2022年01月28日

●「なぜトリガー条項を使わないのか」(第5660号)

 1月25日のことです。萩生田光一経済産業相は、閣議後の記
者会見で、ガソリンなどの燃料価格の抑制策を次のように表明し
ています。
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 石油元売りに補助金を支給し、販売価格の上昇に歯止めをかけ
る。金額は1リットル当たり3・4円で、27日にも補助適用後
の価格で購入できるようにする。 ──2022年1月25日付
                       日本経済新聞
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 この政府の対応は、1月24日時点のガソリン価格が全国平均
で170円を超える見通しであるので、出されたものです。ガソ
リン価格が上がっているのはわかっていたので、政府が価格を抑
えようとする政策をとるのは当然ですが、なぜ、石油元売りに対
して補助金を出すのでしょうか。
 いうまでもないことですが、ガソリン価格が上昇して困ってい
るのは、元売りだけでなく、消費者も困惑しています。そうであ
るのに、なぜ元売りに補助金を出すのでしょうか。元売りに補助
金を出しても、小売価格が下がる保証はないのです。これに対し
て、萩生田経産相は、実際に小売価格がどこまで下がるか注視し
たいといっています。全国のガソリンスタンドをリサーチして、
小売価格がどの程度下がるか調べるといっているのです。
 この補助金は、2021年度補正予算で燃料価格の急騰を抑え
る対策として、ガソリン価格が全国平均で、1リットル当たり、
170円を超えた分に対し、5円を上限として、元売りを補助す
る仕組みになっています。これには、軽油や重油、灯油も対象に
なっています。
 しかし、ガソリンというのは、約40%が税金なのです。そう
であるならば、その税金を時限的にでも下げれば、価格が下がる
ので、元売りも消費者も助かるのです。わざわざ補正予算を組ま
なくても対処できるのです。
 しかし、財務省は、隙さえあれば増税を狙っている役所ですが
減税だけは「絶対にやらない」ことに徹しています。彼らの頭の
辞書には、「増税」という言葉はあっても、「減税」という言葉
はないのです。これも日本が、30年も続いているデフレから脱
却できない原因の一つになっています。
 ところで、租税特別措置法第89条という法律の条文があるの
をご存知でしょうか。
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 ◎租税特別措置法第89条
  「揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の
  税率の特例規定の適用停止」
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 これは、「レギュラーガソリンの1リットルあたりの価格が3
か月連続で160円を上回った場合、翌月からガソリン税の旧暫
定税率25・1円の課税を一時的に停止する」というものです。
 今回のガソリンの価格高騰では、すでに発動要件を満たしてお
り、仮に発動されればレギュラーガソリンは1リットル140円
台になる計算です。つまり、ガソリン高騰時に、ガソリン価格の
減税を定めた法律なのです。なぜ、使わないのでしょうか。
 これは、旧民主党政権時代の2010年に導入されたもので、
「トリガー条項」といわれています。しかし、東日本大震災の復
興財源確保のために、一度も発動されないまま、法律は凍結され
ています。したがって、今回凍結を解除すれば、即座に減税を行
うことができるのです。旧民主党については、いろいろ批判は多
いですが、このように良い仕事もしているのです。
 当然のことながら、野党は今回凍結解除を求めましたが、岸田
政権は、こういうことは「聞く耳」を持たず、1月20日の国会
で、岸田首相は財務省の役人のメモを読んでいます。
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 買い控えやその反動による流通の混乱があることから、凍結解
除は適当でない。               ──岸田首相
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 岸田首相は「財務省のポチ」といわれるほど、財務省寄りの人
物であり、側近も財務省出身のスタッフが周りを固めています。
凍結を解除してトリガー条項を実施すると、年間3兆2000億
円程度あるガソリン税と軽油引取税の税収が減るため、絶対にや
らないのです。多くの国民は、このトリガー条項の存在をすっか
り忘れています。
 この点について、財務省の役人であった高橋洋一氏は、次のよ
うに述べています。
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 今回は石油の元売りと商社に補助金を出すということになって
います。1リットルのレギュラーの価格が170円を超えたら、
最大5円補助するとなっています。ただし、元売りや商社に補助
金を渡すと、そのまま懐に入れられてしまう可能性があります。
 ガソリン価格の値下げに使わないかもしれない。そうされても
文句は言えません。「価格は自由でしょ」って言われたらそれき
りです。さらに、補助金では最大5円しか下げられませんが、減
税なら20円でも下げることができます。だから、政策論として
はおかしい。ただ、これに官僚が絡めば別です。官僚は、減税と
補助金のどちらかを選べと言われたら、必ず補助金を選びます。
減税だと、ガソリンの特別会計の税収が減るため、それは嫌だと
なります。自分の裁量できる額が減ってしまうのが嫌なのです。
一方、補助金は官僚自らがつけられるからいいし、権限もある。
「ありがとうございます」と業者が頭を下げてくれます。減税だ
と、官僚に頭を下げる人はいません。     ──高橋洋一著
    『岸田政権の/新しい資本主義で無理心中させられる/
                   日本経済』/宝島社刊
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             ──[新しい資本主義/第017]

≪画像および関連情報≫
 ●ガソリン元売りに補助金、大ブーイングでも減税したくない
  政治のウラ
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   高騰するガソリン価格への対策として、政府が17日、石
  油元売り会社に補助金を出す形で小売り価格の上昇を抑える
  方針を打ち出したことにネット上で猛反発が出ている。こう
  した形での補助金は初めてというが、国民感情に与える波紋
  は小さくなさそうだ。政府の新しい対策はこの日夕方、萩生
  田経産相が発表した。萩生田氏は12日の時点で補正予算よ
  り機動性のある予備費の活用による対策を明言していたが、
  業界への補助金という形に結実した。
   他方、維新と国民がガソリン税を実質的に減税する「トリ
  ガー条項の凍結解除」を打ち出し、近く両党で法案を共同提
  出する方向が決めたばかりだったが、この日の発表前にも松
  野官房長官はトリガー条項の発動について、「ガソリンの買
  い控えや、その反動による流通の混乱や、国・地方の財政へ
  の多大な影響などの問題があることから凍結解除は適当でな
  い」などと考えを示していた。
   こうした政府の“塩対応”に対し、衆院選の最中から「ト
  リガー条項の凍結解除」を公約に掲げていた国民の玉木代表
  は、ツイッターで「元売りへの支援ではガソリンの購入価格
  が下がるかどうか分からない。しかも170円/1リットル
  を超えないと発動されないし下がっても最大5円/1リット
  ル」と政府案を問題視。「それより国民民主党が主張するト
  リガー条項の凍結解除なら160円/1リットルを超えれば
  25・1/1リットル下がるのでより効果的だ。全てが小出
  しで中途半端」と重ねて批判した。https://bit.ly/3rOao0U
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萩生田経産相.jpg
萩生田経産相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(1) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする