測でき
なかった理由について、次のように述べています。
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 主流派経済学が「危機」を予測できなかったのは、むしろ当然
のことですよ。主流派経済学の理論モデルは、信用貨幣を想定し
ていないのだから、当然、信用創造を行う銀行制度も想定してい
ません。銀行の存在がきちんと想定されていない理論モデルが、
金融危機を予想できるわけがないじゃないですか。
 もっと言えば、そのような非現実的な経済理論が世界中の経済
政策に影響を及ぼしていたことこそが、金融危機を引き起こした
とすら言えるでしょう。そのことを指してクルーグマンらは、主
流派経済学の理論モデルを「有害無益」と批判したんです。(中
略)要するに、主流派の経済学者たちは、アダム・スミス以来、
200年以上にもわたって、貨幣についての正確な理解を欠いた
まま、物々交換経済の幻想を前提に、精緻を極めた理論体系を組
み上げてきたということです。そして、いまや主流派経済学のな
かからも、それに対する強い批判が生まれつつあるんです。
                 https://bit.ly/3wLmKLd
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 確かに、経済学では「信用創造モデル」というのは、出てこな
かったと記憶しています。信用創造モデルのことを知ったのは、
銀行論の本を読んだときで、非常に新鮮に感じて、信用創造モデ
ルについて、EJでひとつのテーマとして取り上げたことを覚え
ています。
 MMTに対する反対論には、やや感情的なものが多いですが、
「数学モデルがない」ことを指摘する人もいます。EJでもたび
たび取り上げている高橋洋一氏がそうです。
 高橋洋一氏は、リフレ派といわれる一派に属していますが、M
MTがよくわからないという理由について、次のようにコメント
しています。
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 リフレ派は今から20数年前に萌芽があるが、筆者らは世界の
経済学者であれば誰でも理解可能なように数式モデルを用意して
きた。興味があれば岩田規久男編『まずデフレをとめよ』(20
03年/日本経済新聞社)を読んでほしい。数式モデルは、@ワ
ルラス式、A統合政府、Bインフレ目標で構成されている。
 これらのモデル式から、どの程度金融政策と財政政策を発動す
るとインフレ率がどう変化するのかが、ある程度定量的にわかる
ようになっている。この定量関係は黒田日銀で採用されている。
 リフレ派は数式モデルで説明するので、アメリカの主流経済学
者からも批判されていないどころか、スティグリッツ、クルーグ
マン、バーナンキらからは概ね賛同されている。しかし、日本で
は、リフレ派の主張は、しばしばMMTの主張と混同される。筆
者からみると、MMTでは数式モデルがないので、どうして結論
が出てくるのかわからない。         ──高橋洋一氏
                  https://bit.ly/3iHBv9t
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 中野剛志氏によると、経済学は、狭隘な専門主義が進行してい
て、地政学はおろか、歴史学、政治学、社会学への接近すら拒否
しているという無残なありさまであると述べています。
 MMTに数学モデルが欠落していることに関して、『21世紀
の資本論』の著者、トマ・ピケティ氏は、同書で現在の経済学に
ついて、次のように批判しています。
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 率直に言わせてもらうと、経済学という学問分野は、まだ数学
だの、純粋理論的でしばしばきわめてイデオロギー偏向を伴った
憶測だのに対するガキっぽい情熱を克服できておらず、そのため
に歴史研究やほかの社会科学との共同作業が犠牲になっている。
経済学者たちはあまりにもしばしば、自分たちの内輪でしか興味
を持たれないような、どうでもいい数学問題にばかり没頭してい
る。この数学への偏執狂ぶりは、科学っぽく見せるにはお手軽な
方法だが、それをいいことに、私たちの住む世界が投げかけるは
るかに複雑な問題には答えずにすませているのだ。
    ──トマ・ピケティ著/山形浩生/守岡桜/森本正史訳
             『21世紀の資本論』/みすず書房
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 ウクライナ紛争を見ていて、わかったことがあります。それは
もし、中国が尖閣諸島を獲りにきたとき、米国は直接介入してこ
ないと思われることです。それは、今回と同様に第3次世界大戦
になるのを恐れるからです。したがって、日本は「自分の国は自
分で守る」ためにいろいろなことをやるべきです。そのためには
応分の財政出動は不可欠です。日本はもっとMMTを研究すべき
です。           ──[新しい資本主義/059]

≪画像および関連情報≫
 ●中国が「台湾侵攻」「尖閣侵奪」すればアメリカはどう動く
  沖縄に中国兵が上陸する可能性も/デイリー新潮
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   米国のバイデン大統領はこれまでも、現地への派兵を否定
  してきた。核保有国である英仏を含むNATOもまた、直接
  的な軍事行動は控えている。この状況にほくそ笑んでいるの
  が、中国の習近平国家主席。そのまなざしの先には台湾、そ
  して尖閣諸島が見据えられている。
   中西輝政・京都大学名誉教授(国際政治学)が言う。「米
  インド太平洋軍の司令官(当時)は昨年3月、米国議会の公
  聴会で“今後6年以内に(中国の台湾への)脅威が顕在化す
  る”と明言しています。習近平の3期目の任期が27年末に
  終わる前に、台湾奪取という成果を上げるのでは、と警戒さ
  れているのです。また、中国の軍備増強のペースが極めて速
  いというのも懸念材料とされています」
   河野克俊・前統合幕僚長も、中国の現実的な脅威について
  次のように語る。「中国はこの30年間で軍事費を42倍と
  驚異的に伸ばしています。米海軍が保有する艦隊の数は、約
  290隻であるのに対し、中国海軍は350隻と上回ってい
  ます。また、昨年11月に公表された米国の報告書では、中
  国が核戦力の増強を進め、強化をしているとありました」
   当然、彼の国が台湾へ軍事行動を起こせば、日本もただで
  は済まないという。「台湾と110キロしか離れていない尖
  閣が、巻き込まれないわけがありません。台湾有事は日本有
  事です」(同)さらに、元外務省国際法局長で同志社大学の
  兼原信克特別客員教授は、尖閣諸島に限らないと警鐘を鳴ら
  す。「石垣などの各島には陸上自衛隊の基地があり、米国と
  同盟関係にある日本の基地を無力化したい中国に攻撃される
  恐れがあります。最悪の場合、中国兵が上陸してくることも
  想定しなくてはなりません」  https://bit.ly/3DmN0Nq
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トマ・ピケティ.jpg
トマ・ピケティ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする