2021年11月25日

●「LINEトークンエコノミー構想」(第5620号)

 もし、LINEが独自のブロックチェーンを構築しないで、す
でに公開されている既存のブロックチェーンのプラットフォーム
を借りてトークンを発行する場合、LINEのユーザーが、その
サービスを利用するには、ユーザー自身がウォレットを自分で作
り、管理する必要かあると那須利将氏は述べましたが、確かにそ
の管理は相当大変です。
 LINEユーザーとしては、単なるLINEのなかのサービス
を利用するだけなのに、外部企業のウォレットの作成や管理をや
らなければならないとしたら、そのようなサービスは誰も利用し
ないと思うので、独自のブロックチェーンを構築するというのは
的確な判断だったと思います。
 そもそも「ウォレット」とは何でしょうか。
 ウォレットは、暗号資産参加者がそれぞれ持つ「財布」のよう
なものです。ウォレットには種類があって、インターネットにつ
ながっているものを「ホットウォレット」、つながっていないも
のを「コールドウォレット」といいます。ホットウォレットは便
利な半面、ハッキング被害のリスクがあり、コールドウォレット
はセキュリティには強いが、使い勝手がよくないデメリットがあ
ります。ウォレットについて、少し詳しく説明をしておくことに
します。
 このようにウォレットは「財布」と訳されるので、あたかもそ
こに暗号資産を格納して保管するイメージですが、実際は異なり
ます。ウォレットについて坪井大輔氏は、次のように述べていま
す。文中の「ビットコインネットワーク」は、「暗号資産ネット
ワーク」と置き換えてください。
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 個人が自分の責任で管理するIDとパスワードによって、ビッ
トコインネットワーク内でウォレットを手に入れます。実はこの
ウォレット、日本語で「財布」を意味しますが、中に仮想通貨が
入るわけではありません。ウォレットに保管されるのは、IDに
紐づいた、このIDだけの「秘密鍵」と「公開鍵」という特別な
鍵だけです。               ──坪井大輔著
      『なぜ、ブロックチェーンなのか?』」/翔泳社
─────────────────────────────
 暗号資産のウォレットには、2つの鍵/公開鍵と秘密鍵の2つ
があります。公開鍵とは、ウォレットを通して暗号資産を受け取
るときに必要になるものです。実際に暗号資産を受け取るときは
この公開鍵を使って生成した「公開鍵のウォレットアドレス」と
いうものを、送り主に教えます。
 公開鍵のウォレットアドレスは銀行の口座番号のようなもので
あると考えるとよいでしょう。これとは反対に、暗号資産を誰か
に送金するときには、事前にこの公開鍵のウォレットアドレスを
教えてもらい、そのアドレスを宛先に指定して送金することにな
ります。
 これに対して秘密鍵とは、仮想通貨を送金するときに必要にな
るもので、パスワードのようなものだとイメージしてください。
銀行を通して誰かに送金するときにパスワードが必要になるのと
同じです。
 秘密鍵も公開鍵と同様、実際に仮想通貨を送金する際には、秘
密鍵のウォレットアドレスを生成して、そのアドレスをパスワー
ドのように入力することになります。ただし、秘密鍵は再発行で
きないという点に注意が必要です。だからこそ、管理が重要なの
です。
 銀行カードのパスワードを忘れてしまった場合は、銀行に問い
合わせて、パスワードを再発行してもらうことができますが、暗
号資産には銀行のような管理者がいないため、全て自己責任とい
うことになってしまいます。また、パスワードと同様、秘密鍵を
他人に知られてしまうと、勝手に仮想通貨を送金されてしまうこ
とになる点にも注意が必要です。
 LINEの那須利将氏の講演に戻ります。那須氏は、ここで、
「リンクチェーン/LINK Chain」の構造図(添付ファイル)」を
スライドで示します。
 「リンクチェーン」は、次の三層構造になっています。下から
上の順に書くと、次のようになります。
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    1. リンクネットワーク/LINK Network
    2.リンクフレームワーク/LINK Framework
    3.      ダップス/DApps
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 このスライドを示して那須氏は、「リンクチェーン」について
次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 突然「dApps」 と、見慣れない言葉が一番上に出てきていると
感じる方がいるかもしれません。一般的に、ブロックチェーンの
プラットフォームの上で動かすアプリケーション、もしくは、ブ
ロックチェーンのプラットフォーム機能を使ったサービスをダッ
プスと呼んでいます。        https://bit.ly/3CEMsQI
─────────────────────────────
 やっばりという感じです。狙いは「ダップス/dApps」 です。
LINEの狙いはこれにあります。
 土台である「リンクネットワーク」とは、ブロッチェーンその
ものです。ブロックチェーンには、「コンセンサス・アルゴリズ
ム」によってユーザーのリクエスト、トランザクションを承認し
たかたちとしてのブロックというデータ構造を生成する重要な働
きがあります。
 中間の「リンクフレームワーク」は、サービスログインするだ
けで、ウォレットの自動作成、秘密鍵の安全管理が行えるように
なっています。そして、ダップスを開発するためのサポートをす
るのが、中間部分です。「ダップス/dApps」 については、明日
述べます。        ──[デジタル社会論V/074]

≪画像および関連情報≫
 ●仮想通貨LINKとは?今後の可能性や特徴について解説
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   「LINK(リンク)」は、日本国内で7000万人もの
  ユーザーを擁し、名実ともに社会インフラに近い存在となっ
  ているメッセージアプリ「LINE」の運営会社、LINE
  社が開発・運営している仮想通貨です。
   私たちは日常生活でLINEアプリを用いることが多いで
  すが、そのなかで仮想通貨の話やLINKの話に触れること
  はほとんどありません。そのため、LINEユーザーであっ
  ても、LINKのことは知らないという人がほとんどではな
  いでしょうか。
   しかし、LINKはLINE社が本腰を入れて開発し、普
  及を目指している仮想通貨であり、その構想は壮大です。L
  INKは、LINE社が構想を描いている「LINEトーク
  ンエコノミー」で基軸通貨とすることを目指しています。こ
  のLINEトークンエコノミーとは、LINEが開発してい
  るブロックチェーン「LINE Blockchain」 を基盤としたエコ
  システム上にさまざまなサービスを展開する構想です。
   LINE社はこうした経済圏の構築には基軸通貨が欠かせ
  ないとして、独自通貨のLINKを開発しました。仮想通貨
  LINKは、メッセージアプリのLINEを開発・運営して
  いるLINE社によって開発されました。その目的はLIN
  Eトークンエコノミーという経済圏構想の中で基軸通貨とし
  て流通させることで、その計画に向けて着々と準備が進めら
  れている段階です。       https://bit.ly/3r0OsRg
  ───────────────────────────
リンクチェーンの構造.jpg
リンクチェーンの構造
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | デジタル社会論V | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする