2022年03月01日

●「国債発行して公共事業を実施する」(第5680号)

 政府が1億円の国債を発行し、公共事業を実施するケースにつ
いて考えてみます。前提知識ですが、市中銀行は、日本銀行に対
して当座預金口座を持っており、政府も日銀当座預金口座を有し
ています。この日銀口座預金口座が重要な役割をします。
 まず、第1段階として、この発行される国債を市中銀行が引き
受ける場合、市中銀行が開設している日銀当座預金が1億円減り
政府が開設する日銀当座預金にその1億円が振り替えられます。
なお、この取引プロセスは、民間の預金とは無関係です。
 第2段階として政府は、公共事業の発注企業に1億円の小切手
を交付します。政府発行の小切手を受け取った企業は、自分の取
引銀行に持ち込み、代金の取り立てを依頼します。それと同時に
その銀行は、1億円を企業の口座に記帳します。キーストローク
マネーです。この瞬間に1億円という新たな民間預金が誕生した
ことになります。つまり、政府が国債を発行して借金を増やすと
それと同額の民間預金が創造されるのです。
 第3段階として、銀行から取り立てを依頼された日銀は、政府
の日銀当座預金から、銀行の日銀当座預金へ、1億円を振り替え
ます。この1億円は、さきほど銀行が国債を購入したときに、振
り替えられたものです。
 これに関する記者と中野剛志氏とのやり取りは、次のように展
開されています。
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中野:つまり、銀行の日銀当座預金から政府の日銀当座預金に振
 り替えられた1億円が、再び銀行の日銀当座預金に戻ってくる
 わけです。赤字財政支出をしても日銀当座預金に変化は生じな
 いわけですから、国債金利も、一切変化しないということにな
 ります。
――あれ?ということは、銀行の日銀当座預金に戻ってきた1億
 円で、再び1億円の新規国債を購入できるということですか?
中野:そのとおりです。このオペレーションは無限に繰り返すこ
 とができるのです。しかも、このオペレーションを回す度に、
 国債発行額と同額の民間預金が増えていくわけです。つまり、
 国債の発行によって民間の金融資産を吸い上げているのではな
 く、財政赤字の拡大によって、民間で流通する貨幣量を増やし
 ているということです。
――これもまた、魔法のような話ですね・・・。
中野:そうですね。ただし、これは、MMTのオピニオンではな
 く、国債発行の実務を説明しているだけの話です。単なる「事
 実」なんです。だから、財務省や主流派の経済学が主張してい
 る「財政赤字の増大によって民間資金が不足し、金利が上昇す
 る」などという現象など起きるわけがない。ましてや、「国債
 を消化できなくなる」などということなどありえないんです。
 そのような誤った主張をするのは、単に「事実誤認」をしてい
 るからというだけのことです。   https://bit.ly/3M67SfF
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 ここで、2月10日のEJ第5669号での小林慶一郎氏と中
野剛志氏の議論を思い出していただく必要があります。議論を再
現します。
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小林:矢野論文の背景にあるのは、「将来世代にツケを残しては
 いけない」ということだと思うんです。国債は将来世代からの
 前借りで、いずれその金は返さなきゃいけない。これまでのよ
 うに日銀が買い支えられるうちはいいけど、もし将来において
 例えば制御できないようなインフレが起きたら、将来世代への
 大きな負担を残すことになる。それは避けたいという矢野さん
 の思いは否定すべきではないでしょう。
中野:違います。国債は将来の増税で償還しなきゃいけないと思
 い込んでいるから「将来世代へのツケ」だと誤解するのです。
 国債の償還は、増税ではなく借換債の発行によって行うべきで
 す。それから、私は制御できないインフレは基本的に「起きな
 い」と考えています。
小林:国債の償還を借換債で出来るなら、国家運営に税は不要と
 いう話になり、まったく同意できません。これは後ほど議論し
 ましょう。
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 国債の利払いと償還の問題です。小林氏は、国債の残高を積み
上げていくと、将来制御不能なインフレが起きる恐れがあり、そ
れは将来世代に大きなツケを回すことを意味する──こういって
います。この点において、小林慶一郎氏と中野剛志氏の意見は大
きく異なります。しかし、小林氏は、これについての議論を避け
ているように感じます。肝心なことが議論されていません。これ
についての中野氏の見解は次の通りです。
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 よく聞く話ですが、それも誤りです。「国債の償還財源は将来
世代の税金でまかなわれなければならない」という間違った発想
をしているから、そういう話になるんです。だって、自国通貨を
発行できる政府は永遠にデフォルトしないのだから、債務を完全
に返済し切る必要などありませんからね。つまり、国債の償還の
財源は税である必要はなく、国債の償還期限がきたら、新規に国
債を発行して、それで同額の国債の償還を行う「借り換え」を永
久に続ければいいのです。実際、それは先進国が普通にやってい
ることです。だから、英米仏などほとんどの先進国において、国
家予算に計上する国債費は利払い費のみで、償還費を含めていま
せん。ところが、なぜか日本は償還費も計上しているんですけど
ね・・・。             https://bit.ly/3vnrJ3W
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 国債の利払い、償還財源について、基礎を知る必要がありそう
です。借換債とは何なのでしょうか。これについては明日のEJ
で研究してみたいと考えています。
             ──[新しい資本主義/第037]

≪画像および関連情報≫
 ●「間違いだらけの財政説明」/大石久和氏
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   番組アシスタントの新保友映です!
   前回に続いて、今回も経済のお話です。「日本の借金は本
  当に1000兆円あるのか」「公共事業費は社会保障費を圧
  迫しているのか」、このあたりのことを大石久和さんに伺っ
  てみました。
  新保:「借金1000兆円」とよく耳にしますが、この言い
  方は正しくないんですか?「今年の予算要求の見込みでいう
  と、国債と借入金を合わせると1250兆円ですから「10
  00兆円の借金」という表現は正しくないとしても、国債や
  借入金があることは間違いないんです。ただその中身を見る
  と借金とは決して言えないし、きちっと説明もされていませ
  ん」(大石)          https://bit.ly/3BZfzQk
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 ●図出典/https://bit.ly/3vniukv
国債発行が通貨供給量を増やす.jpg
国債発行が通貨供給量を増やす
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする