2022年01月27日

●「ジニ係数で格差は拡大していない」(第5659号)

 現代は「格差社会」といわれています。それを象徴するのは、
米国における次のような事実です。
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◎アメリカでは所得分布で上位1%にあたる人々が、全体の60
 %を占める中間層を上回る富を保有していることが、連邦準備
 制度理事会(FRB)の最新データで明らかになっている。
                  https://bit.ly/3Ar6Llg
◎コロナ禍のこの1年(2021年)、多くのアメリカ人が純資
 産を増加させている。なかでも、トップレベルの超富裕層が保
 有する資産の価値は急騰した。   https://bit.ly/3IzkuJw
◎ポリシー・スタディーズによると、富の集中は米国では特に加
 速しており、米国で最も裕福な3名、ジェフ・ベソス、ビル・
 ゲイツ、ウォーレン・バフェットの資産額の合計は、米国人の
 下位50%の資産額の合計を上回っているという。
                  https://bit.ly/3GXcnpO
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 これらの米国でみられる極端な所得格差の現状は、新自由主義
的政策がもたらすものとされていますが、日本の所得格差の現状
はどうなのでしょうか。
 「アベノミクスで格差は広がっている」──こういうことはよ
くいわれますが、果たして本当しょうか。ジニ係数を分析して検
証してみることにします。
 所得格差は「ジニ係数」によって知ることができます。ジニ係
数には次の2つがあります。
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          @ 当初所得ジニ係数
          A再分配所得ジニ係数
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 基本的考え方はこうです。完全な所得分配ができている場合を
「0」とし、1つの世帯が所得を独占している場合を「1」とし
ます。この「0」と「1」の間で、その所得格差の度合いを示す
のがジニ係数です。税金や社会保険料、公的年金などの社会保険
の給付金を含むかどうかの違いがあり、含むものが「当初所得ジ
ニ係数」、含まない実質所得の不平等を示すものが「再分配所得
ジニ係数」です。イタリアの統計学者、コラド・ジニにちなんで
「ジニ係数」と呼ばれています。
 添付ファイルに、1990年から2017年までの「当初所得
ジニ係数」(上)と「再分配所得ジニ係数」(中)の推移、20
17年における年齢階級別のジニ係数の改善度(下)を示してあ
ります。
 「上」のグラフの当初所得ジニ係数の推移を見ると、1999
年以降に上昇ペースが上がっていますが、2014年から201
7年にかけては低下に転じていることがわかります。
 1999年以降に上昇ベースが上がった時期の特徴としては、
世界的に経済のグローバル化が加速し、それに伴って生産拠点の
海外移転が急速に進んだことがあります。これにより、雇用機会
が海外に流出したことや、海外から安い製品が大量に輸入される
ようになったことが、それまでと異なる点です。事実、消費者物
価指数を時系列で見れば、当初所得ジニ係数が上昇している期間
に物価は下落しており、就業者数も減少傾向にあります。
 しかし、2014年から2017年にかけては、低下に転じて
います。これは、明らかにアベノミクスと関係があります。アベ
ノミクスによって、格差が拡大したのではなく、逆に改善してい
るのです。その背景には、次の2つがあります。
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 @アベノミクスの異次元金融緩和により、極端な円高・株安が
  是正され、生産拠点の海外移転に歯止めがかかった。
 A結果として、就業者数が500万人近く増加し、これによっ
  て、低所得層の所得が底上げされたことなどがある。
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 2015年以降の海外生産比率は頭打ちになっている一方で、
消費者物価指数も上昇に転じています。極端な円高・株安の是正
による名目経済規模の拡大、女性や高齢者を中心とした労働参加
率の上昇などが相まって、日本国民の稼ぐ力が誘発されたものと
考えられます。
 続いて、同じ時期の「中」のグラフの再分配所得ジニ係数の推
移を見てください。これは、再分配所得ジニ係数を時系列で示し
たものです。これによると、バブル崩壊以降の局面では、当初所
得ジニ係数は2014年まで上昇トレンドでしたが、再分配所得
ジニ係数は、2000年代後半以降、低下トレンドに転じている
ことがわかります。これによると、社会保険料・税金の支払いや
社会保障給付を加味すれば、むしろ所得格差は縮小していること
を意味しています。
 また「下」の年齢階級別にみると、高齢期ほど改善度が大きく
ジニ係数の改善には高齢化に伴う年金制度の成熟化などが影響し
ていると厚労省は指摘しています。そして何よりも、ジニ係数の
改善度を税と社会保障に分けると、社会保障による改善度が相対
的に大きく上昇しているのです。つまり、公的年金をはじめとす
る社会保障による再分配が効いており、当初所得ジニ係数の動き
のみで判断すると、所得格差が拡大しているとミスリードしてし
まうことになります。
 当初所得ジニ係数は、純粋に前年の所得を対象に計算して求め
られた数値です。しかし、実際に私たちが受け取る所得は、そこ
から社会保険料や税金が控除される一方で、年金や医療、介護な
どの社会保障給付が加えられるのです。
 したがって、実際の所得格差を示すのは、こうした再分配後の
所得格差(再分配所得ジニ係数)ということになります。これで
見る限りにおいて、日本の場合、格差はあまり広がらず、分配は
平等に改善されているのです。岸田内閣は、この事実を知ってい
るのでしょうか。     ──[新しい資本主義/第016]

≪画像および関連情報≫
 ●貧困層とお金持ち「アベノミクス恩恵」の大格差
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   菅義偉首相率いる菅政権が誕生した。この菅政権が継承す
  る安倍政権の総括がさまざまな角度からなされているが、ち
  ょっと変わった視点でこの7年8カ月を評価してみたい。
                  https://bit.ly/3tXCPvK
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ジニ係数で検証する日本の格差.jpg
ジニ係数で検証する日本の格差
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 新しい資本主義 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする