2021年11月29日

●「NFTというものが蠢動している」(第5622号)

 「クリプトキティ」──猫の売買のダップスの話の続きです。
猫の交配によって変種が生まれると高い値が付き、高く売れると
いう話です。これはいったい、どういう仕組みになっているので
しょうか。
 先週金曜日のEJでご紹介したクリプトキティの3つの重要な
特色を再現します。
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     1.ダップスの先駆的な存在であること
     2.シンプルなゲームで性を備えている
   → 3.NFTゲームの先駆的な存在である
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 「1」と「2」については説明は終わっているので、「3」に
ついて説明します。要するに、「クリプトキティはNFTゲーム
の先駆的な存在である」といっているのです。それでは、NFT
ゲームとは何でしょうか。
 最初にNFTについて説明します。これについては11月18
日のEJで簡単には説明しています。これは、トークンの一種で
あり、NFTは、「ノンファンジブル・トークン」という意味に
なります。
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        @  ファンジブル・トークン
        Aノンファンジブル・トークン
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 「ファンジブル・トークン」というのは、円やドルなどのお金
と同様に、共通の単位に資産価値を自由に分割・代替することが
できるものです。ファンジブル・トークンには、ビットコイン、
イーサ、イオス、ジリカなどの暗号資産がそれに該当します。
 これに対して「ノンファンジブル・トークン」は、骨董品やア
ート作品のように、唯一固有の存在として発行される、分割や部
分譲渡ができにくいものをいいます。
 つまり、クリプトキティの猫はノンファンジブル・トークンが
適用されているのです。もっと正確にいうと、少し専門的になり
ますが、「ERC721」というイーサリアムベースのトークン
の標準規格が適用されています。「ERC721」は、あらゆる
データをNFT化するために必要とされる規格のことです。そも
そもNFTとは、非代替性トークンのことで、替えがきかない唯
一無二のトークンのことです。
 クリプトキティにおいて生み出された希少性の高い子猫の所有
権は、ERC721のインターフェスを継承して実証されている
のです。つまり、クリプトキティは、イーサリアムネットワーク
上で、猫のかたちをしたトークンを集め、それらの交配、交換す
るのを楽しむゲームと見ることができます。
 このNFTは、ちょうど2000年頃にアマゾンが突如として
現れたときと同じような状態です。NFTなんてほとんどの人は
知らないし、大きな関心はなかったと思います。そのとき、アマ
ゾンが、20年後に現在のEコマースの巨大王者になるなんて誰
も想像していなかったと思います。NFTも同じです。
 しかし、現在、少しずつですが、NFT市場が立ち上がりつつ
あります。
 経済評論家で、証券会社エコノミストの木内登英氏は、NFT
市場に関して、「デジタル・アーティストとNFT市場成長の潜
在力」と題する論文で次のように述べています。
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 NFTは、仮想通貨(暗号資産)と、デジタル作品とが融合し
たイメージだが、ウェブサイトの「ノンファンジブル・ドットコ
ム」によれば、米国でのNFT市場の規模は、現在2億5000
万ドル程度だという。仮想通貨(暗号資産)市場全体の規模が2
兆ドル超とされる中(coinmarketcap.com)、その規模はまだ
まだ相当小さい。それゆえに、この先規模が拡大していく余地は
大きいとの見方もある。
 しかし、NFTが本格的に注目を浴びるようになったのは、2
021年2月以降のことだ。象徴的な取引が3つある。2月には
「ニャンキャット」というアニメ画像のNFTが50万ドルを超
える価格で売れた。3月11日に、大手オークション会社クリス
ティーズで、「ビープル」という名義で活動するアーティストが
NFT化して売りに出した5000点のデジタル画像を合成して
作ったコラージュ作品が6930万ドルで落札された。また3月
には、米ツイッターのジャック・ドーシーCEO(最高経営責任
者)が2006年3月に投稿したツイートが、291万ドルで落
札された。
 これらを受けてNFT市場はバブルとの指摘がなされるように
なった。しかし、NFTの知名度が高まる中で、NFTのメリッ
トもコレクターに理解されるようになっていった。それは、デジ
タル作品の真贋の証明書が改ざんされないことである。通常の美
術作品であれば贋作が出回り、紙ベースの作品の証明書が偽造さ
れる。これが、コレクターに作品の購入を慎重にさせ、市場の拡
大を妨いでいる面があるだろう。       ──木内登英氏
                  https://bit.ly/30OH5St
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 現代の若者のほとんどは、いずれもスマホの高級機を持ってい
て、短い映像作品を制作し、それをユーチューブなどのSNSに
気軽にアップします。そういう若者はたくさんいます。良い作品
については多くの「いいね!」が付き、それで満足している若者
も大勢いますが、それらの若者のなかには、それをNFTアート
作品化し、大金を稼ぐ人もいるのです。
 まず作品を作ります。ただ、デジタルになっていればよいので
す。それをNFTマーケットプレイスのオープンシーなどを通し
て出品するだけです。それに果たして値がつくかどうかは、イー
サという暗号資産を持つ投資家たちが決めることです。
             ──[デジタル社会論V/076]

≪画像および関連情報≫
 ●デジタルアートや投稿に破格の値がつく話題の「NFT」と
  はなにか?
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   アートやコンテンツの世界でいま、「NFT」が注目を集
  めている。各種のデジタルコンテンツが何百万円や何千万円
  どころか、数十億円といった高額で取り引きされる基盤技術
  として使われているのだ。「NFT」が大きな話題をよんだ
  のは、2021年3月のことだった。ツイッター社の共同創
  設者として知られるジャック・ドーシー氏による初めてのツ
  イートが、NFTを通じて約291万ドル、日本円にしてお
  よそ3億1500万円もの価格で販売されたのだ。
   11月初旬には、クエンティン・タランティーノ監督の初
  期の傑作「バルブ・タランティーノ」監督の初期の傑作『バ
  ブル・フィクション』の未公開カットがNFTで販売される
  ことが発表され、耳目を集めたばかりだ。
   主としてアートの世界で収益を得る新たな手段として注目
  されるNFTとは、いったいどのようなものなのか。可能性
  と危険性の両方をはらむこの技術について、深掘りしてみよ
  う。NFTとは、「Non Fungible Token」の略だ。「交換不
  可能な価値をもつトークン」という意味であり、「非代替性
  トークン」とよばれることもある。同じ技術基盤を使ってす
  でに世の中で広く使われているのが「仮想通貨(暗号資産)」
  である。仮想通貨はデジタルデータに「ブロックチェーン」
  技術を用いて唯一の価値を担保し、あたかも「国家=中央銀
  行以外が独自に発行した通貨」のように取引されているもの
  だ。             https://bit.ly/3oQ13UG
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クリプトキティの猫.jpg
クリプトキティの猫
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする