フの攻撃が激しさを増していますが、ウクライナ軍は、当初の想
定よりも、ロシア軍の猛攻を受け止めています。
ウクライナ軍の善戦を支えているのが「IT軍」の存在です。
「IT軍」とは何でしょうか。14日のWBS(テレビ東京)で
は、IT軍の指揮を執る、ウクライナデジタル庁のボルニャコフ
副大臣(40)のインタビュー映像を伝えています。
これによると、ボルニャコフ副大臣は、ロシア軍がウクライナ
に侵攻してきた2月24日にIT軍を創設。現在、ある比較的安
全な場所において、IT軍全体の指揮を執っているそうです。I
T軍は、それぞれの場所において、IT軍の参加は登録制で、審
査がありますが、かなり多くのITエンジニアが応募していると
いわれています。
もともとウクライナは「東欧のシリコンバレー」といわれ、約
30万人のITエンジニアがおり、近年は海外企業の格好の開発
委託先となっているのです。これらのスタートアップ企業のエン
ジニアが、アプリ開発などの技術を使い、それぞれの得意の分野
で、ロシアに抵抗運動を実施しているのです。今やデジタル戦争
の時代です。
さすがのプーチン大統領は、ウクライナの予想外の抵抗には手
を焼いています。今の状態では、首都キエフは、とても落ちそう
にありません。また、ロシア軍の戦死者も増えており、ロシア国
内でのデモは、どんなに罰則を厳しくしても、今後ロシア各地で
続発すると思われます。ロシアは、当初失脚させるつもりであっ
た現在のゼレンスキー政権の存続を認めて、停戦を交渉するしか
手はなさそうです。
話を「新しい資本主義」のテーマに戻します。「プライマリー
バランスの黒字化」ということがよくいわれます。プライマリー
バランスというのは、国や地方自治体などの基礎的財政収支のこ
とです。簡単にいうと、「収入と支出のバランス」の話です。社
会保障や公共事業に代表されるような行政が行うサービスにかか
る経費を、消費税などの税収で賄えているかどうかを示していま
す。要するに「収入の範囲内で支出をしなさい」という話です。
つまり、これも国家の運営を家計の収支に例えており、財務省の
間違った考え方です。
このプライマリーバランスについての中野剛志氏と記者のやり
とりをご覧ください。
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中野:プライマリー・バランスとは、税収・税外収入と、国債費
(国債の元本返済や利子の支払いに充てられる費用)を除く歳
出との収支のことです。つまり、プライマリ ー・バランスは
その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でど
れだけまかなえているかを示す指標ということです。
──プライマリーバランスを黒字化するということは、何を意味
しますか。
中野:このプライマリー・バランスを黒字化するということは、
歳出を切り詰め、税収を増やすことを意味します。ところが、
歳出によって民間への貨幣供給が増え、徴税によって民間に流
通する貨幣量が減るわけですから、プライマリー・バランスの
黒字化に成功して、税収が歳出を上回るようになるということ
は民間に流通する貨幣量が毎年減っていくということにほかな
りません。
――つまり、デフレがもっとひどくなるわけですね。しかも、プ
ライマリー・バランスの黒字化によって、毎年、民間に流通る
貨幣量が減るということは、極端に言えば、これをずっと続け
ると、いずれ民間に流通する貨幣はなくなってしまうことにな
りますね?
中野:そういうことです。プライマリー・バランスの黒字化とは
国民を貧困化させることにほかならないのです。20年以上も
デフレで苦しみ続けたうえに、コロナショックに見舞われた日
本で、プライマリー・バランスの黒字化をめざすのは“自殺行
為”に近いわけです。
――“自殺行為”ですか・・・。 https://bit.ly/3IkpsJA
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ところで、岸田政権は、プライマリーバランスについてどのよ
うに考えているのでしょうか。
岸田首相は、2022年1月14日、政府の経済財政諮問会議
で、プライマリーバランス(PB)について、次のように答えて
います。そのことを伝えるロイターの記事を以下に示します。
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[東京/14日/ロイター]岸田文雄首相は14日、国と地方の
基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を2025年度
に黒字化するという政府の目標について、現時点において変更が
求められる状況ではないと述べ、目標を堅持する姿勢を示した。
https://bit.ly/3qbRHnE
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内閣府は、年初と夏の年2回、今後10年程度のPBの推移な
どを含む経済財政見通しを経済財政諮問会議に提出しています。
実質2%・名目3%を上回る高成長を前提とする「成長実現ケー
ス」と、実質1%・名目1%台前半程度での推移が前提の「ベー
スラインケース」の2つのケースの試算ですが、成長率の実現が
非常に難しく実現の可能性は低いです。しかし、岸田政権は「や
る」といっているのです。
ノーベル経済学賞を受賞したクリストファー・シムズ教授とい
う人がいます。シムズ教授は、2017年2月の来日講演におい
て、自身の「物価水準の財政理論」に基づいて、「将来不安によ
り支出が萎縮している日本で必要なのは、継続的な財政拡大とイ
ンフレ実現への政治的コミットである。基礎的財政収支(プライ
マリーバランス:PB)黒字化に固執するとデフレから脱却でき
ない」と述べています。 ──[新しい資本主義/第050]
≪画像および関連情報≫
●高市氏、PB黒字化目標「凍結に近い状況に」/財務次官の
指摘を批判
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次期衆院選(2021年10月19日公示31日投開票)
を目前に控え、各党の政策責任者らが10日、NHKの討論
番組に出演した。自民党の高市早苗政調会長は、基礎的財政
収支(プライマリーバランス)を黒字化するという政府の財
政再建目標は「凍結に近い状況が出てくる」と述べた。
高市氏は、岸田文雄首相が国家的な課題に取り組むため、
「財政の単年度主義の弊害是正」を掲げていることを踏まえ
「長期的なスパンで取り組むべきことがあるということで、
これは実質上、一時的にこのプライマリーバランスについて
は凍結に近い状況が出てくる」と述べた。
また、財務省の矢野康治次官が今月8日発売の月刊誌「文
芸春秋」に寄稿し、衆院選や、自民党総裁選での政策論争を
「バラマキ合戦」と懸念を示したことについて、高市氏は、
「大変失礼な言い方だ」と批判した。そのうえで「基礎的な
財政収支にこだわって本当に困っている方を助けない。未来
を担う子供たちに投資しない。これほどバカげた話はない」
と述べた。矢野氏の寄稿をめぐっては、岸田首相は10日の
フジテレビの番組で「いろんな意見が出てくる。これは当然
あっていいと思う」と述べ、「いったん方向が決まったなら
ば、関係者には、しっかりと協力してもらわなければならな
い」と語った。 https://bit.ly/3KTOHnI
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クリストファ・シムズ教授