2022年03月31日

●「なぜ防災関連公共投資を減らすか」(第5701号)

 日本の国債残高の対GDP比が256・2%であることは事実
です。それは、第2次世界大戦後の状況を上回る他のどの先進国
よりも劣悪な状況にあります。しかし、それは第2次世界大戦後
の政治の責任であり、その間のほとんどの政権を担ってきた自民
党に責任があります。つまり、自民党の財政政策が失敗したとい
うことです。もちろんその財政を預かる財務省にも重大な責任が
あります。
 しかし、今般の未曽有のコロナ禍において、少しでも政府が財
政出動をしようとすると、それを財務省は自身の責任を棚に上げ
て、バラマキといって非難し、このままでは日本は氷山に衝突し
てしまうぞと国民に脅しをかけています。
 米スティグリッツコロンビア大学教授は、そんなに財政赤字が
気になるなら、日本政府の財政赤字を「永久債と長期債で債務を
再構築したらどうか」と提案しているのです。しかし、財務省と
日本の主流派経済学者は、その提案を無視し、あくまでプライマ
リーバランスを黒字化しようとしています。聞く耳をもたないと
はまさにこのことです。
 それでは、日本はこれまでどの程度財政出動してきたのかにつ
いて考えてみることにします。メディアがほとんど報道しない事
実です。
 日本の国土の面積は全世界のたったの0・28%です。しかし
全世界で起こったマグニチュード6以上の地震の20・5%が、
その狭い日本で起こっているのです。それに台風などによる水害
などは毎年頻発し、大きな被害が出ています。
 しかし、日本政府は、この20年間、そのような災害対策の予
算を増やしてきたのかというと、そうではないのです。添付ファ
イルに2つのグラフがありますが、上のグラフは、米国、英国、
日本の治水関連予算の推移を表しています。これは、1996年
を100とした場合のグラフですが、米英に比べると、日本は一
貫して下がっています。つまり、日本は必要なことにも財政支出
を制限し、減らしているのです。なぜ日本はここまで財政支出を
絞るのでしょうか。これでは、日本はいつまで経ってもデフレか
ら脱却できないことは確かです。デフレの恐ろしさが、まるでわ
かっていないようです。
 まして今後30年以内の発生確率が70〜80%とされる南海
トラフ地震が、日本経済に与える被害総額は、20年間で最悪の
1410兆円になるといわれています。それなのに、日本政府は
治水関連予算を一貫して下げているのです。長年にわたる財務省
のプロパガンダが政府に効いているのでしょうか。
 コロナ禍においても同じことがいえます。国立感染症研究所の
研究者は、2013年の312人から現在は294人。米国と比
較すると、人員は42分の1、予算は1077の分の1しかない
のです。それに加えて保健所は、1992年には全国に852カ
所あったのですが、2019年には472カ所に減っています。
45%の減少です。その結果、多くの人がコロナで肺炎にかかり
病院に入院できず、自宅で亡くなっています。
 土居丈朗氏という財務省出身の経済学者がいます。土居氏はこ
とのほか、財政再建に熱心で、日本の医療費を減らすために、病
床数を減らすべしとウェブサイトで力説していましたが、そのサ
イトは現在では閉じられています。そしてコロナ禍が収束してい
ない2021年11月に、現職の財務事務次官が、一般誌に「バ
ラマキをやめよ」という論文を出しています。これらの学者は、
偏見を持たず、ぜひ基礎からMMTを勉強をしていただきたいと
思います。
 添付ファイルの下のグラフをご覧ください。これは、2005
〜2015年の日本の分野別論文数の国際比較です。青が日本で
橙色が日本以外の国です。目を覆いたくなるほどの結果です。プ
ラスは、医学、数学、天文学のみで、後はすべてマイナスという
ことになります。このグラフについて、中野剛志氏は、次のよう
にコメントしています。
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 このグラフは、2005年以降のデータですが、国公立大学の
独立行政法人化が始まったのは2004年のことです。運営費交
付金を毎年1%ずつ減らすなど財政健全化に努めたほか、大学を
さんざんいじくり回した結果が、これなんです。
 国富・国力の源泉である学術すらもボロボロになっているわけ
です。近年、日本人がノーベル賞を取ったと喜んでいますが、す
べて過去の成果ですから、これからはもう日本の学術は、ダメに
なってしまうのではないでしょうか。     ──中野剛志氏
                  https://bit.ly/3iGVjdq
─────────────────────────────
 なぜ、それほど、財政赤字が恐いのでしょうか。
 防災分野の公共投資やコロナ禍のような災害に起きれば、たと
え財政が危機的状況にあっても、思い切った手を打つはずです。
なぜなら、それが国家の存亡や生命財産にかかわることであり、
優先して取り組むのが政府の役割だからです。
 しかるに、東日本大震災でも、安倍政権でも、日本は真逆の増
税をやっています。しかも、消費税の税率を倍増させているので
す。中野剛志氏は、こういっています。
─────────────────────────────
 例えば、戦争中に敵から攻められて、自分の国を守るために軍
艦をつくる必要があるけれど、「財政危機が心配だから、戦時国
債を発行しません」という国がありますか?財政健全化のために
は占領されたほうがマシだという判断は普通はないですよ。
                      ──中野剛志氏
─────────────────────────────
 ウクライナの問題において、日本のテレビ局のキャスターのな
かには、「ウクライナのゼレンスキー大統領は、降伏して国民の
命を救うべきだ」と平然という人がいるのです。日本人も落ちた
ものだと思います。     ──[新しい資本主義/058]

≪画像および関連情報≫
 ●病床・保健所を削減しまくってきた理由と今後のあり方
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   新型コロナウイルス感染症の再拡大が懸念されるなか、昨
  年まで進められてきた「病床削減」方針を見直そうという動
  きが出てきました。すでに削減されてきた保健所や感染症病
  床のあり方も問われています。もっとも一連の削減にも理は
  あったのです。増大する一方の医療費をどうするかという問
  いに新型ウイルスが示した「伝染病の脅威は去っていない」
  という警告を加えて我々はどうすべきでしょうか
   日本の病床数が多い理由として常にあげられるのが「社会
  的入院」と重症者用のベッドを軽症者が入院しているケース
  などです。社会的入院は本当は自宅で暮らせる程度の傷病者
  が病院に入っている状態。一人暮らし世帯が増加して在宅だ
  と面倒をみてくれる人がいないとか、公的医療制度のおかげ
  で自己負担分が小さくて済むといからといった理由が考えら
  れます。            https://bit.ly/3LjQB1h
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防災分野/教育分野への公共投資.jpg
防災分野/教育分野への公共投資


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする