2022年03月11日

●「なぜデフレから脱却できないのか」(第5688号)

 ウクライナ問題でこういう情報があります。8日時点で入って
きた情報ですが、ウクライナのゼレンスキー大統領が依然として
ネットを使って国民を励ます演説を続けられているには、それを
支える優秀なスタッフがいるからです。ミハイロ・フェドロフデ
ジタル相(副首相)です。つねに大統領のそばにいて、大統領を
支えている31歳の大臣です。
 ミハイロ・フェドロフデジタル相は、ロシアの攻撃によって、
インターネットが使えなくなることを恐れて、米電気自動車大手
テスラのイーロン・マスクCEOと連絡を取り、衛星を介したイ
ンターネットサービスを維持する方法について、マスクCEOの
アドバイスを受けてそれを実施しています。昨年はじめてデジタ
ル庁を作り、何をしているのかわからないどこかの国のデジタル
大臣とは大変な違いです。
 さて、既に述べているように、政府の発行する国債は民間金融
機関が引き受けます。そのとき、日本の中央銀行である日本銀行
は何をしているのでしょうか。
 日銀が政府から直接国債を買うこともあります。いわゆる日銀
による国債引き受け──財政ファイナンスといいます。しかし、
これは財政法第5条によって、原則的に禁止されています。しか
し、限定的ではあるものの、毎年行われています。
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【第5条】すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引
き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを
借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、
国会の議決を経た金額の範囲内ではこの限りでない。
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 それでは、日銀は何をしているのかというと、必要に応じて、
民間金融機関の持っている国債を時価で買い上げています。この
国債の売買は、日銀が金融緩和政策の一環として行う「買いオペ
レーション」と呼ばれています。
 日銀が民間金融機関が保有している国債を買う場合、その代金
は、民間金融機関の持っている日銀当座預金に振り込まれること
になります。この日銀当座預金には原則として利息はつかないこ
とになっています。
 したがって、銀行としては、日銀当座預金としてストックして
おいてもお金は増えないので、それを引き出して企業や個人に貸
し付けようとします。つまり、利子のつくお金に変えようとしま
す。これによって、金利が下がり、世の中に出回るお金が増える
ことになります。
 この世の中に出回るお金と物の量のバランスによって、物価が
決まります。よりお金の量が物の量を上回ると、インフレになり
ますし、デフレの状況下では景気が良くなる可能性があります。
これを「アベノミクス」という政策として実行したのは、安倍政
権であり、「リフレ政策」ともいわれています。
 リフレ政策というのは、インフレにならない程度の水準まで物
価を引き上げるために、金融政策や財政政策を実施することをい
います。世の中に出回る資金の量を増やすなどの方法で、人々が
予想する将来の物価水準を示す期待インフレ率を押し上げること
によって、デフレから脱却しようとする政策です。
 このリフレ政策について、中野剛志氏と記者は、次のやり取り
をしています。
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中野:ええ。主流派経済学の何が痛いかというと、「貸出が預金
 を生む」という事実を知らないことなんです。ついでに言って
 おくとですね、「デフレ脱却のため」という触れ込みで、主流
 派経済学者が主張して実行された、いわゆる「リフレ政策」が
 ほとんど効果がないのも当たり前のことなんです。
――そうなんですか?
中野:もちろんです。「リフレ政策」とは、日銀は「インフレ率
 を2%にする」という目標(インフレ・ターゲット)を掲げ、
 その目標を達成するべく、大規模な量的緩和(マネタリー・ベ
 ースの増加)を行うというものです。
  マネタリー・ベースとは、銀行が日銀に開設した「日銀当座
 預金」のことです。銀行が保有している国債や株式を、日銀が
 “爆買い”して、その対価として「日銀当座預金」を爆発的に
 増やせば、銀行は積極的に企業などに貸し付けることで、市中
 の通貨供給量(現金と預金通貨)を増やすことができると考え
 たわけです。(中略)
  ところが、いまはデフレなので借り手がいないわけです。だ
 から、いくら「日銀当座預金」を積み上げても、貨幣供給量は
 増えません。実際、量的緩和で400兆円くらい日銀当座預金
 を増やしたはずですけど、ただ“ブタ積み”されているだけで
 インフレ率は2%には遠く及ばないですよね?
――つまり、「信用創造」を理解していないから、誤った政策を
 実施してしまったと?
中野:そうですね。信用貨幣論と信用創造を理解している人は、
 量的緩和をやる前からこの結末はわかっていました。だけど、
 2001年から2006年まで量的緩和が実施され、さらに、
 2012年に成立した第2次安倍政権のもとで、さらに“異次
 元”の量的緩和が実行されてしまったわけです。
――なんだか、ガックリくるお話ですね・・・。
                  https://bit.ly/3KmOvgI
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 2013年6月からスタートした安倍政権によるアベノミクス
は、当初劇的に株価を上昇させるなど、順調でしたが、それは、
第1の矢の「大胆な金融政策」と、第2の矢である「機動的な財
政政策」が効いたからです。だから、消費税の増税などしないで
財政政策をもっと積極的に実施していたら、もしかすると、デフ
レから脱却できたかもしれないのです。
             ──[新しい資本主義/第045]

≪画像および関連情報≫
 ●失敗か成功か、8年弱のアベノミクスで得た教訓
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   アベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、投
  資を喚起する成長戦略という「3本の矢」で構成された。日
  本銀行による国債の大規模購入など異次元の金融緩和政策、
  防災・減災・国土強靱化の公共事業支出が、その中心を担っ
  た。もうひとつの基本的メッセージは、「経済成長なくして
  財政再建なし」だ。公的債務残高約1100兆円(GDP<
  国内総生産>比約2倍)と先進国で突出した最悪水準にある
  財政について、経済成長にともなう税収増を重視して、増税
  などの負担増は極力避ける姿勢をとった。
   安倍首相在任中に2度の消費増税が実施されたが、これは
  第2次安倍政権より前の野田佳彦・旧民主党政権が自民・公
  明との3党合意で決めたものだ。安倍首相自身は終始、増税
  には消極的なスタンスであり、「経済成長を実現すれば、税
  収増を通じて財政健全化の課題は解決する」という論法で一
  貫していた。
   このようなアベノミクスについて、当初描いた将来想定と
  実際の帰結では、どんな相違があっただろうか。それを具体
  的に検証するには、第2次安倍政権が発足当初に、アベノミ
  クスの成果を前提として策定した「中長期の経済財政に関す
  る試算」(2013年8月8日公表)を見てみるといい。こ
  こでの将来推計値と実績値を比較してみよう。まずは、経済
  成長だ。            https://bit.ly/3hK4SHY
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ミハイロ・フェドロフデジタル相.jpg
ミハイロ・フェドロフデジタル相


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(3) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする