OK! Cozy up!」に、数量政策学者の高橋洋一氏が出演し、内閣府
が発表した需給ギャップについて話しているので、その部分を取
り上げます。
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飯田:需給ギャップは、内閣府の推計だと「22兆円」と書いて
ありますけれど。
高橋:あれは蹴上げが入っているのです。いちばん上のところを
少し低めに見積もっているのですよ。内閣府の推計だと、失業
が多いところを見ているわけです。簡単に言うと、前は550
兆くらいあったけれど、「いまはそれより30兆くらい低いで
しょう」という言い方の方が簡単なわけです。
飯田:要するに、100%の実力を出したら稼げるGDPの額を
低く見積もれば、その差は縮まると。
高橋:それは需給ギャップが小さく見えますよ。だから逆に言う
と、需給ギャップが埋まっていても、物価が上がらないという
状況になるわけです。
飯田:その推計値通りに需給ギャップが埋まっても。
高橋:だから実績値が、内閣府の推計値を上回れば普通、物価が
上がるはずなのに、上がらないのです。
飯田:なるほど。
高橋:すぐに「これは想定しているところが低過ぎる」とわかり
ますよ。私はそれを補正して計算しました。そうすると35兆
円くらいになるのです。
飯田:なるほど。確かにコロナ前の景気がいいときは、550兆
くらい日本は稼げていたと。
https://bit.ly/3IFnPaa
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高橋洋一氏の言葉には若干解説が必要です。「蹴上げ」とは何
でしょうか。
「蹴上げ」とは、階段の一段の高さのことです。建築基準法で
は住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く)の蹴上げは23セ
ンチ以下と決められている。足が乗る平らな部分を「踏み面」、
階段の垂直になった部分を「蹴込み」といいます。何をいいたい
のかというと、内閣府の推計は、下限となる失業率を高めに見て
いるので、潜在GDPが低めに出ます。失業率が高いところを基
準にすると、総労働力が低くなるので、供給力は低くなり、潜在
GDPは低くなります。
この対談でも高橋氏はいっていますが、高橋氏の計算によると
日本の需給ギャップは年換算で約35兆円です。2021年第三
四半期(7〜9月)は、第二四半期よりも拡大しており、年換算
で45兆円ぐらいになると高橋氏はいっています。
そうであるとすると、22兆円程度の新規国債発行ではぜんぜ
ん足りないのです。需給ギャップは必ず全部埋めるというのが大
原則です。いずれにしても、岸田政権の経済政策は、あまりにも
「ショボい」の一言に尽きると高橋氏はいっています。要するに
経済というものがよくわかっていないというのです。
岸田政権にはもうひとつ大きな懸念があります。それは、必ず
増税を仕掛けるといわれていることです。内閣発足時に「聞く耳
を持っている」という首相に対し、ネットにおいて、次のような
失礼な質問をした人がいます。
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岸田さんは「『財務省のイヌ』、『財務省のポチ』といわれ
ているそうですが・・・」
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非常に失礼きわまる質問であり、普通であれば無視するでしょ
うが、岸田首相は次のようにていねいに答えています。
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先日の配信でお答えしましたが、正直言って、なんでだろうか
なと(苦笑)私は自民党政調会長時代、去年の前半だけで100
兆円を超える経済対策を実施し、財務省の反対を押しきって10
兆円の予備費も確保しました。今後も新型コロナ対策や成長戦略
実現のために、大胆な財政出動を続けてまいります。
──岸田文雄
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しかし、岸田政権は、参院選を乗り切ったら、増税を考えてい
るといわれます。岸田首相は、既に布石を打っています。自民党
総裁選で勝利し、第1次岸田内閣が発足した2021年10月4
日の翌日、岸田総裁は、自民党の税制調査会長に宮沢洋一氏を決
めています。宮沢洋一氏は、自らの従兄弟で、宮沢喜一元首相を
伯父に持つ人物で、広島県選挙区を守っています。この人はゴリ
ゴリの財務畑の出身です。
この宮沢税制調査会長は、昨年の11月19日に時事通信のイ
ンタビューにおいて、既に増税をブチ上げています。
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自民党の宮沢洋一税制調査会長は、11月19日、党本部で時
事通信などのインタビューに応じた。2022年度改正に関し、
企業による持続的な賃上げを促すための税制の実現に改めて意欲
を示した。また、将来的な課題として、高齢化で膨らむ社会保障
支出を賄うための消費税増税について、「かなり有力な選択肢と
して議論されることは間違いない」との見方を明らかにした。
https://bit.ly/3KYMJTZ
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「失われた30年」といわれる日本の長期デフレは、財務省に
大きな責任があります。EJではそのことを何回も検証していま
す。しかし、彼らは何も反省していません。安倍前首相は、消費
税を10%までに上げたとき、あと10年は消費税率はいじらな
いといっています。ところが、あれからまだ2年しかたっていな
いのに、増税を口にしています。彼の頭のなかは、きっと増税し
かないのでしょう。 ──[新しい資本主義/第019]
≪画像および関連情報≫
●首相と税調会長のはざま
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1997年、橋本龍太郎首相が行財政改革を進めていると
きのことだ。橋本政権で進める改革にアドバイスをもらうた
め、官僚が竹下登元首相を訪ねると「中曽根財政、竹下税制
という言葉があったんだ」とにこやかに語ったという。
竹下氏は大平正芳政権、その後の中曽根康弘政権で蔵相を
務めている。この時、話を聞いた元官僚は「中曽根政権の蔵
相時代を含め「あの頃の税財政はすべて自分が仕切った」と
いう自負を感じた」と振り返る。
「竹下税制」と誇ったのは89年に首相として消費税を導
入したからだ。竹下氏はよく「79年に財政再建の国会決議
をして10年かけて89年の消費税に持っていった」と口に
した。79年には大平首相が導入を目指した一般消費税が頓
挫。すると与野党で「財政再建は一般消費税(仮称)によら
ず、まず行政改革、歳出合理化などを推進」と決議した。当
時蔵相だった竹下氏が幅広い与野党人脈を生かし、決議に持
ち込んだ。
決議は当初「消費税を導入させないため」とみられたが、
その後の中曽根政権は行革と歳出改革を実施した。竹下氏が
「中曽根財政」も高く評価したのは、79年決議で設定した
ハードルを、竹下氏が蔵相を務めた中曽根政権でクリアして
消費税を導入したからだ。https://s.nikkei.com/32ILW8B
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宮沢洋一税制調査会長